hiro's football report

国内外、カテゴリー問わなずサッカーのマッチレポート風なものを掲載

【2021 J1 第3話】獣の呼吸使い多くない?

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柱の皆さま

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アビスパ福岡

  • ほとんどが獣の呼吸使い
  • 最前線にファンマ でる助を起用

横浜F・マリノス

  • ほとんどが水の呼吸使い
  • 大然は純然たる雷の呼吸使い

いざ福岡へ!

ベススタで襲い掛かる猪突猛進な柱たち

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伝令カラス

カァァァァ!次ハ、ベススタ!ベススタァァ!!

 カラスの伝令により、福岡はベスト電器スタジアムに訪れたマリノス一行。そこで待ち受けていたのは、獣の呼吸を使う隊士たち。突っ込んでくる勢いがすごいんだわ…

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山岸 ゆう助

猪突猛進!!猪突猛進!!

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田邉 そう助

猪突ゥ 猛進!!

 一直線にマリノス隊士に向かってくる福岡隊士たち。追いかけてくる速度が半端ないって…しかも全員口をそろえて猪突猛進って叫んでるからうるさいんですよね…

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扇原 たか治郎

くそっ!こうもうるさいと全集中の呼吸ができない…こちらに考える間も与えてくれない速度だし。ちょっときついな…

 うまく全集中の呼吸ができないたか治郎。どの技を出すか判断する時間もくれないので、毎回苦しい状況で攻撃をします

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扇原 たか治郎

くっ…すまない。こう治郎、あとは頼むぞ…

 苦し紛れで何とか出した水面切り。その想いをこう治郎に託します。しかし、福岡の隊士たちは無策に突っ込んでいたわけではありません。相手を徐々に土俵際に追い込み、次の選択肢を狭めていたのです。

 扇原が水面切りをするのは予測の範疇。相手の技がわかればしめたものです。ここで一気に襲い掛かってしまおう!

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重廣 たく助

ここだ!!獣の呼吸 捌ノ型 『爆裂猛進』

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渡辺 こう治郎

なにっ!?ここで加速するのか。これは…かわせない…!

 予想外の速さに戸惑うこう治郎。マリノス隊士たちが必死に繋いだ想いがここで途切れてしまいました。恐るべし、福岡の獣たち…

相手をほわほわさせるしん治郎

 猪突猛進な姿勢にたじたじなマリノス隊士たち。しかし、畠中しん治郎だけは違いました。相手の弱点を見破り、そこを突くような攻撃を開始します。

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POINT

天ぷらでほわほわさせてる隙に、打ち潮で一気に攻勢を強める

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畠中 しん治郎

あいつの好物って天ぷらだったよな。これ出せば気を逸らせるんじゃないかな?やってみよう!

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金森 たけ助

こ、これは…天ぷら、天ぷらだぁ!食うぞ!!

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畠中 しん治郎

なんか想像以上に食いついてきたな…ちょっと驚いたよ…まぁいいや、今のうちに打ち潮で一気に畳みかける!

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畠中 しん治郎

水の呼吸 肆ノ型 『打ち潮』!よろしく、大然逸!

 まさか好物でここまで動かせるとは…ちょっとビックリしましたが、効果抜群でなにより。その隙に一気に攻め込むマリノス。しん治郎渾身の打ち潮は大然逸に想いを託します。

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前田 大然逸

サンキュー、しん治郎。ここからは俺の番だ。いくぜ!雷の呼吸 捌ノ型 『煌輝頭』!!

 急に大然逸の頭部が輝き始めました。こんな技見たことない!そう、これは大然逸オリジナルの技なのです!!

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ドウグラス ぐろ助

うわっ、まぶしっ!?な、なんだこれ…!?

