【2021 J1 第12節】FC東京 vs 横浜F・マリノス
スタメン
FC東京
- 前節から2人先発を変更
- システムを4-4-2へ変更
- 中村帆高が離脱中の右サイドバックには内田が入る
横浜F・マリノス
- 前節から1人先発を変更
- 引き続きレオはメンバー入り
試合のポイント動画
【2021 J1 第12節 FC東京vsマリノス】
— ヒロ@hiro17 (@hiro121720_yfm) 2021年5月4日
✅マリノスのビルドアップ
✅マリノスの逆サイド展開 pic.twitter.com/3Rz19AAUET
ライン間が開く東京のハイプレス
- 2トップと中盤の意思が揃わないことがある
- 最終ラインを高く保てないので、ライン間が開きやすい
- 前からのプレスをかわされたらサイドハーフが懸命に戻る
マリノス相手だからハイプレスをしたのではなく、今季の東京はどこが相手でもこのようなプレスを志向しています。ただチームとして意思統一ができているかというと、必ずしもそうではない様子。
もちろん失点は減らさないといけないけど、それ以前に全体が前線からどう守備にいくのか。前半も悪くはなかったけど、ここ数試合チグハグしている部分があった。今日の後半のようにみんなが前向きにボールを奪いにいく守備ができれば、どの相手にも自分たちが優位に立てると思う。
このコメントが示す通り、選手によって意識の差があることもあります。
前からプレスにいくのなら、ディフェンスラインは高く保ちたいです。そうでないと縦に間延びしますからね。ライン間を自由に使われると、ハイプレスを回避されたときリスクが高まります。
ただ、東京は渡辺とオマリのセンターバック。ゴールキーパーは波多野です。それぞれスピードに秀でてるわけではので、ディフェンダーの素早い帰陣やキーパーの鋭い飛び出しが難しい。そうなると後方のスペースを埋める手段は、事前にラインを下げ目にすること。やりたいことに対し、選手の特徴が伴ってない印象を受けます。縦に間延びするのは自然なことでしょう。
それでもハイプレスがかわされた場合の策はあります。それは、サイドハーフが懸命に戻ることです。かわされたら彼らが帰陣し、4-4のブロックをなるべく早く形成。両翼の走力によって綻びをごまかす形でした。
しかし、今回はリーグ屈指のスピードを持つマリノスが相手。サイドハーフが戻る前にゴールへ迫られてしまいます。先制点はこの状況が顕著に表れてたシーンの1つだったでしょう。
今までのやり方が通じない。そう判断したこともあり、飲水タイム後から東京は後方に構える方法を取ります。先ほど述べた守備陣の特徴からしても、これは理にかなったやり方。その代わり、攻める際は2トップが時間を作らないといけないので、彼らへの負担が増えます。ここで負けなかったのも、マリノスが試合を優位に進められた要因の1つだったと感じました。
見やすかった今季の取り組み
マリノスが今季から取り組んでることとして、ビルドアップと左右の展開を動画で取り上げました。これは東京相手にやった特別なことではなく、どの試合でも取り組んでいるものです。チーム全体の練度が上がったことと、スコア的に余裕があったので気付きやすかったのだと思います。
基本的には動画を見ていただければいいのですが、ビルドアップについてちょっと捕捉します。
- ボランチが上がるので、相手選手を敵陣方向に押し込められる
- 前進ルートが外側なので、ボールを失ったとしてもゴールから遠い
- しかし前進が外側なので、すぐ自分たちのチャンスになりにくい
- ボランチが下がるので、相手選手を自陣に引っ張ってくることに
- 前進ルートが内側なので、ボールを失ったらピンチになりやすい
- その反面、突破できれば大きなチャンスに繋がりやすい
昨季まではボランチが両方とも下がってビルドアップに参加していました。サイドバックも内側を取ることが多かったです。しかし今季は逆になっています。これが及ぼす影響は、どこで数的優位や位置的優位を作り出すかになるでしょう。
今季のやり方だと外側、昨季のやり方だと内側で優位性が生まれやすい。そのため、そちらから前進することが多くなります。それぞれにメリットデメリットがある中、今季はセーフティ寄りな志向のため、外側からになっているのでしょう。
これ以外に守備の原則も見えてきたのですが、現地で確認しないと確証に至れないので、また今度の機会に…
スタッツ
sofascore
