hiro's football report

国内外、カテゴリー問わなずサッカーのマッチレポート風なものを掲載

【2022 J1 第11節】浦和レッズ vs 横浜F・マリノス

スタメン

浦和レッズ

  • 前節から2人の先発メンバーを変更
  • 大畑、酒井、犬飼が負傷で離脱中

横浜F・マリノス

  • 前節から5人の先発メンバーを変更
  • エウベルが負傷で離脱中
  • 岩田が負傷から復帰してベンチ入り

リスクをかけたくない浦和

リスクを減らすための振る舞い

  • 前を向いてる状態でも、フォワードの背後へ放り込む頻度は低い
  • 2失点したあと、関根を下げて5レーン全てを塞ぐようになる
  • いずれも試合のテンポを落としてクローズドに進めたかったことが伺える

 ロングボールを多用せず、地上戦を仕掛ける。守備変更がハイプレスではなく、最終ラインを埋めること。双方ともマリノスのスピードや技術力など、個の質を発揮させないための方策だったように思います。関根を下げたのは、去年のアウェイ浦和戦田中達也を下げたことと同じアプローチでした。

(試合終盤、西川周作選手がパントキックを蹴った場面があったが、西川選手がパントキックをつなげてシンプルにゴールを狙うような場面はしばらくつくり出すことができていない。その一つだけでも観客は沸くと思うし、得点機会も増えると思うが?)
「そうではない、とは思いません。我々もああいう状況はあったかもしれませんが、あのときにああいうふうにリスクを冒す場面もあったり、ときには2トップが前線にいて背後に出たり、そういう縦に速くするところも必要でしょうし、今日のようにリスクを冒しながらプレスに出ていくところも重要だと思っています。その考えについては決して悪くないと思いますし、そのように我々が、勝つためにリスクを冒してやっていくことも必要だと思っています」

 監督会見で、「リスクを冒す」という言葉が多く出ていることが印象的でした。ときには危険を承知で行動しなければいけないが、常時そうであるわけにはいかない。後半は点差が開いてしまったので、勝つために実行したという意図が伺えます。つまり、前半の戦い方で相手を上回ることが本懐だったのだと思います。

遮二無二攻めなければいけない状況に

  • 裏を狙ったフォワードにロングボールを入れる頻度が増える
  • ミドルブロックでなく、前から人を捕まえるハイプレスに変更
  • 3点差を返すためにリスクを冒す形になる

 浦和は後半から背後へのロングボールや、ハイプレスを敢行。これに加え、関根やモーベルグサイドバックで起用。なりふり構っていられない状況だということが、強く伝わってきます。

 3点差を返すのは並大抵のことではありません。そういった状況でも後半からメンバーを替えなかったのは、変更したやり方が効かない場合の保険だったのかもしれません。こういったことからも、リスクを嫌う監督だということが伺えます。

 積極的なプレーを実行するので、選手たちがリスクを冒す勇気を持てるかが重要になります。3点差もつけられると、選手たちは意気消沈するはず。その心を奮い立たせ、戦えるように導いたリカルド・ロドリゲス監督は優秀なモチベーターなのだと思います。それはスタジアムでの熱い振る舞いからもわかりますよね。

--前半は厳しい展開だったが、アップしながらどう試合を見ていたか。

本当にサッカーというのは流れがあるスポーツで、前半は難しい時間でしたが、ハーフタイムでは誰も折れていなかったですし、いろいろな意見を出し合っていたので、もう1回息を吹き返せるなと思っていました

 松尾がこのようにコメントしていました。下を向いて黙るのではなく、状況を打開するために意見を出し合っていたようです。今の浦和は非常にいい状態なのだと感じました。メンタル面の成熟も、チームを作る上で重要な要素です。選手、監督共に考えて前へ進もうとしているのでしょう。こういった姿勢が3点を返す結果を生み出したのかもしれません。

自分たちのサッカーをしてリスクの低減を

ケヴィンが目指すサッカーの解釈

 前節の湘南戦にも書いたのですが、ケヴィンのサッカーはリスク低減を目指しています。ピッチ上では、敵陣で自分たちがボールを保持し続ける、という形で表れているでしょう。自ゴールから遠い場所にボールがあれば、失点する危険性を下げられるからです。

  • 明らかに優位な状況でないのなら、無理に攻めず保持に切り替える
  • ボールを失ったら、近くにいる選手が素早く寄せて即時奪回を狙う
  • 手薄な箇所にボールを入れると、パスが繋ぎにくくなる
  • 即時奪回も狙いにくいので、ハイラインが高いリスクになりやすい
  • 無理せず繋ぐことで、敵陣で保持する時間を増やせる
  • 左右に振ることで相手を走らせることもできる

