hiro's football report

国内外、カテゴリー問わなずサッカーのマッチレポート風なものを掲載

【2022 J1 第4節】コンサドーレ札幌 vs 横浜F・マリノス

f:id:hiro121720:20220312163404p:plain

スタメン

f:id:hiro121720:20220312163424p:plain

コンサドーレ札幌

  • 前節から1人の先発メンバーが変更
  • シャビエルが負傷から復帰してベンチ入り

横浜F・マリノス

  • 前節から4人の先発メンバーが変更
  • 皓太とマルコスが負傷から復帰してベンチ入り
  • 畠中、レオ、水沼、喜田が負傷離脱中

順足ウイング vs 逆足ウイングバック

安全な組み立てと順足ウイング

f:id:hiro121720:20220312214257p:plain
f:id:hiro121720:20220312214307p:plain
  • 繋げるときはレイオフを使って前進する
  • ロングボールを蹴るときは相手をある程度引き付けてから
  • 敵陣に入ったら速攻が第一で、次点で保持を目指す

 自陣での振る舞いはセーフティマリノス。繋いで前進するときはレイオフを多用していました。ボール保持者がマーカーを振り切れることと、リターンを受けた際に前を向けることがメリットです。行っていた選手が特定の誰かじゃないこと。また精度の高さから、事前に準備して入念に練習していたのでしょう。マンマーク相手には効果的でした。

 レイオフだけでなく、長いボールを蹴ることも併用。ただ闇雲に蹴るのではなく、ある程度相手を引き付けてから前線へ供給していました。特に競り合いで圧勝していたアンロペをターゲットにしていたように思います。

 ここまでかわせたら相手の人数が少ない状態なので、速攻が第一選択肢。それが決まらない場合、敵陣に押し込むため保持することを目指します。いずれの場合も、マリノスから見て右サイドから前進することが多かったです。

  • 福森は攻撃時に自由な立ち位置を取る
  • 敏捷性が乏しいため、守備範囲が広くない
  • 反面、田中は身体能力が高く、立ち位置や予測がよい
  • そのため、マリノス右サイドで優位を得やすい
  • エウベルは順足ウイングなので、サイド深くを攻めることができる

 右サイドに偏ったのは、札幌守備者とマリノスウイングの特徴が重なった結果だったでしょう。福森に対してはエウベルが圧倒していましたが、田中は仲川を通してくれませんでした。

 福森の守備能力を補うウイングバックなら誤魔化しようがあるのですが、相方は攻撃者であるL.フェルナンデス。前寄りの守備が多くなりやすく、上下動を繰り返す走力も特別なものはありません。(足は速いですけどね)

 2:14にジョエルがポストに当てたシュートも、37:18にエウベルが放ったシュートも右からです。数値でも右サイドからの攻撃が70%だったように、前半で優位性を得られたのがここでした。

逆足ウイングバックと狭い守備

f:id:hiro121720:20220312214959p:plain
f:id:hiro121720:20220312215008p:plain
  • 札幌は逆足のウイングバックを配置
  • 外方向ではなく、内方向へ進む頻度が高くなる
  • サイドチェンジしても中に向かうため、密集地帯へ飛び込むことに
  • 狭く守るマリノスだが、左右への揺さぶりが減る

 逆足をサイドに置くメリットは、カットインによる中央侵入のしやすさと、インスイングクロスによってファーへボールを送りやすくなることでしょう。ただ、相手をズラす術がないと、密集した地帯へ飛び込む形になってしまいます。右図のボロノイ図を見るとわかりやすいでしょう。マリノス選手の接点が多い、つまり複数選手がカバーできる赤丸のエリアへ進もうとしているのです。

 また、マリノスは縦横に狭く守るチームなので、サイドチェンジされると左右に振られることになります。手薄な逆サイド深くを攻められるときついです。しかし札幌は逆足の選手を配置しているため、大きく動かされるのはサイドバックのみ。残りの選手は横方向の移動距離が短くなります。結果的に中央付近を固めれば、札幌の攻撃はあまり怖くありませんでした。

封鎖された右サイドと、最後まで開けなかった左サイド

菅の投入で優位に立つ札幌

f:id:hiro121720:20220312215242p:plain
f:id:hiro121720:20220312215250p:plain
  • 菅はエウベルをマークする
  • 龍太へのアプローチは遅れることを許容
  • 順足ウイングバックになったので、サイド深くを攻められることに

