hiro's football report

国内外、カテゴリー問わなずサッカーのマッチレポート風なものを掲載

【19-20 プレミアリーグ 第28節】マンチェスター シティ vs アーセナル

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スタメンと攻守の狙い

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マンチェスター シティ

  • 4-1-2-3の布陣
  • ボールを保持して立ち位置で優位に立つ攻撃
  • 中盤は人を捕まえ、前線は相手センターバックを警戒する守備

アーセナル

  • 4-2-3-1の布陣
  • ボールを保持して立ち位置で優位に立つ攻撃
  • ハイプレスとブロック守備を陣地によって使い分ける

アーセナルのボール保持

アーセナルの攻撃とシティの守備

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アーセナルの攻撃
  • 4-3-3のような布陣で後方からビルドアップ
  • ベジェリンは大外高めの位置を取る
  • 前線の3人はそれぞれ相手ディフェンスラインの背後を狙う

 後方から丁寧に繋ぐ意識が見られるアーセナル。ゲンドゥージが少し下がり、全体として4-3-3のような形でボールを回します。

 前線の3人はそれぞれ相手ディフェンスラインの背後を狙っており、ビルドアップにはほとんど参加しません。また、パス精度の高い選手が左サイドに多いことから、そちらのサイドに偏る。ボールの動く範囲はかなり狭印象でした。

シティの守備
  • マフレズはマリを強く意識する
  • その結果ティアニーは空くことが多い
  • ギュンドアンがゲンドゥージに出ていくことが多い
  • 背後にスペースがポッカリと空いてしまうことがリスクになる

 これに対するシティの守備はアーセナル左サイドの封鎖でした。

 マフレズがマリを強く意識することで圧力を強めます。また、中央からの進路を塞ぐため、ゲンドゥージにはギュンドアンが出て対応。

 しかし、この対応により空く箇所ができることに。マフレズの前進はティアニーをフリーに。ギュンドアンの飛び出しは中央にスペースを生み出します。このリスクを負うかわりに前で奪う。これがシティの採った選択でした。

ギュンドアンの背後を使うアーセナル

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  1. マフレズがマリに出ていく
  2. ティアニーが空くので、そこへパス
  3. デ・ブライネとウォーカーがカバーで飛び出す
  4. ギュンドアンが出ているので中央が空く
  5. 下りたエンケティアへパス
  6. オーバメヤンが背後を取るもボールは出ず
浮くティアニーとギュンドアンの背後

 マフレズがマリを見ることでティアニーが浮く。そこへパスを通されたとき、カバーのためにデ・ブライネとウォーカーが出てきました。

 このときギュンドアンも前に出ていたため、中央にポッカリとスペースが空きました。ゲンドゥージを捕まえず、中央を守っていればここは空かなかったでしょう。

 空いたスペースに下りたのはエンケティア。ティアニーは彼へパスを出します。

前線3人の裏抜け

 エンケティアにパスが出たとき、オーバメヤンはガルシアの背後を取って抜け出します。しかし、そこへパスが出ることはありませんでした。

 この他にも、前半35分ごろにもオーバメヤンが抜け出すもパスが出ない…オフサイドもサカが3回、エンケティアが2回ありました。抜け出す選手と、ボールの出し手で意識が揃っていなかったことが伺えます。タイミングと場所を整理していればもう少し効果的な攻撃を仕掛けられたかもしれません。

パスマップとパス位置

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アーセナル前半のパスマップとパス位置
  • 左サイドに偏ったパス回し
  • 後方でのパス回しがほとんど
  • 外回しでのパスが多い

 パスマップとパス位置を見ると、左サイド後方に偏っていることがわかります。

 マリとレノ間でのパス交換が多い。ティアニーやセバージョスでパスが止まっていることが見受けられるなど、外回しを強いられて前進に苦戦していた様子が伺えます。

 右サイドへの展開はゲンドゥージを経由し、ベジェリン、サカ、ウィロック、エンケティアのルートだということも表れています。左で作って右へ展開。ここまではいったようですが、フィニッシュまで中々持ち込めなかったようですね。

