【2021 J1 第6節】ガンバ大阪 vs 横浜F・マリノス
スタメン
ガンバ大阪
- 前節から人を先発メンバーを変更
- 柳沢が移籍後初先発
- 藤春、井手口、小野など負傷したメンバーが多く復帰してベンチに入る
横浜F・マリノス
- 前節から4人を先発メンバーを変更
- 大然が五輪メンバー入りのため欠場
- マルコスが出場停止から復帰
試合のポイント動画
【2021 J1 6節 ガンバ大阪 vs 横浜F・マリノス】
— ヒロ@hiro17 (@hiro121720_yfm) 2021年8月8日
✅ガンバの前プレ方法
✅ガンバの組み立て時におけるマリノスのズレ
✅マリノスの守備改善方法 pic.twitter.com/aui8xWoVVf
奇襲とアクシデントと
まさかの布陣変更
試合が始まってビックリ。ガンバは布陣を変えてこの試合に臨んできました。その経緯をちょっと考えてみましょう。
- マリノスは26日間実戦から遠のいている。対するガンバは連戦を戦い続けている
- 試合序盤なら、連戦の疲労も影響が薄くなる
- マリノスは後ろから繋ぐので、前からプレスをかけることが効果的
- ホームゲームなので、サポーターの後押しが貰える
- ガンバは元々人を捕まえる守備をしているので、マンツーマン気味だとやりやすい
- マリノスのビルドアップの形から逆算して4-3-1-2の布陣を選択
マリノスはキャンプで試合をしていましたが、あくまで練習試合。しかも相手はJ1より格下です。J1リーグ本番の試合勘を取り戻すのには時間がかかるでしょう。なので、奇襲を仕掛けるなら前半開始早々が望ましかったです。
しかし新しいことを仕込む時間がないので、ガンバのやり方の延長線上で考える必要があります。そこで選択した手法が、マンツーマンによるハイプレス。ガンバは元々人を捕まえますし、これならやり方もシンプル。今季のマリノスはハイプレスに苦戦してますしね。
マリノスのビルドアップの形は、FC東京戦で記載した通り。これに当てはめると、4-3-1-2がピタッとはまります。なので、3バックをやめて混乱させたかったというより、ハイプレスをかけるため4バックになった。という理由が強かったのでしょう。
この奇襲が奏功したのは、レアンドロ・ペレイラがシュートを放った1:10の攻撃でした。このヘディングがポストを叩いたのは、マリノスにとって幸運だったでしょう。自分たちのやっていることを成功させ、先制点を奪う。こうなれば、ガンバに大きな自信がついたはず。連戦の疲れはしばらく吹き飛び、どんどん攻勢に出れたことでしょう。
攻撃力のあるマリノスさんに対してどう守備で圧力を掛けるかというところで、引かずに前に前にというところは、非常に前半の入りは良かったのではないかなというふうに思います。チャンスもありましたし、前半決め切っていればまた違う展開になったかなというふうには思いますが、(以下略)
松波監督もこのように述べていました。あのシュートが、この試合の最も大きな分水嶺だったと思います。
痛すぎた負傷交代
前半早々にウェリントン・シウバが負傷交代したことも、ガンバにとっては痛かったでしょう。
- ウェリントン・シウバは外に流れることを好む
- なので、自然と相手サイドバックの背後を取れる
- しかし交代したパトリックはモビリティがあまりないので、中央に留まりがち
- 狭く守るマリノスのブロック幅で攻撃することになる
スピードとモビリティのあるウェリントン・シウバ。彼が2トップの一角を務めたことにより、幅のある攻撃を仕掛けることができていました。しかし、前半早い時間に負傷交代を余儀なくされます。このとき可能な交代は下記の3通りだったでしょう。
1つ目はこの試合で負傷から復帰した裕二の投入。怪我明けの選手をこの時間から入れるのは怖いですよね。インテンシティの高いマリノス相手なら尚更。
1試合通して安定したパフォーマンスを見せず、ムラのあるチアゴ・アウベスを投入するのもギャンブル性が高くなる。
そうなると、連戦で結果を残してるパトリックを入れることが一番安定している。という判断になると思います。いずれにせよ、ウェリントン・シウバほどスピードをもって幅広く動ける選手はいないので、同じことができなくなる点が痛恨でした。
相手に対応したご褒美
- 岩田が下りて宇佐美の脇へ
- ここは山本の担当外なので、宇佐美の箇所に2対1の状況ができあがる
- 小池と和田はマンツーマンを利用して内側に寄る。これにより外へのパスコースを創出
- 前に出た黒川の背後へ小池が入り込む
相手のマーク方法を理解し、それを打破できるようになったのが飲水タイムあたり。それが如実に表れていたのは、上図にあたる先制点のシーンだったでしょう。
