【19-20 ブンデスリーガ 第27節】ボルシアMG vs レバークーゼン
スタメンと攻守の狙い
ボルシアMG
- 4-5-1の布陣
- 可能なら縦に早く攻める。難しいなら後方で回して縦パスを伺う
- マンツーマンを基本として守る
レバークーゼン
- 3-4-3の布陣
- ボールを奪ってからカウンターが基本。難しいなら後方で回してボールを前進させる
- 前線からマークを決めて寄せる。前からが難しいなら5-4-1のブロックを自陣に形成
スタッツから見た前後半の比較
「レバークーゼンがボルシアMGを抑え込み、多くの時間優位に立って試合を進めていた」この試合を見た自分の印象です。
しかし、1試合通してのスタッツを見てみると意外と拮抗しているではありませんか。印象と事実にギャップがありますよね。ここでもう1つ思い出します。「前半はレバークーゼンが封じていたけど、後半はスタミナ切れからか、オープン気味だったな」
ということで、前後半に分けて両チームのスタッツを比較してみます。
前半に関して見ると、レバークーゼンが圧倒しています。ボール保持率が上回っており、シュートも倍近く。ボルシアMGのカウンターやビッグチャンスは0。圧倒的です。
しかし、後半はボルシアMGが盛り返します。シュートが倍近く、ビッグチャンスの数も多い。ボール保持率も五分まで回復しています。
以上より、試合を見た印象と重ね合わせると、前後半それぞれ以下のようになるでしょう。
互いのスタミナ切れからオープンな展開となりボルシアMGが盛り返した
縦に素早い攻めを得意とするボルシアMG。オープンな展開は彼らにとってうってつけ。後半に盛り返せた理由はそこにあるのでしょう。スピード勝負の殴り合い。後半はこのような展開でした。こちらはわかりやすいでしょう。
翻って、前半はレバークーゼンがボルシアMGに対して何か作戦を立てたように思えます。こちらに見どころが詰まっていると判断し、本稿では主に前半の事象に対して取り上げたいと思います。
レバークーゼンの守備
- センターバックにはシャドーがマンツーマン気味につく
- フォワードはボランチ間に立ち、ボールが出る方へ寄せていく
- 後方にいるボランチは空いた片方のボランチをマークするために前に出る
- 両サイドはウイングバックとセンターバックを前に出すことで対応
- 最終ラインを高くし、縦にコンパクトな陣形を作る
レバークーゼンは前から積極的にプレスをかけていきます。基本的には人に当てはめるマンツーマン対応でした。
シャドーは両センターバックを封じることが基本です。最初はサイドバックとの間に立って待ち構える。相手がセンターバックやキーパーにバックパスしたらスイッチオン。前に出て捕まえにいきます。
フォワードは相手ボランチの間で待ち受け、ボールが出そうな方をマーク。空いたもう片方は後ろから味方が前に出てつきます。また、サイドはウイングバックやセンターバックが前に出て捕まえる。
ピッタリ1対1になるようマークしますが、キーパーだけは無視。ゾマーが持ったとしても、レバークーゼンの選手たちが前に出ていくことはほとんどありませんでした。前からボールを奪うことではなく、相手の前進経路を消すことが目的だったのでしょう。最終ラインが高く、縦にコンパクトなこともあり、ボルシアMGはパスコースが中々見つからない。苦し紛れに大きく蹴り出すことが多かったです。
迷いが生まれるボルシアMGの守備
3バックへの対応方法
ボルシアMGとレバークーゼンの噛み合わせから、守り方に何通りかの方法が考えられます。ポイントはサイドハーフが誰を見るかでしょう。
前方が1対4の数的不利になり、高い位置で奪うことが難しくなる
前進を恐れてウイングバックを見る場合、前方では数的不利が生まれます。1トップに対して、相手は3バックとキーパーを合わせた4人。高い位置で奪うことが難しくなります。
では、前から奪おうとセンターバックまで出ていきます。すると、前は同数になり阻害することができますが、後方が不利に。サイドバックが空いてウイングバックとシャドーの二択を突き付けられてしまいます。
この試合では、テュラムは相手センターバックに寄せることが多く、ホフマンは下がり目でウイングバックを気にする位置にいました。ある程度のリスクを冒しても前から奪いたかったのでしょう。
カバーによるマークずれの連鎖
- テュラムがタプソバに出ていく
- ヴァイザーが空くので、アランギスを経由してパスを送る
- カバーのためベンゼバイニがヴァイザーに出ていく
- ベンゼバイニの背後が空くので、ベララビが下がって受ける
