hiro's football report

国内外、カテゴリー問わなずサッカーのマッチレポート風なものを掲載

【2021 J1 第24節】横浜F・マリノス vs 大分トリニータ

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スタメン

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横浜F・マリノス

  • 前節から5人先発メンバーを変更
  • ティーラトンが出場停止のため欠場

大分トリニータ

  • 前節から6人先発メンバーを変更
  • システムをいつもの3バックではなく4-2-3-1に変更
  • ベンチメンバーに前寄りな選手が多く入る

スピードを武器とした新しい大分

ガンバ戦からの文脈を読む

  • コーナーキックから先制点を取る
  • 試合終盤相手に押し込まれ、耐える展開
  • 80分過ぎから2失点し、逆転負けしてしまった

 得点を奪ったあと、相手に押し込まれる時間がなくなる大分。それでも守備陣が粘り強く跳ね返していました。しかし、パワープレー気味に攻められると個の力の差が徐々に表面化。あらゆる面で力負けしてしまった。

セットプレーから得点して、少し受ける形が多くはなったが、粘り強く戦っていた。しかし、ゴール前までの長いボールやクロスをはね返すことができず、セカンドボールを拾われての個のフィニッシュで素晴らしいゴールを決められてしまった。最後はああいう形でパワーのある選手にボールを運ばれ、放り込まれて、またセカンドボールから取られた。この2失点はもったいなかったと思っている。

 片野坂監督もこのようにコメント。「最後の失点はもったいなかった」という言葉から、本来なら勝てた試合という印象を持ちました。

  • ガンバ戦の反省を活かし、受けきるだけでなく前へ出るようにする
  • その結果、川崎相手にボールを保持する時間が多くなった
  • しかし相手を崩せず、保持するもシュートまで結びつかない
  • 結局、得点を取れず終わってしまった

 受けるだけでは決壊してしまう。もっと積極性を出して攻めなければ。ということを反省点とし、しっかりボールを保持する大分。実際、川崎相手にボールを保持することができました。しかし崩すことができず、シュートまで至れない状態。

後半、大分が握る時間も長かった。僕らもやっていないわけではないが、相手が何を狙っているのか、こっちとしては一番やられてはいけないところの整理はできていた。どちらかというと怖くはなかった。

 これは谷口のコメント。持たれてはいるが、致命傷は受けていないという印象だったようです。

攻撃力のある川崎Fさん相手に失点はおそらく90分の中であるだろうと想定していた中で、得点を奪わなくては勝点は取れないだろうと得点も狙ったのだが、要所を抑えられた守備でなかなかチャンスを作れず終わってしまった印象。

 片野坂監督はこのようにコメント。やはり点を取るところが課題として残ったようです。また、「失点は恐らくあるので、得点を奪わなければいけない」というのはマリノスにも当てはまること。

 ざっくり整理すると、『受けきって失点したので、もっと敵陣で過ごす時間を増やした。しかし、得点までに至らなかった』というのが大分のシナリオになります。これを踏まえてマリノス戦にどう臨んだか、見ていきましょう。

今までにない大分のサッカー

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  • ゴールキックフリーキックは繋がずに最前線へ蹴る
  • ボールを奪ってもすぐに最前線へ展開
  • 今までは、後ろで繋ぎながら盤面をひっくり返すことが多かった
  • 立ち位置で崩すポジショナルな志向から、盤面を乱すカオス寄りな志向に変わる

 自陣に相手を引き込み、ロングボールでひっくり返す戦法を主にしていた大分。片野坂式釣り野伏と言われ、Jリーグを騒然とさせましたよね。ここからわかる通り、後ろから繋いでボールを大事にするのが大分です。しかし、この試合では違いました。

 ボールを奪ったらすぐに前へ蹴る。セットプレーでもとにかく蹴る。とにかく速攻を仕掛けるスタイルでした。

 積極性を出して点を取れなかった川崎戦の反省でしょう。マリノスは立ち位置をコロコロ変えるチームです。しかもサイドバックまで高く上がる。それなら、彼らが戻る前に攻めると相手陣形は乱れている状態。こちらが崩さずとも、相手が勝手に崩れてくれるという寸法です。

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  • 伊佐はボランチでなく、センターバックを見るように守備をする
  • そうすることで、攻守がひっくり返ったときに最前線にいることが保証できる
  • しかし、ボランチのマークが空くことがデメリット