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前田 大然逸

フハハハハ!これぞ俺が編み出した技だ!どうだ、眩しいだろ。コラっ!太陽拳じゃねえかって言ったの誰だ!!怒らないから出てきな。

 まぁかわせればなんでもいいんですよ。ということで、福岡の猪突猛進を何とかかわすことができました。このあとしん治郎は、何度も天ぷらを与えて福岡をほわほわさせます。もう立派な職人ですね。いつか自分も食べてみたいなぁ…

猪突猛進の代償

息切れして守りで呼吸が使えない

 猪突猛進を合言葉にどんどん突っ込んでくる福岡隊士。しかし、それをかわされると後手にまわりがち。中には突撃に全身全霊を懸け、守りで呼吸を使えない人も出るほど

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ファンマ でる助

ぜぇ…ぜぇ…ちょっと猪突猛進しすぎたぜ…呼吸が…み、乱れ…

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山岸 ゆう助

お、俺もだ…攻撃に全霊を捧げてしまった…ちょっと守りは厳しいかな…

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仲川 てる治郎

なんだ?あいつら息切らして。あー、さては攻撃のときに呼吸使いすぎて守りが疎かになってるな。じゃあ今のうちにっと。

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仲川 てる治郎

水の呼吸 壱の型 『水面切り』

 本来なら戻り用の爆裂猛進が必要だったんですけどね。まぁどこに注力するかはチーム次第ということ。今回は攻撃に重きを置いていたのでしょう。

 しかし、随一の攻撃力を誇るマリノス相手にはちょっと辛かったかもしれません。自由を謳歌できるマリノス隊士たちは次々に攻撃を仕掛け、福岡を追い詰めることに成功。怒涛の攻撃を繰り広げました。

その神速、誰の目にも捉えられず

 まずはこちらをご覧いただきたい。この神速の一撃を目に捉えた者はいるのだろうか。

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水沼 こう治郎

水の呼吸 漆ノ型 『雫波紋突き』

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前田 大然逸

雷の呼吸 壱ノ型 『霹靂一閃・神速』

 水の呼吸と雷の呼吸、2つの最速技が織り成すハーモニー。究極に研ぎ澄まされた技の前は相手の守りを無力化しました。まさに神業と言えるものだったでしょう。

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伝令カラス

カァァァァ!次ハ、ニッサンニッサァァン!!

 こうして何とか福岡を突破したマリノス。今後も彼らの旅はまだまだ続く。次は日産スタジアムにて浦和と相まみえることに。その日まで技を研ぎ澄まして呼吸を整えておこう。

【2021 J1 第3節】アビスパ福岡 vs 横浜F・マリノス

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スタメン

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アビスパ福岡

横浜F・マリノス

  • エウベル、小池、高野、皓太がリーグ戦で初先発
  • 連戦だったオナイウはお休みだけど、チアゴは引き続き出場

試合のポイント動画

前で奪われはしたけれど

ボールを置く位置と体の向き

 この試合では自陣でボールを失うことが何度かありました。福岡のハイプレスに屈することもありましたよね。選手たちの動く位置などもそうなのですが、個人スキルの部分にも一因があると思います。

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POINT

体を開いて受けることでパスの選択肢が広がる

 例えばこのシーンでは、扇原のパスの受け方と、小池のパスの出し所が気にかかりました。

 小池からのパスを左足で受けたとき、ボールを内側に置いて体をサイドに向けた扇原。これだとマルコスに出すことや、前方へ蹴ることも難しくなります。必然的にパスコースは皓太のみに。これだと読まれやすいですよね。

 そこで、体を開き、ボールを外側に置いてみましょう。こうすることで、パスコースの選択肢が増えます。山岸との距離もあったので、縦に長いボールを蹴る余裕もあったでしょう。

 それをやりやすくするため、パスの出し手がコントロールしやすい足へボールを出すことも重要です。かなり細かいことですが、こういった技術力を磨くことも、相手のプレスをかわす上で求められることでしょう。

自陣で奪われたパターン

 福岡のハイプレスは動画の通りになります。これはオープンプレーでも、セットプレーでも変わりません。そして、マリノスが自陣でボールを失ったパターンを見てみると、ほとんどがゴールキックからのスタートでした。流れの中だとあまり奪われてなかったんですよね。

 なぜかと言うと、ゴールキック選手がセットした状態でプレーを開始できるからです。流れの中だと選手の位置がその都度違うので、状況に応じた対応が必要になります。例えば、ロングカウンターをしたが、マリノスに奪われてしまった。このときハイプレスを開始しようとしても、ボランチの上がりが間に合わずにマークが空く。なんてこともあり得るわけです。しかし、セットプレーならそれがなくなります。

