hiro's football report

国内外、カテゴリー問わなずサッカーのマッチレポート風なものを掲載

【2021 J1 第31節】湘南ベルマーレ vs 横浜F・マリノス

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スタメン

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湘南ベルマーレ

  • 前節から2人の先発メンバーを変更
  • 前節負傷した平岡はメンバー外

横浜F・マリノス

  • 前節から2人の先発メンバーを変更
  • カード累積のため、松原と皓太が出場停止
  • 和田が久々のメンバー入り

前は前、今は今

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 組み立ては後ろに残ったセンターバックボランチで行う。サイドバックは高い位置を基本とし、ウイングを孤立させない。これは前節の反省でしょう。しかしこの配置、湘南からすると相手を捕まえやすいことに。

 前の5枚で中央封鎖。後ろの5人は適宜スライド。これが基本ルールの湘南に対し、マリノスのビルドアップ隊は中央に4人がいる状態。高い位置にいるサイドバックは、湘南のウイングバックが対応。相手が定まってしまうんですよね。

 前節の反省はあくまで横浜FCを相手にしたときであって、今相手としている湘南に適応したものとは限らない。前の試合を活かしている点はいいと思いますが、それが今節有効だったかどうかは見て欲しかったと思います。

 湘南が困るのは右図の状況。相手の3センターのスライドが間に合わず、ウイングバックが出るには遠い位置です。相手がこなければそのままボールを受けられますし、くるのなら長い距離走らせることができます。

 この方法で前進していた回数は少なかったです。どちらかというと、エウベルと小池が上下入れ代わってマークを外す。これによってボールを動かすことが多かったです。パターンの1つとしてはいいのですが、そればかりになると慣れで効果が薄れることに。もう少し色々試す姿勢が見たかった。というのが率直な感想です。

素早くではなく、じっくりが好み

トップ下のキャラクター違い

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  • この試合はマルコスではなく天野が先発
  • ボールが入って明らかに有利な状況でなければ縦に刺さない
  • 攻撃のテンポを少し落とすよう意識
  • しかし3トップは素早く攻めたいので、チグハグになる

 この試合は天野が先発しました。彼は縦へ展開するスピードを抑えていたように思います。これは前節の反省からでしょう。タメを作ることで、後方からの上がりを促す。前後に分断することを抑え、分厚い攻撃を仕掛けたい。これが狙いだと思います。

 マルコスとのキャラ差もあります。彼は一人で何でもこなせるスーパーマンですが、天野は周囲との関係性で力を発揮する選手です。他の選手の承知しているので、なるべく天野の近くにいるよう意識が上がるはず。横浜FC戦では孤立していたマルコスですが、それを防げるのではないか。そんな狙いがあったのかもしれません。当事者に意識させず導こうとする姿勢は、アンジェと似た者を感じます。

 しかし現実はうまくいきませんでした。湘南は中央を塞ぐので、天野に直接ボールが届きにくい。ならば外回しに送りたいですが、ウイングは縦に素早く仕掛けてしまう。天野が中々ボールに触れなかったのは、ここに理由があるでしょう。マルコスほどのスピードもないので、3トップについていけないこともあったかと思います。

ちょっと意識を変えるだけで

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  • スペースがあっても仕掛けず、一旦落として味方の上がりを待つ
  • アーリークロス一択ではなく、マイナスのクロスも使うように

 後半になると3トップの意識が変わります。素早く仕掛けるより、一旦後ろにいるサイドバックボランチに落とすように。後ろから上がる時間を作り、相手を押し込めるようになりましたこれが成功したのは、湘南のスタミナ切れもあったでしょう。

 押し込める展開になると天野が輝きます。様々な箇所に顔を出し、ボールを循環させます。右図のように惜しいシーンが生まれたのも、大然が切り返すことをしたから。待つことができたので、天野が追いつけました。

ゲームをコントロールし、ボールを回せましたが、それはもっと前の位置でしなければなりません。もちろん湘南が中を閉じ、コンパクトに守り、崩すのが難しかったのも事実です。自分たちも問題を認識していますし、現実を直視して自分たちらしさを出すために修正していきたいです。

