【2021 J1 第15節】横浜F・マリノス vs 柏レイソル
スタメン
横浜F・マリノス
- 前節から1人先発を変更
- 仲川が負傷離脱以来、リーグ戦ベンチ入り
柏レイソル
- 前節から4人先発を変更
- システムも3バックから4バックへ
誘導する柏とハマるマリノス
柏の守備とマリノスの攻撃
- ハーフェーライン付近に4-4-2のブロックを形成
- 前の4人は積極的にボールへ寄せる
- 2トップは相手アンカーを見て中央を封鎖
- ディフェンスラインを高くしてコンパクトな陣形を維持
- 相手が裏抜けしようとすると即座にラインを下げる
- ボランチの片方が上がってトップ下と一緒に相手ボランチを押し込む
- サイドバックは低い位置から縦へ一刺しを狙う
- 背後のスペースが空いているので、両翼は積極的に裏抜けを狙う
- 結果として、長めのボールでウイングが背後を狙うことが多くなる
相手を中央付近まで押し上げさせるため、低い位置へプロックを形成。間にボールを通されないよう高いディフェンスラインを維持。マリノスの選手たちが持つパススキルと、前線の選手の特徴を考えたら、攻撃手段は縦への一刺しが多くなりますよね。恐らくこれは柏がそういう攻撃方法へ誘導しているのだと思います。
その証がディフェンスライン撤退の速さ。「はいはい、どうせ背後でしょ。わかってますって」そんなセリフが聞こえるかのような対応の良さ。絶対に背後は取らせないという思いと共に、相手の予定通りになっていると感じました。どんな攻撃であれ、事前に予測ができていれば守りやすいですからね。
マリノスの今季のやり方は、リスクヘッジが大きなテーマとして掲げられています。また、大然やエウベルはスピードのある選手。それを踏まえると、まぁこうなりますよね。読まれた上で突破するには、圧倒的な個の力が必要になります。エウベルが古賀をちぎったシーンなんかわかりやすいですよね。ああいったところに頼るやり方は、昨季自分たちが対策されたことに似ていたように思います。
マリノスの攻撃方法を限定する柏の攻撃
無理して繋がず蹴り出すため、ショートカウンターの機会が激減する
柏は必ずしも後ろから繋ぐことを目指しませんでした。相手に寄せられてパスコースがない場合、無理して繋がず最前線の細谷へ当てる。こういったことでリスクを回避していました。
もちろんカウンターのために長いボールを使うという目的はあるでしょう。しかし、どちらかというとマリノス相手にショートカウンターをされたくない。だから怖いときはとりあえず蹴ろう。ということがチーム内で統一されていたように思います。基本的に細谷目掛けて蹴ってましたし、受ける側も準備できていましたからね。
繋がず蹴るので、マリノスのハイプレスに引っかかることがほとんどない。そうなると、ショートカウンターという攻撃方法が取れませんよね。先ほどは柏の守備でマリノスの攻撃方法が限定されていると言いましたが、相手の攻撃でもマリノスの攻撃方法が限定されることに。
一見するとボールが両陣を行き来するスピーディーな展開なので、「ある程度うまくいってるんじゃない?」と見ることもできます。しかし柏によって攻撃方法を限定されているので、試合をコントロールしていたのはマリノスではなかったでしょう。これは自分たちのサッカーとは違いますよね。
狙う場所は同じだけどルートが違う
後半から変更したポイント
- 長いボールをウイングに入れることをやめる
- 中盤を経由して、段階的にサイドを攻略
- ボールに関わる人数が増えるので、コンビネーションによる打開が可能になる
一発での攻撃が読まれているのなら、段階的な攻撃に切り替えればいいじゃない。ということで、サイドバックから縦へ一刺しする頻度が減りました。だからといって攻めるエリアが変わったわけではなく、サイド深い所を目指します。
短いパスの連続になると、長いパスに比べて前線に人数をかけることができます。前半は圧倒的な個で攻めていましたが、後半はコンビネーションによる打開を目指せるように。これによって前半より相手を押し込むことに成功しました。