シティのボール保持

アーセナルのハイプレス

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  • 中盤はマーク相手を決めて人を捕まえる
  • サイドの選手はサイドバックセンターバック中間を取る
  • ディフェンスラインは後方に構えてあまり前に出ない

 シティ陣内にボールがあるとき、アーセナルはハイプレスを敢行。

 中盤は相手を決めてマンツーマンで対応。特にギュンドアンに対するマークは厳しく、ゲンドゥージが常に監視している状態でした。

 また、サイドの選手は相手サイドバックセンターバックの中間を取ります。ただ、サイドバックへのコースを消す意識が薄く、脇を抜かれることが何度も見られました。恐らく、外切りを意識させながらセンターバックへ寄せたいのでしょうが、まだ馴染んでいないようですね。

 ディフェンスラインはあまり前に出ることはありませんでした。抜かれるリスクを嫌った形になるでしょう。相手フォワードが下がっても深くは追いかけていませんでした。

ゲンドゥージに迫る2つの選択肢

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POINT

ゲンドゥージの近くに下りることで、ギュンドアンへのマンツーマンをぼかす

 最初はマンツーマンに苦戦していましたが、いつまでもそのままじゃないのがシティ。前にいるシルバ、デ・ブライネ、ジェズスがゲンドゥージの近くに下がってくることで二択を迫ります

 こうすることでギュンドアンが徐々にボールを持てるように。敵陣侵入がスムーズになったことで、シティの押し込む場面が増えていきました。

抜かれるウイングの背後

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POINT

中間を取るウイングの背後サイドバックが突く

 前述した通り、ウイングの立ち位置もうまく利用されていました。

 サイドバックが死角を取ってフリーに。前線からの落としを受けることでサイドを突破する場面が何度か見られました。

 この他にもサイドに開くだけでセンターバックからパスを受け取れていました。前線からパス方向をうまく制限できていないことが気になりました。

アーセナルの自陣守備

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  • 4-4-2のブロック守備
  • ゾーンで構え、前にきた相手を捕まえる
  • ギュンドアン明確なマークがいなくなる

 相手が自陣まで迫ったとき、アーセナルは4-4-2のブロックを形成。撤退守備に切り替えます。

 ゾーンで構え、自分の前にきた選手を捕まえる守備。ガンガン前に出ていくので、シティの選手が動くと、アーセナルの選手を動かすことができます

 また、ハイプレス時はギュンドアンを塞いでいましたが、撤退時は明確なマークが不在に。2トップの守備が甘いこともあり、比較的自由にボールをさばくことができるようになります。

 この守り方、特にゲンドゥージの負担が大きく、ハイプレスから撤退守備への切り替え時に長い距離を走ります。また、ハーフェーライン付近でボールを回されると、守備方法の切り替え判断が難しいです。自分が出ていくか、それとも待っているか。ゲンドゥージが悩んでいる姿が印象的でした。

自由を謳歌するギュンドアン
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POINT

ギュンドアン明確なマークがいないので、ボールを自由にさばける

 敵陣に押し込むと自由になるギュンドアン。この場面ではラポルテが持ち上がることでエンケティアを引っ張る。これだけでもうフリーです。シルバやマフレズとパス交換。抜け出したスターリングに長いパスを送るなど、長短のパスを自由自在に繰り出します

パスマップとパス位置

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左:前半21分までのパス 右:前半22分からのパス
  • 最初は後方でのパス回しが多いが、22分からは前でのものが多くなっている
  • ジェズスやギュンドアンのパス数が22分になってからは増加

 シティのビルドアップに変化が見られたきっかけは、マリが負傷して試合が止まったときでした。

 最初は後方でのパス回しが多く、前進に苦しんでいました。ラポルテとエデルソンでのパス交換の多さ。ギュンドアンのパス数の少なさがそれを物語っています。

 しかし、試合再開後は前でのパスが増えたことがわかります。これは前述したゲンドゥージのマンツーマンをぼかし、ギュンドアンがボールに触れる回数が増えたことが影響しているでしょう。ジェズスのパス数が増えていることから、彼が下がってヘルプにきたことが伺えます。