 マリノスはスペースを作るため、選手たちがポジションにこだわらず立ち位置を変えます。つまり、繋ぐためのアプローチが選手の移動になるのです。選手が動かなければリスクの低減に繋がりますが、そういうやり方をしたことがないです。練習でやっていないことをいきなり実践できないですよね。なので、リードを守り切るために動かないという選択肢はありません

 では、リスクを低減するにはどうすればいいでしょうか。素早く攻めて選手間の距離が広がれば繋ぎにくいですし、即時奪回のための囲い込みも難しくなる。つまり、コンパクトな陣形を敷きつつ、敵陣方向への圧力を強めることが求められます。パスを繋ぐために動き回るデメリットが、即時奪回で薄まることに。

 なので前線の強度を維持することがチームの安定に繋がります。前線4人を入れ替えたのは4点目を入れるためと共に、ハイプレスの強度を保ってリードを守るためでもあったでしょう。

 しかしハイプレスがそこまで激しくなく、攻撃も速攻が多くなります。オープンなときに素早く攻めるのは、アンジェ時代に良く執られている方法でした。ここに引っ張られすぎるのは、ケヴィンの意向に沿わない部分だと思っています。

 結果として敵陣で過ごす時間は前半より減ることに。前述した通り、点を取るにもリードを守るにも、敵陣に居続けることが今のサッカーで求められます。その土台ができていないので、4点目を取っていればとか、リードを守り切ればとか言える状況ですらなかったと感じました。(あくまで筆者の一意見です。他の受け止め方もたくさんあると思います。)

うまい試合運びとは

  • どんなプレーにもメリットとデメリットがある
  • 状況に応じてリスクリターンを考えて、都度行動を選択しなければならない
  • 試合状況によって最適な行動を選ぶことが、うまい試合運びと言えるのではないか

 マリノスは選手が動くことで、メリットとデメリットを享受します。なので、いつどこに動くかが試合運びに繋がることに。上図は極端な例ですが、左はビハインドのとき、右はリードしているときに取りやすい行動でしょう。言葉を変えると、追加点を狙う場合は左ですし、失点を防ぐ場合は右のように動くことに。

 では、動いただけでその通りのプレーができるでしょうか。パスがこないとダメですよね。サッカーはチームプレーです。お互いが共通認識を持たないと思い描いたプレーができません。

 浦和戦の状況を思い描いてください。ユンカー得点後の1-3だとしましょう。2点リードしている状況で、あなたは点を取りにいきますか?それともリードを守りますか?

攻撃に入った時点で、ゴールに向かいすぎる部分があった。敵陣でもう少し相手を動かせれば、相手も嫌だったと思う深く攻めたときに、一回我慢して、敵陣で握る時間を後半増やせたら、もう少し楽だったかなと思います。

 こちらが皓太のコメント

きのうの試合から学ぶべきことは、3―1の状況から出て、そこから4点目、5点目を取りに行く姿勢をもっと見せるべきだった。失点はしないというのが大前提だったので、チームを全体的にコンパクトにして、もっと(スペースを)閉められるようにした方が良かったかなと思います

 こちらが岩田のコメント

 敵陣で時間をかけるべきか、それとも速攻で早く攻めるのか。コメントだけだと、皓太と岩田が同じ絵を描いているかがわかりません。人の考えや意思は、そのくらい曖昧なものなのです。

 なので気持ちを合わせるためには、声掛けが重要になります。どういうプレーを自分がしたいのか。周りにどういうプレーを求めているのか。試合中でもいいですし、試合後の振り返りでも構いません。今回の試合でどうすべきだったかをすり合わせ、こういうときはこうやろうと話し合えればいいと思います。小さな積み重ねがやがて大きなものを得る力になるはずです。

スタッツ

sofascore

www.sofascore.com

SPAIA

spaia.jp

Football LAB

www.football-lab.jp

ラッキングデータ

www.jleague.jp

所感

試合の反省を形に変えられると信じて

まだまだ未熟だということです。ゲームの流れを読む力も、ゲームの運び方も、チームとしての未熟さが出ました。マリノスの勝利を信じてくれた人に対し、申し訳なく感じています。ただ、見せたいのは謝る姿や下を向く姿ではありません。見せたいのは立ち上がる姿です。選手は全員、悔しいし、ふがいない気持ちでいるけど、その気持ちに圧しつぶされるのではなく、それでも前を向いて立ち上がる強さを見せたいです。

  うまい試合運びをする上で、個の判断は重要です。そして同じくらい、チームとしての意思統一も大事になります。マリノスには様々なタイプのリーダーがいるので、この試合を必ず糧にしてくれると信じています。

 結果3-3の引き分けになりましたが、これもチームを1つ大きくするいい経験になったのではないでしょうか。新しい選手も多く加わり、認識を合わせることが難しくなっています。そのすり合わせをきちんと行い、次節の福岡戦で改善に向けたアプローチが見られることを期待しています。