 最初からセットされた状態は、自分たちがやりやすいスタートを切れるということ。対応の迷いはなくなりますし、不足の事態も起きにくい。奪いやすい状況でピンチを迎えていたので、引っかかったことを大きく悲観する必要はないと思います。(まぁかわせるようになってほしいところではあるのですが…)

下が空いてないなら、上から通せばいいじゃない

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POINT

浮き球を使うことで、相手のハイプレスを回避する

 この試合、マリノス右サイドでボールを失うことは多かったですが、左サイドはそこまで印象に残ってないですよね。その理由を探してみると、畠中の華麗なパスが目を引きました。

 こちらの選手を捕まえ、サイドに追い込もうとする福岡。両ボランチも前にくるほどの圧力の高さでした。しかし、これをひっくり返すとスカスカな中盤でボールを保持できますよね。浮き球なんかいいかもしれません。それを実行していたのが畠中でした。

 左右両足で自在にパスを出せる彼は、近場のパスコースが詰まったら上からフリーな選手へパスを出していました。1,2回でなく4,5回以上と、何度もこのチャレンジをしていたことが印象的。恐らく広島戦の反省を活かした形だったのでしょう。たった1試合でこういう姿勢が見れることは非常に頼もしいです。チームとしての成長ももちろんですが、個人としての成長も必要ですよね。今後ほかの選手たちも工夫が見れるようになると思います。

縦に広がる福岡

広島との違い

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左:広島戦 右:福岡線
POINT

2トップが中央を塞がないので、高い位置でサイドを変えることができる

 広島戦のときは2トップも自陣に戻ってコンパクトなブロックを敷いていました。しかし、福岡は2トップが自陣で守備をすることはそこまで精力的ではありませんでした。

 攻撃後、ハイプレスをかわされた後、それぞれ戻る速度が遅いので、中盤の前を通すことは容易い。高い位置でサイドを変えられるため、相手を振り回しやすくなります。これが、一旦押し込めるとある程度攻撃し続けられた理由でしょう。

ハイプレスの代償

 動画にもしましたが、福岡はハイプレスをかわされると縦に間延びしやすかったです。

  1. ハイプレスをかわされそうになるとディフェンスラインを下げ始める
  2. ライン間を埋めるため、中盤(特にボランチ)が全力で自陣に戻る
  3. ゆっくり2トップが戻ってくる

 大体このような手順で守備を行っていました。守備陣の背後を取られたくないから、下げるのが早いのだと思います。

 前線はハイプレスで高い位置へ。後方はすぐにラインブレイク。広がる2ラインをひた走るのは中盤の選手たち。ボールが行き来するたび、彼らはシャトルランを強いられることになります。重廣が13km近い走行距離を記録したのが、この状況を裏付けているでしょう。

 こういう状況があるからウイングは1vs1になりやすかったし、バイタルエリアは空きがち。動画にしましたが、小池のミドルは福岡の泣き所から生まれたものでした。そこへナチュラルに入っていける彼は素晴らしかったです。

スタッツ

sofascore

www.sofascore.com

SPAIA

spaia.jp

Football LAB

www.football-lab.jp

ラッキングデータ

www.jleague.jp

所感

自信を持った福岡

 開幕戦は名古屋にたじたじだった福岡。しかし、その後の札幌戦や清水戦で徐々にプレーが前向きに。特に清水戦は高い位置からのプレスがある程度成功し、ボールもそれなりに握ることができた。しかもビハインドから追いついたことで、チームは大きな自信をつけたことでしょう。

 このように自信をつけたことと、J1でのプレースピードに慣れ始めたことが、この試合の背景にありました。それを踏まえると、果敢にハイプレスを実行したのも頷けます。もし前節ボロボロにやられていたら、マリノス戦は前からこなかったかもしれません。ちゃんと文脈があるんですねぇ。

