【2021 J1 第20節】徳島ヴォルティス vs 横浜F・マリノス
スタメン
徳島ヴォルティス
- 前節から先発メンバーを5人入れ替え
- フィジカル的に優れた選手より、足元の技術がある選手を採用
- 宮代が負傷により離脱中
横浜F・マリノス
- 前節と同じ先発メンバーで臨む
- ティーラトンが負傷から復帰してメンバー入り
試合のポイント動画
【2021 J1 第20節 徳島ヴォルティスvsマリノス】
— ヒロ@hiro17 (@hiro121720_yfm) 2021年6月29日
✅徳島の守備
✅マリノスの攻撃 pic.twitter.com/5MkrjlnX5v
同じメンバーと違う守られ方
得意なスペースを消されるマリノス
- 守備の方向付けをされる
- ディフェンスライン背後のスペースを消される
鳥栖戦と同じメンバーで臨んだマリノス。対する徳島が行った守備は、鳥栖とは随分違うものでした。詳しくは動画を参照してください。
最前線にいる渡井と垣田は、縦への前進を阻害するのではなく、内側を切って外へと誘導。どちらのサイドで守備を行うかハッキリするので、他の選手たちが寄って包囲網を形成。自身はバックパスできないように退路を遮断することで完全に囲い込みます。
ボロノイ図(左図)を見ると一目瞭然ですよね。鳥栖戦のときは規制がかかっていなかった分、サイドバックが自由に動くことができました。しかしこの試合ではサイドに押し込められ、狭いスペースでの活動を強制させられてしまうことに。立ち位置を変えて相手を惑わすことがしづらくなりますよね。
また、ディフェンスライン背後のスペースを消す意識が高かったです。これはスピードのあるマリノス選手たちと駆けっこしたくないからでしょう。下りてボールを引き出せるオナイウはいいのですが、エウベルや大然は機能不全気味に。狭いスペースでのプレーや、周囲の選手と立ち位置を変えながらプレーすることはまだまだ。中々徳島を崩せません。
このように、マリノスが得意としているあらゆる走りを封じてきたのが徳島の守備でした。実はこの形、昨年ACLで上海上港が行ったものと似てたりするんですよね。
相手の手に余る物量でサイドを制す
- マルコスやボランチがサイドに寄って人数をかける
- 徳島はゾーン気味なので、人手が足りなくなる
- 空いた箇所に人が走り込んで突破を図る
中央が使えないので、ゾーン気味な相手に対して人数をかけることを選択。マルコスの判断は早かったです。ここにボランチが絡むことで、相手中盤だけでは対応しきれない状況を作り出します。数で相手を制するのはマリノスの十八番ですよね。
前述した通り、大然やエウベルの動きは不足気味でしたが、サイドを起点に相手ゴールへ迫れていたと思います。惜しいシーンもありましたよね。
後ろの安定と前線の不足
ビルドアップ能力に特化したメンバー変更
- ドゥレでなく福岡をセンターバックにすることで配球能力が上がる
- それと同時に後方へのスピードも補充。田向もこの意味合いが強い
- 中盤は岩尾が1人で組み立てをしていたが、藤田と渡井がいることで負担が減る
- 質の高いパスが出せる岩尾を高い位置に留めることで、チャンスが増える
この試合で先発メンバーを多く変更したポヤトス監督。その意図を試合後コメントにて語っていました。
前線にスピードのある選手がいるので、そういった選手を考慮した上で起用しました。また、自分たちのスタイルとして前方方向にプレスを掛けていくので、背後には単純にスペースをコントロールするためという意図がありました。
ここで言うスピード対策は単純な速さだけでなく、ボールを失なったときに起因する体勢の悪さも指していると思います。パス能力が高ければミスが減りますよね。また、バックパスも減るため、前を向いた状態でボールを扱える頻度が増加します。もしボールを失ったとしても、不利な状況での守備は減ることになるでしょう。
質の高いパスを出せる岩尾を、組み立てのリソースとして使う頻度も減ります。畠中がかろうじて止めた垣田の飛び出しは、彼からのパスでした。崩しの局面に力を使ってもらうことで、攻撃の迫力を出すことができるようになります。
ボールを保持できたことは、守備も含めてマリノスを大いに苦しめたことでしょう。
僕の印象ではミスがある中でも成功のほうが多かった。僕の中のイメージとしてはそう感じています。結果だけを見れば敗戦です。サポーターの方々が聞いたらどう感じるか分かりませんが、敗戦の中にも価値のあるプレーがあったり、チームが1つになっている部分があったり、今日の試合ではプラスの部分が多く出ていたのではないかと思います。
福岡も手応えをコメントしていました。前節のFC東京戦に比べると、自分たちの意思で試合を進められた時間は長かったのではないでしょうか。
