【2022 J1 第25節】横浜F・マリノス vs 湘南ベルマーレ
スタメン
横浜F・マリノス
- 前節から2人の先発メンバーを変更
- 宮市が負傷離脱中
- マルコスが外国籍の関係でメンバー外
湘南ベルマーレ
- 前節から4人の先発メンバーを変更
- 特に離脱者などはなし
噛み合うマリノスと、噛み合わない湘南
- 湘南は2トップで中央を封鎖したミドルブロックを形成
- マリノスはサイドバックを中心に、局所的な数的優位を作ることでプレスを回避
- ウイングが相手ウイングバックを留めているので、前に出られる選手が限られることもポイント
- 布陣が噛み合うので、マリノスはプレスに迷いが少なくなる
- 寄せる勢いに押され、低いボールではなく浮いた長いボールが増える湘南
- 前にいる町野と瀬川は空中戦に特別強いわけではない
互いの布陣を嚙み合わせると、ピタリと一致します。誰が誰をマークするかわかりやすいので、迷わずプレスにいきやすいです。湘南はマリノスのプレスを真正面から受けることになり、狭い空間と短い時間の中でプレーしなければなりませんでした。
普段なら3バックやアンカーから、前線へ縦パスが入る湘南。しかしマリノスの猛烈な寄せに耐え切れず、前に蹴り込むことが多くなります。町野や瀬川は空中戦に特別な強さを持っていないため、エドゥアルドに競り負けることが多々。押し込まれた状態なので、セカンドボールの回収も中々できません。湘南が下から繋げなかったことが、マリノスが押し込めた1つの要因だったでしょう。
対するマリノスは、選手の動きでズレを生んでいました。特徴的なのはサイドバックが内側に入ること。これにより相手インサイドハーフの周りには、マリノスのボランチとサイドバックの2人がいることに。ウイングが相手ウイングバックに蓋していることも、数的優位を作りやすくしていました。
前節、湘南はハイプレスからショートカウンターをすることができましたが、この試合ではあまりできませんでした。その差は、繋ぐために自らが動くマリノスと、繋ぐために相手を動かす川崎にあったでしょう。同じプレスのかけ方では、うまくいきにくいのです。
繋ぐことにしても、マリノスには一日の長があります。湘南は山口監督になってから取り組んでいたこともあり、マリノスが優位に試合を運べたのだと思います。
しかしまだ前半。選手たちは動けるので、湘南は押し込まれさえすれど、守り切ることはできていました。マリノス優位と言いましたが、決してチャンスが多かった印象はありません。
理想を現実にするために
- Wボランチにすることで、後方の組み立て人数を増員
- 布陣の噛み合いもズレるので、マリノスのプレスを弱める期待感もあったはず
- トップ下を入れることで、放り込んだ際のセカンドボール回収要員を作る
- しかしマリノスのプレスがあまり緩まなかったため、結局下から繋ぐ回数はすくないまま
前節の川崎戦は、相手があまりプレッシャーをかけてきませんでした。3バックには時間の余裕が与えられ、その状態ならいい縦パスを刺し込んで攻撃することができていました。なので、後方で時間を作ることができれば、下から繋いで攻撃ができる自信があったのでしょう。そういった背景もあり、茨田を投入して中盤の形を変えたのだと思います。
結果として、これはあまり機能しませんでした。湘南が試合中に中盤の形を変えることはあまり見たことがありません。Wボランチにしてどれだけ練習していたかはわかりませんが、やはり本番で施行回数を重ねないとギャンブルの要素が強くなります。3バック+Wボランチの立ち位置で、マリノスのプレスをいなしていた広島と比べるとわかりやすいでしょう。
- ウェリントンを投入すると、ある程度雑に放り込んでも時間を作ってくれる
- しかし町野や瀬川に比べてスピードがないので、寄せる遅さが目立つようになる
- なので、ショートカウンターを仕掛けられる頻度が下がる
- 守備が後ろに重くなるので、ある程度間延びした状態を許容することに
