【2021 J1 第30節】横浜FC vs 横浜F・マリノス

スタメン

横浜FC
- 前節から5人の先発メンバーを変更
- ガブリエウが出場停止のため欠場
横浜F・マリノス
- 前節から2人の先発メンバーを変更
- チアゴが負傷から復帰
- 仲川も負傷から復帰してメンバー入り
隙間に通したその後
前から激しいプレスを敢行した横浜FC。ボールを奪われないため後ろへ人員を割く。前が手薄でも、ボールが入れば素早く仕掛ける。それにより生まれる前後分断。これは広島戦と同じ状況だったので、詳しくはこちらを参照してください。
では、この試合どのような方法で前進したかを見ていきましょう。


- 外に開いたサイドバックにボールをつける
- マルコスがライン間中央寄りに位置することで、斜めにパスすることができる
- しかし後ろ向きでボールを受けるため、そこから前進することが難しい
- 飲水タイム後から、マルコスの周りにボランチが入るようになる
外に開いたサイドバックにボールを出して角度をつける。これで相手の間を通しやすくなります。送り先はライン間に入ったマルコス。しかし5バックで構える横浜FCは、彼に割くリソースがあります。
マルコスは下がってボールを受けるので、当然後ろ向きになります。そこにピッタリついてこられると、前を向くことが難しい。ハイプレスに晒されるマリノスは後ろにリソースを割いているので、彼へのフォローがいません。そうなると、独力で突破するしかないです。
動き出しの速度で相手を出し抜く。マークにつかれても振り向く。かなり負担を強いることになります。仮に振り向けたとしても、4対5で横浜FCが数的優位。これを崩すのは難しい状況でした。
しかし、飲水タイム後から変化が見られるように。マルコスにボールを入れるとき、周囲に扇原が向かうことが目立ちます。マルコスが彼に落とせれば、前を向いてボールを持つことが可能。相手ゴール方向を向けるので、脅威が上がります。
しかしこれは後ろの人数を割いているので、ボールロストの危険度が増すことに。こういったリスクを背負いながら、攻撃を構築していたように感じました。
シャドーのキャラ差が生んだ得点
展開を落ち着かせるシャドー

- 瀬古は元々ボランチの選手
- 彼をシャドーに起用したので、背後への抜け出しは控えめ
- どちらかというとボールを保持し、相手を押し込みたい意図が伺える
この試合でシャドーに入ったのは瀬古と松尾。その上でハイプレスを仕掛けていました。ショートカウンターで一気呵成に仕留める。というよりは高い位置で保持し、マリノスを押し込みたかったのだと思います。
松尾はドリブラーなので、足元にボールをもらいたがる。その相方が瀬古なので、ボールが相手ゴールへ迫るスピードは遅め。攻守の切り替えも少なくなり、テンポを抑えた試合ができます。ハイテンポを売りにしてるマリノスに対し、なるべくボールが行き来しないようにしたかったのでしょう。
こういったマリノス対策をしてきたのですが、アルトゥール・シルバが途中で負傷交代することに。これによって選手が入れ替わります。
スピードが売りのシャドー

- ジャーメインはスピードが持ち味のフォワード
- それを活かした背後への抜け出しが得意
- 少ない手数でハイラインの背後を突きたくなる
替わって入ったのはジャーメイン。それに伴い、瀬古がボランチに下がります。
スピードが持ち味の選手なので、背後への抜け出しが増えることに。瀬古と真逆なキャラクター。ジャーメインとの間合いが掴めないうちに、抜け出されたのが先制点のシーンでした。変化への適応には時間がかかります。それが真逆なら尚更です。守備者は対応が難しかったでしょう。
横浜FCとしては、禍を転じて福となした形。うまくトラブルに対応した早川監督の手腕は素晴らしかったと思います。
スタッツ
sofascore
SPAIA
Football LAB
トラッキングデータ
所感
試合の進め方に反するリスク管理


- マリノスは攻撃時に両サイドバックとボランチの片方が上がる
- そのため、攻守が切り替わると守備の先鋒は残ったボランチになりやすい
- ここでかわされると致命的なので、カード覚悟のファールで止める
- なので、マリノスで最もカードをもらいやすいポジションの1つはここになる
マリノスは攻撃の仕組み上、ボランチの片方が被カウンターの第一守備者になりやすいです。後ろに控えるのはセンターバックコンビのみ。自分がかわされるとピンチになるので、カード覚悟のファールで止めます。
この試合、皓太は前半のうちにカードをもらうことに。そんな彼をコーナーキックのしんがりに残したため、退場劇に繋がってしまった。こういう見方もできると思います。
そもそも、今季のマリノスは90分トータルで勝ちにいく試合運びをしています。ちゃんと立ち位置を取れるチーム相手に、人数差をひっくり返すことは至難の業です。もし退場者を出したら、それまでの布石の多くが無駄になる。
この試合はそれが顕著に表れていました。70分くらいからへばった相手を押し込む。これが本来やりたかったことだと思いますが、逆に自分たちが押されるはめに。
1試合通して計画を組むチームなら、カードのリスク管理はしっかりすべきです。特にボランチがイエローをもらった場合は、容赦なく交代していいでしょう。
2019年のような、先行逃げ切り型ならここまで気にしなくていいですが、今季は違います。今後どうなるか見ていきたいところです。