hiro's football report

国内外、カテゴリー問わなずサッカーのマッチレポート風なものを掲載

【2022 J1 第17節】ガンバ大阪 vs 横浜F・マリノス

スタメン

ガンバ大阪

  • 前節から4人の先発メンバーを変更
  • 負傷離脱していた高尾と東口が先発に復帰。倉田がメンバー入り
  • 昌子、山本悠樹、福田、一森、宇佐美が負傷離脱中

横浜F・マリノス

  • 前節から2人の先発メンバーを変更
  • 負傷離脱していたエウベルが先発に復帰
  • 宮市、エドゥアルド、喜田、龍太が負傷離脱中
  • A.ロペスが出場停止でメンバー外

判断するために必要な要素

  • マンツーマンで高い位置から相手を捕まえる守備をするガンバ
  • マリノスは、いつ誰がどこにどのくらいの速さで寄せてくるかを様子見
  • 失点後くらいに相手のプレス感覚をつかみ、意図的に動かしてはがせるように

 マリノス相手にハイプレスをかけてくるのは見慣れた光景。今のマリノスならはがす術を持っていますが、どの引き出しで対応するか様子見が必要です。ガンバのどの選手が、いつ、マリノスのどの選手に、どれくらいの速さで出ていくか。これを掴むことでチームとしての打ち手を考案します。しかし様子見の時間にいつも通りのボール運びをした結果、失点していまいました。

 様子見とは、相手の行動を評価することです。そして評価するために基準が必要になります。なのでいつも通りのプレーを実践。ただし、失点してしまっては元も子もないので、伺っている時間帯にどれだけセーフティにやるかが課題でしょう。松原はあのタイミングでクリアしてもよかったと思います。相手の行動パターンが掴めれば、1回のクリアなんて安いものです。

--前半はG大阪が前からプレスに来て、受けてしまった部分もありましたが、後半はどこが変化したのでしょうか?

前半にある程度、自分たちでもプレッシャーの掛け方でこういう感じで来るというのが分かったので、前半の失点したあとくらいから改善できたと思います。そこから自分たちのチャンスもだんだんと作れるようになったので、そこは試合中に修正できる力がついてきたし、自分たちが成長した部分だと思います。

ただ、失点をして気がつくのでは遅いので、失点をする前にどういう形でくるのかを分析できれば、もっとスムーズに試合を進められると思いますが、勝って修正するという意味では今日逆転勝ちできたのはすごく大きなことだと思います。

 ガンバがマンツーマンでくることは、事前のスカウティングでわかっていたはず。しかし相手がどのくらいの強度でくるかは、見ると感じるでは大きな違いがあるでしょう。上図の通り、前半10分前には相手の出方に対応できていました。これは十分早く適応できたと言えるでしょう。

 適応すると一口に言っても、そこに至るまでにはいくつかのステップがあります。相手の出方を伺い、その対策を考え、チーム内で共有することでようやく完成です。この速度を上げるには、個々の判断力の向上もだが、何よりコミュニケーション能力が重要でしょう。プレーが止まった際にどれだけ言葉をかわせるか、プレー中のコーチングなどなど。水沼はこういったことが得意ですよね。彼を始めとするキャプテンたちが、トレーニングのときから声を掛け合う雰囲気を作り出す。そういった土台がマリノスにはあるはずなので、今後さらなる改善が期待できるでしょう。

個の力で実現できる限界

Q「(前略)今日見せてくれたような前からアグレッシブに守備に行ってというスタイルが中断期間中に共通認識として持ったものだったのでしょうか。」
片野坂監督「守備に関してはやはり敵陣で奪うようにすることがすごく大事だと思いますし、今我々がチャレンジしているところだと思います。そこは選手もやっぱり前から奪いに行きたいという思いの中で、共通していたのでそこをトライするようにしました。ただ、前から行くということでやっぱりリスクはあると思いますけど、そのリスクも十分にわかった中でトライしていますし、実際今日も首位のマリノスさん相手に前からプレスに行って、奪って得点を挙げて、その得点というところもどういう得点だろうが、僕にとっては素晴らしい得点だったと思いますし、狙いがしっかりとあった得点だったと思います。(後略)」

 この試合でガンバが前からきたのは、マリノス相手だからというわけではなかったようです。片野坂監督のコメントより、選手たちと話し合った結果、目指すのは前線からの守備ということだったようです。

 前からの守備といっても、やり方はいくつか存在します。前から遮二無二いく広島京都のような守り方。高い位置に構え、相手が進む方向を制限するような湘南名古屋のような守り方。ガンバの守備方法は前者に近かったでしょう。