 奪うことに成功していたのも、相手の勢いを後押ししたはず。決めることができていれば…という状態だったので、次はそこが乗り越えるところなのだと思います。

ホームアドバンテージの有効活用

 この試合、選手たちがツルツル滑っていましたが、ベススタは他の試合でも同じ光景が見られました。しかも敵味方問わず…パススピードが出ないことから、芝も長かったのではないでしょうか。

 ビシャビシャに濡れたピッチに長い芝。これでもかっていうくらい足を取られる状況。やってる選手たちはものすごくしんどかったと思います。いつも以上に体力を消耗しているはずですし、足にくるので怪我しやすかったはず。何事もなく終えられてよかったです…

 このピッチは、選手のスピードボールのスピードを削ぐことができます。なるべくボールが行き交う形にしたくない福岡にとって、これがやりやすい状態なのでしょう。これもアウェイの洗礼ですよね…

なにはともあれリーグ戦初勝利

 苦戦しましたが、リーグ戦初勝利をおさめることができました。勝利は自信と信頼を生みます。勝てない状況が長く続いてしまうと、新しいやり方に疑問が生まれることも。そういう状態にならず、心の底から安堵しています。

 前半は苦戦しましたが、後半は相手が疲れたことでハイプレスが弱まりました。前半耐えれたことが、勝利を引き寄せたのでしょう。

 うまくいかなかったことは勝って反省です。次の浦和戦のとき、成長した姿が見れることを楽しみにしています。

【2021 J1 第2節】横浜F・マリノス vs サンフレッチェ広島

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スタメン

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横浜F・マリノス

  • マルコスが怪我から復帰後初先発
  • サイドバックは松原が先発
  • エウベルが負傷後初ベンチ入り

サンフレッチェ広島

  • 基本的には開幕戦の先発メンバーを踏襲
  • 両翼がエゼキエウと藤井に代わっている

相手守備陣の背後を突きたい両チーム

戦前におけるマリノスの狙い

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左:前節における広島の攻撃方法 右:マリノス戦前の狙い
  • 広島は攻撃時にサイドバックを高い位置に上げる
    サイドバック裏を突きたいので、スピードのある選手を両翼に起用
  • 岩田のボランチ起用は、3-3-1-3派生であることを意識させたいのも一因

 広島は前節仙台戦において、上図のような攻撃方法を取っていました。これはシマオマテが退場する前から行っていたものです。サイドバック裏が空くことに目を引かれるでしょう。

 当然マリノスもそこを狙いたくなります。そのために取った手法は、大然と仲川を両翼で起用することでした。今まで中央で起用されていた大然が、この試合ではウイングで先発。彼が今まで任されていた役割は、相手背後へのランニングが多くを占めていました。それはこの位置になっても変わらないはず。なので、ウイングとしての動きに期待したというよりは、中央でやっている仕事をサイドでもやってほしいということだったと思います。

 また、岩田をボランチで起用したのはルヴァン杯で素晴らしいパフォーマンスを見せたことも大きな理由でしょう。しかしそれだけでなく、3-3-1-3派生を選手たちに意識させたい、という事情もあると思います。

 足の速いセンターフォワードを両翼に置き、3-3-1-3の派生である布陣で臨んだこの試合。従来の4-2-1-3ではなく、新しいことに挑戦していると言えるはず。つまり、今までと同じことをしていればいいわけではないのです。これがこの試合におけるテーマの1つだったでしょう。

戦前における広島の狙い

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  • 高く上がったサイドバックの背後を狙いたいので、足の速いメンバーを両翼に据える
  • 相手ウイングを警戒するため、サイドバックの上がりは控えめにする

(開幕戦からMFを2枚変更した狙いは?)横浜FMの攻撃に対して、どこにスペースがあるか、そこをどう使うかは意識した。もう一つは、序盤戦でピッチでやれている選手をどんどん使っていくことで成長させていって、今年の過密日程や5人交代を味方に付けないといけない。ここは彼らにチャンスを与えて結果を得る。チームの良いサイクルにしたいという思いで使った。

