【2021 J1 第1話】OJTは辛いよ…
早番メンバー
川崎フロンターレ
- 前回出社時と同じシフトで今回も臨む
- 大島さんと塚川さんは体調不良のためお休み
横浜F・マリノス
- 期待の新入社員である樺山が早速早番で出社
- 直前まで誰が出るかわからなかったが、今回はエロいと評判の和田さんが出社
- 激戦区だった最後尾の座はオビが射止める
今季から行う新規事業と事前研修
今季から新規事業を行うことにしたマリノス。新しいことをするので、まずは社員に理解してもらう必要があります。そこで、石垣島と宮崎にて事前研修を行いました。(べ…別に研修という名目で遊んでたわけじゃないんだからね!)
はい。ということで、うちは今季から新しいことを始めます。この研修でしっかりと基礎を学ぶように!
ふむふむ…そういうことか。それならこういうやり方もできるかな。
えぇ~!?これって額面通り受け取るものじゃないのか!?この発想はなかった…
基礎を教えただけで応用できそうな社員もいれば、常識にとらわれない発想に驚く社員も。研修開始当初は戸惑いも多く見られました。
しかし、ただ内容を教えるだけでなく、ロープレも行って理解の浸透を図るマリノス。これが功を奏し、研修が終わるころにはある程度理解が進んだようです。
えー、これにて研修は終了。基礎は教えたので、後は応用できるよう各々で理解を進めておくように!
はい!頑張ります!
社員自らが必死に考えた結果
社員たちの考えた営業方針
され、事前研修を終えたマリノス。いよいよ本番を迎えることになりました。最初は川崎フロンターレさんへの営業になります。そこで部長からこんな言葉が…
今回の新規事業はいきなり君たちに任せたいと思っているんだ。いわゆるOJTというやつだね。
い、いきなり自分たちでですか。4年目とはいえ、新規事業なので不安が少し…
なに、大丈夫だ。研修で君たちに基礎を全て叩き込んだ。それを相手に応じて使い分けるだけ。こういうのは実戦が大事だ。さあ!やってごらん。
どうやら部長は社員たちに自分で考えてもらいたい様子。新しいことなので不安はありますが、研修期間に学んだことを発揮するチャンスでもあります。早番の社員たちが相談して作戦を打ち立てました。
オブラートに包んだ会話をさせよう作戦
川崎さんに会話の主導権を握られると厄介だ。なので、俺が会話の核心を突かせないようシミッチさんを見張るよ。
そうなると最初に話してる俺が会話の方向性を決められるな。ある程度限定するから、次に応対がきそうなところは事前に準備を頼む。
了解!図にするとこんなイメージかな。
- 天野がシミッチを監視し、ストレートな物言いをさせないようにする
- 発言の後戻しができないよう、オナイウが外堀を埋めていく
- 誘導した会話応対の事前準備をすることでスムーズに進める
そうだね。これはきちんと会話を誘導できるかが重要だ。みんなよろしくな!
弊社に呼んで御社を空にしよう作戦
こちらがプレゼンするときのことも考えておこうか。
そうだな。じゃあわざとこっちに招待して、手薄になった相手会社を畳みかけるなんてどうだ?
かなり攻撃的というか、リスクもあるやり方だね。それってこんな感じになるのかな?
- 魅力的な話題を自社で行い、多くの取引相手を招待する
- 手薄になった取引先に人数をかけて一気に商談をまとめあげる
それいいっスね!一気に状況がひっくり返るのがたまらないっス!!
よし!じゃあこの2本立てでいくか。今季初仕事だ、やってやろうぜ!!
どうやら作戦はまとまったようですね。彼らなりに考えて臨む今季初仕事。はてさて、どうなることやら…
打ち砕かれたプランとバラバラなチーム
選手たちは事前に予定してた作戦を決行。川崎さんは「うんうん」と相槌を打ちながら話を聞いていましたが、しばらくすると様子が変わってきました。こちらの提案に鋭い返しをバシバシ言ってくるではないですか。これにはマリノスの社員たちもたじたじ。
おい!こんなに鋭いツッコミくると思ってなかったぞ!
