【2021 J1 第34節】横浜F・マリノス vs ガンバ大阪
スタメン
横浜F・マリノス
- 前節から5人の先発メンバーを変更
- カード累積で出場停止だったマルコスが復帰
- 負傷離脱していた天野がベンチ入り
ガンバ大阪
現実を見たガンバの戦い方
- 攻守の切り替えは、ポジトラもネガトラもかなり早い
- ハイプレスやミドルブロックはあまり整理されていない
- 反面、撤退守備は中央封鎖が徹底されており、ルールも明確
- ボール保持をしたい意思が見えるものの、方法の整備がされていない
- 以上より、切り替えの早さを活かしたロングカウンターが一番勝ちを見込める
ガンバ最大の持ち味は攻守の切り替え速度にあります。ここぞという場面に限ってですが、ポジトラでは多くの選手が飛び出していきます。いくかどうかの判断も的確。ネガトラも素早く、特に4バックとWボランチの帰陣はすさまじく早いです。これらはリーグ屈指と言っていいでしょう。
守備に関して、ハイプレスは人を捕まえてどんどん前に出る形。ミドルブロックも同様です。しかし、4バックはリスクを冒したくないため、あまり前へ出ない。必然的にライン間が空くことに。ここを突かれるとガンバは痛いです。
その反面、撤退守備は中央封鎖が徹底されています。サイド深くは必ずサイドハーフが戻る。サイドバックが外に出されたら、ボランチがセンターバックとの間を埋める。センターバックがほとんど中央から動かないため、固い守備を敷くことができています。
以上より、相手にボールを持たせて自分たちは撤退守備。奪ってからのロングカウンターでトランジション勝負を挑むことが、一番勝ちを見込める形になります。これだとハイプレスやミドルブロックのもろさが出ません。また、前線にもパトリックという明確なターゲットがいてわかりやすいです。
--今季、戦い方が決まっていない中で、今日の試合で残り試合への手ごたえは?
割り切ってやっていくしかないという話はしています。どちらかというと弱者のサッカーではないですけど、浦和戦でもそうだけど、ボールを持たれても、相手につながれても皆で守備をして、その中で1点、2点を堅く取るという戦い方になっていくと思います。
宇佐美が鳥栖戦でこのようにコメントしていました。本来やりたいことではないが、勝点を重ねていく上では仕方ないという感じでしょうか。残留が何より優先されるガンバにとって、一番可能性ある戦いをしているのだと思います。
これを頭に入れた状態で、今節を見ていきましょう。
互いの特徴を合わせた結果
必然的に押し込める状況に
- マリノスがボールを最後方へ下げると、必要以上に追ってこない
- つまり、後ろでは安定してボールを保持できる
- ガンバのミドルブロックは人を捕まえるため、間が空きやすい
- なので、組み立ての部分で苦労することは少ない
- マリノスがサイド深くを取ると、サイドハーフが戻って対応する
- これにより、ガンバの選手は自陣深くに多くなる
後ろで安定してボール保持ができるマリノスと、ミドルブロックに隙のあるガンバ。そういった状況なら、3つ目の図みたいに鋭いパスを刺すことができます。なので、マリノスが組み立てで苦労することは少なかったです。
また、ガンバの選手の戻りが早いため、いつものように縦へ素早く攻める回数も減少。こういったことから、マリノスが保持して押し込む形に試合展開が落ち着きました。
ただ前半、もう少し押し返す時間というか、ボールを握る時間がなくなって守備だけになると、なかなか厳しい戦いになってしまうかなと。ただ、ディフェンスラインを中心に、しっかりと粘り強く最後まで守ってくれた結果が勝利につながったのかなと思います。
松波監督はこのようにコメントしていましたが、今志向しているガンバのやり方をマリノスにぶつけたら、こうなることは必然だったと思います。
特にマリノスはサイドに人数をかけるチーム。これに対してガンバも人をかけて守るので、最前線は2トップのみ。パトリックへのボールは實藤が頑張って対応していたこともあり、ガンバが押し返す状況を作りにくかったのでしょう。
被カウンター対応の差
- ガンバは中央を封鎖する守備を優先
- ガンバの選手は戻りが早い
- マリノスはカウンター時に中央へ密集する
- ガンバは中央を固めればよい
ポイントは戻りの速さと守備対応の位置です。ガンバは前線の戻りが早いが、マリノスは遅い。上図だと、全力で戻ってくる倉田に対し、エウベルが戻り始めるのはかなり後です。これにより、一番後ろにいる4バックがどこまで動かされるかが決まります。
左図は倉田が戻っているので、ガンバの守備陣は中央を固められている状態。右図はエウベルが戻ってこないので、出てきた黒川に松原が出ています。横に広げられて空いたスペースに入ったのは福田。チアゴや扇原の重心や目線が奪われることに。
ガンバの被カウンター対応では、センターバックが動いていない。しかし、マリノスはセンターバックが動かされている。そのスペースに入ったのは倉田。ここはチアゴの死角になっています。フリーでシュートを撃てた理由はここにありました。
この被カウンター対応の差は、そのままオープン時の守備強度に直結します。ガンバは固く、マリノスは脆い。オープン展開ではマリノスが優位に立てると感じます。しかし実際は、きちんと守備ルールの整ったガンバが上回っていました。マリノスのスピードが猛威を奮うのは、相手が疲れたときからだったでしょう。このタイミングでオープン勝負を挑んだのは、分が悪い賭けだったように思います。
ちなみにsofascoreによると、クリア回数は菅沼が8回で最多。次点が佐藤の6回です。ガンバのセンターバックが中央から動いてなかったことは、数字からも伺えます。
スタッツ
sofascore
SPAIA
Football LAB
トラッキングデータ
所感
押し込むと崩せないマリノス
この試合は組み立てに苦労しませんでしたが、崩しは厳しかったです。相手を押し込むと前線のスピードが活きません。現状のスカッドが得意とするのは駆けっこです。5:01と34:17にあったチャンスは、双方とも相手の背後を取ったとき。こうすると、相手守備陣を後ろ向きに対応させられるので、決定機が作りやすいです。
湘南戦で仲川がアシストした位置。サイド深くまで到達できると、相手守備陣を後ろ向きにすることができます。しかし、この試合でそこを使っていたのはマルコスと扇原だけでした。大然とエウベルは早めのクロスのみ。
ガンバの守り方に対応するには、多くの人数をそこにかけなければなりません。ただ、そういったことがうまい和田や小池がベンチで、先発したのはティーラトンと松原。これは相手が前からくるので、長いボールでひっくり返そうという意図でしたが、見事真逆の状況に。ゲームプランの狂いを覆せない形になったのでしょう。
ケヴィンは相手を押し込むサッカーがしたい。しかしそれが得意な選手、特にウイングはかなり少ない。こういうギャップを残り4試合でどう埋めるか。今後つためには重要なことなので、そこに注目して見ていきたいと思います。