 ギュンドアンがボールを回せると敵陣に侵入する回数も増加。その成果は数値にも表れていました。前半32分から前半終了までで7本ものシュートを記録。それまでのシュート数が2本だったことを考えると、劇的に変わったことがわかります。

スタッツ

whoscored

https://www.whoscored.com/Matches/1376213/Live/England-Premier-League-2019-2020-Manchester-City-Arsenal

sofascore

www.sofascore.com

understats

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所感

 開始当初はアーセナルのプランがハマっていたように思います。うまくシティのビルドアップを妨害していましたよね。しかし、自分たちの攻撃はいまいちでした。ビルドアップ参加人数の少なさと、左サイドに偏ることでボールを回せるエリアが限定的になっている。これが主な原因ではないでしょうか。

 解決策としては右サイドにもパスを出せる選手を入れることでしょうが、選手獲得ができないので非現実的。今できることは、後ろに長いボールを蹴れる選手を配置。後方に時間とスペースを作り出し、相手ディフェンスラインの背後にロングボールを蹴って抜け出すことだと思います。前線にスピード豊富な選手がいるので狙いやすいのではないでしょうか。

 相手の出方を理解し、時間経過と共に対応策を打ち出したシティはさすがでした。互いに配置を重んじたサッカーをするので、退場者が出てからは一方的な展開になりましたね。そこできっちり試合を決められるのも力があるチームだという証でしょう。

 また、ギュンドアンがゲンドゥージに対して出ていく守備について。自身がマンツーマンで対応されるので、ゲンドゥージがトップ下だと思ったからではないでしょうか。それなのに相手はやたら下がってボールを受ける。彼自身、頭に?を浮かべて対応していたかもしれません。その後、出すぎずにスペース管理を優先した切り替えはさすがだと感じました。

 負傷者や退場者が出たアーセナル。ここが万全だったときを見たかったという思いが少なからずあります。その対戦はまた来季。次の試合も今から楽しみです。

【19-20 ラリーガ 第28節】マジョルカ vs バルセロナ

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スタメンと攻守の狙い

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マジョルカ

  • 4-4-2の布陣
  • サイドハーフの突破によるサイド攻撃が主な攻め方
  • 守備時は縦横に圧縮したコンパクトなブロックをミドルサードに形成

バルセロナ

  • 4-3-3の布陣
  • ボールを保持して相手を動かしながらパスコースを探る
  • 守備時は即時奪回を目指しつつ、取れなければ4-4-2のブロックを形成

中央を封鎖するマジョルカ

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 最大の特徴は2トップの片方が必ずブスケツをマークすることでしょう。センターバックがボールを持ったら片方が寄せ、相方はブスケツをマーク。逆のセンターバックが持つようになったら、ブスケツのマークを入れ替え、役割が反転する。

 2トップのスライドが間に合わない場合はボランチが前に出てブスケツをマークする。後方に構える選手たちもボールサイドにスライド。これらのことより、中央を使われたくない意思が強く伝わってきました

 ボランチは別の役割も担っています。それは相手インサイドハーフ封じ。フレンキーとビダルをマークし、なるべく外側でボールを回させようとします。

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POINT

アンカーを消し、逆サイドを捨てるほど横圧縮することで中央を封鎖する

 うまく狙いがはまるとこんな具合にバックパスを強いることができていました。

 逆サイドを捨てるほど空けていますが、そこは相手が後ろに戻す時間でスライドします。開始早々に失点してしまいましたが、前半14~36分まではバルセロナのシュートを0に抑えるなど、一定の効果がありました。

サイドへの圧力を強めるバルセロナ

 この中央封鎖に対して、サイドで優位性を確保しようとするバルセロナ。様々な工夫が見られました。いくつか見ていきましょう。

センターバックの持ち上がり

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POINT

センターバックの持ち上がりにより中央封鎖を意識させてサイドを空ける

 センターバックが持ち上がることにより、相手に中央を意識させます。このときフレンキーがハーフレーンにいることがポイントです。ここを経由されるのはマジョルカからしたらご法度。中央への意識がより強まります。これで大外にいるアルバへのパスコースが空くことに。サイドに起点を作ります。