話術のうまさ、切り返しの速度。こちらに考えさせる暇を与えないほどとは…
ちょっと後ろ人手不足かも。たくさん自社に招待しすぎちゃったかな…
中々会話もいい方向に持っていけない。核心が突けないことを逆に利用されてる気がする…
どうやら自社はてんてこ舞いな様子。取引先の会話もうまくいってない模様。「もう最初に考えた作戦めちゃくちゃだよ!とにかくこの状況をなんとかしなきゃ…」各々がそう考えた結果…
社員それぞれが勝手に考えるので、チームとしてバラバラになってしまった
なにっ!?自社の人数が足りないだと!?それなら俺がヘルプに行こう。みんな、待ってろよ!
いやいやいや、それだと取引先の担当人数が足りなくなるだろ。純戻ってこーい!じゅーん!!
北の国へ旅立った純。残された和田さん。足りなくなる取引先の社員数。過剰になる自社の社員たち。もうね、各々が勝手に判断してバラッバラなわけですよ。めちゃくちゃになった状態で川崎さんにご満足いただくこともできず…OJTは散々な結果に終わり帰社。結果をポステコ部長に報告します。
大激怒の部長がくれたOJTのフィードバック
報告を受けた部長の怒り
なんだその仕事っぷりは!!ちゃんと研修で教えたよね!?それを応用すれば問題なくできる相手じゃないか!
たしかに研修のときに基礎は教えてくれたけど…それ以降、具体的にどうやるかまでは教えてもらってないような…
大体な、川崎さん相手に受けに回ったり誘導したりしても効果薄いことわかるでしょ!先方に考える時間与えちゃダメだって。アタックし続けるのみ!!
いや…川崎さん相手のマニュアルとか特にもらってなかったし…なんならOJTやるっていきなり言われたのも…
ちょっと散々な出来だったから、今回は私自らやり方を教える。次からはこうやるように!
はい!!
あと、すごいスピードで会話の切り返しができる大然と、ベテランの宏太を遅番で入れるから。彼らの助けも借りるように。
よろしくな!次は俺のスピードで相手に息つく暇も与えないぜ!
ポステコ部長が授けた策
怒りが有頂天に達したポステコ部長。ちょっと理不尽だけど、社員たちは大声で説教されるハメに…しかし、川崎さんとの商談はなんとしてもまとめあげたいもの。ポステコ部長自ら作戦を授けてくれました。例年こんなに早く部長からフィードバックがもらえることはありませんが、今回は特別だったようですね。
さて、部長が伝授した策とはどういうものだったのでしょうか。内容を見てみましょう。
- 自社担当と、取引先担当を明確に分ける
- 川崎さんが提案しそうになったらすぐに応対する(会話のペースを高速化)
- 自社に人を呼んだ際、手薄になった取引先付近にすぐさま連絡を入れる
あ、俺はハッキリと自社担当なのか。もっとそっち側に寄ってよかったんだな。
代わって入った俺は当然取引先だ。先鋒は任せな!
あ…大然入っても俺は取引先のままなのか。純みたいに自社ヘルプしなくてもいいのね。
これなら頭が整理されてやりやすい。>みんなの意識が揃うはず。次こそやってやろうぜ!
おう!!!
どうやらまとまることができたようですね。これで前みたいにバラバラになることもないはず。そう、>商談をまとめるにはチームワークが大事なのです。
授けられた策を実行して
はい、そこはこうでして。はい、もちろんそこはそうなります。けどこういうものもございまして。
相手に考えさせる時間を与えないほどのマシンガントークっぷり。さすが大然だ…
先鋒がこう言ってきたのなら、こうすればいいと思うよ。あー、待った!それはこうしないとみんなのやってることとズレちゃうから気を付けて。
水沼先輩って必ず後輩に声かけてくれるよなぁ。よく周り見てるし、内容もわかりやすい。うん、やっぱ頼りになる!
遅番で入った大然や水沼が早速活躍してるようですね。役割が明確化され、チームも一枚岩になれている状態。散々だった前回と比べて、見違えるように成果が出始めました。ただ、最終的に商談がまとまるところまでいけず。前回の失敗があまりにも痛かった…
うーん…結果、まとまらずか…
残念だけど、今回はここまでのようだね…前回の失敗が響いたか…
まぁ、ぶっつけ本番みたいなところあったし。次はうまくやろうよ!