 主な理由は、組織守備を整備しづらかったからではないでしょうか。今季のガンバは離脱者が絶えません。練習のときからメンバーを固定しづらく、チームとして連動した振る舞いを醸成する余裕がなかったのかもしれません。しかし前から相手を捕まえるのなら、選手個々の頑張りで大体何とかなります。大事な部分は個に頼る形ですね。これは攻撃にも言えました。

  • レオや西村はクォンギョンウォンや三浦に1対1で優位に立てていた
  • パトリックは角田に完敗していた
  • ガンバが前線で時間を作れなかったのは、パトリックが勝てなかったから
  • 組織ではなく個へ依存するのは、守備だけでなく攻撃面にも表れる

 ハイプレスはボール保持とセットで考えないと辛いです。保持できないと攻守のタイミングを自ら図ることができず、不本意に走る時間が増えます。しかし組み立てをスムーズに行うには、複数人が連動して動く必要があります。守備でも述べましたが、組織で動くことを織り交ぜる余裕はありません。なので、個で解決する方法を探ります。パトリックへのロングボールは、1つの方法だったのでしょう。しかし、角田に勝つことができず、前線で時間を作る唯一の手段を失います

 少し話が逸れますが、パトリックは献身的な守備もしてくれます。攻守両面に渡って個で高い能力を発揮するため、フォワードの中で最も起用したい選手でしょう。同じく個で攻守に絶大な貢献ができる宇佐美が離脱していることは、ガンバにとって非常に頭が痛いはず。守備能力の高い昌子が離脱していることも大きいでしょう。

 さて、話を戻しましょう。ボールを自分たちのペースで保持できないガンバは、各選手が走る回数、距離、強度が増えます。奥野、高尾、石毛が早々に交代したことが、うまくいってないことを物語っていたように感じました。

Q「(前略)今日は早い段階で交代枠を使い切ったと思います。その後、退場者も出てしまいましたが、そのリスクも含めて早く交代選手、フレッシュな選手を入れて、前から行く守備をやりきりたかったということでしょうか。」
片野坂監督「はい、そうです。やっぱり前半から非常にアグレッシブに守備をしていましたし、強度の高いゲームになると思っていたので、疲労が見える選手というのはフレッシュな選手に変えながら強度を落とさず、出来るだけ狙いの中でやれたらと思っていました。なので交代も早くなったと思います。ただ、交代した選手が途中から出るのは難しいと思いますけど、どれだけ走って、パワーを出して守備も奪いに行く、ゴールも取りに行く、そういう姿勢を出してくれないとなかなかマリノスさん相手に、そして今後もあの状況から得点を取って、ひっくり返して勝点3を取るというのも難しいなというのも、出た選手を含めて見る中では、非常に選手層の厚さというのも非常に大事だなと思いますし、そういった選手がやってくれないと、なかなか勝つことは難しいなと感じました。」

 守備強度の維持を狙った交代だということは、W.シウバとR.ペレイラを遅めに入れたことからもわかります。彼らは守備で計算が立たないので、激しいプレスの継続はある程度諦めていたでしょう。互いの陣地をボールが行ったり来たりするオープンな展開になるので、個への依存度が更に高まります。その結果、クォン ギョンウォンが退場することになりました。リスクを冒しても得点を取りたかったはずなので、今回はデメリットが強く出たという結果に。

 印象に残ったのは、ガンバが1点のリードを守ろうとしなかったことでした。去年の大分戦では1点取ったら守備へシフトしていたことを考えると、片野坂監督がガンバというクラブをどう捉えているかが伺えます。1点を守らなかったことはお市さんが掘り下げていますので、よければ下記をご覧ください。

fool-man-wrote.work

スタッツ

sofascore

www.sofascore.com

SPAIA

spaia.jp

Football LAB

www.football-lab.jp

ラッキングデータ

www.jleague.jp

所感

継続性が大きな武器

 正直、この試合は真新しいことがあまり見られませんでした。前からくる相手をかわして疲弊させ、疲れ切った後半に刺す。こういった構図は、磐田戦京都戦とほどんと同じだったでしょう。

 片野坂監督は、ガンバが90分通じて強度を維持できなかったと仰っていました。しかしマリノスは、運動量が落ちることなく終始ハイインテンシティを貫きました。これも前回書いた通りスカッドの厚さがあるからこそだと思います。マリノスも負傷離脱者を何名か抱えていましたが、クオリティが落ちないことは誇っていいはず。継戦能力はリーグ随一でしょう。それに加え、選手個々の能力の高さ、チームとしての高い組織力を併せ持ちます。日本の夏は高温多湿で辛いですが、どれだけ乗り切れるか楽しみで仕方ありません。