相手サイドハーフを留めるインサイドハーフ

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  1. フレンキーがロドリゲスを留める
  2. メッシがフリーで下りてくる
  3. メッシにボールが入ったとき、相手の注意がそこへ向く
  4. 視線が外れたフレンキーが背後を取る
  5. サイドバックがカバーに入る
  6. 外にいるセルジ・ロベルトがフリーになるのでそこへパス

 インサイドハーフが相手サイドハーフの近くに立ち、相手を留めるシーンもいくつか見れました。こうなると外にいるサイドバックより、内側にいるインサイドハーフの方がマーク優先度が高くなります。泣く泣く外側を空けるも、そこへパスを出されると後手に回ることに。セルジ・ロベルトやアルバからのクロスは多く見られましたよね。

多彩なバルセロナのビルドアップ

 相手の対応を把握した前半14分ごろから、バルセロナの中盤が動きます。

インサイドハーフレイオフ

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POINT

2トップ脇インサイドハーフが下りて縦パスを引き出す

 この動きは前半14分ごろから見られるようになりました。

 自分にマークがつくことがわかったブスケツは安易に下がることしません。あえて中央付近にいることで後方にスペースを作っていました。主に空くのは2トップの脇。そこにインサイドハーフが瞬間的に下りることで、縦パスの受け口になります。余裕があればターン。難しいならバックパスすることにより角度をずらします。

 この動きをフレンキー、ビダルの両選手が行っていたことから、インテリジェンスの高さが伺えました。

アンカーが下りて3バック化

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POINT

センターバックが広がることでサイドバック高い位置を取れる

 前半24分ごろになると、今度はブスケツが下りてくるようになりました。センターバックを開かせて間に落ちる。いわゆるサリーダ・ラボルピアーナというやつです。こうすると何が嬉しいか。それはサイドバック高い位置に押し上げられることです。

 例えば、前半35分ごろは、セルジ・ロベルトが高い位置を取っています。そのため、ウイングは中央に絞れることに。メッシを中央に移すことで、司令塔としての役割を期待できます。これが布石となり、メッシがアルバにパスを出せたからこそ、追加点が生まれたのだと感じました。

パスマップから見るバルセロナのビルドアップ

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左:前半0~14分 右:前半16~30分
  • センターバックとキーパーでのパス交換が多い
  • 中央からのルートは少なく、全体的にU字になっている
  • セルジ・ロベルトからメッシやビダルに多くのパスが出ている
  • ブライスワイトはパス本数が少ない

 キーパーを含めたディフェンスラインでのパス回しが多く、U字型になっていることがわかります。このことから、マジョルカの中央封鎖守備はある程度成功したと言えるでしょう。

 では、U字の出口はどこになっていたのか。それはセルジ・ロベルトだったようです。彼からメッシやビダルに多くのパスが出ていることがわかります。ここをきっかけに攻撃をしていたみたいですね。

 なぜ前半14分で区切ったかというと、ちょうどこの時間からクチョ・エルナンデスとダニ・ロドリゲスがポジションを入れ替えたから。

 入れ替え後、セルジ・ロベルトへのパスは減っていますが、代わりにフレンキーやブスケツへのパスが増えています。このことから、メッシのいるサイドを封じたい意図があったように思います。代わりに中央を使われるようになったので、これをどう評するかは意見が分かれそうですね…

 また、ブライスワイトとグリーズマンのパス本数を見ても面白いです。前者は数が少なく、主にフィニッシャーとしての役割に傾倒していたことがわかります。後者は数が多く、繋ぎ役になっていたことが伺えます。それぞれキャラクターが違うようですね。

両チームのシュートについて

 この試合、両チームのシュート数のみを見るとほぼ互角の本数でした。しかし結果は0-4。xGも大差がつきました。そこで、両チームのシュートについて少し掘り下げたいと思います。