一息に改善は進まないもの
- 右サイドはバトッキオが内側に絞る
- 外側は後方にいる岸本が担うも、上がるための距離がある
- 左サイドはリスクヘッジから、田向があまり高い位置を取らない
- 杉森やジエゴが独力で突破することが前進方法
- 狭く守るマリノスに対し、幅を使った攻撃があまりできない
組み立ての改善は見られましたが、崩しの局面では不足を感じました。オリジナルポジションを守り、ピッチを広く使う徳島の攻撃。しかしパスを1つずつ繋ぐため、各所で1対1が発生しやすくなります。そこで勝てればいいですが、マリノス守備陣を突破した回数はそう多くはなかった印象。
また、リスクヘッジに意識が傾いて、攻撃体勢の整う時間が長くなりがち。特に右サイドは岸本の上がりが大変。彼が準備できたころには、マリノスの守備も整っていることが多かったです。
ポジションを守るため、比較的捕まえやすい状態。そこに素早いプレスが加わります。徳島にとっては厳しかったでしょう。しかし、この強度が緩んだ最後の20分は五分の展開でしたが、それまでチャンスは片手で数えるくらいでした。
スタッツ
sofascore
SPAIA
Football LAB
トラッキングデータ
所感
実は少ないウイングのバリエーション
今回も狭いスペースでの仕事が求められたウイングたち。小さいスペースでも突破できたり、ボールが扱えたり、味方とのコンビネーションで突破できたり。そういったウイングが求められますが、うちでできるのは仲川がくらいですかね。しかし、彼はイップス気味で本調子からは程遠い状態。
次点はエウベルでしょうが、まだまだ壁があるように思います。周りがどのように動かくか、もう少し理解が必要だと思います。そして、大然は良さがほとんどなくなりますね。これは得意分野じゃないので仕方ないでしょう。(だからこそ中央で起用したいが、オナイウが好調なのもあって…)
恐らく今後も似たようなアプローチをするチームは多いはず。仲川の復調が今季の出来を左右するかもしれませんね。
求められるのはJ1におけるリスクマネジメント
徳島の守備は強烈でした。正直このスコアは妥当なものだったでしょう。しかしリスクヘッジと引き換えに、攻撃力を失っていた印象。後方のスペースをなくすことは、前への上がりを控えることになりますからね。
そうなると少ない人数で刺し切るか、リスクを冒して攻撃する時間を作る必要があります。こう考えると、宮代の不在は大きな痛手だったでしょう。縦への推進力がある彼をサイドに置きたかったはず。垣田、宮代、杉森という3つの槍が揃っていなかったのは、マリノスにとっては助かったという印象でした。
【2021 J1 第19節】横浜F・マリノス vs サガン鳥栖
スタメン
横浜F・マリノス
- 前節から先発メンバーを2人変更
- ティーラトンが負傷離脱中
- 喜田が負傷から復帰してメンバー入り
サガン鳥栖
- 前節から先発メンバーを3人変更
- ファン・ソッコが負傷離脱中
- パギと仙頭が凱旋
勇気と能力の差
現実を見すぎた理由
- 3-5-2から可変して2-1-5-2の陣形になる
- 後方はキーパーを上げて3バック化
- 左サイドはウイングバックが内側に入り、センターバックが上がる
- 両ワイドは外側高い位置を取る
- 仙頭はフリーマンになり、組み立てと崩し両局面に絡む
- ボールサイドのウイングバックを前に出し、後ろをスライドさせる
- 前線はボールサイドの選手をマンツー気味に捕まえる
攻撃ではピッチを最大限広く使い、フリーマンの存在で位置的優位と数的優位を獲得。守備は前から相手を捕まえるハイプレスを敢行。一言でいうならば、いつもの鳥栖を予想していました。
攻撃においては、狭く守るマリノスに対して幅を取れる。守備においては直近のルヴァン杯や天皇杯を見ると、ハイプレスに苦しむ様子がある。こういった理由から、対マリノスとして積極的にくると思っていました。
- 攻撃時に飯野の上がりは控えめ
- アンカーである松岡も高く上がることは少ない
- 小屋松は上がるが、それだけでは幅を使った攻めができない
- 最後方の数的優位は必ず維持
- アンカーも前に出ていかず、ディフェンスラインの前に位置する
- 小屋松は後方に戻ることを優先して5バックを形成
- ハイプレスは前の5人だけだが、圧力は低め
しかし、蓋を開けて見ると全然違うサッカーが展開されることに。攻撃時は上がりを控え、守備も前からではなく後ろを固める形。マリノスをリスペクトし、リスクを減らした形を採用しました。
- 攻守において可変するには時間がかかり、マリノスのスピードを考えると十分な時間がない
- それでも無理に可変すると、中途半端な状態で攻守を行わなければいけないことに
