【2021 J1 第8節】横浜F・マリノス vs セレッソ大阪
スタメン
横浜F・マリノス
- 前節から4人を代えて中2日の試合に臨む
- 好調の天野がトップ下に入る
- 水沼がメンバー入り
セレッソ大阪
- 前節から3人を代えて中3日の試合に臨む
- 大久保、丸橋、瀬古という中心選手がメンバー外に
- クルピ監督が不在
前節の反省とリスクのかけ方
珍しい喜田の上がり
- 普段なら味方が空けたところを埋める黒子役な喜田
- そんな彼が低い位置にいるだけでなく、積極的に前へ上がる
- なんなら右ハーフスペース突撃を何度も狙っていた
この動きに驚いた人は多いのではないでしょうか。いつもは皓太や扇原がよくするプレーですよね。サイドバック込みで彼らが自由にやる反面、喜田はいつも空いたところを埋める縁の下の力持ち。そんな彼がこのような動きをしたのです。それも何度も。
前節はどのくらいセーフティにやるか、選手たちに委ねられつつあると書きました。今節もその流れがあったでしょう。湘南相手に多くのチャンスを作ることができなかった。それならリスクを冒してでも、敵陣に入る選手を多くしよう。恐らくこういう考えが1つの案としてあったのだと思います。
ベンチから客観的に試合を見ており、途中交代で実践もできた。この体験があったからこそ、こういった発想が出たのでしょう。この挑戦が成功しようが失敗しようが、前節を糧にしたことだけは確かなものになるはず。この流れは2019年を思い出しますよね。
相手を見てリスクの度合いを決める
セレッソの2トップは自陣守備も精力的に行うため、こちらが人数をかけると引っ張ることができます。なので全体的に高い位置を取っていても、後方が同数という場面は少なくなる。カバーする選手を残せることで、守備が安定します。
これをどこまで狙っていたかは気になるポイントでしょう。相手がこういった守り方をするからこちらもリスクを冒せる。そういった判断ならば、相手を見てサッカーができていることになります。実際はそういったことが半分。もう半分はたまたまそういう状況になっただけなような気がしますが…これも『相手を見る』という今季のテーマですよね。
意思の共有と統一
ボランチの動きは喜田だけじゃない
- 喜田が上がらないときは扇原が上がることも
- 交代で入った岩田も、喜田のように高い位置でプレーすることをいとわない
前半から何度も前に走っていた喜田。さすがにあの強度は1試合もたないですよね。彼が上がらない(上がれない)ときは、扇原が前線に出て崩しに参加することもありました。よく見た光景ではありますが、喜田と同じプレーをしっかり共有できていた証ではないでしょうか。
また、交代で投入された岩田も喜田と同じようなプレーをしていました。負けないために守備を安定させ、リスクを下げるやり方もあったはず。しかしベンチから喜田のプレーを見て、それがセレッソ相手に有効だと感じたのでしょう。同じくリスクを冒して攻撃の手を強めました。
試合をよく見ていた岩田の意識の高さ。ベンチに模範を示した喜田のプレー。これらが備わっていたからこそ、選手が代わっても同じ攻撃を続けることができたはず。控えまで意識が高いことが伝わりました。
リードしてからどうする?