- カバーのためエルヴェディが前に出ていく
- エルヴェディの背後が空くので、ハヴェルツが裏に抜け出す
前に出ていったテュラム。これをかわされたため、カバーの連鎖が起きる。すると芋づる式にスペースも生まれていきます。このズレを利用したレバークーゼンのパス回し。同じようにボールを進めることは何度か見ることができました。カウンターのみでなく、きちんと繋ぐこともできるチームだということがわかります。
3列目の背後を取るハヴェルツ
ボルシアMGは攻撃時にサイドバックが、守備時にはボランチが高い位置を取ることが多いチームです。ハヴェルツは攻撃時、彼らの背後に顔を出すことが多かった印象です。
カウンター時にはサイドバックの背後を突く。相手ボランチが前に出たらスッと下がり縦パスを引き出す。彼が偽9番のように見えたのは、相手ディフェンスライン背後に抜け出すのではなく、最終ラインの隙間に顔を出すことが多かったからでしょう。
平均ポジションとヒートマップを見ても、低めの位置になっていることがわかります。彼が下がって中継点となり、スピードのある両シャドーが背後に抜け出していたことが伺えるでしょう。
パスマップから見るビルドアップ
ボルシアMG
- 左サイドでのパスが多い
- ギンターから縦パスがほとんど出ていない
- 前線への共有はベンゼバイニからテュラムがほとんど
エルヴェディ、ギンター、ベンゼバイニ、ノイハウスの4人で頻繁にパス交換していることがわかります。左サイドが中心だったようですね。
しかし、縦パスはベンゼバイニからテュラムのものがほとんどで、他に展開できていないことがわかります。攻めあぐねている様子が表れていますね。
また、前節のパスマップと比較すると、ギンターの縦パスがほとんどないことがわかります。後方からくさびのパスを入れるのは彼の仕事。ここを塞がれると途端ビルドアップに困るボルシアMGですが、見事に対応されたようですね。
レバークーゼン
センターバックからの縦パスが少なく、両ウイングバックから多いことから、彼らが入口となって前線へ展開していることがわかります。繋げ先はボランチやシャドーが多い。
また、右サイドはアランギス、ハヴェルツ、ベララビ、ヴァイザーの4人で多く回しています。ここでパス交換し、崩していたことが伺えます。ハヴェルツが絡んでいることから、彼が下がり目で中継地点になっていたこともわかりますね。
後方で相手を伺うルートは主に2つ。『タプソバ⇒フラデツキー⇒ドラゴヴィッチ』と『ドラゴヴィッチ⇒ベンダー⇒タプソバ』です。これがそれぞれ左右へ展開する道順だったようですね。
スタッツ
whoscored
sofascore
understats
所感
ボルシアMGをうまく抑え込んだレバークーゼンでしたが、決して全て前からハメきれたわけではありませんでした。マークをズラされ、前進されることがちらほらと。しかし、はじき返すことには成功していたように思います。
撤退時に5-4-1の守備を実施。ゾーン寄りにシフトして中央を塞ぐ。中盤の脇を通されても後方に控える5バックで対応しきれていたように見えました。
また、ボルシアMGはビルドアップに詰まると、前線の選手たちが後方へ下がることが多いです。縦パスを受けようと味方を助ける意識なのでしょう。これによって最初のラインは突破できますが、そこから先は5バックを相手にしてプレアとテュラムの2人。という構図が多かったように思います。ギンターを塞ぐのはビルドアップを停滞させるだけでなく、前線の選手を押し下げる効果もあるようですね。
しかし、後半のオープン展開はさすが。スペースができると多くの選手たちが躍動していました。ボルシアMGの強さは縦への早さなんだなと再認識。消耗の激しいサッカーですが、次節どうなるかを楽しみにしたいと思います。
【19-20 ブンデスリーガ 第26節】フランクフルト vs ボルシアMG
スタメンと攻守の狙い
フランクフルト
- 4-1-4-1の布陣
- ボールを保持して遅攻で相手を崩す攻め
- ミドルサードにブロックを構えての横圧縮守備
ボルシアMG
- 4-2-3-1の布陣
- 可能なら縦に早く攻める。難しいなら後方で回して縦パスを伺う
- マンツーマンを基本として横圧縮守備
ボルシアMGの攻撃と相手の守備
ビルドアップの形
サイドバックを高く上げ、サイドハーフが内側に絞る。ビルドアップ開始時はキーパーも前に出て参加。開いたセンターバックと共に後方から前線を伺います。
ボランチとトップ下は互いに上下入れ代わる自由な位置取りをします。時にはビルドアップを助け、時には縦パスを引き出す。最前線とのリンクが彼らの役目。