- 縦に速い畑やタリクを入れると、より間延びしやすくなりオープンな形になる
恐らく、繋ぐことに見きりをつけたのがウェリントンの投入。しかしプレスの機動力が下がるので、どうしても後ろに重くなりがちに。押し込まれた状態が作られやすくなるので、縦に間延びしていきます。
タリクや畑など、縦に速い選手の投入もあり、以降はオープン気味な展開に。そうなるとマリノスは、テルとヤンを投入して対応。スピードを重視した攻撃に切り替えるという、カードの豊富さを見せつけました。
スタッツ
sofascore
SPAIA
Football LAB
トラッキングデータ
所感
線で見たときのめぐり逢い
川崎戦は、直前にあった浦和戦とセレッソ戦で『理想を捨てて現実を見る』ことに気付いた相手に負けました。この試合は、川崎戦で『理想を遂行できる力がある』と自信をつけた湘南に勝ちました。
川崎戦のときにも書きましたが、湘南が前節負けていたら違う試合内容になっていたでしょう。なんならスターターにウェリントン、タリク、畑あたりを起用し、長いボールで攻めるサッカーを展開したかもしれません。やはりめぐり逢わせってあるんだなと、強く感じました。
川崎戦では選手たちの勇気を讃え、マリノス戦では選手たちの勇気を責めた山口監督。なんとなくですが、監督が感じる保持することへの熱量と、選手たちが持っている熱量に差があるような気がします。実現可能な範囲で理想を求めないと、うまくチームが回らなくなることがあるかもしれません。集団で1つのことを成し遂げるのは難しいんだなと、改めて思いました。
継続することで成功をおさめる重要性
マリノスは久しぶりの勝利ですね。前節の東京戦に続き、プレスの迫力は増したように思います。きっちり結果も出したので、自信をもって自分たちのサッカーをすることができるでしょう。
この状態が継続できれば、基本的には残りの相手は押し込めると思います。6月末から続いていたうまくいかない大きな要因は、相手がプレスに臆さないところだと感じています。ここが改善されつつあるので、今後の試合は大きな期待を持って見ることができるでしょう。(もちろん相手の特徴もありますが)
【2022 J1 第28節】FC東京 vs 横浜F・マリノス
スタメン
FC東京
- 前節から2人の先発メンバーを変更
- 前節負傷交代したディエゴ オリヴェイラは先発出場
横浜F・マリノス
- 前節から1人の先発メンバーを変更
- 宮市が負傷離脱中
- 外国籍選手人数の関係でヤンがメンバー外
ボールを保持する高さの違い
リスクを冒したくない東京の守備
- ディエゴがアンカー番、ウイングが外切りの中誘導、中央で待ち構えるは3センター
- それに対してボランチ両名がディエゴの脇に下がることは、前回対戦と同じ構図
- 違ったのは中盤の3センターが中々前に出なかったこと
- 奪う位置は下がるが、抜かれるリスクを考慮して選択した守り方
中盤のフィルター維持を目的とした、ミドルブロックを形成する東京。ハイプレスを仕掛けてこなかったため、ミドルサードまでは比較的容易に前進できました。エドゥアルドに対して身体を開いたり、もう少し下がって組み立てを開始するようケヴィンが指示していたことも、組み立てが安定した一因だったでしょう。
東京の3センター前に出るマリノスの選手は、Wボランチとサイドバックの4人。右図では安部が喜田に強くついていった結果、永戸がフリーに。すかさずエドゥアルドが縦パスを刺し込みました。永戸に対して中盤の選手が対応できないので、最終ラインが晒されてしまうことに。このあと安部は、アルベル監督に呼ばれて立ち位置を注意されていました。このことからも、東京は中央を固めることでリスクを低減したかったことが伺えます。
中央が固められているなら、サイドに人をかければいいじゃない。そうした考えのもと、マリノスはサイドから攻勢を仕掛けます。特に目立ったのは、西村とジョエルがサイドに顔を出すこと。今までは均等に選手を配置する意識が高かったですが、この日は密集することも。その成果は、主に2点目に表れていたと思います。