- 必然的に1対1の局面が増えるが、マリノスの選手相手には分が悪い
- 対人守備の強いファン・ソッコが離脱してることも、これに拍車をかける
従来の鳥栖のやり方だと、後方が相手フォワードと1対1になることが多いです。マリノスのスピードある選手たちに鳥栖の選手を当てはめたとき、タイマンで勝つのは難しいと判断したのでしょう。
攻守の切り替えも早いので、後方の上がりも控えないといけない。最終ラインの数的優位を担保することは、攻撃力とトレードオフになります。
最終ラインを下げなかったのは、自陣深くに引っ込むと殴り続けられる構図になるからだと思います。守備的にいくが完全に引っ込むことをしなかったのは、得点するチャンスを0にしないためだったでしょう。
スピードのあるマリノスさんの前線に対して、いつものハイプレスをやるべきかなというのを少し躊躇してしまった僕のミスなのかなと思います。今日のゲームを見てみて、クオリティーが高いので、前半はしっかりゼロで抑えて後半にというところでうまくいかなかったのは1つ、敗因だと思います。
試合後に金明輝監督がこのように話していました。このような選択を取ったのは、ファン・ソッコ不在が影響していたように思います。対人守備の強い彼がいれば、後方が同数になることをいとわず、ハイプレスをかけられたかもしれません。鳥栖の台所事情も、この試合に表れていたと感じました。
押し込んだ構図になった理由
- ボランチが積極的に前へ出て相手を捕まえる
- ボールサイドのプレイヤー全てに圧力をかける
- ボールホルダーにもプレスをかけ、考える時間と移動する時間を削る
- 最後方が同数になることをいとわない
マリノスは鳥栖と真逆の守り方をします。最後方が同数になることをいとわず、どんどん前に出ていく。そのスピードもあるので、相手は頭や立ち位置を整える前に選択を迫られる。
そのまま蹴られることが多かったですが、最終ラインの選手は1対1にほとんど勝っていました。このあたりも選手の能力差が表れたところですよね。
後ろを同数にしてもアグレッシブにボールを奪いにいきました。つないできたら奪えばチャンスになりますし、けっこう蹴られたシーンもありましたが、チアゴ(マルチンス)と(畠中)槙之輔が勝ってくれたので良い流れになったと感じています。
試合後に和田がこのようにコメントしてました。先ほどの金明輝監督のものと対照的ですよね。
- ハイプレスにいかず、後ろの安全を担保
- 前線の数が足りないので、相手が高い位置に進出する
- ボールを奪えたとしても低い位置
- しかも相手がたくさんいる状態でハイプレスを仕掛けられる
- 圧力に屈して前に蹴るも、上がるための時間が作れない
- 単調な攻撃は読まれやすく、1対1でも勝てないのでボールを回収される
- ここからまたマリノスの攻撃を受ける形に
マリノスが押し込んでいたのは、互いのやり方による影響でしょう。特に守備のやり方と、選手の質の差が前面に出たかなと。実力があると自信や勇気を持てるのは、サッカーだけに限らない話ですよね。
押し込まれていた鳥栖ですが、大きなチャンスを作れたのは相手を押し込んだときだったんですよね。ぺったんこになったマリノスに対し、仙頭がきいていました。
しかしこれを実現するためには、1対1で勝つか前線に人を割くしかありません。前者の望みは薄いので、鳥栖としては後者を取りたいところ。しかし、攻めにリソースを使いすぎると守備が不安になってしまう。鳥栖はこんなジレンマを抱えていたのではないでしょうか。
異なるサイド事情
- 飯野はスピードを活かし、一人でサイドを埋められることが特徴
- しかし対面は、よりスピードのある大然
- 攻守において先手を取りにくい
- 和田との1対1も減るので、彼の弱点が出づらい恰好に
- 抜け出せたのは右図のときくらい。これは和田との1対1に勝っている
- 小屋松は攻撃時に高い位置を取り、守備時は戻って大外を埋める
- この戻りが間に合わないと大畑の負担が増えることに
- 小屋松自身の長い距離の上下動を素早く行わないといけないので、体力消耗が激しい
内側に入ることが多い大然と和田。スピードを持ってウイングの仕事をするエウベルと、どこにでも顔を出す小池。ここに高く上がらない飯野と、高く上がる小屋松を加味すると、マリノスの攻撃が右サイドからのクロス中心になったのは合点がいきます。
特に飯野の上がりを控えさせるほど、大然がスピード持って守備していたことはきいていたと思います。上がっても追い付かれるし、上がりすぎると今度は守備で自分が追いつけなくなる。やはりスピードは正義です。
スタッツ
sofascore
SPAIA
Football LAB
トラッキングデータ
所感
所々に見えた選手の質の差