そうだね。いつまで凹んでても仕方ない。次がんばろう!
初の実戦はほろ苦い形に終わってしまいました。しかし、長い今季はまだ始まったばかり。新しいことがいいきなり成功するほど、この世界は甘くないですし。これを糧に次へ繋げましょう!次回に乞うご期待。
【2021 J1 第1節】川崎フロンターレ vs 横浜F・マリノス
スタメン
川崎フロンターレ
- 4-1-2-3の布陣
- ゼロックスと同じスタメン
- 大島は怪我のため、塚川は脳震盪のため大事を取ってメンバー外
横浜F・マリノス
- 3-3-1-3のシステム
- 右WBには和田、左WGには高卒ルーキーの樺山が先発
- エウベルと喜田が負傷離脱。マルコスも大事を取ってメンバー外
試合のポイント動画
【2021 J1 第1節】川崎フロンターレ vs 横浜F・マリノス🎥
— ヒロ@hiro17 (@hiro121720_yfm) 2021年2月27日
✅川崎の追い込み漁
✅マリノスの守備
✅マリノスの攻撃 pic.twitter.com/wlh80QDQYr
自信をなくしたチームが取った行動
選手たちが考えて狙ったこと
前半に関しては、選手たちが自分たちで『川崎フロンターレ対策』を考えて実行したものだと思いました。その理由は後述します。ではまず、天野の試合後コメントを見てみましょう。
「相手が前からプレッシャーにくると分かっていましたし、その分自分たちは前に3人味方がいて、1対1をつくりやすいという想定のもと、キック力のあるオビ選手から一発で裏返して1対1にできるという狙いで準備をしてきました。良い部分も出せましたが、少し慌てて蹴ってしまいすぐに相手のボールになってしまうことも多かったので、修正が必要ですし、もっと自分たちからボールを呼び込んで、自分たちらしいサッカーが前半からできたらよかったと思います。」
攻撃における狙いを語っていました。それがうまくいかなかったようですが、全くできなかったのではなく、何回か成功していたこともありました。
前からくる相手を自陣に誘引して前後分断を誘う。前線で優位な状態が作れたら長いボールを入れてひっくり返す。
昨年にBunさんの書いたプレビューに記載されていますが、川崎フロンターレは相手を押し込むことで強みを発揮するチームです。前に人数をかけた攻撃を行い、攻守が入れ替わった時もそれを活かしてハイプレスを敢行。常に敵陣でプレーすることにより、全体の走行距離を抑えています。
ゼロックスの試合を見ても、この姿勢は今季も継続されていました。3トップと両IHが前に出て中央を固める。外にボールが出たらサイドバックも出てきて封殺(詳しくは動画を参照してください)。
前掛かりなプレスのデメリットは、前後分断しやすいことです。つまり、ハイプレスをかわされると、ディフェンスラインの前に広がるスペースが晒されてしまう。マリノスとしてはどうやってこの形を作るか考えた結果、コメントのようなやり方になったのだと思います。
前からくる相手を縦に伸ばすため、自陣側へ誘引。その状態で前にポカーンと蹴れば、盤面をひっくり返せます。しかし、ただ蹴るだけでは相手に勝ちにくいですよね。そこで、なるべく最前線に人を置くようにしてみました。同数の状況を作れば、スピードのあるマリノスが優位に立てることもはず。そしてこの狙いがあったからこそ、後ろでビルドアップが詰まっても中々人が下りてこなかったのだと思います。
しかし、相手のプレッシャーが予想以上にきつかったのか。または、ロングボールの精度が足りなかったからか。この試みがうまくいくことは、あまりありませんでした。
天野がシミッチをマーク。最前線で自由なオナイウが方向付けして退路を遮断。サイドで囲ってボールを奪う。
守備に関しては、天野がシミッチを監視することで、川崎に外回しを強制。最前線にいるオナイウが自由なこともあり、誘導先の方向付けや、退路の遮断をしやすい状態でした。
