hiro's football report

国内外、カテゴリー問わなずサッカーのマッチレポート風なものを掲載

【2022 J1 第26節】京都サンガFC vs 横浜F・マリノス

スタメン

京都サンガFC

  • 前節から1人の先発メンバーを変更
  • 武田が累積警告により出場停止

横浜F・マリノス

  • 前節から4人の先発メンバーを変更
  • 宮市と西村が負傷離脱中
  • 山根陸が代表招集で離脱中
  • Y.マテウスが外国籍選手の関係でメンバー外

非対称な守備に求められる走力と技術

  • 豊川を前に出す4-4-2でハイプレスを仕掛ける京都
  • 右肩上がりなので、福岡は永戸とボランチを見ることに
  • 片方に寄せればもう片方が空くが、そこは2トップがプレスバックして対応
  • 非対称なプレスとマリノスサイドバックの特徴から、左サイドからの前進が多くなる
  • 後半になると、京都の選手が動いた後マリノスの選手が動き出すように
  • 疲労から、京都のプレスバック頻度が下がる

 京都のハイプレスは、噛み合わない部分を走力と技術で補う形でした。献身的なプレスバック。相手を背中で消しながら寄せる。こういったプレーがうまい山﨑が重宝される理由がわかります。

 マリノスとしてはズレが生まれやすい左サイドから前進を図りたいですが、京都が元気なうちはうまく攻めることができませんでした。長いボールを蹴ることが多くなったのは、相手のプレスが厳しかったことに大きな要因があったはず。

--90分間の中で波のあったパフォーマンスに見えました。

欲を言えば、マリノスらしい敵陣でプレーを続けるのが理想でしたが、グラウンドコンディションの影響もありました。連戦の中、後ろの選手としては「割り切ってプレーしないといけないのかな」とは考えていました

--ビルドアップでいつもよりロングパスを多用しました。

低い位置でボールを失って失点するよりは、相手が前からプレッシャーに来ていたので、ひっくり返す意味でも背後を狙ったり、トップとボランチの間のスペースを狙ってはいました

 岩田のコメントより、ある程度割り切った安全思考があったことがわかります。しかし闇雲に蹴るのではなく、前に出た相手をひっくり返す意図があったようです。松原から仲川へのパスなどはわかりやすいですよね。

 先制点を挙げたあと、ケヴィンは喜ぶのではなく、喜田、マルコス、仲川に指示を与え続けていました。喜田とマルコスにはトップとボランチの間のスペースを。仲川にはサイドチェンジを受けて、横圧縮した相手を揺さぶってほしい。空きやすい永戸を攻撃の起点として攻めたかったのでしょう。しかしこの思惑は、あまりうまくいきませんでした。

 迎えた後半。たくさん走る守備をしている最中に失点したこともあり、プレスの威力が徐々に弱まる京都。相手が出る。背中で消されない箇所へ動いて、パスをもらえるよう角度をつける。後出しの動きでも対応できるほど、京都の寄せる速度が落ちていました。ハーフタイムでしっかり打ち合わせられたこともあり、後半の頭はうまく前進できる回数が多かったように思います。

 プレスがハマらなくなると、今の前線を起用しているメリットが薄まります。ならばと曺監督は3枚替えを敢行。寄せる技術力は大きく劣りますが、身体能力にものを言わせた素早い寄せマリノスへ迫ることに。その後も金子や荻原を入れるなど、走力と攻撃力を重視した交代で点を取りたい意図が伺えました。

変わってしまう攻める速度

  • 仲川&エウベルというスピードのある選手から、海夏&水沼というキック技術のある選手に両翼が変わる
  • 一気に相手の背後をつくパスができなくなるので、前進するための手数が増える
  • しかし短い距離を進むため、パスの精度が上がる
  • 選手交代により、攻撃の速さと精度が変わることに(これがメリデメ)

 5連戦を戦うマリノス。現実的に考えて、ウイングがフル出場を続けることは身体的に不可能でしょう。そのため、選手交代をする必要があります。この日はマルコスが先発だったので、ヤンが外れることに。スピードのある選手がベンチにいなかったので、交代後は攻める速度が落ちます

 海夏と水沼の特徴は、キック精度の高さです。周囲と関係を持ちながら、徐々に前進。相手を押し込み、敵陣で長い時間過ごすことが理想でしょう。そのためには相手のプレスに怯まず、立ち位置とパス精度でかわすことが必要です。ハイプレスをかけてくる相手にはリスクがありますが、単に蹴るだけでは自分たちの時間が減ってしまう。出てる選手たちにとって、勇気が求められる状況でした。

 水沼や海夏は下りて組み立てに参加するなど、自身ができることを最大限やってくれたように思います。ここにボランチが入ると数的優位を作りやすかったですが、ジョエルや喜田は疲労している状態。彼らに代わる適任は山根陸だったでしょう。ボールを循環できる選手が、両翼と関わって前進。こういった青写真を描きたかったですが、彼は代表に召集されていて不在。なので、岩田をあてがって運動量で補うことに。万が一繋ぐことに失敗しても、広い範囲をカバーしてもらう形。右図のような状況を期待してのポジション変更だったでしょう。(彼もフル出場してるんですけどね…)

 試合をクローズするため海夏を投入した、というのは結果論でしょう。前述した通り、マリノスは攻撃速度を大きく変えざるを得ません。これは望んでいようが、望まなかろうがです。それがぼやけたのは、たまたまリードしていたから。(もちろん、得点状況によって投入した時間帯は変わったでしょうが)

 この試合で印象的だったのはケヴィンのクローズ方法ではなく、選手交代に適応したピッチ上の選手たちでした。状況を見て何が最適かをチームに伝え、組織的に物事を進める。これこそが京都戦で得た大きなものだったように思います。

スタッツ

sofascore

www.sofascore.com

SPAIA

spaia.jp

Football LAB

www.football-lab.jp

ラッキングデータ

www.jleague.jp

所感

勝負の神様は細部に宿る

 試合前に、マリノスを目指すべきチームとしてコメントした曺監督。試合後も、何もできなかった前回対戦に比べて、相手を苦しめる素晴らしい内容だったと言及していました。マリノスという越えるべき壁に対し、自分たちは十分立ち向かえるという自信があったのだと思います。しかし結果は敗戦。掴みかけていたものを取りこぼし、打ちひしがれていたのが試合後のインタビューだったのかもしれません

 京都は今年J1に上がったチームです。目指すべきスタイルをJ1ナイズドする必要があるので、実質的にチーム作り1年目と言えるはず。まずはプレッシングやビルドアップなど、基礎的なことに重きを置く必要があります。その積み重ねが徐々に実り、マリノスと戦えるまでに成長したのでしょう。

 対するマリノスは、アクティブな姿勢を貫くサッカーを実施して5年目。選手の入れ替わりはありますが、基礎的な部分は既に身に付いている状態です。そうなると、より細かい部分に力を入れる時間ができます例えば、ゴールキーパーがセービング時の足の運び方を突き詰める。ボランチミドルシュートの精度を高めるため、シュート練習に励むなど。そしてこの試合で効果を見せた、セットプレーの仕込みも挙がるでしょう。

 元の意味とは少しずれますが、岡田元監督のよく言う勝負の神様は細部に宿るという言葉がピッタリな一戦だったように感じました。プレー原則だけでなく、より細かいことに時間を割けたマリノスチーム成熟度の差が、ディティールの差に表れたと言えるでしょう。