 大分の積極性は、守備にも表れていました。最前線に入った伊佐はセンターバックを見ることが主な仕事。最前線で守備するということは、攻撃に移ったときに最前線にいるということに。この保証があるので、ボールを奪ったら中央に蹴っ飛ばすだけでOKです。

 これは攻撃における思考負担を減らすことに繋がります。それだけでなく、攻撃開始位置が高くなるので、早い攻めがより実施しやすくなる。こういったメリットがあります。

 しかし、当然デメリットもあります。ボランチを見る選手が少なくなるので、中央が空きやすいことに。そこを起点に通されることもありましたが、これは織り込み済みだったでしょう。

 今までの大分がポジショナルなら、この試合の大分はストーミングだと言えるかもしれません。そのくらい振れ幅の大きい変化だったと思います。

両チームにとって悪くない展開

 大分が予想外の入り方をしたので、マリノスの選手たちは面食らったでしょう。しかし、早い攻めはマリノスにとって悪いことではありません。むしろ、自分たちが望む有利な展開と言えます。相手にペースをゆっくりされるより何倍もマシです。

note.com

 そのあたりは上記に詳しく書きましたので、気になる方は参考にしてみてください。

勝点奪取の算段と、ご破算になったプラン

片野坂監督が本来描いてたゲームプラン

  • 縦に早い攻めを志向
  • そのため、スピードやパワーのあるフィジカル能力に優れた選手を起用
  • このやり方は体力を大きく消耗する
  • ベンチメンバーは攻撃寄りの選手が多い
  • しかし、フィジカル的に優れているのは藤本。渡邉、野村がギリで入るくらい

 これらを加味すると、短期決戦になりますよね。しかも、ベンチはボール保持に特徴のある選手が多いので、どこかで保持型に切り替える必要があります。そして同じく、体力を消耗しない省エネ方式にすることも必須です。

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  • 1-1になった時点で5-4-1(3-4-2-1)に布陣を変更
  • それまで蹴っていたが、可能なら繋いで保持するようになる

 理想は先制点を奪い、この形にシフトする形だったでしょう。(早めに点が取れた場合は、最初の10分や20分続けていたかもですが…)しかし、この試合はマリノスが先制点を挙げました。

 こうなると、大分は是が非でも点が取りたい状態です。そのためには、消耗の激しい早い攻めを継続する必要がありました。そして首尾よく追いつくことに成功。この時点でやり方を変えたことから、勝点1でもいいから持って帰りたいという意思を感じます。

 こうして変更したことからも、早いテンポの試合はマリノスの土俵という認識があったのでしょう。なるべくなら、テンポを落として試合を殺したかったのが本音だったかもしれません。

大きすぎた2点目

 しかし、前半終了間際にレオが追加点を挙げます。これにより、大分は勝点を持ち帰るために点を取る必要があります。それは、縦に早い攻めを続けることとイコールです。

 消耗が激しく、やってることもマリノスの土俵。交代できる選手も限られるので、持続力もあまりない。大分にとって不利な展開になる得点だったでしょう。

 個人的には、前半の時点で勝負はほぼほぼ決していたように思います。後半頭のコーナーキック分水嶺でしたかね。あそこを決められて2-2になっていたら、引きこもった相手を崩すのに苦労したでしょう。

スタッツ

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所感

冷製な判断と、持っている運

 相手のやり方に面食らいながらも、すぐに相手への対応を見つけた選手たちは素晴らしかったです。特に畠中と和田は、早い段階でボールの落ち着け場所がわかっていました。こうやってしっかり対応を考え、共有できるのは強いチームの証だと思います。

 また、それまでに失点しなかったことも運が良かったでしょう。決めるべきものを決められていたら、複数失点もあり得ましたからね。このような運も、最近の試合で感じることが多いです。持ってるチームだということにしておきましょう(笑)

【2021 J1 第18節】横浜F・マリノス vs 名古屋グランパス

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スタメン

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横浜F・マリノス

  • 前節から5人先発メンバーを変更
  • 扇原が累積警告で出場停止

名古屋グランパス

  • 前節から4人先発メンバーを変更
  • 布陣をいつもの4-2-3-1から変更
  • シュヴィルツォクが移籍後初ベンチ入り

布陣変更と原点回帰の想い

やろうとしてたことの一部

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  • 2トップが外へ誘導するようにセンターバックに寄せる
  • トップ下と3センターがボールサイドにスライド
  • このとき2トップはセンターバックへのバックパス経路を遮断
  • サイドに追い込んで圧縮して取り囲む