フォワードは縦パスを引き出すため、相手の間に入ることが多いです。特に守備陣と中盤の間。嫌なところに顔を出してボール前進を図ります。
相手の守備対応
ミドルサードに4-1-4-1のブロックを形成して待ち受ける。全体的にボールサイドへスライドし、横にコンパクトな陣形を維持します。逆サイドの選手は捨てる形ですね。
また、サイドバックは相手サイドハーフに対してマンツーマンの意識が高いことも特徴です。
空いてしまう逆サイド
横へ圧縮している分、逆サイドは捨てているので空いている
横に圧縮しているデメリットとして、逆サイドが空いてしまうことがあります。ボルシアMGの2点目はそこを使われたことがきっかけでした。
ドスト1人に対し、3人でパス交換することでギンターに余裕を作ります。顔を上げて逆サイドを確認する時間と、正確なパスを送れるほどのスペースを与える。華麗なサイドチェンジが決まった場面でした。
何度もサイドバックを使われたことからか、フランクフルトはそこへの守備を強化。サイドバックを前に出すことによって対応します。しかし、そうすると今度は背後が空くことに。そこを活用したのはプレア。サイドの裏を狙うことがありました。
フランクフルトの攻撃と相手の守備
ビルドアップの形
アンカーが下りて3バック化するところからスタート。サイドバックが高く上がり、サイドハーフは内側へ絞ってシャドー化。全体として3-4-3のような形に。これを整えてからビルドアップを行い、相手を崩していく遅攻でゴールを目指します。
前半途中からコスティッチは外に開くように。鎌田は常にトップ下の位置にいた印象。サイドによって異なる位置を取っていました。
相手の守備対応
前線はマンツーマン対応。テュラムがアブラハム、エンボロがイルザンカー、プレアがヒンテレッガーを見ます。そのため、変則的な4-3-3のような形に見えることも。
彼ら以外はボールサイドへスライドして横に圧縮。こちらも逆サイドは捨てるような守備をします。
空くサイドバック
中盤が前に出たり、スライドが間に合わなければサイドバックが空く
テュラムが前に出てる分、中盤が少し手薄になります。スライドが間に合わなかったり、前から奪おうとして前進すると、相手のサイドバックが空くことに。そこをカバーするも、芋づる式に引き出された場面です。
このような手法でギンターが外に引っ張られ、空いたハーフスペースにインサイドハーフが駆け上がる。このようなことが何度かありました。
マンツーマンに迷いを生む
マンツーマンを防ぐためか、インサイドハーフが下りてくることがありました。こうすると下りた選手が気になり、二択を迫られることになります。この場合は、テュラムがソウを気にしたため、アブラハムが余裕を持ってボールを持てました。
そのままフリーなトゥーレへボールを渡しますが、ベンゼバイニが猛ダッシュで迫る。というのも、鎌田が中央にいるため、そこは味方に任せられるからです。
鎌田がもう少し外側にいれば、二択を迫れたかもしれません。この位置取りが予定通りだったのか、それとも選手個人の判断なのかが気になります。
フランクフルトの布陣変更
布陣変更の狙い
後半になり、フランクフルトは攻撃時は3-5-2、守備時は左右非対称の4-4-2のような布陣に変更しました。
- 2トップにして前線の孤立を防ぎつつ、ロングボールの勝率を上げる
- ダブルボランチにすることによって、マンツーマンで塞がれていた中央を攻略
狙いとしては、孤立してたドストの救援と、後方で苦しんでいたビルドアップの改善にあると思います。
シルバを入れることによって、前線へのハブ役を増やす。また、アバウトにドストへボールを入れたとき、周りにいる人が増えたので回収率も上がります。
ボランチを増やすことは、マンツーマンに対して二択を迫るため。前述した通り、相手に迷いを与えます。
ダブルボランチにした効果
- マンツーマン対応していたエンボロへ二択を迫るようになる
- 相手ボランチを自陣方向へ引っ張ることができる
ダブルボランチにした効果は上図のように表れました。エンボロへ二択を迫ったり、相手ボランチを自陣に引っ張ったりと効果覿面。相手を動かすこともできているので、前半に比べてボールを前進できることも多くなりました。
パスマップからビルドアップを見てみる
ボルシアMG
- ギンターのパス数が多い
- 『ストロブル(エルヴェディ)⇒ ギンター ⇒ ゾマー』のルートが多い
- ノイハウスやホフマンが最前線とのリンク役になっている
