hiro's football report

国内外、カテゴリー問わなずサッカーのマッチレポート風なものを掲載

【2021 J1 第36節】浦和レッズ vs 横浜F・マリノス

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スタメン

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浦和レッズ

  • 前節から2人の先発メンバーを変更
  • ユンカーと小泉がメンバー外

横浜F・マリノス

  • 前節と同じ先発メンバー
  • 健勇がレンタル契約条項により、メンバーに入れず
  • 代表帰りの大然が先発

幅を取ることと、密集することの特徴

幅を使うがゆえの難しさ

 ピッチの横幅を目一杯使うのがマリノスのサッカー。この試合も選手たちが幅を取りますが、そうすることで得られるメリットもデメリットもありました。

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  • ピッチ横幅を一杯に使った広い攻撃ができる
  • 相手のブロックを横に広げ、隙間や空間を作り出すことができる
  • サイドバックが幅を取る場合、ボランチ付近に空間が生じる
  • ボランチも縦横無尽に動くため、中央に誰もいなくなることがある
  • 攻守がひっくり返った際、中央という致命的な箇所にスペースが生まれる

 広く攻めようとするマリノス。仲川が幅を取って、空けたスペースに小池が走る。というシーンが何度も見られました。相手を広げることが、横幅を使って攻撃する主なメリットになります。

 この日の守備はスピードにものを言わせたハイプレス。浦和はキーパーを交えて繋ぐので、マリノスの前線は高い位置まで進出します。そうなると中央に広大なスペースが生まれることに。これを何とかするのはボランチの2人です。

 それに加え、この日はエウベルが幅を取らず内側にいることが多かったです。なので、代わりにティーラトンが幅を取っていました。しかし、こうすると守備時に中央を守ることが難しくなります

 これら2つが合わさり、この日のボランチ広大な空間を守るだけの運動強度とスピードが求められました。喜田は両方満たしていますが、扇原はスピードが不足しています。その結果、中盤がスカスカになることが多く、中央を起点にしたカウンターを多く受けることに。広く攻めるということは、それだけ広い範囲を守らなければいけないことに繋がるのです。

密集して戦うことで隠れる苦手

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  • 攻撃時に密集しているので、相手に奪われても即時奪回しやすい
  • 味方が一直線上に並びやすくなるので、3オンラインを引き起こしやすい
  • 狭い空間でプレーできるだけの高いボールスキルが求められる
  • 常に攻守の切り替えを素早くしなければいけないので、体力の消耗が激しい

 密集して戦う場合は攻撃時に人が集まっているので、相手にボールを奪われてもすぐに囲い込めます。左図のシーンが顕著で、何度もボールを引っ掛けて攻守が入れ替わっていました。こうなると、広いスペースを守る回数が減ります。扇原が苦手にしていることが隠れますよね。

 また、選手たちが一直線に並ぶ3オンライン状態が作りやすくなります。右図はマルコスがポスト直撃のミドルを撃てましたが、これはショルツが仲川を離せなかったから。もしマルコスについていったのなら、空いた仲川に折り返せば同じく決定機だったでしょう。

 しかし狭い空間でボールをコントロールする技術が求められるため、攻撃の難度は跳ね上がります。ここに気を遣いつつ、攻守の切り替えを素早くし続けなければなりません。心身共にかなり消耗するやり方になっています。

真逆のサッカーを求められる

ケヴィンが求めるもの

 幅を取った攻撃と、密集した攻撃の特徴を見ていきました。この日の先発から考えると、ケヴィンが求めているのは後者でしょう。途中交代で仲川を替え、エウベルを残したことからも伺えます。

 今までの選手起用から、ケヴィンが志向しているのは常に敵陣でプレーすることだと思っています。敵陣に押し込み続ける攻撃。奪われても即時奪回してマイボールに。これを実現するには幅を取るより、密集する方がやりやすいでしょう。

 セレッソ戦では、サイドプレーヤーの水沼を中央で起用しました。いくら外に流れるからといって、大外までの移動には時間がかかります。それがハーフレーンでいいのなら納得度も上がるでしょう。

 また札幌戦のように、後半から岩田をボランチにすることもありませんでした。これらのことから、ケヴィンは狭い空間でサッカーをし、常に敵陣に居続けることを目指しているのだと思います。