SPAIA
Football LAB
トラッキングデータ
所感
準備していたことが結果に結実
東京が縦に間延びしやすいことは事前情報としてあったはず。相手ディフェンスラインを押し下げる意味も込め、前線の選手は他の試合に比べて下りる頻度が低かったように感じました。これは相手ハイプレスを回避して素早く相手ゴールへ迫るためだったでしょう。
こういった準備と、純粋なコンディション面で上回っていたことが結果に繋がったと思います。切り替え時の速度は明らかにこちらが高かったですよね。最後まで走り切る走力もありました。ほんと強いチームになったなと、強く感じられたいい試合でした。
【2021 J1 第11節】横浜F・マリノス vs 横浜FC
スタメン
横浜F・マリノス
- 前節から先発を1人変更
- チームに合流したレオがメンバー入り
横浜FC
- 前節から先発を4人変更
理想と現実と
横浜FCが本来やりたかったこと
2トップが伊藤とクレーべなので、彼らにボールをおさめてから攻撃を開始したかった意図が伺えます。背後に抜けるのなら渡邉やジャーメインを出すべきですしね。フォワードに当てたこぼれ球をサイドへ展開。または2トップから直接サイドに出してもOK。狙いはサイドの裏。そのために両翼も高い位置を取っていたのでしょう。
相手センターバックを釘付けにできる
なぜフォワードに当てるかというと、相手センターバックと競らせたいからです。直接サイドの背後を狙うとセンターバックがカバーする。なんてことよくありますよね。しかし一旦中央で競らせると、すぐカバーにいくことが難しくなります。なのでサイドに裏抜けした際、駆けっこするのは相手サイドバックのみということに。まぁ一言でいうなら、チアゴと競争したくなかったからということでしょう。2年前のアウェイ仙台戦と同じ流れでした。
こぼれ球を拾うこと、その後前線へ展開すること。これらを考えると、ボランチはあまり組み立てに参加させたくない。または、組み立てに参加したあとすぐ上がる走力が必要になります。なのでボールをさばける手塚より、走力のある齋藤が先発だったのでしょう。後述するプレス方法からもこの優先度になったものと思われます。
アクシデントと予想以上の速度
しかし齋藤は前半5分ほどで負傷交代。これにより手塚が急遽出場することになります。やりたいことをボランチの走力により実現しようとしていたので、これは大きな痛手だったでしょう。事前に準備してきたことと、選手特徴によるギャップが生まれます。試合途中だったので、すぐ修正も難しいですよね。
- 前線は事前の予定通り4枚が張った形になる
- 後ろで組み立てるも、マリノスのプレスが予想外に速い
- そのためボランチが両方ともビルドアップに組み込まれてしまう
- 前に蹴ってもこぼれ球を拾う人が少なくなる
- 蹴るのをやめたいが、サイドハーフが高いのでパスが出せない
予定通りに動く前線。相手の能力が予想外だったので、思った通りに動けない後方。前後でギャップができ、攻守に渡ってうまく連動できなくなってしまいます。
前線が高い位置にいるので繋ぐことができない。もう蹴るしかない状況ですが、ボランチも低い位置に吸収されている状態。せめてボランチが片方でも前にいるといいですが、マリノスのプレスがそれを許さない。その状況を走力でごまかすことも難しい。齋藤がいなくなった影響は大きかったと思います。
こういった状態になったので、以降はマリノスがボールを握る時間が増えていくことに。しばらくして試合が落ち着いたのは、こういったことも理由の1つだったでしょう。
ハイテンポと食いつきはお手のもの
横浜FCの守備方法
- まずは中央にブロックを作って構える
- センターバックへのバックパスがプレス開始合図
- 前にいる人を捕まえてパスコースを削っていく
横浜FCの守備は前にいる人を捕まえることが特徴です。これは撤退守備でも同じ。寄せのスピードが速く、当たりの激しさもあります。なので、マリノスがボールを持つ時間は少なくなることに。嫌が応にも試合のテンポが上がります。
ただ、ハイテンポはマリノスが望む展開。ボールのコントロール、動き出しの速度、共に落ちることなく攻めること可能。また、人についてくる相手も得意としています。相手を動かして空けた空間に入ることでボールを前進。相手ゴールに迫ります。
上図のシーンはその典型的なもの。前半は伊野波が前に出たところにオナイウが入り、背後を取ることが多かったです。先制点に繋がったPK獲得もこの流れでした。
