【2021 J1 第17節】横浜F・マリノス vs 清水エスパルス
スタメン
横浜F・マリノス
- 前節から2人先発を変更
- 喜田と水沼がベンチ入り
清水エスパルス
- 前節から1人を先発変更
- 布陣も4バックから3バックに変更
ルヴァン杯を踏まえて
今回の1戦を語る上で外せないのが、直前にあったルヴァン杯のグループリーグ戦。マリノスが5-1の大勝をおさめたことを頭に入れておくべきでしょう。うまくいったマリノスはそのまま。そうでなかった清水はやり方を工夫してくる。こう考えるのが妥当ですよね。では、その振り返りも踏まえて見ていきましょう。
マリノス側からの視点
- 両翼がMF寄りの選手たち
- ボランチは守備力より広範囲を動き回れる選手を起用
- サイドバックも決まった位置以外を多く取る選手が出場
- 結果として流動的に敵陣内を動き回ることに
- サイドで数的優位を得ることでゾーンディフェンスを破壊
この試合は両翼に樺山と水沼、ボランチに天野と皓太、サイドバックに小池と和田という面々でした。どう考えてもこの人たちオリジナルポジション守りませんよね!?という印象を受けますが、実際その通りになりました。
独力での突破というより、周りと連携して動き回りながらいい立ち位置を取る。こうすることで相手に的を絞らせない攻撃を展開します。また、サイドに人を多く割くことでマークを攪乱。動き回ることと密集で、清水のゾーンディフェンスをこれでもかというほど破壊。大勝をおさめました。
- 両翼がFW寄りの選手たち
- ルヴァン杯でうまくいった流動的なポジショニングを得意としてる選手を起用
- もちろん大分戦で好パフォーマンスを披露したことも込み
- ルヴァン杯ほどの流動性はなく、個で解決することが多い
ルヴァンとの違いは主に両翼にあったでしょう。フォワード色がより強くなるので、スピードを活かした独力での攻めが目立つようになります。先制点なんかまさにその典型でしたよね。
また、ルヴァン杯での成功があったので、小池、皓太という流動的に動ける選手を起用。このあたりは大分戦でいいパフォーマンスを残したことも関係あるでしょう。
しかし今季のマリノスはリスクヘッジを考え、ポジションを変えて攻めることはあまりしません。(このあたりはFC東京戦のレビューと、ルヴァン杯清水戦のツイキャスでお話してますのでご参考に。)こういった背景があったことと、大分戦の疲労からか、相手の陣形をグチャグチャにするまでには至らず。背後へ抜け出す方が回数として多くなりました。
早い時間帯に先制点を奪ったこともチームが落ち着いた要因の1つだったでしょう。決して悪くはなかったのですが、圧倒したかと言われるとそこまでではない。といった試合展開でした。
清水側からの視点
- ゾーンディフェンス基調の4-4-2で臨む
- 流動的かつ人数をかけた相手にゾーンがズタズタに
- 後方の手が足らず、プレスバックが多くなる
- 全体として自陣に押し込められたので、反攻しづらい
清水はいつも通りの形で臨みましたが、マリノスの流動性とスピードに圧倒されてしまいます。動く相手を捕まえられず、人数もかけてくるのでゾーンでは対応しづらい状況に。後方の人手が足りなくなり、前線の選手がプレスバックすることも多かったです。
後ろ向きな守備が増えた結果、自陣に押し込められる形に。こうなると攻守が入れ替わっても前に人がいないため、独力でなんとかしてもらいたいです。しかしディサロにそこまでの力はなく、槙人や岩田に屈することに。こういったこともあり、一方的にやられてしまいました。
- 4バックではなく3バックでスタート
- ウイングバックがウイングを捕まえることは明確
- 他は前にいる人を捕まえる守備へ変更(ゾーン要素が薄まる)
- プレスバックする頻度が激減し、前線に人が残ることに
- 攻守が入れ替わった際、前進ルートの選択肢が増える
この試合は布陣変更が目につきました。4バックから3バックに変更。これはルヴァン杯を踏まえ、かつマリノスがリーグ戦でどのように選手起用をしているかを加味した結果だと思います。
大然、エウベル、仲川はスピードを武器に背後へ抜け出すことが多い。そこにしっかり人を充てたいのでマンツーマン気味にする。そうなると中央3レーンを守る必要があるが、マリノス相手に4バックでは足りなかったので3枚あてがう。こういった理由から3バックだったのでしょう。
そして布陣だけでなく、守り方も変えてきました。そちらを見てみましょう。
- 5-3-2でブロックを形成
- ウイングバックは相手ウイングを捕まえる
- それ以外の選手は前にいる選手へ出てアプローチする
- フォワードのプレスバックは控え気味
- なので攻守が切り替わったとき高い位置から攻撃ができる
- 押し込まれ続ける状況を回避できる