また動画にした通り、守備でも相手の変化に対応。久しぶりの実戦であるにも関わらず、自分たちで答えを探し出せたことに感動しました。
自分たちは4週間、試合から遠ざかっていました。一方のG大阪は連戦が続いていて、3連勝という良い結果を残していました。その中で相手がどう戦ってくるのかを見ながら試合に入ったのですが、自分たちが思っていたのとは違うシステムを採用してきました。相手のMF中央の変更に対し、慌てずに修正できたのはよくできた部分だと感じています。
マスカット監督もこのように賞賛していました。アンジェが積み上げた、『自分たちで考えること』が結実した試合だったと思います。
大きく変わらなかった後半
もう一度奇襲をかけたいが…
さて、前半のうちにマリノスに対応されてしまったガンバ。ハーフタイムにしっかり整理され、後半はよりうまく対応されてしまうでしょう。ここで3バックに戻し、テンション高く試合に入れば、もう一度奇襲をかけることができたでしょう。
これらにおさまらない理由が多々あったかと思います。結局、ガンバが選択したのは前半からの継続でした。
3バックの方が、時間をかけずにサイドチェンジができる
この試合のガンバは4バックでした。ウェリントン・シウバが交代してしまったので、幅を取れるのは唯一サイドバックのみ。しかし彼らが上がるまで時間がかかるので、そうなるとマリノス守備陣は陣形が整ってしまいます。
しかし、3バックだと上がる距離が短いので、4バック時より早く仕掛けることが可能。これはガンバの大きな武器でもありました。
サイドチェンジはマリノスの弱点に繋がりますので、3バックへの変更がなかったのは、正直やりやすかったでしょう。
ガンバが整理した守備方法
- 山本を前に出して、宇佐美のカバーをする
- 全体的に前寄りになることと、ライン間が開くことで、オープン度合いが加速
- 両チームとも早々に疲労することで、縦に間延びした展開が長く続く
後半に守備方法を変更したガンバ。これがオープン具合を加速させることに。互いの疲労も影響し、縦に間延びした状態で試合が行われました。決定機をどちらが決められるかの戦いに。しかし、こういった土俵ではマリノスに一日の長があったように感じました。
スタッツ
sofascore
SPAIA
Football LAB
トラッキングデータ
所感
追い越せムードを加速できなかったガンバ
PKを決めた際、1点差まで詰め寄ったガンバに追い越せムードが漂い始めます。しかし布陣変更はなく、そのまま中央アタックを継続。こうなると、個人の能力で相手を剥がすしかありません。63:44にパトリックがトラップで畠中をかわしたシーンは顕著な例でしょう。
もしここで3バックに変更していれば、相手にズレを感じさせた状態を作り出せます。得点を入れた勢いもあるので、同点や逆転に迫れたかもしれません。しかしそれを実施してこなかったため、得点を大きな追い風にすることができませんでした。
この1戦だけでなく、連戦全体で見たマネジメントの影響が多分に出たと思います。昨年連戦していた身としては、痛いほどわかります…こういったところもマリノス優位に試合が働いた点の1つだと感じました。
【2021 J1 第22節】横浜F・マリノス vs アビスパ福岡
スタメン
横浜F・マリノス
- 前節から3人先発メンバーを変更
- 大然が五輪合宿のため離脱
- マルコスが前節レッドカードのため出場停止
- 畠中が負傷離脱中
アビスパ福岡
リスペクトすることによる迷い
対マリノスといつも通りの狭間
福岡が強みにしていることの1つに、前から相手を捕まえてプレスをかけることが挙げられます。しかし、この試合では控え目。サイドバックは前に出る限界があるし、ボランチも片方しか出てきません。
スピードのあるマリノス相手に、背後のスペースを空けたくない。ここのところ前半早くの失点が続いていたので、それを防ぎたい。こういったことが主な理由だと思います。直近の天皇杯で粘り強く守れたことも、これを後押しすることになったのでしょう。
ゴール前のスペースを消す意識が強い
それぞれ点が入る直前の様子ですが、ゴール前のスペースがほとんどないことがわかります。人数をかけ、押されても跳ね返すような設計だったのでしょう。こういったことからも、マリノスをスピードに乗せたくないことが伺えます。
しかし、クロッサーに対しては空間を削り切れていませんでした。これだけ余裕があれば、天野やエウベルはいいボールを上げられますよね。崩してないが、精度で相手を上回った瞬間だと思います。