攻撃は前後でギャップができてうまくいかない。守備も自分たちのやり方を利用される。横浜FCにとっては散々な状態だったでしょう。
1試合を見通した戦い方
後半になった横浜FCの修正
- 松尾が思ってたより小池におさえられた
- 特別なスピードがない畠中や、対人守備が得意でないティーラトンを狙いたい
- 縦への推進力とスピードのある選手を入れたい
後半にマギーニョを入れたのはこういった理由でしょう。前に出る圧力を強めたことも合わせ、ある程度奏功しました。しかし高丘のファインセーブなどがあり、得点を奪うまで至りません。
ビルドアップ時に小川が下がることなども見受けられたので、後ろから繋ぐことでハーフタイム打ち合わせたのだと思います。そういうこともあり、サイドからの攻めが目立つようになりました。
1試合を見たときの差
最後まで走れる走力
相手の出方に合わせてくっつくのは大きな疲労を伴います。それをあの速度と強度で前半からやっていれば疲れますよね。特に前述した理由から、ボランチは負荷が高め。本来は彼らがクタクタになるまでプレーし、60分くらいで手塚に代えるつもりだったのでしょう。それがアクシデントにより、ほぼ90分プレーすることに。
マリノスはJ1リーグで一番走るチームです。それはリーグ随一の走力があることとイコール。最後まで走る力はこちらが上回っていました。ボール保持やスペーシングが横浜FCとの差として取り上げられがちですが、走る能力も大きな差があった1つだと思います。
ベンチワークも含めたマネジメント
マリノスは3点を入れた段階で3枚替え。そこで入ったメンバーは水沼、天野、皓太になります。彼らに共通するのは、直前あったルヴァン杯清水戦で悔しい思いをしたこと。レギュラー奪取へのアピールも合わさり、やる気満々。3点をリードして気が緩みがちですが、ギラギラした選手を投入したことでチームの士気を維持。こういったマネジメント能力もボスは評価されていいと思います。
対する横浜FCはボランチの交代がおらず、前線やサイドバックを代えるのみ。純粋な選手層の厚さでも後塵を拝したと言えるでしょう。
スタッツ
sofascore
SPAIA
Football LAB
トラッキングデータ
所感
まざまざと差を見せつけた試合
これだけの試合スピードと強度だったが、マリノスはブレることなくボールを保持できたこと。90分間最後まで走り切れたこと。最後まで士気高く、攻撃の圧力を緩めなかったこと。選手層の厚さを含め、チームの差をまざまざと見せつけた試合だったと思います。
試合開始直後は相手の出方にバタバタしてましたが、齋藤が交代してからは支配できることに。敵のやり方を見てこちらが合わせたように見えましたが、個人的には相手がうまくいかなかったことが大きいと感じています。しかし、出てくる相手を利用できたのは相手に合わせてやれたこと。ここは今季のテーマに沿っていたでしょう。
ホームで戦うことの矜持
人を捕まえて前に出てくるやり方だったので、札幌戦と似たようなアプローチを取れば容易に攻めることができたでしょう。しかし、この試合ではそれをしませんでした。手法としては受け身な部類に入りますからね。「ここはホームなんだ、俺たちが積極的に振舞って勝ちにいこう」そんな気概を感じました。こういう矜持って案外大事ですよね。
【2021 J1 第6話】長男だから我慢できた
忍耐強さを求めるボス
さて、今日はみんなに我慢強さを求めようかと思う。去年はどんどん前に突っ込むやり方をしていたが、今回は相手のやり方を利用しよう。
相手のやり方というと、前から人を決めてアタックしてくることでしょうか?
そう、それだ!相手はこちらに合わせてピッタリとついてくるはず。しかしあのやり方は最後までもつものではない。そんなことできる人間はいい意味で化け物だよ。
なので、相手が疲れるまでこちらは勝負を仕掛けない。しばらくは落ち着いた展開を目指すんだ。相手が疲れてからが本番。足の動かないのを後目に一気呵成に攻めかかろう!
ということなら、相手が疲れるまでこちらは引きこもってやり過ごすということですかね?
違う!そんなのは自分たちのサッカーじゃない!!
違った…!?しかも怒られた…
失点のリスクを減らすだけで、得点の手を緩めるつもりはない。相手がピッタリつくことを利用し、自分たちの方へ引っ張っちゃおう。そして前線の選手たちは前に構える。するとどうなるだろう?