これはそれなりにうまくいくこともありましたが、かわされることも多かったです。その理由は、プレススピードが遅かったことでしょう。人がくるまで時間があるので、川崎の選手たちは出し先を考えたり、安定してボールをおさめることができる。また、IHや家長が下りて人数をかける時間もできます。結局、川崎の引き出しにあるやり方で対応されてしまいました。
失敗が続いたときに取った行動
最初の10分間は川崎が様子見していたこともあって、うまくいくことが多かったです。しかし、それ以降は狙い通りいかないマリノス。こういう状況で選手たちの頭によぎったのは、『ボールを保持して自分たちのサッカーをやろう』ということだったのではないでしょうか。最初は相手を誘引させるための保持でしたが、それが徐々にボールを失わないための保持に変わってきます。
- 天野が下がっているので、川崎は前に人をかけやすくなる
- 代わりに和田が上がるが、守備で歪みが生まれる
後ろで詰まるので、天野が下りるようになりました。しかし、本来狙いたいのは最前線での数的同数。トップ下の選手が下りるのは、相手に屈したと言えるでしょう。後顧の憂いがなくなった川崎は、前への圧力をかけやすくなります。自分たち本位に試合を進めているので、精神的な余裕も生まれるでしょう。
今までボールを保持することを強く叩き込まれてきたからこそ、この行動を取ったのでしょう。しかし、川崎がやりたい『前向き守備』を助長してしまう形になり、自分たちの首を絞める結果になってしまいました。
また、この場面では下りた天野の代わりに和田が上がっていました。しかし、彼は守備時ボランチに入り、天野が前に出るルール。攻守が入れ替わった際に動く距離が増え、守備が安定しづらくなります。
このように、うまくいかなったときに選手の取った行動がバラバラだったことが目立っていました。うまくいかないときにチームの方向性を決められる選手の不在を痛感。ピッチ上のキャプテンの存在はこういうときに響くんだなと思いました。
ボスが直接指示した後半
前半とは打って変わり、積極的になったマリノス。後半はやり方がブレることなく、最後まで完遂しきりました。前半は選手たちによって狙う方向がバラバラでしたが、後半はそれがなかった。このことから、前半は選手たちだけで考えたやり方。後半はボスが直接指示したやり方だったのだと思っています。
4-2-4に代えた理由
4-2-4は3-3-1-3から可変できる。
後半から4-2-4の形に変えましたが、実は3-3-1-3から可変することができるんですよ。選手の特徴を考えると、ボランチになれる和田を右WBで起用したことにも納得がいきますよね。
また、キャンプではリベロに畠中が入ることが多かったですが、この試合ではチアゴが起用されることに。これは川崎の特徴を考えた上での判断でしょう。三笘のカバーのため、中央に足の速い選手を置きたい。家長はスピードに特別な強みがある選手でないため、畠中でも追いつくことができる(その後に抜かれないかはまた別のお話)。こう考えることができますよね。
前と後ろに人がいる形なので、相手を前後分断しやすくなります。相手が前掛かりになるほど、こちらは裏返しやすくなることに。後半56分にオビが、61分にチアゴがロングボールを前線に蹴っていたのはそれを狙ってでしょう。
また、大然を最前線に入れたことにより、プレスの迫力が増加。意思統一できていたこともあり、全員の寄せるスピードが上がりました。これで余裕がなくなった川崎が選択したのは、それでも繋ごうとすること。三笘と家長は足元にボールをおさめることで強みを発揮しますし、ダミアンはスピードに秀でていません。ポカーンと背後に蹴っても効果は薄いので、その選択にも納得がいきます。実際カウンターの脅威になったのは、ほとんど三笘のドリブルからでしたしね。なので相手が苦し紛れに蹴ってくれるのなら、それはそれで嬉しかったりします。
全体的なプレースピードを上げ、両陣営深くに何度もボールが行き交う形は、マリノスが望んでいるもの。シャトルラン対決なら負けません!