正直、鳥栖がハイプレスしてきた方が辛かったと思います。しかし、それもファン・ソッコがいなかったから叶わず。それだけでなく、疲労した仙頭に代えて樋口を下げると、崩しの質が下がってしまう。スピードで圧倒していた飯野が、大然に圧倒されることに。林や山下が畠中やチアゴに勝てなかったり。
替えのきかない選手が多いことや、純粋なぶつかり合いで勝てたこと。マリノスは選手を代えても同じようなことを維持できる。こういった面を見ると、清水戦に続いてスカッド差が如実に出た試合だったと思います。
元をたどると、これが理由でマリノスが押し込めたのかもしれません。リーグ戦という、長期に渡る戦いが難しいことを感じます。
次に当たるときは、互いにベストメンバーが揃ってる試合が見たいです。勇気と自信を持った鳥栖に勝ててこそ、本当に自分たちが強いと言えるはずですから。
【EURO2020】 観戦メモ Group League Day8
Group E スウェーデン vs スロバキア
両チームのベース
スウェーデン
スロバキア
- 4-4-2の布陣
- 4バック+Wボランチが後ろで回して縦に刺す機会を伺う
- ハーフェーライン付近にブロックを形成して待ち構える
試合のあらすじ
前半
- 互いに前から積極的に奪うわけではないので、ターン制のように攻守が入れ替わる構図になる
- 20分ぐらいからスロバキアは人を掴む守備に変更。後ろが重くなる分、スウェーデンが保持する時間が長くなる
- そこに前へ出ていくことを追加したスロバキア。これで逆に相手を押し込めるようになり、保持する時間が増える
後半
- スウェーデンはボランチの片方とフォシュベリが上下入れ代わるように動く。これでマークを攪乱
- スロバキアはクツカを少し高めに出し、ハムシクが前半同様下りてくる形に。こちらは大きな改善になっていない
- スウェーデンが優位に進める時間が長くなる。PKを決めて先制点を挙げる
- スロバキアは続々と選手を投入。前掛かりなシステムに変更するも追いつけず
Group D クロアチア vs チェコ
両チームのベース
クロアチア
チェコ
- 4-2-3-1の布陣
- 両SBが高く上がり、ボランチの片方が下りる。3-1のような形でビルドアップする
- 4-4-2ブロックを組み、ボールサイドにスライドして人を捕まえる
試合のあらすじ
前半
- クロアチアがゆっくり試合に入ったので、チェコが優位に試合を進める序盤
- チェコの捕まえる守備にビルドアップがままならないクロアチア。モドリッチが低い位置へヘルプすることが目立つ
- クロアチアが中央を固めるので、クロスから攻めることが多くなるチェコ
- プレスに苦しむクロアチア。ビルドアップがいまいちなチェコ。互いのGKが長いボールを入れる回数が多くなる
後半
- ベースは前半と同じだが、寄せの強さやスピードが上がったので、試合の激しさが増す
- 疲労から、徐々にライン間が広がるチェコ。クロアチアの前線がそこに入ってボールを受ける形が増える
- 選手交代によって互いに盛り返し、五分の試合展開に。そのまま引き分ける
Group D イングランド vs スコットランド
両チームのベース
イングランド
- 4-1-2-3の布陣
- SBの上がりは控えめ。4バック+アンカーで前進する
- 前線3トップは裏抜けを狙っている。出せる状況なら後ろから一発で展開する
- 敵陣のときは人を捕まえるハイプレスを敢行。自陣はケインを残して4-1-4-1ブロックで守る
スコットランド
- 3-4-1-2の布陣
- 3バック+Wボランチでビルドアップ。そこから外側に展開してクロスを狙う
- 前の5人は積極的に出ていく守備。後ろは構えるので、ライン間が空きやすい
- ブロックは5-3-2の形。ラインを高くしてコンパクトにする
試合のあらすじ
前半
- 基本的にはイングランドが保持してスコットランドが受ける形
- スコットランドは前で奪えたとしても、イングランドは4バックとアンカーがあまり上がらないのでショートカウンターを仕掛けづらい
- 対するスコットランドはチャンスになるとHVも上がっていく。このあたりリスクヘッジが対照的になっている
- 噛み合わせ的にイングランドの中盤とCBは捕まえられるが、SBは空く。そこを逃げ口にしているのでイングランドはボールを持てている
- また、イングランドのネガトラと戻りが早いので、スコットランドが人数かけて攻める頃には相手も整っている状態に
- スコットランドは後がない状況でのサッカー。翻って、イングランドは初戦でやるようなサッカー
後半
- 互いのやり方は前半とほとんど変わらず。決定的なシーンは少なめ
- 75分くらいからオープンになり、互いにゴールへ迫る回数が増える
- 互いに決まらず。スコアレスで試合が終わる