守備のテーマとしては前向き守備になります。自分の前にいる相手に出ていって捕まえる。これをほぼ全ポジションの選手が実行。下がる守備ではないので、押し込まれる頻度が減少。攻撃に切り替わったときも攻めやすくなります。
前線のプレスバックが少ないことも特徴でした。特にカルリーニョスがボールをおさめて前進することが多かったですよね。それは下がりすぎない守備があったからだと思います。
唯一プレスバックするのは中盤の選手たち。とりわけ両脇の選手たちは激しい上下動をしていました。前に出る守備陣と挟み込む意図もあったのでしょう。その代わり、ここは最も消耗が激しいポジションに。
例えば、マルコスが下がって福森を引っ張る。入れ替わりで皓太が上がってスペースから抜け出してシュート。人につく守備なので、前向き守備を利用することもできたでしょう。ただ大分戦での疲労と、リスクヘッジをする今季リーグ戦の試合からか、ボランチの飛び出しは控えめでした。これも清水が強きに守備できた要因の1つだったでしょう。
スカッドの差が分けた勝敗
選手交代の影響を受けるチームは…
試合が進み、互いの選手に疲労が見えるようになりました。両チームとも選手交代を行い、優位に試合を進めようとします。マリノスはレオ、仲川、天野を投入。対する清水は、消耗の激しかった中村に代えて河井、また2トップを中山と鈴木唯人にしました。双方とも前線の選手が変わることに。
当然、選手が変われば得意なことも変わります。それにも関わらず、マリノスの攻撃は大きな変化がありませんでした。ゴールへ迫る過程は変わりますが、崩すエリアや人が入る箇所は同じです。しかし、清水は変える必要に迫られることに…
交代したカルリーニョスやチアゴ・サンタナとはフィジカル的な強さが大きく異なるため、無理が効かなくなることは想像しやすいでしょう。それに加え、得意なエリアが変わるので攻める場所も変わります。
左図はうまく両者の特徴が活かせた飛び出しだと思います。しかし、右図はパスがズレてしまいました。このパスミス、中山が外側を要求、片山が中央に出した。というものならわかりやすいですよね。しかし実際は逆。片山としては「こちらがやりやすいだろう」という意図を持ったパス。しかし中山は「フォワードとして前線でボールを受けるべき」という意思があったのかもしれません。気遣いができすぎて裏目に出るという珍事でした。
交代させられない片山
中盤の両脇は消耗が激しいと言いました。実際中村はすぐ交代しましたよね。しかし、逆サイドの片山は最後まで出場。これにはわかりやすい理由があったでしょう。
これが片山を右サイドで起用した主な理由でしょう。優位性を確立できていたので、清水最大の武器になっていました。2トップの交代によって雑におさめられなくなったからこそ、この前進方法は残さざるを得なかったはず。いわゆる替えの利かない選手ということに。クタクタなままでもフィールドにいてほしかったのでしょう。
スカッドの差が運んだ決勝点
- 鈴木唯人がプレスバックしたので、前に出ざるを得なかった宮本
- その隙間に天野が入ったので、鈴木義宣が前に出る
- 抜かれたあとの片山の戻りが遅い
- 鈴木義宣が前に出たので、後方は絞って4バック幅に
- 外側で空間を得た水沼が精度抜群のクロスを上げる
交代した選手は全力で何度も走らなければいけない。戻って守備することも必要。まじめな日本人はこう考えがちですよね。2トップが外国籍から自国籍に変わったので、前線の意識が大きく変わります。簡単に言うと、ルヴァン杯のときのような状態に。選手交代によって、清水は押し込まれることになりました。
また前向き守備のルールがあったので、鈴木義宣が出たことも決勝点に影響したでしょう。仲川が抜けたとき、本来なら片山が全力で戻って守備陣と挟めたはず。しかし疲労からか、このときの戻りは緩め。これは前述した通り、彼が替えの利かない選手だから。交代しないデメリットが出たことになります。
鈴木義宣が前に出た分、後方は中央を締めます。これは4バックの状態。4枚で対応できなかったから5枚にしたのに、それを崩された形になります。外側に開いた水沼にこれだけ空間を与えれば、精度の高いクロスが上がりますよね。それを押し込んだのはレオ。奇しくもマリノスは交代選手が成果を挙げる形に。清水とのスカッド差が如実に表れた決勝点だったと思います。
スタッツ
sofascore
SPAIA
Football LAB
トラッキングデータ
所感
引いた相手からでも点が取れる
前回の大分戦に続き、この試合も似たような形で決勝点を挙げました。引いた相手を崩すことはまだできないかもしれません。けれど、引いた相手でも点を取る方法はもう持っていると思います。引っ込んだ相手に点が取れないと嘆く必要はないかと思います。今後も天野や水沼に期待ですね。