ゼロックスのときと比べると、走行距離は約7km、スプリント回数は41回増加。特に中盤選手のスプリント増加が目立ちます。これは、前に人をかけて抜かれたとき、後ろを埋めるため必死に戻るからです。盤面をひっくり返すことにより、シャトルランを強いていたのはこのポジションの選手たちでした。前からいきたいけどオープンな展開にしたくない。そのやり方は、彼らの走りによって支えられていたということでしょう。
実はふんだんに盛り込まれていた川崎対策
- 猛スピードのプレスを行い、相手に考える時間を与えない
- 最前線に人を多く配置し、ロングボールで一気にひっくり返す(背走させたい)
- リベロにチアゴを起用したのは、三笘をカバーするため
- 和田を起用したのは、4-2-4の形にして最前線に人をかけたかったから
後半のやり方をまとめると、このようになります(攻守におけるやり方は動画を参考にしてください)。実は川崎対策がふんだんに盛り込まれていたんですよね。いずれも川崎があまり経験したことのないやり方でした。しかもこれはボス主導で行われているという驚きも。
後半になってフォーメーションを変えました。その理由は、以下のような可能性があると思います。
- 3-3-1-3における、川崎への対応策をボス自らが提示した(答え合わせ)
- 前半うまくいかなかったので、自信を回復させるために昨季のやり方に戻した
真相はどちらなのか、それはもう少し継続して見ないとわかりません。まだ1試合行っただけですしね。次の試合は、事前に広島の試合を見て臨みたいと思います。
スタッツ
sofascore
SPAIA
Football LAB
トラッキングデータ
所感
選手たちに考えさせる姿勢は継続
前半は選手たちに考えさせ、後半は自らが指示しました。ボスは日ごろから、やろうとしてることは実戦でしか身に付かないと言っています。キャンプが研修期間。リーグ戦前半がOJT。リーグ戦後半がOJTのフィードバック。こう考えると会社員のようで面白いですよね(笑)
今回はたまたま前後半で変わりましたが、次もそうなるとは限りません。なんとなくですが、余程酷い内容か大きなビハインドでない限り、ボスは選手たちにやらせるのではないかと思います。
いずれにせよ、『相手を見て柔軟に対応する姿勢』は今季のテーマになりそうです。そのための新システム導入なのかなと。道のりは長いですが、今度を楽しみにしたいと思います。
戸惑う選手とサポーター
「対戦相手は関係ない」、「ボールを捨てずに繋ぐんだ」、「自分たちのサッカーをする」こんなことを口癖のようにボスは言っていましたよね。それが今季になり、「相手ごとにバッチリ対策をするんだ」、「効果的なら最前線に蹴ってもいい」と言うようになりました。キャラ変がすぎますよね(笑)「言ってること真逆じゃないですか!」なんて思ったりもします。
このギャップに苦しむのは、古くからチームにいる選手たちでしょう。彼らはボスの哲学が染みついてますからね。反対に、新加入選手たちは適応しやすいかもしれません。実際、岩田は前半でもロングボールを狙い続けていました。今までの固定観念に囚われない柔軟な考えが、選手たちに求められるでしょう。
マルコスの不在と天野を残した理由
後半から大然を入れてうまくいったように、この試合のトップ下は最前線で立ち回れる選手が適切だったでしょう。しかし、それに合致するマルコスはコンディションの問題でメンバー外。代わりに起用されたのは天野でした。前でのプレーが期待されましたが、下がることが多くなってしまう結果に。これはボスの期待を大きく裏切ったことでしょう。
そんな彼を後半に残したのは、「君が前半プレーしてた内容はボランチの役割だよ」ということと、「本来やってほしかったのはオナイウや大然のようなプレーなので、それを見て学ぶように」ということだったと妄想しています。だって扇原代える理由があまりないですもん…
相手によって対策をするので、これからも「この選手がいれば…」と思うことはあると思います。そういったとき、代わりに出た選手がいかに期待に応えるかは、今季大事な要素の1つになるでしょう。
【19-20 セリエA 第27節】アタランタ vs ラツィオ
スタメンと攻守の狙い
アタランタ