前半に比べ、後半は前でボールを受ける数が増加
ちょっと松原の方は変化が見づらいですが、試合中の動きを見ると前目に位置していることがわかります。チアゴが持ち上がる頻度が増加しているのは、そこに松原がいなかった証。高い位置でのプレーが増えたことを裏付けています。
ティーラトンはタッチマップで一目瞭然ですよね。長いボールが減り、前で崩しに関わる機会が増えていることが伺えます。
パスソナー図とパスマップで比較
前半0~25分と後半45~70分に関して、パスソナー図とパスマップを作成しました。パスの種類や、前進ルートがどのように変わったか見ていきましょう。
パスソナー図
- 長いパスやパスミスが多い
- 特に前向きのパスに該当する
- パスを回しているエリアも低い
- 長いパスやパスミスが減る
- ディフェンスラインの選手たちの横パスが増加
- パスを回しているエリアが前半より高くなる
パスマップ
- 『チアゴ→畠中→ティーラトン⇔天野』のルート
- 『喜田→松原⇔エウベル⇔マルコス』のルート
- 右サイドでの攻撃が中心だった
- 畠中-チアゴ間のパス交換が少なく、後ろで伺う時間が少なかった(押し込んでいない)
- ディフェンスライン+喜田の5人で頻繁にパス交換をしている
- つまり、後ろで回して相手を伺う時間が増えた(押し込めている)
- ティーラトンから大然やマルコスへのパスが増加(パスが安定して通るように)
- 左サイドでの攻撃が中心になる
前半主に攻撃していたのは右サイド。というのも、左サイドはティーラトンから大然の背後へ一発が多く、そのパスがあまり通っていなかったから。反対に右サイドはエウベルの足元に入ることもあり、彼が踏ん張って時間を作ってくれたからになります。
それが後半になると逆転。ティーラトンが高い位置でボールに絡むようになったため、天野やマルコスと共にコンビネーションでサイドを崩せることに。ボールが高い位置で落ち着いたので、相手を押し込む時間が増えました。その結果ディフェンスラインや喜田とのパス交換が増え、後ろで左右に揺さぶりながら相手を見るようになったことがわかります。
ただサイドバックが高い位置を取るので、その分カウンターを受けたとき脆くなるというリスクもあります。前半に比べて致命的なシーンが多かったのはその影響があるからでしょう。
スタッツ
sofascore
SPAIA
Football LAB
トラッキングデータ
所感
すさまじい走り合い
相手のセンターバックは両方とも10km越え。これはマリノスの選手とほとんど同じ記録になります。高いラインで相手を誘導し、すぐさま下がって跳ね返す。いわゆるシャトルラン状態だったことが伺えます。それでも最後まで走り切れた彼らは素晴らしいパフォーマンスでした。
走力はマリノスの大きな武器の1つです。そこで圧倒できず、最後まで食らい付かれました。これは相手の出来がよかったことの証左でもあるでしょう。これから暑い時期になりますが、どこまで走れるかも大事になってきますよね。
残る課題は崩しのフェーズ
前半は崩しの前のフェーズで詰まっている状態。後半は問題を解決し、崩しで詰まった状態でした。前後半で状況を良くしたので、試合を通し1つは課題をクリアしたと言えるでしょう。
あとは押し込んだ相手をどう攻略するか。という湘南、セレッソ、仙台戦と同じ課題を突き付けられた形になります。スペースが狭い中でどうやってプレーするか、ここは大然とエウベルがぶつかっている次の壁でしょう。大然は去年の終盤のように中央にずっといましたからね。そういう環境でも比較的うまく動けるのが仲川。彼の復帰は今後生きてくる場面があると思います。
相手に攻撃方法を誘導されるほど、今のマリノスは対策されているということになります。ここまで徹底されたのは今季初めてじゃないですかね。相手を崩しきれませんでしたが、マリノス対策はそれなりに乗り越えられたことを忘れないようにしたいです。昨季に比べて対応力は上がっていると思います。