【2021 J1 第1節】川崎フロンターレ vs 横浜F・マリノス
スタメン
川崎フロンターレ
- 4-1-2-3の布陣
- ゼロックスと同じスタメン
- 大島は怪我のため、塚川は脳震盪のため大事を取ってメンバー外
横浜F・マリノス
- 3-3-1-3のシステム
- 右WBには和田、左WGには高卒ルーキーの樺山が先発
- エウベルと喜田が負傷離脱。マルコスも大事を取ってメンバー外
試合のポイント動画
【2021 J1 第1節】川崎フロンターレ vs 横浜F・マリノス🎥
— ヒロ@hiro17 (@hiro121720_yfm) 2021年2月27日
✅川崎の追い込み漁
✅マリノスの守備
✅マリノスの攻撃 pic.twitter.com/wlh80QDQYr
自信をなくしたチームが取った行動
選手たちが考えて狙ったこと
前半に関しては、選手たちが自分たちで『川崎フロンターレ対策』を考えて実行したものだと思いました。その理由は後述します。ではまず、天野の試合後コメントを見てみましょう。
「相手が前からプレッシャーにくると分かっていましたし、その分自分たちは前に3人味方がいて、1対1をつくりやすいという想定のもと、キック力のあるオビ選手から一発で裏返して1対1にできるという狙いで準備をしてきました。良い部分も出せましたが、少し慌てて蹴ってしまいすぐに相手のボールになってしまうことも多かったので、修正が必要ですし、もっと自分たちからボールを呼び込んで、自分たちらしいサッカーが前半からできたらよかったと思います。」
攻撃における狙いを語っていました。それがうまくいかなかったようですが、全くできなかったのではなく、何回か成功していたこともありました。
前からくる相手を自陣に誘引して前後分断を誘う。前線で優位な状態が作れたら長いボールを入れてひっくり返す。
昨年にBunさんの書いたプレビューに記載されていますが、川崎フロンターレは相手を押し込むことで強みを発揮するチームです。前に人数をかけた攻撃を行い、攻守が入れ替わった時もそれを活かしてハイプレスを敢行。常に敵陣でプレーすることにより、全体の走行距離を抑えています。
ゼロックスの試合を見ても、この姿勢は今季も継続されていました。3トップと両IHが前に出て中央を固める。外にボールが出たらサイドバックも出てきて封殺(詳しくは動画を参照してください)。
前掛かりなプレスのデメリットは、前後分断しやすいことです。つまり、ハイプレスをかわされると、ディフェンスラインの前に広がるスペースが晒されてしまう。マリノスとしてはどうやってこの形を作るか考えた結果、コメントのようなやり方になったのだと思います。
前からくる相手を縦に伸ばすため、自陣側へ誘引。その状態で前にポカーンと蹴れば、盤面をひっくり返せます。しかし、ただ蹴るだけでは相手に勝ちにくいですよね。そこで、なるべく最前線に人を置くようにしてみました。同数の状況を作れば、スピードのあるマリノスが優位に立てることもはず。そしてこの狙いがあったからこそ、後ろでビルドアップが詰まっても中々人が下りてこなかったのだと思います。
しかし、相手のプレッシャーが予想以上にきつかったのか。または、ロングボールの精度が足りなかったからか。この試みがうまくいくことは、あまりありませんでした。
天野がシミッチをマーク。最前線で自由なオナイウが方向付けして退路を遮断。サイドで囲ってボールを奪う。
守備に関しては、天野がシミッチを監視することで、川崎に外回しを強制。最前線にいるオナイウが自由なこともあり、誘導先の方向付けや、退路の遮断をしやすい状態でした。
これはそれなりにうまくいくこともありましたが、かわされることも多かったです。その理由は、プレススピードが遅かったことでしょう。人がくるまで時間があるので、川崎の選手たちは出し先を考えたり、安定してボールをおさめることができる。また、IHや家長が下りて人数をかける時間もできます。結局、川崎の引き出しにあるやり方で対応されてしまいました。
失敗が続いたときに取った行動
最初の10分間は川崎が様子見していたこともあって、うまくいくことが多かったです。しかし、それ以降は狙い通りいかないマリノス。こういう状況で選手たちの頭によぎったのは、『ボールを保持して自分たちのサッカーをやろう』ということだったのではないでしょうか。最初は相手を誘引させるための保持でしたが、それが徐々にボールを失わないための保持に変わってきます。
- 天野が下がっているので、川崎は前に人をかけやすくなる
- 代わりに和田が上がるが、守備で歪みが生まれる
後ろで詰まるので、天野が下りるようになりました。しかし、本来狙いたいのは最前線での数的同数。トップ下の選手が下りるのは、相手に屈したと言えるでしょう。後顧の憂いがなくなった川崎は、前への圧力をかけやすくなります。自分たち本位に試合を進めているので、精神的な余裕も生まれるでしょう。
今までボールを保持することを強く叩き込まれてきたからこそ、この行動を取ったのでしょう。しかし、川崎がやりたい『前向き守備』を助長してしまう形になり、自分たちの首を絞める結果になってしまいました。
また、この場面では下りた天野の代わりに和田が上がっていました。しかし、彼は守備時ボランチに入り、天野が前に出るルール。攻守が入れ替わった際に動く距離が増え、守備が安定しづらくなります。
このように、うまくいかなったときに選手の取った行動がバラバラだったことが目立っていました。うまくいかないときにチームの方向性を決められる選手の不在を痛感。ピッチ上のキャプテンの存在はこういうときに響くんだなと思いました。
ボスが直接指示した後半
前半とは打って変わり、積極的になったマリノス。後半はやり方がブレることなく、最後まで完遂しきりました。前半は選手たちによって狙う方向がバラバラでしたが、後半はそれがなかった。このことから、前半は選手たちだけで考えたやり方。後半はボスが直接指示したやり方だったのだと思っています。
