【19-20 セリエA 第27節】アタランタ vs ラツィオ
スタメンと攻守の狙い
アタランタ
- 3-4-2-1の布陣
- 敵陣守備はマンツーマン。自陣守備はリトリート
- アレハンドロ・ゴメスを中心としてボールを保持しながら前進を図る
ラツィオ
- 3-5-2の布陣
- 5-3-2のブロックを形成して人を捕まえる守備
- 強力2トップを活かした快足カウンターが主な攻撃
アタランタの守備とラツィオの攻撃
アタランタの守り方
- 敵陣守備はマーク相手を決めてどこまでも追いかける地獄のマンツーマン
- 自陣守備は5バック+両ボランチがエリア前にリトリートする
敵陣にボールがあるとき、アタランタはマーク相手を定めてマンツーマンで対応します。決めた相手がどこに動いても絶対についていくスタイル。自分の知る限り一番しつこいチームです。
最初は図の通りの対応でした。しかしフレウラーは、攻撃時にボランチの位置へ戻るので移動が多発。スペースは空くし、攻撃もスムーズにいかない…前半10分ごろからゴメスとマークを入れ替えることで改善を図っていました。
後方は数的優位を確保したいため、逆サイドのウイングバックを捨てます。ラツィオの強力2トップ相手に同数は怖いですからね…
マンツーマンをかわされ、自陣に運ばれるとリトリートに移行します。5バックと両ボランチは我先にと自陣エリア前に撤退。ブロックを作るというより、ゴール前を固めるという意識が高いです。
また、ラツィオは攻撃時に3バックとアンカーは前に出ず、相手のカウンターに備える。分業制なイメージを持ちます。
アタランタも攻守分業気味で、前線3トップは精力的に戻ることは稀。こちらもカウンターの機会を伺います。
マンツーマンに対抗するラツィオ
素早い動き出しで瞬間的に自由を得る
素早く動くことでマンツーマン相手が後手を踏み、瞬間的にフリーになる
マンツーマンの大変なところは、相手の動きに合わせることでしょう。相手が動く、自分がついていく。必ずこの順番で選手が動きます。そのため、ラツィオの選手が素早く動くと、後手を踏んだアタランタの選手は一瞬マークを外してしまうことに。
それを利用して前進したのがこの場面。特に前半早めの時間帯に多く見られました。主に下りるのはインモービレ。彼が下りるタイミングと、周りの選手が上がるタイミングはバッチリでした。連携度の高さが伺えます。
ただ、時間が経つにつれてこの動きが減少。中断明けのため、スタミナが切れる時間も早かったようです。これを継続できず、徐々にアタランタがボールを持てるようになりました。
相手を動かして意図的にスペースを作り出す
マンツーマンを利用して相手を外側へ動かし、中央にスペースを作り出す
決まった相手にどこまでもついてくるマンツーマン。ということは、自分が動けば相手もそこに動かせることになります。それを利用し、意図的にスペースを作ったのがこの場面。
リベロのアチェルビが外側へ動くことにより、中央にいたサパタを引っ張ります。空いた中央にアンカーであるカタルディが下りてボールを受ける。
センターバックとアンカーがポジチョンチェンジ。常識で考えるなら非常にリスキーで大胆な行動でしたが、マンツーマン相手には効果覿面。このように相手を動かしてボールをうまく進めることが何度か見られました。
守備切り替えによる穴の発生
マンツーマンをかわされると急いで戻るため、エリア前に固まりラインが平たくなる
マンツーマンをかわされたアタランタは急いで自陣に帰還。リトリートしてゴール前を固めます。『戻る』ということに意識が傾く選手たちは、前後のバランスを考える余裕があまりない様子。そうすると、ディフェンスラインは横並びになってぺったんこに。エリア前がポッカリと空いてしまうことも。
そこでボールを受け、強烈なミドルシュートを突き刺したミリンコビッチ=サビッチ。彼のシュートは非常に素晴らしいものでした。スーパープレーの背景に論理的なカラクリがある。こういうところもサッカーの面白いところですよね。
アタランタの攻撃
ビルドアップ時の基本配置
アタランタはビルドアップ時、左センターバックを外側に上げ、ウイングバックを前に押し上げる。それによってシャドーの位置にいたアレハンドロ・ゴメスが自由に動くことができます。右サイドは、ボランチが外に開き、ウイングバックとの中継点に。これによって外側に弧を描くような配置になります。