相手の選手たちが前と後ろでクッキリ分かれますね。そうか、自分たちについてくるということは、相手を誘導できということでもあるんですね。
間が空くってことは、俺の大好きな場所が増えるってことだよな。
おっと、俺もそういうの得意だって忘れて貰っちゃ困るぜ。
そういういことだ。君たち2人の好きな場所が空くので、そこを使って攻撃してくれ。
そこで受けるのも1対1になるはず。そう、漢同士のぶつかり合いだ!そこで勝てれば大チャンスになる。なるべく速く仕留めるんだ。
そうなると俺たちも上がって分厚い攻撃を仕掛ける感じですよね。
いや、君たちの上がりは控えてほしい。相手のカウンターは厄介だ。なるべく不利な状況を作りたくない。
まぁ、確実に攻撃できそうなら顔を出してもいいでしょ。
反撃は後半深い時間帯からだ。そのときになったら私からわかりやすい合図を送る。みんなそれまで落ち着いて試合を進めるように!!
走り回る札幌の選手たち
- 下がるマリノス選手たちにつく札幌選手たちは長距離走ることに
- しかし前線の選手たちは動かないので、後ろは動けず
- マルコスとオナイウの大好物ができあがる
- 彼らがそこに下がるので、宮澤やミンテはめっちゃシャトルランさせられる
さて、俺たちは後ろで回しますか。これで相手がどれだけくるか様子見かな。
おお!ほんとに食いついてくるんだな。俺らが低い位置だと相手は大変だろうな。
いけー!俺らは相手にピッタリついていくんだ!各自担当を離すなよ。
こいつらめっちゃ下がるな。その分走る距離伸びてちょっとしんど…
下がったマリノス相手についてきた札幌。ボスの予想通りですね。それならどんどん相手を引き込んじゃいましょう。
ちょっと違和感を持ちつつ、チームのルールに従う札幌選手たち。長い距離を走り回るのは少ししんどそうですね。
おー、すげー。ほんとに間が割れたよ。ここは絶好のスポットだな。
これなら俺も得意な位置でプレーできるな。どんどんボールを受けるぞー!
俺らのマーク相手やたら下りるな。まぁそれでもついてくけどさ。
一番後ろの選手だけどこんな前に出るのか…俺らのシャトルランちょっとエグくない?
マルコスとオナイウがめっちゃ下りるので、それについてく宮澤とミンテは大変。札幌選手たちの中でも屈指の距離シャトルランだったでしょう。ドレミファソラシドがトラウマになりそう…
そんなこんなで前半が終了。マリノスが安全に試合を運ぶことに成功し、0-0のスコアで折り返します。さぁ、勝負の時間はいつになるのでしょうか。
焦らずに虎視眈々と
予定通りに試合を運べたマリノス。しかし、後半早々コーナーキックから失点してしまいました。
やばいよ、やばいよ。先に失点しちゃった。すぐ点取って試合を振り出しにしないと…
そんな感じで焦ってたのが今までの俺たちだが、今日は一味違うぜ!
ねー。今日は焦ることないのよ。だって反撃の機会は絶対くるってボス言ってたもん。焦れずにそのときを待つ。俺らも大人になったんだぜ。
点を取られるとあたふた。焦って攻撃するも、陣形が崩れて失点を重ねる。あの頃は若かった…そう思えるほど、今のマリノスは大人に成長。ボスの言いつけを守り、虎視眈々と反撃の機会を伺います。
よし、みんな慌てず堪えてくれてるな。こいつらも成長したな…と、しみじみしてる場合じゃないか。そろそろ相手も疲れてきただろう。
後半70分ほどから札幌選手たちの足が止まり始めます。「ここだ!」ということで、ボスから合図が送られます。それは、選手交代によるメッセージです。
お、純くんをボランチに入れるんだ。てっきりマルコスの場所だと思ってた。これけっこう攻撃的よね。ということは‥‥いっちゃっていい感じですかね!
「我慢する時間はここまでだ」そんなボスのメッセージが通じたようです。ここから一気呵成に攻め立てるマリノスの選手たち。この時間帯でも先手を取れる走力に脱帽です。札幌の選手たちはヒーヒー言うハメに…
疲れた相手を後目に素早く動いて先手を取る
あいつらまだ走れるのかよ…こっちはもう限界だって…
ひえー!もう攻撃するだけでいっぱいいっぱいだよ…
よし、ボール奪ったな。攻撃攻撃。ササーっと上がっちゃうよー!
交代で入った俺はまだまだ元気。相手を置き去りにしちゃうもんね!
疲れて戻れない札幌。まだまだこれからなマリノス。ここからが俺たちのショータイムだ!ようやく訪れたマリノスのターン。ここぞとばかりに攻め込み、勢いそのまま逆転!まさに狙い通りの試合でした。
ボスからしたら計画通りといったところでしょう。だからこそ交代選手が活躍しましたし、ゴールのときあれだけ喜んでいたのだと思います。いやぁ、いい試合だった!大人の階段、ちょっと登りましたね!