hiro's football report

国内外、カテゴリー問わなずサッカーのマッチレポート風なものを掲載

【2021 J1 第37節】ヴィッセル神戸 vs 横浜F・マリノス

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スタメン

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ヴィッセル神戸

横浜F・マリノス

  • 前節から2人の先発メンバーを変更
  • 新たな離脱者などはとくになし(畠中は以前から離脱中)

らしくない両チーム

ケヴィンらしからぬ守備

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  • いつもはキーパーにまで突貫するプレスを敢行する
  • 理由は常に先手を取って相手を圧倒したいから
  • しかしこの日はサンペール塞ぎを優先
  • ケヴィンらしからぬ後手気味の守備方法
  • 持つことでなく、持たせることで試合を支配

 今節の守備方法、思い返すとホーム徳島戦で似たようなことをやっていました。なので、チームとしては真新しい手法ではありません。なのになぜ取り上げるかと言うと、ケヴィンになって受け身寄りの守備は今回が初だからです。

 今までは攻守に渡り、自分たちがアクションすることで相手を圧倒する意図がありました。常に先手を取ることは、相手の行動を待ちません。最近自分たちに向けるベクトルが強いのは、先の先を取り続けているから。これを加味すると、TORICOLORE+における小池のコメントが沁みます。(契約してる人はぜひ読んでみてください)

 話を開幕戦に戻しますが、今季アンジェが目指したのは後の先を取れるチームだったはず。しかし川崎相手にボロボロだったため、対の先を実行できるチーム作りに切り替えました。結果として派手な得点がなくなった代わりに、勝点の取りこぼしが減りました

 今節ケヴィンの採った方法は、まさに対の先だったのです。神戸のビルドアップはサンペールを経由して前線への展開が始まります。(彼が中心になっている様は、SPORTERIAのパスマップを見ていただけるとわかりやすいのでご参考に。)この形を想定し、いつもは突っ込むマルコスとレオに監視を任せたのでしょう。

 ※先の先、対の先、後の先は以下を参考にしてみてください。

karatebuko.exblog.jp

 神戸はサンペールやイニエスタからでないと、チャンスに繋がるボールがほとんど出ません。そして彼らはモビリティがないため、中央にいることがほとんど。外回しにされると、途端に攻撃の質が落ちます。実際ピンチになった回数を見ても、マリノスの守備方法は効果があったと言えるでしょう。

いつも通りじゃないサンペール

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  • 動かないとボールを受けられないので、下りて3バック化するサンペール
  • 中央が空くので、中盤の選手たちが下がってくる
  • マリノス陣側に神戸の選手が少なくなるので、攻撃の危険度が下がる
  • いつもはやっていない、人を捕まえるハイプレスを敢行する神戸
  • モビリティのないサンペールのマークは、素早く動けるマルコス
  • 攻守共にサンペールは中央から外側へ走らされている

 神戸としては、ハイプレスを敢行したことと、組み立て時にサンペールが下がることの2つがいつもと違うところ。これらが及ぼす影響は、サンペールが中央にいないことになります。

 守備においては元々中盤でフィルタリングせず、4バックで受けきる設計なので、そこまで影響はなかったでしょう。なので主な痛手は、攻撃時に中央からパスを出せないことです。

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 前節や今季平均は中央付近が色濃くなっています。しかし、今節は中央が空くドーナツ型になっていることがわかります。後ろに下がって3バック化したり、マルコスやレオのマークから外へ逃げる。守備時はマルコスのマンマークで外に動かされる。本来自分がいたい中央から離れてしまいます

 サンペールはモビリティの低い選手です。中央から移動することもそうですが、中央へ戻るのにも時間がかかります。これが理由で、彼は本来いたいところにいる時間が少なくなりました。後方からのロングボールが多かったのは、サンペールが動かされていたことも関係してると思います。マルコスとレオのマークは、サンペールを塞ぐだけでなく、神戸の攻撃機能全体に影響を及ぼしたと言えるでしょう。

スタッツ

sofascore

www.sofascore.com

SPAIA

spaia.jp

Football LAB

www.football-lab.jp

ラッキングデータ

www.jleague.jp

所感

チームの枠組みでらしさを出せた選手たち

 前節は外での仕事にこだわっていた仲川ですが、今節は中央からのシュートで得点という結果を残しました。得点シーンは、左サイドスタートにも関わらず内側にいたことが、彼の変化だと思います。外側を小池がオーバーラップしてアクセントに。大外レーンを使わず、中央3レーン以内におさまった密集した攻撃でした。インサイドアタッカーとしての素質を見せることができれば、起用される時間も増えるでしょう

 また、皓太も素晴らしい活躍を見せてくれました。扇原と違い、幅広い箇所に顔を出せる。喜田と違い、攻撃面でも違いを作れる。速攻でも、遅攻でも、幅を使おうが密集しようが対応できる。それだけの万能さを備えています。今まで起用が少なかったのは、ボランチとして最低限やるべきことを満たしきれなかったからでしょう。

 攻撃時は繋ぎ役として、守備時は相手の要所を潰す壊し役としての働きが求められます。それをやった上で、自分の色を出してほしいのです。今節では、イニエスタをおさえた上で、積極的に攻撃参加できていました。68分に見せたターンは彼らしさが詰まっていたでしょう。

 チームとしてやるべきタスクをこなし、その上で自分の強みを表現した仲川と皓太。彼らは今後プレー時間を延ばす可能性があると思います。

柔軟な戦術家

 前節の浦和戦は、ケヴィンの求める先の先を追求したものだったでしょう。しかし、今節は対の先で臨みました。主な理由は2位を決める戦いだったからでしょう。浦和と違い、神戸はACLストレートインを争う直接の相手。この試合は絶対に落とせないのです。なので、結果を掴み切れていない前節のやり方より、安定した戦いが見込める今節のやり方を採用したのだと思います。

 正直、相手を見ず無鉄砲に突っ込むことしか引き出しがない印象だったので、とても意外でした。相手の対策を仕込み、それを実践できるだけの能力がある戦術家という側面を見せてくれたでしょう。

 それでも最終節はケヴィンのやりたいようにやると思っています。我々に失うものはないですからね。互いのプライドを懸けた大勝負。ケヴィンマリノスの全てをぶつける姿を期待しています。