外からボールを回すことにより、ラツィオ中盤の脇を入口にしたいアタランタ。しかし、外一辺倒というわけではありません。左ハーフスペースはフレウラー。右ハーフスペースはマリノフスキー。さらにフリーロールのアレハンドロ・ゴメス。この3人でブロックに空く中央の隙間を伺います。
ボランチを外側に追い出して中央が手薄になる。センターバックをスライドさせることでアレハンドロ・ゴメスに自由を与える。守備時に相手フォワードと同数になることもいとわない超攻撃的なスタイルになります。
相手を留めるセンターバック
ジムシティが上がり、ラツァーリの注意を引く。高い位置に出たゴセンスに対応するのはパトリック。相手の最終ラインから2人を引っ張り上げることに成功したアタランタ。ゴセンスはフレウラーとのワンツーでスペースに抜け出してクロスを上げます。
センターバックが空いてのディフェンスラインを引っ張るという珍しい光景。超攻撃的な配置をしているアタランタならではでしょう。カウンターを恐れて上がらなくなることはなく、試合の最後までこの動きを見ることができました。彼らのスタイルが一貫している証でしょう。
パスマップから見るビルドアップルート
- 外回しでのボール回しが基本
- パス出しの中心はアレハンドロ・ゴメス
- 左サイドでのパス交換が活発に行われている
外回しでボールを回していることがわかります。特にウイングバックからシャドーにボールが入る頻度が高かったようですね。
パスを受けるのも、出すのも多かったアレハンドロ・ゴメス。彼がビルドアップにおけるキーマンだったようです。フレウラーと共に左ハーフスペースを蹂躙していたことが伺えます。彼らがいたからこそ、左サイドでのパス交換も頻繁にあったようですね。
ウイングバックの役割の差
- ゴセンスはシュート数が多く、ゴール前にも顔を出している
- ハテボアーはパス数が多く、サイド深くまで侵入している
前述した通り、ゴセンスは高い位置に押し上げられます。そのため、彼はクロスを上げるというよりは、ゴール前に入る頻度が高かったようです。シュート数も多かったことがわかります。
反対に、ハテボアーはサイドを上下動することが主な仕事。ゴセンスに比べ、深くまで侵入しています。またパス数も多く、ビルドアップにも顔を出していたことがわかります。
フィニッシャーとして崩しの役割が期待されるゴセンス。チャンスメーカーとしてサイドからのクロスが多くなるハテボアー。同じウイングバックなのに、こうも役割が違うことが面白いですね。
スタッツ
whoscored
https://www.whoscored.com/Matches/1415953/Live/Italy-Serie-A-2019-2020-Atalanta-Lazio
sofascore
understats
所感
最っ高に楽しい試合でした。相手の出方に対応して策を練るラツィオ。尽きないスタミナで相手を追い詰めたアタランタ。攻撃的な両チームが論理的に相手を攻略する様は非常に見ごたえがありました。しかし、それらをぶち壊すスーパープレー。理詰めで合理的に進めていたものが、得点に結びついたのはただの理不尽という。もう笑うしかないですよね(笑)個人的にこういうの大好きです!どうも自分は合理的な詰将棋だけだと物足りないみたいですね。稀に歩が飛車のように動くことがあると、爆笑しながら見てしまいます。
アタランタが逆転できたのはスタミナの差もあるのではないでしょうか。マンツーマンは自分本位でない動きでないため、同じ距離を動いてもスタミナ消耗は激しいものになります。それでも最後までやり切ったアタランタは驚愕に値するでしょう。素晴らしかったです。
また、アタランタ1点目がそうなんですが、ラツィオはファーへクロスを上げるとボールウォッチャーになる傾向がありました。それをわかってかどうかわかりませんが、アタランタは何度か狙っていたように感じます。自然とそういうことができるのは純粋に強さですよね。
あくまで個人的な感想ですが、中断明けに見た試合の中で群を抜いて面白い試合でした。自分の思うサッカーの魅力が全て詰まった試合だったでしょう。またこんな楽しい試合が見れることを期待し、残りの試合も楽しみたいと思います。