【2021 J1 第33節】セレッソ大阪 vs 横浜F・マリノス
スタメン
セレッソ大阪
- 前節から4人の先発メンバーを変更
- 清武が負傷から復帰してメンバー入り
- 原川、タガートはメンバー外
横浜F・マリノス
- 前節から5人の先発メンバーを変更
- マルコスがカード累積により出場停止
- 天野が負傷離脱によりメンバー外
優勝と現状打破の狭間
継続か変容か悩むケヴィン
突如監督が変わるも、快進撃を続けた夏。連戦も一旦落ち着き、いつも通りの周期になった9月。しかし試合はいつも通りいかず、うまくいかない日々が続く。
相手に対策されている。アンジェからケヴィンに変わり、チームのベクトルは外側から内側に。『自分たち』を主語にサッカーをする。相手によってやり方を大きく変えることはなく、いつも同じことがベース。「どうせ今回もマリノスはこうするのだろう」我々マリノスサポーターだけでなく、対戦相手のチームも同じように思っているはず。つまり、わかりやすいのである。
誰にでも同じことをするので、試合の準備は簡単になります。9月に入ってからは国際Aマッチデーの中断もあり、十分な時間が取れることも多い。相手の対策を打ち砕くことがあれば、反対に打ち負かされることも。9月に入ってから3勝1分2敗だが、いずれも結果が逆になってもおかしくない綱渡りでした。
「対策されたままだと勝ちにくい。何か変化を加えないと」こういう考えになると思います。しかし、今は優勝が見えている状態。ここで新しいことをやるのは、大きな賭けになります。劇的な変化をせず、既存路線で進めた方が安定する。この二択、普通なら後者を選ぶ人が多いでしょう。そしてケヴィンも、そういった対応をしたのだと思います。
来るセレッソ戦。マルコスが出場停止。代役である天野も負傷により出場できない状態。そうなると、トップ下での出場時間が短い選手を充てることになります。たった1つのポジションですが、大きな変化です。ならば今後勝ち続けるためにも、ここで手を入れてチームを1段階進化させよう。そう考えるには、絶好のタイミングだったかもしれません。
勝ち続けるために必要なこと
葛藤していたケヴィンが得た絶好機。マリノス対策を乗り越えるため、このスタメンになったはずです。
- 元々サイドプレイヤーである水沼がトップ下
- 斜めに走り、9番の働きができる両翼
- レオより足元の技術がある健勇が最前線
- 広く守れる岩田がセンターバックでなくボランチ
- トップ下もできる皓太をボランチ起用
- 長いボールを出せ、自身も敵陣に攻め込める松原が先発
先発メンバーは予想外でしたし、どういう布陣かすら読めませんでした。そして蓋を開けてみると、水沼がトップ下。もうわけがわかりません。ケヴィンはそのくらい大きくチームを変えてきました。
優勝するには勝ち続けなければなりません。それを1年ほどもある、長いシーズン行うのです。当然対策されるので、同じやり方で走り切れるかわからない。しかも、マリノスはわかりやすいときた。対策を乗り越えるため、変化が必要だったのです。
優勝が見えてるのに、こんな大きな変化をしないでほしい。勝ち続けるためには必要なことだった。この行動は賛否両論だと思います。それぞれが”今のマリノス”をどう捉えてるかによって変わるでしょう。
しかし、これだけは言えます。ケヴィンは優勝を諦めて実験したわけではありません。優勝するためにチームを変えようと思った。彼だけではありません。マリノスに関わる全ての人が、勝つために本気で選んだ道なのです。サポーターとして、自分は強く信じています。
マルチロールからくる流動性
自由の難しさ
箇条書きで書きましたが、この試合の先発は複数の役割をこなせることが特徴です。トップ下に入った水沼を始めとする、前線がわかりやすいと思います。
- 健勇がボールを引き出すため下りる
- 空いた中央に仲川(大然)が斜めに入る
- 中央にいた水沼が仲川(大然)のいた外へ動く
札幌戦を踏まえても、こんな動きって想像しやすいですよね。そして、これにより選手のローリングが起きます。
- 健勇が頻繁に下りる
- 水沼が外に流れてクロスを上げる
- サイドバックが両方とも最前線に入る