- 3-4-2-1の布陣
- 敵陣守備はマンツーマン。自陣守備はリトリート
- アレハンドロ・ゴメスを中心としてボールを保持しながら前進を図る
ラツィオ
- 3-5-2の布陣
- 5-3-2のブロックを形成して人を捕まえる守備
- 強力2トップを活かした快足カウンターが主な攻撃
アタランタの守備とラツィオの攻撃
アタランタの守り方
- 敵陣守備はマーク相手を決めてどこまでも追いかける地獄のマンツーマン
- 自陣守備は5バック+両ボランチがエリア前にリトリートする
敵陣にボールがあるとき、アタランタはマーク相手を定めてマンツーマンで対応します。決めた相手がどこに動いても絶対についていくスタイル。自分の知る限り一番しつこいチームです。
最初は図の通りの対応でした。しかしフレウラーは、攻撃時にボランチの位置へ戻るので移動が多発。スペースは空くし、攻撃もスムーズにいかない…前半10分ごろからゴメスとマークを入れ替えることで改善を図っていました。
後方は数的優位を確保したいため、逆サイドのウイングバックを捨てます。ラツィオの強力2トップ相手に同数は怖いですからね…
マンツーマンをかわされ、自陣に運ばれるとリトリートに移行します。5バックと両ボランチは我先にと自陣エリア前に撤退。ブロックを作るというより、ゴール前を固めるという意識が高いです。
また、ラツィオは攻撃時に3バックとアンカーは前に出ず、相手のカウンターに備える。分業制なイメージを持ちます。
アタランタも攻守分業気味で、前線3トップは精力的に戻ることは稀。こちらもカウンターの機会を伺います。
マンツーマンに対抗するラツィオ
素早い動き出しで瞬間的に自由を得る
素早く動くことでマンツーマン相手が後手を踏み、瞬間的にフリーになる
マンツーマンの大変なところは、相手の動きに合わせることでしょう。相手が動く、自分がついていく。必ずこの順番で選手が動きます。そのため、ラツィオの選手が素早く動くと、後手を踏んだアタランタの選手は一瞬マークを外してしまうことに。
それを利用して前進したのがこの場面。特に前半早めの時間帯に多く見られました。主に下りるのはインモービレ。彼が下りるタイミングと、周りの選手が上がるタイミングはバッチリでした。連携度の高さが伺えます。
ただ、時間が経つにつれてこの動きが減少。中断明けのため、スタミナが切れる時間も早かったようです。これを継続できず、徐々にアタランタがボールを持てるようになりました。
相手を動かして意図的にスペースを作り出す
マンツーマンを利用して相手を外側へ動かし、中央にスペースを作り出す
決まった相手にどこまでもついてくるマンツーマン。ということは、自分が動けば相手もそこに動かせることになります。それを利用し、意図的にスペースを作ったのがこの場面。
リベロのアチェルビが外側へ動くことにより、中央にいたサパタを引っ張ります。空いた中央にアンカーであるカタルディが下りてボールを受ける。
センターバックとアンカーがポジチョンチェンジ。常識で考えるなら非常にリスキーで大胆な行動でしたが、マンツーマン相手には効果覿面。このように相手を動かしてボールをうまく進めることが何度か見られました。
守備切り替えによる穴の発生
マンツーマンをかわされると急いで戻るため、エリア前に固まりラインが平たくなる
マンツーマンをかわされたアタランタは急いで自陣に帰還。リトリートしてゴール前を固めます。『戻る』ということに意識が傾く選手たちは、前後のバランスを考える余裕があまりない様子。そうすると、ディフェンスラインは横並びになってぺったんこに。エリア前がポッカリと空いてしまうことも。
そこでボールを受け、強烈なミドルシュートを突き刺したミリンコビッチ=サビッチ。彼のシュートは非常に素晴らしいものでした。スーパープレーの背景に論理的なカラクリがある。こういうところもサッカーの面白いところですよね。
アタランタの攻撃
ビルドアップ時の基本配置
アタランタはビルドアップ時、左センターバックを外側に上げ、ウイングバックを前に押し上げる。それによってシャドーの位置にいたアレハンドロ・ゴメスが自由に動くことができます。右サイドは、ボランチが外に開き、ウイングバックとの中継点に。これによって外側に弧を描くような配置になります。