プレスの勢いと、繋ぐための勇気
- スライドするスピードが速く、寄せの迫力があるマリノス
- 東京の選手は素早い判断と、狭いところでボールを扱うスキルが求められる
- 前進させるための勇気が中々持てず、後方へ下げてしまう場面も
- しかし相手がいなくなった所へ入り込み、かわして前進できることもあった
ここ最近ずっと書いているのですが、ハイプレスをいなされることが依然としてマリノスの課題の1つです。解決方の1つとしては、守備の方向付けが挙がるでしょう。この試合では、レオや西村に『サイドを限定する意思』を少し感じました。しかしこの側面は薄く、どちらかというと寄せと判断を速くする脳筋寄りな方向でアプローチ。ACL神戸戦も前に人をかけることで好転したので、強度を上げる方向性だったのでしょう。
Q、チームとしての課題はどう感じていますか。
A、前半は相手のプレッシャーに対して、前が見えていなかったかなと思います。みんな顔は出しているんですが、相手の圧に負けてバックパスが多くなって、マリノスもそれがスイッチになってプレスが速くなりました。それが前にいけなかった原因かなと思います。ただ、距離感が悪かったとは思っていません。センターバックとの距離が少し遠いところはありましたが、サイドバックに入ったところでうまくワンタッチであてて入っていけた場面があったので、そこは課題かなと思います。
Q、ポジティブに感じている部分を具体的に教えてもらえますか。
A、前半戦に日産スタジアムでの試合よりもボールをつないで前進するというところはできていると思うのでそこはポジティブにとらえています。これを続けていくところとこれを勝ちにつなげていくというところをチャレンジしていきたいです。
塚川や東のコメントより、勢いを持ったプレスが効果的だったことがわかります。積極的なプレスを行うことで、マリノスらしいアグレッシブさを取り戻せたように感じました。ただ後半はプレスが緩んだので、どうやって継続するかが課題でしょう。
しかし、東京は全く繋げなかったわけではありません。右図のように、空いた箇所に顔を出してマリノスのプレッシャーを回避することも。
まだ我々は、しっかりと連動してボールとともに前進するところに課題を抱えています。当然シーズンスタートの数試合は、大きなリスクをおかしたくないがゆえに、適切な距離を保たずに長いボールをシンプルに入れて前進することを容認していましたが、今は良い距離感でボールとともにチーム全体が前進することを期待しています。前半はそれがなかなかできない展開でした。
マリノスのプレスに苦しむからといって、安易に長いボールを蹴るわけではない。今は繋ぐことを醸成するフェーズだということが、アルベル監督のコメントから伺えます。J1で屈指のプレス強度を誇るマリノスを相手に、ある程度繋ぐこともできた。これは選手たちの自信になるでしょう。
徐々にリスクを冒して成果を得る
- 前に出なかったディエゴが、高丘まで寄せてくるように
- それに連動し、中盤も前に出て相手を捕まえる
- 前半に比べ、リスクを冒して前に出てきた東京
- これにより、試合がオープン気味な展開になる
後半になると様相が一変。前に出てこなかった東京が、積極的なプレスを仕掛けるようになります。マリノスは面食らった形になり、セットプレーから失点。この方法で押し切れると確信した東京は、3枚替えを敢行。再びセットプレーから加点し、追いつくことに成功します。
前半リードしている状態で、相手がリスクを負って仕掛けてきた。相手の勢いを真正面から受け止め、追いつかれてしまった様は浦和戦を思い出します。そのときの違いは、後半頭から遮二無二攻めてきたわけじゃないこと。変えた方針が効果的かどうかをテストし、問題がないことを確認。その後に選手を替えて攻勢に出る。こういったフローを踏めたのは、2点差だったからでしょう。