4-2-4に代えた理由
4-2-4は3-3-1-3から可変できる。
後半から4-2-4の形に変えましたが、実は3-3-1-3から可変することができるんですよ。選手の特徴を考えると、ボランチになれる和田を右WBで起用したことにも納得がいきますよね。
また、キャンプではリベロに畠中が入ることが多かったですが、この試合ではチアゴが起用されることに。これは川崎の特徴を考えた上での判断でしょう。三笘のカバーのため、中央に足の速い選手を置きたい。家長はスピードに特別な強みがある選手でないため、畠中でも追いつくことができる(その後に抜かれないかはまた別のお話)。こう考えることができますよね。
前と後ろに人がいる形なので、相手を前後分断しやすくなります。相手が前掛かりになるほど、こちらは裏返しやすくなることに。後半56分にオビが、61分にチアゴがロングボールを前線に蹴っていたのはそれを狙ってでしょう。
また、大然を最前線に入れたことにより、プレスの迫力が増加。意思統一できていたこともあり、全員の寄せるスピードが上がりました。これで余裕がなくなった川崎が選択したのは、それでも繋ごうとすること。三笘と家長は足元にボールをおさめることで強みを発揮しますし、ダミアンはスピードに秀でていません。ポカーンと背後に蹴っても効果は薄いので、その選択にも納得がいきます。実際カウンターの脅威になったのは、ほとんど三笘のドリブルからでしたしね。なので相手が苦し紛れに蹴ってくれるのなら、それはそれで嬉しかったりします。
全体的なプレースピードを上げ、両陣営深くに何度もボールが行き交う形は、マリノスが望んでいるもの。シャトルラン対決なら負けません!
ゼロックスのときと比べると、走行距離は約7km、スプリント回数は41回増加。特に中盤選手のスプリント増加が目立ちます。これは、前に人をかけて抜かれたとき、後ろを埋めるため必死に戻るからです。盤面をひっくり返すことにより、シャトルランを強いていたのはこのポジションの選手たちでした。前からいきたいけどオープンな展開にしたくない。そのやり方は、彼らの走りによって支えられていたということでしょう。
実はふんだんに盛り込まれていた川崎対策
- 猛スピードのプレスを行い、相手に考える時間を与えない
- 最前線に人を多く配置し、ロングボールで一気にひっくり返す(背走させたい)
- リベロにチアゴを起用したのは、三笘をカバーするため
- 和田を起用したのは、4-2-4の形にして最前線に人をかけたかったから
後半のやり方をまとめると、このようになります(攻守におけるやり方は動画を参考にしてください)。実は川崎対策がふんだんに盛り込まれていたんですよね。いずれも川崎があまり経験したことのないやり方でした。しかもこれはボス主導で行われているという驚きも。
後半になってフォーメーションを変えました。その理由は、以下のような可能性があると思います。
- 3-3-1-3における、川崎への対応策をボス自らが提示した(答え合わせ)
- 前半うまくいかなかったので、自信を回復させるために昨季のやり方に戻した
真相はどちらなのか、それはもう少し継続して見ないとわかりません。まだ1試合行っただけですしね。次の試合は、事前に広島の試合を見て臨みたいと思います。
スタッツ
sofascore
SPAIA
Football LAB
トラッキングデータ
所感
選手たちに考えさせる姿勢は継続
前半は選手たちに考えさせ、後半は自らが指示しました。ボスは日ごろから、やろうとしてることは実戦でしか身に付かないと言っています。キャンプが研修期間。リーグ戦前半がOJT。リーグ戦後半がOJTのフィードバック。こう考えると会社員のようで面白いですよね(笑)
今回はたまたま前後半で変わりましたが、次もそうなるとは限りません。なんとなくですが、余程酷い内容か大きなビハインドでない限り、ボスは選手たちにやらせるのではないかと思います。
いずれにせよ、『相手を見て柔軟に対応する姿勢』は今季のテーマになりそうです。そのための新システム導入なのかなと。道のりは長いですが、今度を楽しみにしたいと思います。
戸惑う選手とサポーター
「対戦相手は関係ない」、「ボールを捨てずに繋ぐんだ」、「自分たちのサッカーをする」こんなことを口癖のようにボスは言っていましたよね。それが今季になり、「相手ごとにバッチリ対策をするんだ」、「効果的なら最前線に蹴ってもいい」と言うようになりました。キャラ変がすぎますよね(笑)「言ってること真逆じゃないですか!」なんて思ったりもします。
このギャップに苦しむのは、古くからチームにいる選手たちでしょう。彼らはボスの哲学が染みついてますからね。反対に、新加入選手たちは適応しやすいかもしれません。実際、岩田は前半でもロングボールを狙い続けていました。今までの固定観念に囚われない柔軟な考えが、選手たちに求められるでしょう。
マルコスの不在と天野を残した理由
後半から大然を入れてうまくいったように、この試合のトップ下は最前線で立ち回れる選手が適切だったでしょう。しかし、それに合致するマルコスはコンディションの問題でメンバー外。代わりに起用されたのは天野でした。前でのプレーが期待されましたが、下がることが多くなってしまう結果に。これはボスの期待を大きく裏切ったことでしょう。
そんな彼を後半に残したのは、「君が前半プレーしてた内容はボランチの役割だよ」ということと、「本来やってほしかったのはオナイウや大然のようなプレーなので、それを見て学ぶように」ということだったと妄想しています。だって扇原代える理由があまりないですもん…
相手によって対策をするので、これからも「この選手がいれば…」と思うことはあると思います。そういったとき、代わりに出た選手がいかに期待に応えるかは、今季大事な要素の1つになるでしょう。