今日の守備で行くと、どこからプレスを掛けにいくのか、どういう強度で行くのか、どこを落としどころとして自分たちが狙ってボールを奪いにくのかが、決まる場面と決まらない場面がありました。そこがチグハグになったところが失点シーンにつながったという印象があります。
前がこのようにコメントしていました。元々積極的な守備が持ち味の福岡ですが、この日は背後を抜かれないことに意識を集中。真逆のことを織り交ぜた結果、どういったプレスをかけるか。チームとして意識が揃わなかったのでしょう。
2トップと両翼は前に出たい。4バックは後ろを空けたくない。その狭間にいるボランチコンビ。大雑把にこのような印象でした。その結果、4バックやボランチは構えられるけど、両翼の戻りが遅かったためクロッサーに十分なスペースがあった。顕著だったのが、得点シーンなのかなと思います。
オープンにしたくない福岡
- 飲水タイム以降、杉本が内に絞ってトップ下のようになる
- これによってボールを繋げることが増加
- 簡単に蹴らないのは、オープンな展開にしたくなかったから
福岡は簡単に蹴らず、なるべく繋ぐことを意識していたと思います。すぐ蹴ってしまうと、ボールが行き来するスピードが上がる。オープンな展開だと分がないので、なるべくそれを避けたかったのでしょう。
持とうとする意識はいいのですが、マリノスのプレスがきつい。ボールを奪われ、押し込まれる時間が増えていきます。そこへテコ入れしたのが飲水タイム。サイドハーフの杉本を内側に入れることで、相手Wボランチに対して3人という状況を作ります。数的優位になった中央にボールをおさめ、保持する時間を延ばしたい。この狙いはある程度奏功したと思います。
入口は外側低め
- 相手サイドバックはある程度の高さまでしか出てこない
- それならウイングが下がれば、フリーでボールを受けられる
- 封鎖されてる中央に代わり、サイドを入口とする
この動きはエウベルがよくしていましたよね。だからこそ、マリノスの攻撃は右サイドが活発でした。相手の出方を伺い、隙を突くようなプレー。ここにも今季のテーマが見えたように感じました。
前述した通り、サイドハーフは前掛かりな状態。彼らが戻る前に機先を制することで、安定して敵陣へ侵入できました。
開き直らざるをえなかった福岡
積極性が生むオープン展開
- 2点を取り返すため、攻撃もプレスも積極的にいかなければいけなくなった
- 前半ほとんどやってなかったサイドバックの上がりを許可
- その代償として、マリノスウイングにスペースを使われる
- 互いに縦へ早くなるオープンな展開に
2点を失った福岡は、どうにかして得点を得る必要に迫られました。クルークスをサイドに入れ、展開役として杉本をボランチに。前半上がりを控えていた、両サイドバックの攻撃参加を許容します。
同時にプレスも前掛かりに。縦へ早い攻撃を代償に、背後を空けるリスクを背負います。結果として、前半避けていたオープンな展開に。その後の選手交代を見ても、なるべく縦に早く攻めたかったように感じました。2点差が並大抵のものじゃないことが伺えますよね。
展開に対応した交代策
- オープンな展開になったので、それに対応した選手交代を実施
- 疲労の見えた實藤を下げ、スピードに優れる岩田を充てる
- サイドの守備役として、和田より強度のあるティーラトンを投入
- 相手をうまくいなせる喜田と和田をボランチに
- スペースが多くなるので、空間をうまく使える皓太をトップ下へ
試合はクローズドな展開からオープン展開に移行。前後半で試合の様相が大きく変わったので、それに対応する交代を敢行します。特に、対面がクルークスになった和田のところは、彼の弱みが存分に出てしまう形でした。そこに手を入れたことは、効果抜群だったでしょう。試合をきちんとクローズできたのは、状況に適した交代ができたからだと感じました。
スタッツ
sofascore
SPAIA
Football LAB
トラッキングデータ
所感
試合間が開くことのメリデメ
試合間が開くことは、メリットとデメリットがあると思います。今回、福岡はリーグ戦は2週間の空きがありましたよね。
疲労がない状態で試合に臨める
試合感が鈍ることや、強度がある中でのプレー感覚が薄れる
このデメリットは、練習の強度によって薄められると思います。マリノスを想定した強度で練習することで、求められる動きを身につける。かなり激しい練習をすれば、これを満たせたでしょう。
しかし、福岡は直前に天皇杯がありました。対マリノスとして練習相手になる選手たちは、ここへ出場することに。となると、その前後で無理はさせられません。マリノスを想定した強度の練習は、満足にできなかったのではないでしょうか。