 城福監督がコメントしていますが、ハイラインを敷くマリノスの背後を狙っていたようです。特にサイドバックの裏。これは常套手段ですよね。

 浅野も十分にスピードがありますが、エゼキエウや藤井も引けを取っていません。主力選手と同じ役割を遂行できると考え、彼らにチャンスを与えたのでしょう。レギュラーを取ってやるという発奮材料もありますしね。

 このように、両チームとも『相手サイドバックの背後をスピードのある選手で急襲する』という狙いが見える先発メンバーでした。

前半に見えた一筋の光

広島の攻撃と守備

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左:広島の攻撃 右:広島の守備
  • 攻撃はハイライン背後を狙うロングボールが主体
  • ロングボールなのでサイドバックが高く上がることを抑制できる
  • 守備は2トップが戻って中央封鎖を強く意識。外回しを強制する
  • ディフェンスラインも高く保ち、全体的にコンパクトな布陣を作る

特に前半で悔やまれるのはあの1失点だが、相手にペナルティーエリアにほとんど入らせることなく良い守備ができたのでゴールを先行できた。もちろんPKが二つあったが、ゲームの運び方としては我々のプランにかなり近い状況で進められた

 城福監督がコメントしてる通り、戦前の狙いをほとんど遂行できたのは広島でした。

 ロングボール主体の攻撃をすることもあり、自然とサイドバックが上がることを抑制。さらに、スピードのある選手たちを活かしてカウンターも狙える。多少前後に分断しても、後ろには4バック+Wボランチ6人がいるため、被カウンターもそこまで怖くない。

 セットした守備も堅固でした。2トップが自陣まで戻り中央封鎖を強く意識。そこにボランチが加わることで、ボランチ経由でサイドを変えられないマリノス。さらに、ハイラインを敷いてることもあり、縦にコンパクトな広島。マリノスは外側から狭い隙間を縫う攻撃を強いられました。

固定観念に囚われる選手たち

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POINT

足元でパスを出す選手と、スペースでボールをもらいたい選手で意識の差がある

 戦前予定していたカウンターも、広島のサイドバックがあまり上がらないため狙いにくい状況。そして、今まで戦ってきた4-2-1-3という布陣もあってか、足元へのパスが多くなる選手たち。

 近くの選手へ足元にパスを出す。これを繰り返したところで相手を大きく動かしにくいし、目線も変えづらいです。しかも、背後にボールがこないと思われると、相手はハイラインを取りやすくなるデメリットも。縦にスペースを作ることができないのです

 図のシーンは、野上がマルコスに出て背後が空いた状態。しかし、大然の背後に浮き球を入れるのではなく、最も近いマルコスと足元でパス交換した扇原。このスカッドの狙いを考えると、色々思うところがある場面でした。

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 このような状況を一変させたのが、マリノスの1点目。岩田のロングボールに大然が抜け出したものです。割と普通のシーンに見えますが、このときまで相手守備陣の背後を狙った浮き球はほとんどなかったのです。それを実行した岩田の素晴らしいプレーでした。

 ボールを持ったのが他の選手だった場合、近場にパスを出せないので下げていたかもしれません。岩田がこういう選択をできたのは、チームにいる歴がまだ浅いことも影響しているでしょう。後ろから繋ぐということは、ボス就任当初から口うるさく言われてきたことですからね。昔からいる選手ほど体に染みついていると思います。それを打ち破った岩田と大然。従来のマリノスに染まり切っていない彼らは、今後チームを引っ張るような存在になるかもしれません。

様変わりした後半の展開

後半になって変化した広島の守備

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  • 疲労からか、2トップの中央封鎖が緩くなる
  • 裏抜けを警戒してか、ラインブレイクが早くなるディフェンスライン
  • その結果、前半に比べて縦に間延びするようになる

 前半に比べ、2トップの守備意識に変化が見られるようになりました。戻る速度が遅かったり、中央の制限が緩かったり。中盤との距離も開きがちでした。また、裏抜けを警戒してか、ラインブレイクタイミングが早くなる守備陣。これらにより、縦に間延びするようになります。

 そのしわ寄せは中盤の選手たちへいくことに。上下動する距離が増えますからね。それも相まって、前半よりスペースを得られたマリノス。パス回しもスムーズになり、増々相手を押し込みます。