シュートを撃った位置について

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シュートエリアと位置(橙:マジョルカ 青:バルセロナ
マジョルカ
  • 約半数がエリア外のシュート
  • 枠内シュートはエリア外からの3本のみ

 マジョルカのシュートは約半数がエリア外。枠内シュートもそこから3本を記録。敵陣深くまで侵入することができなかったようです。

 サイドから突破してもクロスを相手に跳ね返される。カットインしてもシュートをブロックされる。バルセロナ中央を意識した守りに苦戦していましたね。

バルセロナ
  • 全てのシュートがエリア内から
  • 撃った位置もほぼゴールエリア幅内になっている

 何と全てのシュートがエリア内からでした。横もほぼゴールエリア幅。ゴール正面から多くのシュートを浴びせていたことがわかります。

 こちらは敵陣深くへ侵入でき、決定的な位置でシュートを撃てていたようです。それが得点やxGに表れたのでしょう。

シュートを撃った選手について

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シュートを撃った選手内訳(左:マジョルカ 右:バルセロナ
マジョルカ
  • 最多は久保の4本
  • ブディミルが2本と、フォワードが放ったシュートが少ない

 最多本数は久保が記録。彼はチャンスメイクだけでなく、フィニッシュにも多く関わっていたことが伺えますね。

 ブディミルとポゾがこれに続きます。シュートを2本以上撃ったフォワードはブディミルのみでした。フォワードが放ったシュートが少なく、フィニッシュに絡めていないことがわかります。彼らへどうボールを渡すか。そのデザインがあまり見れませんでした

バルセロナ

 対するバルセロナはメッシ、ブライスワイト、スアレスと、多くのフォワード陣が上位に顔を出していました。こちらはフィニッシャーが役割を果たせていたと言えるでしょう。ゴールまできちんとデザインされていたことが伺えます。

スタッツ

whoscored

https://www.whoscored.com/Matches/1394359/Live/Spain-LaLiga-2019-2020-Mallorca-Barcelona

sofascore

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understats

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所感

 バルセロナの多彩な攻め方に圧倒される試合でした。あの手この手を使い、相手に慣れを与えさせない。ここにえげつなさを感じました。特に相手のプランを読み取ってからの動きは秀逸。強制的に次のプランへ移させるほどの頭の良さが、チーム全体に浸透しているようですね。

 1つ気になるのは、グリーズマンブライスワイトの役割。前述した通り、グリーズマンはチャンスメイカーになっています。これは監督として想定内なのか、それとも違うのか。選手起用法などをこれから数試合見ていきたいなと思いました。

 マジョルカサイドハーフに大きな負荷がかかるサッカーをしているなという印象でした。攻撃においてはドリブルやパスなどでチャンスを創出。守備では2トップがカバーしきれないエリアを見るなど、役割が多いように思います。中央から崩すプランが見られなかったことから、攻撃の成否は彼らの出来に左右されるでしょう。

 チャンスメイクということに久保は応えていましたが、守備でやられてる姿が目立ちました。あれだけ攻撃を任せるのなら、もう少し守備負担を軽減できる仕組みを作ってあげたいものです。が、この過密日程でそんなことできないので、どう付き合っていくかでしょうね。

 さて、リーガも戻ってきました。次の週末にはプレミアも再開される予定です。徐々に欧州サッカーが戻ってきている喜びを噛みしめつつ、今後も多くの試合を楽しみにしたいと思います。

【19-20 ブンデスリーガ 第27節】ボルシアMG vs レバークーゼン

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スタメンと攻守の狙い

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ボルシアMG

  • 4-5-1の布陣
  • 可能なら縦に早く攻める。難しいなら後方で回して縦パスを伺う
  • マンツーマンを基本として守る

レバークーゼン

  • 3-4-3の布陣
  • ボールを奪ってからカウンターが基本。難しいなら後方で回してボールを前進させる
  • 前線からマークを決めて寄せる。前からが難しいなら5-4-1のブロックを自陣に形成