段階を踏んだもう1つの理由は、選手交代が守備力の低下を招くから。ディエゴはコースを限定する守備が得意な選手。しかし交代したフェリッピやアダイウトンは守備が苦手。もし、選手交代した上でのハイプレスがハマらなかった場合、前半のようなミドルブロックに立ち返ることが難しくなります。背水の陣を敷くのではなく、石橋を叩いて渡るあたりにも、アルベル監督の慎重な性格が表れていると感じました。
東京の誤算は、塚川が足をつったことでしょう。可能なら攻勢を続けて勝ち越したかったけれど、中盤のキーマンを失うことに。選手たちの体力面も考慮した結果、受け身に回る時間が増えることを予見して木村を投入。3バックに変えたため後ろに重くなりますが、守備は安定することに。
Q、最後の15分ですが、塚川選手に代えて木村選手を投入しましたが、そこで3バックにしたように見えました。あそこから押し込まれたように見えましたが、どのように感じますか。
A、(前略)アウェイでの対戦を思い出してほしいと思います。同じようなメンバーで戦っても、なかなか良い形で対応はできていませんでした。試合終盤にマリノスのサイド攻撃に苦しむであろうことは十分に予想し、警戒していました。相手の武器であるクロスに対応するための修正でしたし、前線にアダイウトンとルイス(フェリッピ)を残すことによって、そこからのチャンスというのも狙っていました。実際に決定的なチャンスが生まれていました。常にボールを保持したいというのは理想的な形です。しかし、チームはまだそれができるまでに成長できているわけではありません。私は常にリアリスタ(現実主義者)であるべきだと思っています。現実を見なければいけません。
理想を追い求めたからといって、必ず勝点3を得られるわけではありません。チームが今できることをやり、その上で勝利という成功体験を積み上げることがスタイルの醸成を助ける、という考えなのでしょう。アンジェとは重きを置くポイントが違い、そこが面白いです。やはり考え方は十人十色なんだなと、改めて感じました。
スタッツ
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SPAIA
Football LAB
トラッキングデータ
所感
前を向いて"一緒に"駆け抜けていこう
この試合におけるトピックの1つとして、追いつかれたときの円陣が挙げられるでしょう。2点差を追いつかれたマリノス。選手たちは自信をなくしたり、巻き返そうとする焦りも出るはず。その結果、各々が向いている方向がバラバラになり、組織として戦えなくなることも。
言うまでもなく、サッカーはチームスポーツです。攻めるにしろ守るにしろ、同じ絵を描けている人数が多いと、効果的に物事を運びやすくなります。失点後に作った円陣は、全員で同じ方向を向いて一緒に勝利へ突き進む大きな助けになったでしょう。我らがキャプテンは、1つにまとまることの重要性を誰よりも理解しているのかもしれません。
試合内容についても、ポジティブな面が多く見られました。攻守において果敢なプレーが目立つのは、かつての勢いを彷彿させます。やっていること自体は今までやってきたことですが、それを相手に応じて柔軟に切れることを目指しているのだと思います。後半になってやり方を変えた相手に対応できれば満点でしたが、さすがに一発で回答できるほどJ1は甘くありませんでした。それでも悲観することはありません。優勝がなくなったわけではないですからね。前向きな姿勢が十分見れました。これからに大きく期待しましょう。
【2022 J1 第24節】川崎フロンターレ vs 横浜F・マリノス
スタメン
川崎フロンターレ
- 前節から2人の先発メンバーを変更
- 山根視来、小林悠、佐々木旭が復帰
- 多くの選手が負傷などにより離脱中
横浜F・マリノス
- 前節から2人の先発メンバーを変更
- 宮市が負傷離脱中
最小限の労力とリスクで、最大限のリターンを
マリノスの守備でハイスピードな試合にはならず