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左:前半0~20分 右:後半45~65分
  • 前半はディフェンスラインを経由してサイドを変えることが多かった
  • 後半はアンカーである扇原を経由してサイドを変えることができるようになった

 パスマップを見てもその差は明らかです。前半はボランチを経由してサイドを変えにくかったですが、後半はそれができるように。センターバック同士のパス交換が減ったことと、チアゴから松原へのパスが減ったこともそれを裏付けています。

前半から自分たちは支配していたし、後半は特に相手も後ろに下がっていたので、より支配できていた。

 ボスもこういうコメントをしていますしね。では、なぜ相手は後ろに下がったのでしょうか。それは、1点目が布石になっているはず。岩田が背後に蹴ったことで、高いラインを保つ怖さが生まれます。しかもそれで失点してますからね。あの得点は1点以上の価値がありましたし、そういうボールを入れるチャレンジをしたことが素晴らしかったです。

渡辺皓太が躍動した理由

 後半になって急遽出場した渡辺皓太。この日のヒーローは彼を挙げる人も多いのではないでしょうか。それだけ印象的な活躍を披露しましたよね。その背景には、彼が活躍できる土壌が整っていたように思います。

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  • 広島は間延びした布陣になっているため、各所にスペースができやすい状態
  • マルコスに後ろでのさばき役を任せることができた
  • 扇原に中盤の守備を任せることができた

 まず、広島が間延びしていたので、各所にスペースができやすい状態だったことが挙げられるでしょう。相手ブロックの隙間は皓太の大好物猫が袋にシャッと入るようにポジションを取ります。

 マルコスが出場していたのも追い風になったでしょう。彼が下りて組み立て参加するので、自分が後ろに行く必要が薄くなる。あとこれは副産物的なものですが、マルコスが不調だったこともいい方向に働いたように思います。というのも、広範囲に動き回る彼と被らないように気を遣う必要がないからです。ルヴァン杯では周りの動きに帳尻を合わせる位置取りをしていましたが、この試合は遠慮なく自由に動くことができていました

 自由に動けたのは、後方の守備を扇原に任せられることもあったでしょう。アンカーになったことで、前半ほど前に上がらずバランスを取るように。こういった安心感も大事な要素ですよね。

 以上より、自分の大好きなスペースが多くある中、誰にも何にも気兼ねすることなく動くことができる環境が整っていました。色々な偶然が重なった結果でもあるんですけどね。そしてそれに応えたあのパフォーマンス。非常に素晴らしかったです。

スタッツ

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Football LAB

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ラッキングデータ

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所感

理想と現実と

 ボスの理想は3-3-1-3から相手のやり方に応じて柔軟に変化させることだと思います。しかし、それが予想以上に難しかったと川崎戦で痛感。じゃあ難度を下げるかということで、最初から変化後の布陣を充てるようになりました。もちろん、負けるわけにはいかないですからね。

 たぶんこの試合もビハインドで折り返したため、ボスの直接的な指導があったのでしょう。だからこそキックオフ時にいきなりロングボールを蹴りましたし、扇原やティーラトンは背後を狙うボールが増えましたよね。

 昨季までは複数試合で様子見をし、選手たちに考える時間を多く取っていました。しかし、今季は前後半で対応。例年に比べるとボスの動きはめちゃくちゃ早くなっています。降格があることも理由の1つでしょう。ちゃんとボスは現実を見てるんですねぇ。

ちょうどいい塩梅を目指して

 先発メンバーの意味を考え、それに則したやり方で試合を進める。だからといって、この試合で裏抜けばかりを狙ってたら効果も薄れてしまいます。そうなると相手が背後を警戒するので、緩くなった前を使いたいところ。オナイウが下りて受けるスペースができる、と言えば具体的ですかね。そのときは足元につけるパスが効果的です。

 要はどのような塩梅にするかということです。それが今回の試合では、足元への割合が極端に多かった。だからこそ違う手を差し込んだ岩田のように、違う目線が欲しかったです。『あの手この手で攻められるテクにションになろう!』という柔軟性は今後も重要になってくるでしょう。