 守備においては、逆サイドのサイドバックを捨ててボールサイドに圧縮。エリアを狭くして奪いたかったのだと思います。上図はそれがうまくいったシーンでしょう。

 マリノス相手にこの陣形にしたのは、内側に入るサイドバックを捕まえやすくするため。柿谷がアンカー番をし、内に絞ったサイドバックセンターハーフが見る。ボランチはマルコスにつくことで、最後方を1人余らせることができます

 ボールサイドにスライドして人を捕まえることは、元々名古屋が取っていた守備方法。いつもとは違う布陣だが、同じベースで準備期間の少なさを補う工夫が伺えます。

試合の入り方として、横浜FMのスピードのある攻撃に対して、こちらもスピード感のある選手で押し返したかった。まずプレスをしっかり掛けて、奪ったあともスピードのある選手を使った攻撃に転じることができればという狙いだった。

 フィッカデンティ監督がコメントしていたように、前から捕まえやすい布陣は、ショートカウンターという狙いがあったからでしょう。

 名古屋は山﨑と金崎が離脱中。センターフォワードがいない中でどのように点を取るか考えたところ、スピードのある選手でショートカウンターという手法になったようです。これって去年に鈴木武蔵が移籍したあと、0トップを採用した札幌と似てますよね。

 この日、最前線で起用したのは前田と齋藤。彼らの本分はドリブラーです。なので、彼らの足元に素早くボールを届ける必要があります。蹴ってはいけないため、ビルドアップに工夫が必要なのです。

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  • センターハーフである稲垣や長澤は自然とハーフスペースに位置する
  • なので、三角形が多く作りやすい陣形になりやすい
  • そこにトップ下が入ることで、近い距離間でテンポよくパスをまわせる

 今回は、長澤と稲垣をセンターハーフとして起用しています。彼らがオリジナルポジションに立ち返ると、ちょうどサイドの間に顔を出せることに。ここにトップ下の柿谷を絡めることで、近い立ち位置でテンポよくボールを回せます

 長澤はこのポジションが得意なこともあり、いい立ち位置を取って攻撃の潤滑油になっていました。しかし稲垣は上がりすぎるなど、適切な距離感を保てた回数は少なかったです。彼はボールハンターであり、ボックスへ飛び込むことが得意な選手。得意分野でないことを求めた結果、ちょっとズレが生じたように感じました。

守備の意識を強く持つほど、自分たちが乱れる

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  • キーパーを交えて左右に振るマリノス
  • サイドバックへの対応はセンターハーフなので、スライドが間に合わなくなる
  • そうなると米本も前に出なければいけなくなり、最後方が同数になることも
  • 人を捕まえる守備なので、動き回るマリノス選手たちが立ち位置の基準になる
  • 攻守が入れ替わったとき、自分たちの陣形がぐちゃぐちゃになる

 名古屋はサイドに追い込みたいが、キーパーを使うことで回避するマリノスサイドバックまで展開し、名古屋のセンターハーフを外側へ引っ張ります。その状態から反対に展開すると、そちらのサイドバックに別のセンターハーフがつくことに。スライドが間に合わない状態で喜田や岩田が下がると、柿谷1人で見ることになります。人手が足らないので、米本が前に出て対応。するとマルコスが余るので、最後方が同数の状態になります

 試合が始まってしばらくすると、マリノス相手を誘引するように後ろへパスすることが目立ちました。それは、相手のスライドが間に合わないタイミングを伺っていたからでしょう。

 試合前、名古屋の選手たちは「自分たちは守備のチームだ。そこに立ち返って勝てるようになりたい」といったことを話していました。自他共に認める守備のチーム。不調の今、原点に立ち返って調子を取り戻したい。自然と、守備への意識が高くなります。

 守備への想いが強くなると、相手を捕まえようとする意識が強まります。ポジションをぐるぐる変えるマリノスに合わせた結果、自分たちの立ち位置がグチャグチャに。首尾よくボールが取れたとしても、そこから組み立てるには距離感がめちゃくちゃな状態からスタートしなければいけません

横浜FMが前からプレッシャーを掛けてくるのは想定どおりだった。後ろからはより早い判断で、ボールタッチも少なく、ボランチの選手につけるイメージで試合に入りましたが、少し距離感が遠くて、相手のプレスにハマってしまったという印象があります。