- マリノスの守備は中間ポジションから捕まえるという手順を踏む
- 相手を掴むまでにある程度の時間がかかる
- この試合ではトップ下がシミッチ番をしていたので、前線のプレス人数が減る
- 後方から人を割く必要があるので、スライドにかかる時間が多くなることに
- シミッチは捕まってることを利用して、スペースを作ることも
- 川崎としては、シミッチが塞がれることは想定内のことだった
ゴールキーパーまで下げることだったり、相手サイドバックへのスライドに時間がかかることは、広島戦と鳥栖戦で書いているので省略します。
この試合のポイントは、トップ下がシミッチ番をしていたこと。相手のアンカーを捕まえるということは、前に寄せる人数が1人減ることに。相手最終ラインにはキーパーとセンターバックの3人がいるので、アンロペ1人では手が回りません。その分を補うのはウイングの選手になります。さらに彼らの後方をカバーするのはサイドバックやボランチ。といった具合に、後方から前にスライドして補う形。
ボールに近い前線を削って後方からプレスにいくので、相手に寄せるまで距離がある状態です。つまり、プレッシャーをかけるのにいつもより時間がかかります。ボールの扱いに長けた川崎にとって、相手をかわすのに十分な時間と空間があったでしょう。結果として、今まで以上にプレスをいなさることに。この試合も、守備によって試合のペースを大きく早めることはできませんでした。
トップ下を前に出して人数を増やし、遮二無二プレスをすることで早いプレーを強いることはできたかもしれません。しかしそれをやらなかったのは、鳥栖戦の失点があったからでしょう。リスクを負って試合のペースを引き上げることはせず、後方が崩れないことを優先。この守備のやり方はルヴァン杯の広島戦でも実践してましたので、強く意識しているのだと思います。
緊急事態下にある川崎は、なるべく試合の強度を上げたくない。マリノスとしても、後方が崩れるリスクは避けたい。双方の思惑を重ね合わせた結果、試合スピードが劇的に上がることは少なかったです。つまり、マリノスの守備によって試合スピードが上がらなかったのは、必ずしも悪いことだったわけではないのでしょう。
原点回帰なのかもしれない
- 4-1-4-1のミドルブロックで、広く守る川崎
- サイドにボールが入ったとき、素早く圧縮して囲い込む形
- 横幅広く守るので、サイドを変えられても素早く対応できる
- 広く守る相手に対する解決策の1つが、手薄な箇所に密集して人数をかけること
- 西村より行動範囲が広いという、マルコスの特徴が活かされることに
川崎がミドルブロックを組んだのは、コンディション面が主な理由でしょう。しかし中盤で5レーンを埋められた相手に、マリノスは攻めあぐねてしまいます。出てこないし動かないので、どうしても攻撃のスピードが上がりません。低めの4-1-4-1ブロックに手こずる様は、19-20プレミアリーグのワトフォードvsリバプールを想起させました。気になる人は以下を読んでみてください。
広く守る相手への解決策として、密集することが挙げられます。こちらも合わせて広がるとマークを掴まれやすいですが、人数を増やすことで相手を攪乱することが可能に。サイドに流れて数的優位を作るのはマルコスの十八番。上図のようにボールを受けることで、局所的に有利な状態を作ることができました。これは既に自分たちが持ってる崩しの形ですよね。しかし、この試合は別の方法も模索しているように見えました。
- 素早い動き出しで、一瞬相手のマークを外す
- 周囲の選手が適度な距離を寄せ、パスコースを創出する
- ボールが出たら、また周囲の選手が適度な距離を寄せてパスコースを作る
- 長い距離を走り続けるのではなく、各選手が瞬間的に素早く動くことを繰り返す
- 味方との繋がりを素早く、連続して持ち続けることで突破を図る
- ただし相手に狩り所と設定されている場所では、瞬間的な動きによる優位性を取りにくい