- リードしてからも攻めようという意思を全員が持っていた
- これが統一されてないとバラバラな組織になり失点していたかも
先制したあとの振る舞いも、前節課題に残ったところでした。そんな彼らは攻め続けることを選択。上図の場合、もし逃げ切るならオナイウはキープするし、岩田は上がらないでしょう。しかし、ゴールに向かった岩田へパスが通りました。これは2人が同じ意思を持っていた証。このやり方は実にマリノスらしいと言えるでしょう。
別に攻め続けたことが正解というわけではありません。全員で守備に比重を置いてもよかったと思います。全体の意思統一ができており、個々でバラバラにならないことが重要でした。それを実行できたのはよかったのではないでしょうか。
このようにセレッソ大阪が引いてスペースがない状態のなかでもチャンスを作れたということは良かったですし、最後まで試合をコントロールするということも必要でした。試合をしっかりコントロールするということが今日の課題だったと思います。
湘南戦に関してはゴールを奪った後、いつもの前向きな姿勢というよりかは少し後ろ向きになってしまってコントロールができなかった。そういうところで引き分けに終わってしまったと思います。
ボスもこのようなコメントを残していました。後ろ向きではなく、最後まで前向きな姿勢を評価したのでしょう。マリノスらしいアタッキングフットボールができたのではないでしょうか。
ボスの起用法から察する彼なりのチーム作り
手綱を握るボス
セレッソを押し込んでいるが得点できない展開。そういった中、ボスは選手を3人代えました。仲川から水沼への交代は実質的に一択ですが、その他はそうではなかったはず。
- オナイウに代えてボランチのどちらか。天野を一列下げるという選択もあった
- 喜田との交代は皓太や和田という選択もあった
相手の急所にパスを出せ、攻撃で違いを作れる天野をボランチに残した方がより攻撃的だったでしょう。しかし彼が交代させられ、喜田と扇原が残りました。
また、喜田との交代は皓太や和田という攻撃面に強みのある選手を入れることもできたはずです。しかし、一番守備能力の高い岩田が投入されました。
これらの交代ってセーフティ寄りでしたよね。是が非でも得点を狙う場合、攻撃的な采配で火力を上げるのが普通。しかしボスはそうしなかった。
うーん、ちょっとみんな積極的すぎかな。これだと前掛かりになりすぎてる。少したしなめる意味も込めて、リスクを加速させない方向で選手交代をしようかな。
もしかするとこう考えていたのかもしれません。たしかにこの試合は攻めっ気たっぷりでしたよね。さすがにいきすぎだということで、火力重視にならないような交代を行った。こう考えると割としっくりくるんですよね。
なるべく選手たちに考えてもらいたいですが、完全に放置するというわけではないのがボスのやり方。いきすぎたら止めてくれる父親のような存在なのかもしれません。
キーパー選出の基準を考えてみる
今季はオビが第一ゴールキーパーで、第二が高丘というのがボスの選択になっています。それぞれの特徴を見てみましょう。
- 高い反射神経に裏付けされるシュートセーブの安定
- キック力があり、一気に相手背後へボールを蹴ることもできる
- アジリティがあり、ハイライン背後を埋めることができる
- 足元の技術が高く、後方での組み立て参加もいとわない
セーブ能力はそのままわかりやすいですよね。キック力があるとビルドアップを省略することができます。後ろから繋ぐよりマイボールになる確率は下がりますが、危険な位置で失うリスクが低くなるメリットも。
なので端的に言うと、守備を考えるならオビ、攻撃を考えるなら高丘が優先されるでしょう。そしてオビが優先されているということは、攻撃より守備を第一に考えているのかもしれません。
去年は44試合中8試合が無失点。今季は9試合行われましたが、既に5試合で無失点を記録。このことからも、守備に意識を向けていることが伺えます。
そしてこういった考えのもと、高丘が無失点に抑えたことは大きな意義があるでしょう。後半のFKは失点ものでした。それを防ぎ、1点を入れて勝利。なんか去年の広州恒大戦を思い出しませんか?あのときはオビが、今度は高丘が。足元に加えて守備能力の高さを示せば鬼に金棒。チャンスを見事ものにしたと思います。
スタッツ
sofascore
SPAIA
Football LAB
トラッキングデータ
所感
上位陣へ勝つことができた
セレッソに対し、10年振りの勝利になりました。それだけでも十分な価値がありますが、上位陣に勝ったことも忘れてはいけません。去年はことごとく負けましたからね。リーグ戦をいい順位で終えるにあたり、上位陣への勝利はマストになります。今季はそういう強みを見せてくれるかもしれません。今後も期待したいところです。