 右サイド手当のため、後半から菅を左サイドへ投入。エウベルをマークすることにより、マリノスの前進ルートを消しにかかります。これにより、エウベルがフリーでボールを受ける回数が激減。

 代わりに小池が空くのですが、ここは後手の対応を許容していました。彼はパス能力に秀でてるわけでも、ドリブルで複数人突破できるわけでもありません。独力で大きな効果を発揮しない選手なので、対応優先度が下がったのでしょう。

 またウイングバックが順足になったため、サイド深くを攻められるように。サイドチェンジの威力が増します。これは右サイドのルーカスにも言え、狭く守るマリノス高い効果を発揮していたでしょう。実際、札幌の得点はサイド深くへ侵入した菅がもたらしたものでした。

 ただ主因はマリノス右サイドの阻害にあり、攻撃面は副次的なものだったでしょう。でなければ最初から金子とルーカスの配置を逆にしていたはずです。

属性とルートを変えたマリノス

f:id:hiro121720:20220312215411p:plain
f:id:hiro121720:20220312215419p:plain
  • 西村は下りて左へ展開するための中継役
  • マーク担当がつけば背後が使えるし、来ないならフリーでさばける
  • アンロペを右サイドに置いたことで、右サイドは崩しではなくフィニッシュ属性に
  • 左サイドから前進して崩し、菅に対してクロス勝負を仕掛けたい

 右サイドが手詰まりになったマリノスは、西村を投入してアンロペを右ウイングに移します。これにより、今まで崩しの役割を担っていた右サイドの属性がフィニッシュ役に変わります

 右で仕留めたいので、攻撃ルートは左になります。しかし真正面から仕掛けても田中に勝てないので、何か工夫が必要です。そこで西村に課せられたのが、下りて中継地点になることでした。

 マンツーマンで宮澤がついてくれば中央が空きますし、そうでないならフリーでボールをさばけます。左サイドの選手に前向きな状況を作れるので、ある程度優位に立てることに。67:00にエウベルが上げたクロスも、76:41に海夏が上げたクロスも西村が中継して展開したものでした。

 クロスを上げることができれば、アンロペと菅が競ることに。スピードで抜くことだったり、対峙しての1対1だと菅の強みが出ますが、クロス対応だと弱みが出ることに。本当はこのマッチアップを狙いたかったのですが、ガス欠気味のアンロペがクロスに間に合う頻度が少なく、彼らが競り合うことはありませんでした

 なんなら前半から走ってるアンロペが、後半から投入された元気な菅に後れを取ることが目立ちます。菅は札幌ウイングバックの中でも、トップクラスの走力を持っています。スタミナで分が悪い状況だったので、アンロペのウイング起用はかなりな博打でした

 またここまでお膳立てしてるのに、田中は満足な状態でクロスを上げさせてくれません。スーパーセーブを連発していた菅野と同じくらい、彼も素晴らしいプレーをし続けていたと思います。最終的には柳を投入して、左サイドも完全に蓋をされてしまいました。

 結局最後までうまくいきませんでしたが、同点弾のきっかけになった競り合いはアンロペ対宮澤。最初のマッチアップで勝点を拾うあたり「サッカーって難しいしわからないな」と強く感じました。

スタッツ

sofascore

www.sofascore.com

SPAIA

spaia.jp

Football LAB

www.football-lab.jp

ラッキングデータ

www.jleague.jp

所感

経験の共有

 ケヴィンが選手を様々なポジションで起用するのは経験を共有させるためだと、とある方が言っていました。そう考えると、今回のアンロペウイング起用にも同じ意図があったはず。

 対戦ゲームでとあるものに勝てない場合、自分が使ってみるといい。なんて聞いたことはないでしょうか。何をされると嫌か。どういう状況だとやりやすいか。そういったものがわかるからです。これってサッカーにも当てはまると思うんですよ。

 例えば自分がサイドバックだとして、どのタイミングでウイングに出すのがベストなんだろう。というのは、実際にウイングをやってみるとわかったりするはずです。ポジションによって見える景色も違うので、どこの状況を把握しているかも共有しやすくなるでしょう。

 また、本職以外のポジションをすることで、相手を惑わせることもできると思います。「常識的に考えたらこのポジションの選手はこう動くんだけど、こいつ全然違う動きするじゃねえか…」なんてことが起きるかもしれません。固定観念に囚われてる相手ほどハマるでしょう

 このあたりは開幕戦だったり、昨季のアウェイセレッソ戦に通ずるものがあると思います。多様性と共に、経験や視野の共有もテーマの1つなのかもしれません。