ポイントは、各選手が長い距離を走り続けるのではなく、短い距離を瞬間的に駆けるということ。こうすることで、ピッタリとマークしている相手を一瞬出し抜けます。そのわずかな時間と空間があるうちに、周りの選手も瞬間的に動いてパスコースを創出。これを繰り返すことで、大きく動くことなくボールを運ぶことにチャレンジしているのだと思います。
5:50 のように龍太が大きく動いた場合、ボールを持つ仲川に関われる選手は彼のみです。万が一仲川のパスが引っかかった場合、広大なスペースを相手に渡すことに。一気に局面を進められるのはメリットですが、使うスタミナが多いことと、ロスト時に味方が少ないことがデメリットです。
その反面、瞬間的な動きのみでかわした場合は全力疾走する時間が抑えられます。(しかし連続して動くので、スタミナ消耗は長い距離走り続けるよりはマシ、といった程度でしょうが…)またボールホルダーの周囲に味方が多いので、ロスト時に相手を囲い込む守備がやりやすくなることに。守備時は極端に速く動かなかったマリノスですが、ネガトラ時はものすごい速度で相手に寄せていました。これも狙いの1つだったのでしょう。
つまり、大きく早い展開から細かく素早い展開に切り替えようとしているように感じました。これは去年後半にあったセレッソ戦や、浦和戦に通ずるものがあるでしょう。ある意味、ケヴィンの原点回帰なのかもしれません。
大きく早い展開だとボール保持者にスペースを与えられますが、それが活きるのは独力で突破できる場合。前回の所感にも書きましたが、ルヴァン杯で起用された水沼と海夏はそういうタイプではありません。周囲のフォローが必要なので、鹿島戦で書いたように、段階を踏んで前進する必要があります。なので起用された中盤やディフェンスの選手たちは、機動力に優れた選手が多かったのだと思います。実際攻撃がうまくいったのは、選手たちの距離が遠すぎないときでした。
もちろん、そこに固執するわけではありません。相手が早い展開を望むのなら、それに乗っかりましょう。前節の鹿島戦はそういった形でした。この試合は、素早い展開の方がやりやすいという例外でした。
攻め方を変えようと思った理由は、いくつかあるのでしょう。宮市&仲川のセット投入ができなくなったこと。真夏の試合で長く強く走り続けられないこと。動きすぎて危険なスペースを作りたくないこと。相手に対策されているので、アップデートが必要なことなど…とにかく、次のステップに向かうための変化が要求されてるのです。
しかし、瞬間的に力を使うことにまだ慣れていません。『素早く動くこと = 縦に早いこと』というのが未だにこびりついている状態。今までの概念や慣習を打ち砕かなければいけないのは、昨季後半にあった浦和戦と同じ。最後に笑っているため、シーズン中に越えなければいけない壁に差し掛かっているのだと思います。
スタッツ
sofascore
SPAIA
Football LAB
トラッキングデータ
所感
サッカーって楽しい
最近、サッカーを見て楽しいと思うことが減っていました。互いの思惑がフィールドに表現され、それがぶつかりあった結果が合理的になる。試合のレベルが上がるほど、どういう状況が見えやすくなるし、予測を裏切らない。「あー、そうなるよね…」という感想しか出ず、エキサイトすることがほとんどありませんでした。理詰めで動く様は、チェスや将棋を見ている感覚にかなり近かったです。しかし直近の2試合はすごく楽しかった!
予測した展開を上回る事象。それが起きた要因は、互いの勝ちたいという気持ち。さらに、スーパープレーから生まれる素晴らしいゴールの数々。理屈じゃなく、人の気持ちで結果が決まった試合だと感じました。
恐らく、自分が見る目が冷めていたのだと思います。福岡戦の敗戦がきっかけでしょうね…けれど、また熱い心をいくばくか取り戻したと思います。それが負け試合というのはどうかと思わなくもないですが、そんなものなのでしょう。またサッカーを目一杯楽しんでいきます!