 木本がこのようにコメントしたのは、米本が前に出ていかざるを得ない状況になっていたからでしょう。距離が離れてしまうと、後ろで回すか蹴ってしまうしかないです。前者はマリノスのプレススピードから厳しい。となると後者になりますが、先ほど話した通り、最前線が齋藤と前田なので彼らの特徴に合わない。結局、センターフォワード不在が響くという『いつもの問題』に直面した格好です

 そもそも、守備を重視するフィッカデンティ監督が、最後方の同数を許容するわけないですからね。(これが攻撃に全部りのミシャならわかりますが…)そういう状況になった時点で、名古屋が不本意な形で試合を進めていることが伺えます。結局、前半はマリノスペースで行えたと見ることができるでしょう。

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所感

いつも通りに戻させたマリノス

 後半になっていつもの布陣に戻した名古屋。やり慣れた布陣は攻守のバランスが良くなります。守備もゾーンからのマンツーで対応でき、スライドもスムーズに。しかし、構造的にマリノスの方がやりやすい状態でもあります。

 そもそも、『センターフォワードがいない中どう攻めるか』をテーマに考えた結果、ショートカウンターに活路を見出したはず。それを元に戻しては、結局センターフォワードいない問題にぶつかりますよね。

(直近の第23節・)横浜FC戦が終わってから、どういうプレー内容だったか、どういう温度で試合に入ったか、すべてを確認して作り直さないといけないものだった

(中略)

選手を代えていかないと攻撃的にできないと思うので、選手交代は試合前からプランしていたとおり。

 フィッカデンティ監督は、前回の敗戦を振り返り、チームに変化が必要だと感じたとコメントしています。それを打ち砕き、攻撃偏重と評した形に戻させたのは、紛れもないマリノスの強さだったでしょう。

 試合運びも素晴らしいものでした。中断後も選手たち主導による工夫が見え続けているのは、すごいことだと思います。引き分けを引きずらないメンタルの強さも証明できたはず。ここからまた、連勝街道を突っ走っていきましょう。

【2021 J1 第23節】清水エスパルス vs 横浜F・マリノス

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スタメン

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清水エスパルス

  • 前節から人の先発メンバーを変更
  • 夏に獲得した松岡が早速先発出場
  • 多くの選手が負傷離脱中

横浜F・マリノス

  • 前節から3人の先発メンバーを変更
  • 五輪から帰ってきた大然がベンチ入り
  • アゴが出場停止のため欠場

安全志向な清水

ノーモアトランジションゲーム

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  • 奪っても無理に前に蹴らず、後ろに下げて繋ぐことを選択
  • そのまま前進できればいいが、できなくても陣形を整える時間が取れればOK
  • 後ろの人数を割くリスクを減らすため、ポジティブトランジションも遅め
  • 攻守の切り替え回数を少なくしたいし、切り替え時のリスクを減らしたい

 この日の清水はクローズドに試合を進めていました。トランジション合戦にならないよう、なるべく繋ぐことで落ち着く時間を確保。カウンターのチャンスでも素早く飛び出すことは控えめです。

 後方でのボール回しと切り替え時の遅さから、低い位置に多く人がいました。つまり、背後のスペースを消すこととイコールです。マリノスが一番得意とする状況を消すことで、攻撃力を削いだ形と言えるでしょう。

 開始早々に得点したことも、リスクを減らすことに拍車をかけたはず。リードしてる状況は、焦らない意思統一をしやすくなります。チーム一丸で戦えていたように感じました。

ビルドアップの意味

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  • 権田を経由し、左右に大きく振るパス回しを行う
  • マリノスは片方のサイドに人を当てはめて守備をする
  • なので素早く展開すると、スライドが追いつかずにフリーになる選手が出る
  • 上図以外にも、2失点目はこのパターンでやられている

 とにかく左右に振るビルドアップを意識していた清水。これはマリノスの守備方法を利用することも目的にあったと思います。

 まず最前線が方向付けをする。次に、限定したサイドへ人をあてはめながら前に出します。ボランチサイドバックが極端に前進することが特徴。寄せのスピードを増すことで、相手に考える時間と行動する空間を削ぎます。