 このコメントや選手起用より、ケヴィンが相手を押し込みたいのは明白。後半はそれを体現できたと思います。

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所感

帰ってきたMVP

 決勝点のきっかけになった仲川。この試合のプレーは2019年の影に重なりました。とうとうトップフォームになった印象です。

 今までも書いてきましたが、自分はフィジカル面よりメンタル面の理由だと思っています。ケガしたくないからプレーを抑える。そうすると体の動かし方も変わり、プレーがうまくいかなくなる。だから全力でプレーしたいが、怪我が怖い。このループに陥ってたのかなと。

 それを吹っ切ったようなパフォーマンスでした。もしかするとプライベートで充実する何かがあったのかもしれません。いずれにせよ、頼もしいことに変わりはありません。最近エウベルが疲れ気味なので、今後ウイングのスタメンに割って入る可能性は十分あると思います。今後彼に大きな期待を!

【2021 J1 第30節】横浜FC vs 横浜F・マリノス

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スタメン

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横浜FC

  • 前節から5人の先発メンバーを変更
  • ガブリエウが出場停止のため欠場

横浜F・マリノス

  • 前節から2人の先発メンバーを変更
  • アゴが負傷から復帰
  • 仲川も負傷から復帰してメンバー入り

隙間に通したその後

 前から激しいプレスを敢行した横浜FC。ボールを奪われないため後ろへ人員を割く。前が手薄でも、ボールが入れば素早く仕掛ける。それにより生まれる前後分断。これは広島戦と同じ状況だったので、詳しくはこちらを参照してください。

 では、この試合どのような方法で前進したかを見ていきましょう。

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  • 外に開いたサイドバックにボールをつける
  • マルコスがライン間中央寄りに位置することで、斜めにパスすることができる
  • しかし後ろ向きでボールを受けるため、そこから前進することが難しい
  • 飲水タイム後から、マルコスの周りにボランチが入るようになる

 外に開いたサイドバックにボールを出して角度をつける。これで相手の間を通しやすくなります。送り先はライン間に入ったマルコス。しかし5バックで構える横浜FCは、彼に割くリソースがあります

 マルコスは下がってボールを受けるので、当然後ろ向きになります。そこにピッタリついてこられると、前を向くことが難しい。ハイプレスに晒されるマリノスは後ろにリソースを割いているので、彼へのフォローがいません。そうなると、独力で突破するしかないです。

 動き出しの速度で相手を出し抜く。マークにつかれても振り向く。かなり負担を強いることになります。仮に振り向けたとしても、4対5で横浜FCが数的優位。これを崩すのは難しい状況でした。

 しかし、飲水タイム後から変化が見られるように。マルコスにボールを入れるとき、周囲に扇原が向かうことが目立ちます。マルコスが彼に落とせれば、前を向いてボールを持つことが可能。相手ゴール方向を向けるので、脅威が上がります

 しかしこれは後ろの人数を割いているので、ボールロストの危険度が増すことに。こういったリスクを背負いながら、攻撃を構築していたように感じました。

シャドーのキャラ差が生んだ得点

展開を落ち着かせるシャドー

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  • 瀬古は元々ボランチの選手
  • 彼をシャドーに起用したので、背後への抜け出しは控えめ
  • どちらかというとボールを保持し、相手を押し込みたい意図が伺える

 この試合でシャドーに入ったのは瀬古と松尾。その上でハイプレスを仕掛けていました。ショートカウンターで一気呵成に仕留める。というよりは高い位置で保持し、マリノス押し込みたかったのだと思います。

 松尾はドリブラーなので、足元にボールをもらいたがる。その相方が瀬古なので、ボールが相手ゴールへ迫るスピードは遅め。攻守の切り替えも少なくなり、テンポを抑えた試合ができます。ハイテンポを売りにしてるマリノスに対し、なるべくボールが行き来しないようにしたかったのでしょう。

 こういったマリノス対策をしてきたのですが、アルトゥール・シルバが途中で負傷交代することに。これによって選手が入れ替わります。

スピードが売りのシャドー

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  • ジャーメインはスピードが持ち味フォワード
  • それを活かした背後への抜け出しが得意
  • 少ない手数でハイラインの背後を突きたくなる

 替わって入ったのはジャーメイン。それに伴い、瀬古がボランチに下がります。

 スピードが持ち味の選手なので、背後への抜け出しが増えることに。瀬古と真逆なキャラクター。ジャーメインとの間合いが掴めないうちに、抜け出されたのが先制点のシーンでした。変化への適応には時間がかかります。それが真逆なら尚更です。守備者は対応が難しかったでしょう。