- これ以外に、元のポジションにいることもあった
一言でいうと、マルチロールがテーマだったと思います。普段はトップ下の宏太。しかし、外側に人がいなければウイングになる。後ろから長いボールを入れた松原が、今度は最前線まで上がって受け手になる。各選手、2つ以上の役割を持っていました。
速攻向きな大然と仲川。遅攻向きの水沼と健勇。押し込んだときに立ち位置で相手を惑わす小池。トップ下にもなれる皓太。今までのマリノスは速攻一辺倒でしたが、この日の先発は遅攻との折衷。どちらで攻めても強みを出しやすい選手構成でした。
こういった複数のものは、選手たちに選択肢を与えます。いつどこで何を使うのか、それはピッチ上にいる選手の判断に委ねられるもの。つまり相手の状況に合わせ、適切な引出しを開ける頭の良さが必要になります。これを個人戦術なんて呼ぶ人もいます。
この日に選手たちが挑んだのは、大きな自由から適切な選択をし続けることでした。決められたレールのない旅。それをいきなりこの試合行ったので、ハードルはかなり高かったでしょう。
あの日、諦めたことを、今
相手に合わせて自分たちが変容する。これは開幕の川崎戦と同じでした。アンジェは前半で無理だと判断し、後半から答えを提示。以降、彼が同じアプローチで試合に臨むことはありませんでした。ケヴィンは再びそこに挑む決断をしたのです。
選手たちが流動的に動くこのスタイル。攻撃時の布陣がメチャクチャになるのは、いい所も悪いところもあります。マリノスは守備するときに元のポジションへ戻るルールなので、いつも以上に守備体勢を整える時間がかかることに。広大なスペースが空くので、広い範囲を守れる岩田は必須だったでしょう。こうなると喜田が欲しいですよね。しかし、トップ下の役割ができる選手をボランチに置きたかったため、彼を起用しなかったのだと思います。
また、選手1人の判断が適切だったとしても、周りと合わなければ大きな効果を得られません。これが高い難易度の理由でしょう。キャプテン喜田を欠き、プレーで見せるリーダーのマルコスも不在。くしくも開幕戦と似たような状況が重なり、今回もうまくいきませんでした。
飲水タイムで持ち直したのは、サイドバックとウイングの適正を合わせたから。タメが必要な小池の相方に、ボール扱いがうまい仲川を。タメがなくても持ち味が活きる松原と大然を組ませる。これで最初の前進に関しては、違和感が薄れたと思います。さすがに崩しまでいけませんでしたが、松原がミドルシュートを撃てるくらいには押し込めていました。實藤が決めたコーナーを取れたのは、これが理由でしょう。
- 大然は中央から背後を狙う
- 両翼、特に水沼はサイドに張って相手を広げる
- 後ろに下りるのは健勇
- 前半と違い、それぞれの役割が単一的になる
後半から選手たちをいつもの配置に戻します。それに伴い、それぞれの役割を絞ることに。いつも通りになった分やりやすそうでした。その後、レオやエウベルを投入して更に増す慣れ具合。攻撃がスムーズになった結果、相手を押し込めるようになったのだと思います。(もちろん、セレッソ側の疲れもあるはず)
前半に失敗して後半戻したことも、川崎戦をなぞらえる形に。今季越えようとしていた壁に再挑戦しましたが、まだ足りなかったようです。そういう意味でも悔しい敗戦になりました。
スタッツ
sofascore
SPAIA
Football LAB
トラッキングデータ
所感
いつかって今だったのだろうか
勝てないので変化が必要と書きましたが、それは今だったのでしょうか。今まで通りやってたら勝てたかもしれない。結果が負けだったからこそ、そんなことを思ってしまいます。優勝が見えていただけに、どうしても悶々としてしまいます。
これに答えはないでしょう。しかしこれを乗り越えて勝っていたら、優勝がグッと近付いたような気がします。これだけの賭けをしなければいけないほど、追い詰められた状況だったのかもしれません。
そもそも、まだこのチームは優勝争いに慣れてないですからね。19年に優勝した1回だけですよ。これから毎年体験して経験を積みましょう。そのためにも今季残り試合全部勝てるよう、最後まで進化を止めずに突き進む姿を見たいと思います。