 この日も同じやり方をしますが、権田を組み込まれたことで人手不足に。彼を経由してサイドを変えられてしまいます。マリノス片方のサイドに人を多くかけているため、反対は手薄。その状況でサイドバックがスライドすると、後方に大きなスペースが空きます。ここを利用されたのが、2失点目の場面でした。

 今までのマリノスだと、サイドを変えられた時点で前へ出ることをやめます。下がりながらブロックを組み、無理せず迎撃態勢を整える。今季取り組んでいるリスクヘッジの部分ですね。

  • マスカット監督による指示
  • ヴァウドが交代するまでは、この方法でボールを奪えていた
  • なので、選手としてもどんどん前に出て奪いに行こうという意思が強かった

 いくつか要因はあるかと思いますが、このプレスがハマっているように感じていたことが大きいでしょう。後述しますが、左に入った井林と奥井はビルドアップに苦しんでいました。それが立田と片山に変わり激変。いなされる格好になってしまいました。

 余談ですが、ガンバ戦でこれが顕在化しなかったのは、相手が左右に振るビルドアップをそんなにしなかったから。同じサイド内で完結すると、このプレスは強いですからね。屈して蹴らなかった清水の選手たちに拍手です。

われわれの先制点からスタートしました。その後、彼らの攻撃の時間がありましたが、良いポジションで守ることができました。また、奪ったあともしっかりと用意してきたビルドアップを表現することができていました

 前半の守備とビルドアップには、ロティーナ監督も一定の評価を下しています。試合のテンポが、マリノスの望む早いものにならなかったことが理由でしょう。試合を支配していたのは清水だったと思います。

ビルドアップの意味を変える

 前半のうちに追いつかれてしまった清水。リードしてる状態なら、試合のテンポを殺すことだけでOKでした。しかし同点に追い付かれると、勝つために得点を入れる必要があります。当然ビルドアップも前進することが求められるでしょう。前半と同じじゃいけないのです。

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  • 左足をあまり使えない井林だとパスレンジが狭くなる
  • 交代で入った立田は左足が使えるので、パスレンジが広く取れる
  • これは奥井と片山にも同じことが言える
  • ビルドアップの改善で、前進する手段が増えた

 この日起用したセンターバックは、ヴァウドと井林。それぞれ右利きですし、パス能力より守備力に定評があります。このチョイスからも、マリノスの強力な前線に対応するため、まずは守備からという考えが伺えます。

 左に入ったのは井林。右利きの彼は、どうしても右足でボールを受けがち。そうなるとパスの選択肢が左のみなので、ホームのとき苦しんだ片山への対角パスがやりにくいことに。

 しかし、立田を入れたことでこれが一変します。左足を使える彼は、体を開いてボールを受けることが可能。そのため、パスレンジも広く取れます。2点目のシーンは、立田と片山がワンタッチでさばいたものでした。これは井林と奥井では起こり得なかったでしょう。

ヴァウドはカードを1枚もらっていましたし、前線のウイングの選手たちをフレッシュにするという意味で(西澤)健太と後藤(優介)を入れました。難しい状況でしたが、選手たちは落ち着いてビルドアップをしてわれわれのほうに流れを取り戻してくれました

 両翼とヴァウドを代えたかったことが主な理由だと思います。しかし、その交代先が左センターバックと左サイドバックだったのは、ビルドアップに手を入れたかったため。それが功を奏した同点弾だったと思います。

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所感

取っ組み合ってくれない相手のやりにくさ

 普通は疲労が重なった深い時間は、オープンな展開になります。スタミナがない中、互いに点を取ることに注力するも、戻る体力がないから。しかし、清水はクローズドな展開を意識したチームなので、そもそも攻め上がりに体力を使おうという思考になりにくいです。反対に、マリノスは点を取りたいのでガンガン前へ行く。こちらが押し込む展開になったのは、必然だったでしょう。

 前述しましたが、相手背後へのスペースがないと、マリノスの攻撃力はガクッと落ちます。大然が活躍できなかったのもそこが理由でして…そういった相手に対し、今うちが持っているのは高精度のクロスのみ。

 しかし、この試合では相手を左右に動かし、いい状態でクロスを上げること。ワンツーなどを用いての侵入。ミドルシュートなどなど。様々なアプローチが見られたのはいいことなのかなと思います。去年のアウェイ浦和戦に比べれば、クロスのバリエーションも増えてますしね。個人的には、そんなに嘆く引き分けじゃないと思います。