 横浜FCとしては、禍を転じて福となした形。うまくトラブルに対応した早川監督の手腕は素晴らしかったと思います。

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所感

試合の進め方に反するリスク管理

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  • マリノスは攻撃時に両サイドバックボランチの片方が上がる
  • そのため、攻守が切り替わると守備の先鋒は残ったボランチになりやすい
  • ここでかわされると致命的なので、カード覚悟のファールで止める
  • なので、マリノスで最もカードをもらいやすいポジションの1つはここになる

 マリノスは攻撃の仕組み上、ボランチの片方が被カウンターの第一守備者になりやすいです。後ろに控えるのはセンターバックコンビのみ。自分がかわされるとピンチになるので、カード覚悟のファールで止めます

 この試合、皓太は前半のうちにカードをもらうことに。そんな彼をコーナーキックしんがりに残したため、退場劇に繋がってしまった。こういう見方もできると思います。

 そもそも、今季のマリノスは90分トータルで勝ちにいく試合運びをしています。ちゃんと立ち位置を取れるチーム相手に、人数差をひっくり返すことは至難の業です。もし退場者を出したら、それまでの布石の多くが無駄になる

 この試合はそれが顕著に表れていました。70分くらいからへばった相手を押し込む。これが本来やりたかったことだと思いますが、逆に自分たちが押されるはめに。

 1試合通して計画を組むチームなら、カードのリスク管理はしっかりすべきです。特にボランチがイエローをもらった場合は、容赦なく交代していいでしょう。

 2019年のような、先行逃げ切り型ならここまで気にしなくていいですが、今季は違います。今後どうなるか見ていきたいところです。

【2021 J1 第29節】名古屋グランパス vs 横浜F・マリノス

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スタメン

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名古屋グランパス

  • 前節から1人の先発メンバーを変更
  • 好調シュヴィルツォクが引き続き先発

横浜F・マリノス

  • 前節と同じ先発メンバー
  • 仲川が負傷離脱のため、宮市がベンチ入り

できることをやり、最大限の成果を挙げる

勢い余ったハイプレス

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  • 開始10分は最後方が同数になるくらい前から人を捕まえていた
  • しかしそれでピンチを迎えることも
  • 先制後から前への圧力を抑え、後方に人数をかけて守るように

 シュヴィルツォクの守備負担を考えると、ハイプレスをしてこないのではないか。そんな予想を裏切り、前から人を捕まえにきた名古屋。その勢いはすさまじく、最後方が同数になることもいとわない姿勢を見せます。

 しかし、マリノスの攻撃陣はスピードが売り。瞬間的な動き出しで相手を上回り、チャンスを作っていました。特に上図のシーンは決定機でした。

--相手は得点力のあるチームでしたが、どんな対策をしていましたか?

守備のところで、少し立ち位置のところなど監督から修正はありました。あとは相手にスペースを与えないというか、前半戦では少し前がかりになり過ぎて、その裏を突かれてというシーンがいくつかあったりしたので、そういったシーンをなくそうと意識しながら、重心をコントロールしてやっていました。

 稲垣がこのようにコメントしていたように、最後方まで同数にするのはやりすぎという認識だったようです。それでもこれだけ勢いを持って臨んだのには、いくつか理由があったでしょう。

  • マリノスは繋いでくるので、ハイプレスからショートカウンターが有効
  • しかし連戦の疲労があるので、続けられる時間は限られてくる
  • それなら前後半の最初のみ全力で行い、そこで得点を狙う
  • 守り切る自信はあるので、ある程度受けに回る時間が長くても問題ない

 ACLから中3日。それにも関わらず、メンバーは大きく替えていない。このメンバーでのハイプレスはいつも以上に時間が限られます。なので、奇襲が効果的な前後半の頭が狙い目だったでしょう。そして、その両方で得点することができました。これは名古屋にとって言うことない結果だと思います。

 加点後はハイプレスを控えるようになり、しっかり陣形を組んで迎え撃つように。自分たちが今できることを最大限やった結果が、この勝利に繋がったように思います。

もちろん完璧なゲームではなかった。もっと主導権を握る場面を作りたかったというところはありますけども、自分たちがいまのコンディションや、いまのメンバーでどういうサッカーをやっていくかというところを考えれば、しっかりとやれていたかなと思います。自分たちらしく勝てたと思います。

 稲垣のコメントからも、連戦を考えて現実的に戦ったことがわかります。ある程度受けて守り切るのが名古屋の強さ。今季序盤に見せていた彼らのストロングを発揮できた、名古屋らしい試合だったでしょう。

自分たちのやりたいことは、相手の嫌なことなの?