--悪い内容ではありませんでした。ただ、8点で大勝した前節・FC東京戦と比較すれば、波を感じてしまいますが、どう受け止めていますか。

前節に比べて波があるように見えたと仰いましたが、スタートが良かった中、自分たちを信じられなくなったときに崩れ始めました。一方でチャンスを作れた感じもあります。ボールを握っていましたし、良い場面もありました。ただ失点してしまうと難しい状況になります。自分たちを苦しめることにもなります。相手に自信を持たせてしまったり、相手が勢いづくと苦しくなります。

 このケヴィンのコメント。自分たちを信じられなくなったときというのは、もしかすると幅を使って攻めだしたことを言っているのかもしれません。それによって中央にスペースが生まれ、カウンターを許しやすくなってしまった。良い場面というのは、近い距離間でボールを動かせたことかもしれないです。

今までのサッカーが足枷になるかも

 今までは幅を使ったサッカーをしてきました。これこそマリノスのサッカーだ。という固定観念を自分も持っています。そうなると、密集した攻撃をすることに抵抗を感じるかもしれません。

 しかし、マリノスのサッカーは立ち位置で優位を取り、相手を圧倒するものだ。という原則を認識しているのなら、密集に適応するハードルも下がるでしょう。恐らく、古くからチームにいる選手たちは信心深いので、固定観念が外れにくいと思います。

--これまでも警戒され、これからも警戒されるはずです。ワンランク上に行くためには何が必要ですか。

自分で打開するのも1つの手ですが、今日に関しては相手が引いている中で幅が使えていませんでした。中にクサビをつける場面が多く、ショートカウンターにつながってしまいました。正直、自分たちが焦れてしまいました。

 ケヴィンが密集したサッカーをしたいと捉えた場合、仲川のコメントはかなり引っかかります。 もしかすると、日々のトレーニングでケヴィンの志向が伝わってないのかもしれません。恐らくアンジェと同じく、具体的なことは伝えてないのでしょう。となると、選手たちの感じ方が肝になります。チーム内で話し合いをしないと、個々で認識がズレたまま試合をすることになってしまう可能性があるかもしれないです。今一度、自分たちのサッカーを見直すときなのかもしれません

密集攻撃の発展性

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  • 密集するというのは、あくまで横幅の話
  • 相手を縦に間延びさせることは効果的なので、大然が中央で起用されている
  • 高さを使うのも有効なので、健勇みたいな選手は重用されるかも

 ただ密集するだけだと、自分たちが動いたりパスする空間も削れてしまいます。その解決策として、相手を縦に広げることが挙げられるでしょう。縦に伸ばす分には後ろが前に出れば即時奪回できるので、大きなデメリットになりません。最近レオでなく、大然が最前線で起用されているのはこれが理由かもしれないです。

 上図は、大然の裏取り効果が出た場面になります。このとき仲川が内側にいれば山中に選択を突き付けられたので、決定的なシーンを作れたでしょう。しかし、それを差し引いてもケヴィンの理想を表現できた場面だったと思います。

 また、高さを使うのも有効でしょう。上を使っても2次元的な空間は広がらないので、スペースは変わらないです。ヘディングからの落としだったり、クロスを頭に合わせるなど。健勇のような選手は、今後ニーズが増す可能性があると思います。

スタッツ

sofascore

www.sofascore.com

SPAIA

spaia.jp

Football LAB

www.football-lab.jp

ラッキングデータ

www.jleague.jp

所感

原則の理解が問われる

 敵陣でずっと俺のターンがしたいケヴィンにとって、密集がその理想を押し上げることになるはず。という元の内容でしたが、あくまで筆者の妄想です。こういう捉え方もあるかな?くらいの認識でいていただけたらと思います。

 しかしその方向性で考えると、アンジェに心酔していた選手ほど苦戦するかもしれません。そうだったとしても、アンジェ、ひいてはエリクがくれたものの原則を理解している選手は問題なく適応するでしょう。物事の捉え方と、その応用のさせ方に柔軟性が問われています。

 短い期間でそれを覆すことはできないはず。そうなると、選手起用による無意識の反応を引き起こす方向になるのかなと。残り2試合ですが、そういったことにも注目しながら見ていきたいと思います。