その影響が、インテンシティの不足や判断の遅さなどに繋がったのかもしれません。しかもこの日は晴天。暑い中で久々の試合は、選手たちにとって辛かったと思います。
パスミスが多かったことからも、コンディションがバッチリ整っていなかった印象を受けました。負傷から復帰した志知は全然でしたよね。彼本来の半分ほどの力しか出せていなかったように感じました。
1週間単位で試合をしていたことだったり、ホームだから最後まで走れたり。マリノスにとっていい条件で試合の臨めたことは、勝因の1つなのかもしれません。
【2021 J1 第21節】柏レイソル vs 横浜F・マリノス
スタメン
柏レイソル
- 前節から4人先発メンバーを変更
- 浦和戦から手応えのある3バックを今節も採用
横浜F・マリノス
- 前節から1人先発メンバーを変更
- 實藤がベンチ入り。レオが外れ、メンバーが少し入れ替わる
この試合におけるおよその構図
スピードを警戒する柏
マリノス相手にハイプレスは自粛。ブロックを組んでからアタックすることを徹底。攻撃へ切り替わるときも、すぐウイングバックが上がらずに様子を見る。少々後ろに重い感じはありましたが、柏は慎重な姿勢で試合を進めていきます。
それはビルドアップにも言えました。相手のプレスで苦しくなったら、長身フォワードのペドロ・ハウルへ蹴とばす。攻守に渡ってマリノスのスピードを警戒していたことが伺えました。
ウイングバックの上がりが自重気味なので、幅を使った攻撃まで時間がかかる
ワイドの選手が上がる時間が必要なので、幅を使った攻撃を素早く行えない柏。狭く守るマリノスとしては、致命的な場面を迎える可能性が低くなります。これは前節の徳島戦と同じですよね。
また、サイドを変えるパスの出し手が少なかったことも影響していたでしょう。相手の間に入りパスを引き出す。そこから逆サイドめがけて長いボールを蹴って揺さぶりをかける。こういったプレーをしていたのは神谷だけだったと思います。
ただ(神谷)優太の離脱は想定外でした。彼が起点となり、瀬川(祐輔)やペドロ(ハウル)に良いフィードを送っていたので交代したのはチームとして痛手でした。ドッジを交代で入れたのですが、優太が担っていた役割まではできませんでした。
ネルシーニョ監督もこのようにコメント。神谷の交代が痛手だったことがわかります。
柏のやり方は、ある程度マリノスの攻撃を抑えることに成功。しかし、その代償として攻撃力を削がれた形だったでしょう。
いつも通りにプレーするマリノス
- 柏は人を捕まえる守備をする
- 相手を引っ張り、空間を作り出すことが可能
- いつも通り選手がローテーションして相手の陣形を崩す
- プレスバックを怠らずに相手へ寄せる
- 考える時間と蹴るための空間がないので、下げるしかなくなる柏
自陣で捕まえられるとあたふたするマリノスですが、敵陣だと苦にしません。いつも通りとばかりに選手がローテーションして空間を生み出します。
プレスの激しさも通常運行。猛スピードのプレスバックや、相手を捕まえるハイプレスを敢行。柏は足元の技術が高い選手が限られているので、これに苦戦しているようでした。
しかし、ボランチが前に出るデメリットも。柏は苦しくなったとき、ペドロ・ハウルへロングボールを入れます。このときボランチが高く上がっていると、ペドロ・ハウルの後方にスペースが生まれる。コントロールの精度を多少欠いても、奪われる確率は低くなります。彼自身のおさめる能力が高かったこともあり、抜群の起点になっていました。
大体ここまで書いた内容で試合が進んでいきます。前半にマルコスが退場しますが、以降も同じ展開が基本でした。
確信を持った勇気
4-3-2を採用したわけ
- スピードある選手に対し、背後のスペースを強く警戒
- キーパーまでくるハイプレスに辟易していた
- 幅を使った攻撃がほとんどない
4-4-1でなく、4-3-2にした理由はこんなところでしょう。スピードある選手を2人置くことで、攻守における脅威を維持します。これが1人だった場合、相手は5人も後ろに選手を割かなくていいですしね。ハイプレスの威力も弱まっちゃいますし。
2トップにすると後方が少なくなりますが、この日の柏は幅を使った攻撃をほとんどしなかったため、スライドで十分対応できると判断。狭く守ることで人数差をごまかします。
1人少ない状況ですと、オーソドックスには[4-4-1]にしますが、あえて[4-3-2]にすることで自分たちの攻撃的なスタイルを変えないメッセージもありました。中盤に3人配置することで、逆サイドを絞りながらボールサイドで守備をする戦術的な意味合いもありました。