自分たちのやりたいことができた試合でした。敵陣でボールを握り、支配しました。ピッチ状態が良くない中、このような内容ができたのは良かったです。負けてしまいましたが、やろうとしたことをやった上での負け。何もできなかった負けではありません。ただ、負けてしまったのは残念です。

 ケヴィンのコメントより、自分たちがやりたいサッカーはできていたとのこと。具体的には、敵陣でのプレー時間が多かったことを指しているようです。

 相手を押し込んで攻撃。ボールを奪われたら人数の多さを活かし即時奪回を狙う。再度攻撃開始。今のマリノスは、敵陣でプレーし続けることを目標としています。アンジェ退団後から序列が変わったサイドバックボランチ。プレスはほとんど相手に寄せ、構えてブロックを組む機会が減少。これらがやりたいことを裏付けているでしょう。

 さて、理想通り相手を押し込めたマリノス。では、名古屋目線からはどうだったでしょう。

 マリノスが押し込んでいるということは、名古屋は引いて受けている状態です。これは彼らが嫌がる状況かと言うと、そういうわけではありません。リトリートして守り切ってからの、少人数によるロングカウンターは十八番。むしろ慣れ親しんだやり方と言っていいかもしれません。

--ディフェンス面での積極性を感じられたが?

マリノスが押し込んでくるということは、もちろん分かっていた。こちらからどんどん仕掛ける、引いて守ってもここはやらせないとか、ここしか相手は選択肢がないというような守り方ができたと思う。シュート数はかなり打たれたかもしれないが、それが「もし入っていたら」というような話をする必要があるシュートではなかったと思う。

 フィッカデンティ監督もこのように話しています。自分たちが引いて守る準備をしてきたことからも、押し込まれるのは織り込み済み。つまり、マリノスがやりたいことは、名古屋が嫌がることではなかったのです。

 先にリードできたことも、名古屋が試合を進めやすくなった要因でしょう。彼らが嫌なのは無理して攻めることです。それには、終盤までビハインドである必要がある。しかし現実はその逆でした。

 守備に奔走して疲労した、前田と長澤を替えてハイプレス強度を維持。それも難しくなったので、5バックにして守り切る体勢を整える。こういった選択ができたのも、リードしていたからです。

 これが逆だったら、ある程度オープンになってもいいので金崎と相馬を投入。なんなら、宮原のところが成瀬になったかもしれません。当然、5バックという発想も生まれなかったでしょう。

 先に失点したからこそ、押し込むマリノスと守り切る名古屋という予想通りな構図が生まれました。鹿島戦同様、普通に負けたと感じたのはこれが理由だと思います。そして、いつも通りにしている名古屋を打ち破れなかったのは、マリノスの力不足ということになるでしょう。

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チームカラーの変更

 アンジェがいるときは、90分間を使って相手の嫌がることをやるサッカーをしていました。今は、自分たちがいかに相手を押し込むかに注力しています。つまり、ベクトルの向きが違うんですよね。

 監督が変わればチームカラーが変わる。よくある話です。問題は、これがシーズン中に起こっているということでしょう。そしてこれが今ネックになっているのは、相手に対策され始めたから。状況としては昨季再開後に似てると思います。

 前に展開したとき落ち着かせようというのが、このときとの違いになります。しかしそれは今のスカッドの強みを考えるとどうなんだろう?というのは広島戦で書いた通りです。

 選手個人でやりたいことにズレがあるのは、監督のやりたいことと選手の得意なことに差があるからだと思います。マリノスのサッカー』の定義がちょっと違うんですよね。チームがうまくいってないので、これが表面化しやすくなってるのかなと。シーズン終盤にして新しい壁ができましたが、これをどう乗り越えるか。これから見守っていきたいと思います。