スタッツから見た前後半の比較

 「レバークーゼンボルシアMGを抑え込み、多くの時間優位に立って試合を進めていた」この試合を見た自分の印象です。

 しかし、1試合通してのスタッツを見てみると意外と拮抗しているではありませんか。印象と事実にギャップがありますよね。ここでもう1つ思い出します。「前半はレバークーゼンが封じていたけど、後半はスタミナ切れからか、オープン気味だったな」

 ということで、前後半に分けて両チームのスタッツを比較してみます。

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両チームのスタッツ比較(左:前半 右:後半)

 前半に関して見ると、レバークーゼンが圧倒しています。ボール保持率が上回っており、シュートも倍近く。ボルシアMGのカウンターやビッグチャンスは0。圧倒的です。

 しかし、後半はボルシアMGが盛り返します。シュートが倍近く、ビッグチャンスの数も多い。ボール保持率も五分まで回復しています。

 以上より、試合を見た印象と重ね合わせると、前後半それぞれ以下のようになるでしょう。

前半

レバークーゼンボルシアMGに対して優位に試合を進めていた

後半

互いのスタミナ切れからオープンな展開となりボルシアMGが盛り返した

 縦に素早い攻めを得意とするボルシアMGオープンな展開は彼らにとってうってつけ。後半に盛り返せた理由はそこにあるのでしょう。スピード勝負の殴り合い。後半はこのような展開でした。こちらはわかりやすいでしょう。

 翻って、前半はレバークーゼンボルシアMGに対して何か作戦を立てたように思えます。こちらに見どころが詰まっていると判断し、本稿では主に前半の事象に対して取り上げたいと思います。

レバークーゼンの守備

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 レバークーゼン前から積極的にプレスをかけていきます。基本的には人に当てはめるマンツーマン対応でした。

 シャドーは両センターバックを封じることが基本です。最初はサイドバックとの間に立って待ち構える。相手がセンターバックやキーパーにバックパスしたらスイッチオン。前に出て捕まえにいきます。

 フォワードは相手ボランチの間で待ち受け、ボールが出そうな方をマーク。空いたもう片方は後ろから味方が前に出てつきます。また、サイドはウイングバックセンターバックが前に出て捕まえる。

 ピッタリ1対1になるようマークしますが、キーパーだけは無視。ゾマーが持ったとしても、レバークーゼンの選手たちが前に出ていくことはほとんどありませんでした。前からボールを奪うことではなく、相手の前進経路を消すことが目的だったのでしょう。最終ラインが高く、縦にコンパクトなこともあり、ボルシアMGはパスコースが中々見つからない。苦し紛れに大きく蹴り出すことが多かったです。

迷いが生まれるボルシアMGの守備

3バックへの対応方法

 ボルシアMGレバークーゼンの噛み合わせから、守り方に何通りかの方法が考えられます。ポイントはサイドハーフが誰を見るかでしょう。

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ウイングバックを見る場合

前方が1対4の数的不利になり、高い位置で奪うことが難しくなる

センターバックを見る場合

後ろに控える味方サイドバックが相手ウイングバックかシャドーかの二択に晒される

 前進を恐れてウイングバックを見る場合、前方では数的不利が生まれます。1トップに対して、相手は3バックとキーパーを合わせた4人。高い位置で奪うことが難しくなります。

 では、前から奪おうとセンターバックまで出ていきます。すると、前は同数になり阻害することができますが、後方が不利に。サイドバックが空いてウイングバックとシャドーの二択を突き付けられてしまいます。

 この試合では、テュラムは相手センターバックに寄せることが多く、ホフマンは下がり目でウイングバックを気にする位置にいました。ある程度のリスクを冒しても前から奪いたかったのでしょう。

カバーによるマークずれの連鎖

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  1. テュラムがタプソバに出ていく
  2. ヴァイザーが空くので、アランギスを経由してパスを送る
  3. カバーのためベンゼバイニがヴァイザーに出ていく
  4. ベンゼバイニの背後が空くので、ベララビが下がって受ける
  5. カバーのためエルヴェディが前に出ていく
  6. エルヴェディの背後が空くので、ハヴェルツが裏に抜け出す