松永監督がこのようにコメントしていました。柏のやり方や精神状態を見た上での対応だったでしょう。例えば、柏が後半から攻勢に出てウイングバックをガンガン上げてくる。ハイプレスを敢行するようになった。などの変化があった場合、裏目に出ていた可能性もありました。
『マリノスのやり方を嫌がってるのなら、同じやり方を貫けるはず』という信念があったからこそ、勇気ある決断ができたのだと思います。
人数差を感じなかった理由
- 相手の人数が多いので、守備時に空くところができてしまう
- そこを有効活用されると押し込まれた展開になる
- 攻撃でも数的不利なので、1人剥がさないと同数以下にならない
- つまり、対面がいるままパスを出してもチャンスになりにくい
一般的に、10人になった影響は大雑把にこんなところ。では、今回の試合はどうだったかというと、以下のような形だったように思います。
- パス速度がなく、位置的優位獲得を得意としてないので、守備における数的不利はほぼ感じない
- マルコスがいない分中盤が前に上がるので、ペドロ・ハウル周りが空く
- よりおさまりやすくなるので、柏の攻撃時間が増える
- 独力で相手を1人以上剥がす必要があるので、崩しの難度が上がる
優位な立ち位置を取れない柏
- 空いているスペースがあるけど、そこに走り込む選手がいない
- パススピードが遅いことと、サイドチェンジを蹴れる選手が少ないので、揺さぶりをかけにくい
- 数的優位で空いている箇所へボールを届けた頃には、相手もスライドしてきている
今の柏が抱えている課題は、自分たちがボールを繋いで相手を崩すこと。味方選手の動きに合わせ、立ち位置を決めるルールが少ない。そのため、即興的な攻撃が多くなってしまう。足元の技術不足により、スムーズな攻撃になりにくい。昨年はオルンガというスーパーマンでごまかしてましたが、今季はそうも言ってられません。
攻撃の改善に着手していましたが、うまくいかずに苦戦している。その様子が、上図の場面で如実に出ていたと思います。数的優位を優位性に変えきれなかったのは、これが一因だったでしょう。
このあたりきっちりしていたのが、去年アウェイの川崎。こちらが手薄になった箇所を的確に突いてきました。しかし、柏はそういったことができるレベルになかったと思います。結果として、マリノスは守備面で大きな問題を抱えることがありませんでした。
相手をベリベリ剥がすマリノス
- 前線のプレスが緩いので、ティーラトンは余裕を持ってパスが出せる状態
- 精度の高い左足で一気に相手中盤を剥がすことに成功
- 大然のスピードで2人を引きちぎる
- 2トップだったので、このタイミングでも中に選手がいた
ティーラトンの見事なパスにより、相手中盤を一気にかわす。相手のプレスが弱かったので、ティーラトンは精度の高いパスが出せました。敵の守備方法を見極めた上で、ティーラトンならいける。と踏んだ交代だったかもしれません。慧眼だったでしょう。
さて、一気にかわせましたが、相手は残り4人もいる状態。個の力で剥がす必要がありますが、大然のスピードがそれを解決。これで2人引きちぎることに成功。あとはゴールするだけです。
もし1トップなら、このタイミングでオナイウが中央にいることはなかったでしょう。大然が残りをかわさないと、シュートまでもっていけない状況に。これだとカウンターの成功率が大幅に下がりますよね。ここでクロスを上げられたのは、攻撃的な采配が奏功した証だったと思います。
この他にも、チアゴがドリブルで持ち上がる。小池が隙間を見つけてドリブル。ボランチがターンで相手を置いてけぼりにする。個々の力で相手を剥がすシーンは多く見られました。これも数的不利を感じにくくさせた要因の1つだったでしょう。
スタッツ
sofascore
SPAIA
Football LAB
トラッキングデータ
所感
1人少ないなら、その分走ればいいじゃない
この試合の走行距離は柏112kmに対し、マリノスは111km。スプリント回数は柏が171回、マリノスが201回になります。70分近く1選手欠けた状態なのにほぼ互角。スピードだけでなく、走力でも相手を上回っていたことがわかります。(もちろん互いのやり方に影響された部分もありますが)
また、柏の守備はマリノスのパススピードを遅らせるものではありませんでした。試合のテンポはマリノスが望むものだったでしょう。こちらの土俵で走り合いをした場合、優位に試合を進められますよね。最後まで主導権を握れたのではないでしょうか。
1人少なくなってもメンタルがブレなかったことは、大きく評価されることだと思います。普通は動揺して考えがチグハグになってしまいますからね。チームが分解せず、最後まで走り切って掴んだ勝利。今後大きな自信になるはずです。