外からボールを回すことにより、ラツィオ中盤の脇を入口にしたいアタランタ。しかし、外一辺倒というわけではありません。左ハーフスペースはフレウラー。右ハーフスペースはマリノフスキー。さらにフリーロールのアレハンドロ・ゴメス。この3人でブロックに空く中央の隙間を伺います。
ボランチを外側に追い出して中央が手薄になる。センターバックをスライドさせることでアレハンドロ・ゴメスに自由を与える。守備時に相手フォワードと同数になることもいとわない超攻撃的なスタイルになります。
相手を留めるセンターバック
ジムシティが上がり、ラツァーリの注意を引く。高い位置に出たゴセンスに対応するのはパトリック。相手の最終ラインから2人を引っ張り上げることに成功したアタランタ。ゴセンスはフレウラーとのワンツーでスペースに抜け出してクロスを上げます。
センターバックが空いてのディフェンスラインを引っ張るという珍しい光景。超攻撃的な配置をしているアタランタならではでしょう。カウンターを恐れて上がらなくなることはなく、試合の最後までこの動きを見ることができました。彼らのスタイルが一貫している証でしょう。
パスマップから見るビルドアップルート
- 外回しでのボール回しが基本
- パス出しの中心はアレハンドロ・ゴメス
- 左サイドでのパス交換が活発に行われている
外回しでボールを回していることがわかります。特にウイングバックからシャドーにボールが入る頻度が高かったようですね。
パスを受けるのも、出すのも多かったアレハンドロ・ゴメス。彼がビルドアップにおけるキーマンだったようです。フレウラーと共に左ハーフスペースを蹂躙していたことが伺えます。彼らがいたからこそ、左サイドでのパス交換も頻繁にあったようですね。
ウイングバックの役割の差
- ゴセンスはシュート数が多く、ゴール前にも顔を出している
- ハテボアーはパス数が多く、サイド深くまで侵入している
前述した通り、ゴセンスは高い位置に押し上げられます。そのため、彼はクロスを上げるというよりは、ゴール前に入る頻度が高かったようです。シュート数も多かったことがわかります。
反対に、ハテボアーはサイドを上下動することが主な仕事。ゴセンスに比べ、深くまで侵入しています。またパス数も多く、ビルドアップにも顔を出していたことがわかります。
フィニッシャーとして崩しの役割が期待されるゴセンス。チャンスメーカーとしてサイドからのクロスが多くなるハテボアー。同じウイングバックなのに、こうも役割が違うことが面白いですね。
スタッツ
whoscored
https://www.whoscored.com/Matches/1415953/Live/Italy-Serie-A-2019-2020-Atalanta-Lazio
sofascore
understats
所感
最っ高に楽しい試合でした。相手の出方に対応して策を練るラツィオ。尽きないスタミナで相手を追い詰めたアタランタ。攻撃的な両チームが論理的に相手を攻略する様は非常に見ごたえがありました。しかし、それらをぶち壊すスーパープレー。理詰めで合理的に進めていたものが、得点に結びついたのはただの理不尽という。もう笑うしかないですよね(笑)個人的にこういうの大好きです!どうも自分は合理的な詰将棋だけだと物足りないみたいですね。稀に歩が飛車のように動くことがあると、爆笑しながら見てしまいます。
アタランタが逆転できたのはスタミナの差もあるのではないでしょうか。マンツーマンは自分本位でない動きでないため、同じ距離を動いてもスタミナ消耗は激しいものになります。それでも最後までやり切ったアタランタは驚愕に値するでしょう。素晴らしかったです。
また、アタランタ1点目がそうなんですが、ラツィオはファーへクロスを上げるとボールウォッチャーになる傾向がありました。それをわかってかどうかわかりませんが、アタランタは何度か狙っていたように感じます。自然とそういうことができるのは純粋に強さですよね。
あくまで個人的な感想ですが、中断明けに見た試合の中で群を抜いて面白い試合でした。自分の思うサッカーの魅力が全て詰まった試合だったでしょう。またこんな楽しい試合が見れることを期待し、残りの試合も楽しみたいと思います。