 前に出ていったテュラム。これをかわされたため、カバーの連鎖が起きる。すると芋づる式にスペースも生まれていきます。このズレを利用したレバークーゼンのパス回し。同じようにボールを進めることは何度か見ることができました。カウンターのみでなく、きちんと繋ぐこともできるチームだということがわかります。

3列目の背後を取るハヴェルツ

 ボルシアMGは攻撃時にサイドバックが、守備時にはボランチが高い位置を取ることが多いチームです。ハヴェルツは攻撃時、彼らの背後に顔を出すことが多かった印象です。

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 カウンター時にはサイドバックの背後を突く。相手ボランチが前に出たらスッと下がり縦パスを引き出す。彼が偽9番のように見えたのは、相手ディフェンスライン背後に抜け出すのではなく、最終ラインの隙間に顔を出すことが多かったからでしょう。

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レバークーゼンの平均ポジションとハヴェルツのヒートマップ

 平均ポジションとヒートマップを見ても、低めの位置になっていることがわかります。彼が下がって中継点となり、スピードのある両シャドーが背後に抜け出していたことが伺えるでしょう。

パスマップから見るビルドアップ

ボルシアMG

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  • 左サイドでのパスが多い
  • ギンターから縦パスがほとんど出ていない
  • 前線への共有はベンゼバイニからテュラムがほとんど

 エルヴェディ、ギンター、ベンゼバイニ、ノイハウスの4人で頻繁にパス交換していることがわかります。左サイドが中心だったようですね。

 しかし、縦パスはベンゼバイニからテュラムのものがほとんどで、他に展開できていないことがわかります。攻めあぐねている様子が表れていますね。

 また、前節のパスマップと比較すると、ギンターの縦パスがほとんどないことがわかります。後方からくさびのパスを入れるのは彼の仕事。ここを塞がれると途端ビルドアップに困るボルシアMGですが、見事に対応されたようですね。

レバークーゼン

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  • ウイングバックを入口として前線へ展開している
  • アランギス、ハヴェルツ、ベララビ、ヴァイザーの4人で多く回している
  • 後方はキーパーを経由して左サイド、センターバックを経由して右サイドに展開している

 センターバックからの縦パスが少なく、両ウイングバックから多いことから、彼らが入口となって前線へ展開していることがわかります。繋げ先はボランチやシャドーが多い。

 また、右サイドはアランギス、ハヴェルツ、ベララビ、ヴァイザーの4人で多く回しています。ここでパス交換し、崩していたことが伺えます。ハヴェルツが絡んでいることから、彼が下がり目で中継地点なっていたこともわかりますね。

 後方で相手を伺うルートは主に2つ。『タプソバ⇒フラデツキー⇒ドラゴヴィッチ』『ドラゴヴィッチ⇒ベンダー⇒タプソバ』です。これがそれぞれ左右へ展開する道順だったようですね。

スタッツ

whoscored

https://www.whoscored.com/Matches/1388407/Live/Germany-Bundesliga-2019-2020-Borussia-M-Gladbach-Bayer-Leverkusen

sofascore

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understats

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所感

 ボルシアMGをうまく抑え込んだレバークーゼンでしたが、決して全て前からハメきれたわけではありませんでした。マークをズラされ、前進されることがちらほらと。しかし、はじき返すことには成功していたように思います。

 撤退時に5-4-1の守備を実施。ゾーン寄りにシフトして中央を塞ぐ。中盤の脇を通されても後方に控える5バックで対応しきれていたように見えました。

 また、ボルシアMGビルドアップに詰まると、前線の選手たちが後方へ下がることが多いです。縦パスを受けようと味方を助ける意識なのでしょう。これによって最初のラインは突破できますが、そこから先は5バックを相手にしてプレアとテュラムの2人。という構図が多かったように思います。ギンターを塞ぐのはビルドアップを停滞させるだけでなく、前線の選手を押し下げる効果もあるようですね。

 しかし、後半のオープン展開はさすが。スペースができると多くの選手たちが躍動していました。ボルシアMGの強さは縦への早さなんだなと再認識。消耗の激しいサッカーですが、次節どうなるかを楽しみにしたいと思います。