パス回しの中心にいたのはギンター。彼のパス数がずば抜けて多かったです。前線への縦パスが多いこともわかります。攻撃の起点はここからだったようですね。
パスルートとしては、『ストロブル(エルヴェディ)⇒ ギンター ⇒ ゾマー』が目立ちます。前方へのパス出しが厳しく、後ろで揺さぶることが多かったようです。フランクフルトの守備に苦しんだことが伺えます。
それでも前線を見ると、ノイハウスやホフマンが前の3人へボールを供給していることがわかります。彼らがハブ役だったようですね。
フランクフルト
- ヒンテレッガーのパス数が多い
- 前半は左サイドに偏っており、バックパスも多い
- 後半は『ヒンテレッガー ⇒ ヌディカ ⇒ コスティッチ』のルートが多い
- 途中投入のシルバから鎌田へのパスが多い
ヒンテレッガーのパス数が最多。彼からヌディカへパスを送り、そこからローデやコスティッチに繋いでいたことがわかります。攻撃は左サイドに寄っていたようですね。
前半はトラップへのバックパスが多く、ボルシアMGの守備に苦しんでいたことがわかります。しかし後半はそのパスが減り、改善されたことが伺えます。
後半から投入したシルバから、鎌田へのパスが多いことも読み取れます。彼が前線とを繋ぐハブ役として機能していたこともわかりますね。
チャンスの『質』について
この試合、撃ったシュート数に大きな差はありませんでした。しかしスコアは1-3、xGは0.90-2.79と大きく差が開きました。このことから、互いのチャンスに『質の差』があったことが伺えます。それを見ていきましょう。
スタッツから見てみる
同じくらいエリア内でシュートを放っているにも関わらず、枠内は倍の差。精度と言えばそれまでですが、シュート時のシチュエーションが厳しかったという可能性もあります。
そのヒントとして、ボルシアMGはブロックされたシュートがないこと。フランクフルトはセットプレーからのシュートが多いこと。また、コーナーキックやクロスが多いことが挙げられます。
ブロックされたシュートがないということは、シュートを撃つとき、前方に相手ディフェンダーが少なかったことが予想されます。これはコーナーキックの数にも言えます。相手に当たってラインを割らないとコーナーキックになりません。これが多いということは、ブロックされていることとほぼ同義でしょう。
このことより、フランクフルトはシュートを撃つとき、相手ディフェンダーが多い状況だった。ということが考えられます。
また、クロスが多いこともチャンスの質に影響するでしょう。サイドから上がってくるボールより、中央付近でのショートパスやドリブルからの方が決めやすいです。ここも差として挙げられるでしょう。
クロスを比較すると、ボルシアMGはエリア内からのものが多く、フランクフルトはエリア外からのものが多いことがわかります。これは敵陣深くへ攻められなかったことを表してるでしょう。
クロスを上げた選手を見てみると、約半分が右サイドの選手でした。攻める時間は左サイドからの方が多かったのですが、クロスは右からのものが多かったようですね。
シュートは互いにエリア内のものが多い結果に。なんならフランクフルトの方が近い位置から撃ってる割合が多いです。
差が出ているのはシュートを撃ったサイド。ボルシアMGは両サイド均等と、偏っていないことがわかります。対するフランクフルトは右からのシュート割合が多い結果に。
先ほど右からのクロスが多いと言いました。普通なら左サイドからのシュートが多くなるはずです。これが少ないということは、『中央へのボールが多かった』か、『左サイドまで届かずクリアやブロックされた』かのどちらかです。ドストという明確なターゲットがいるので、恐らく前者だと思いますが、もしかすると、右サイドからのクロスはあまり質が高いものでなかったかもしれないですね。
なぜ質の差が生まれたのか
ここまでのことを勘案すると、質の差は攻撃速度の差によって生まれたのだと思います。相手守備陣が整う前に急襲を仕掛けたボルシアMG。相手ゴール付近まで迫るも敵が多く、攻略に苦しむフランクフルト。このような構図だったと思います。
元々のプレースタイルの差もありますが、前半の得点が大きな影響を及ぼしたかもしれません。前半7分までに立て続けて失点。いきなり2点を追いかける展開になったフランクフルト。時間が経つにつれて攻撃に意識が傾き、カウンターを受ける頻度が増加。ボルシアMGの望むテンポの早い展開に持ち込まれたことが、スコアに表れたように感じます。
スタッツ
whoscored
sofascore
under stats
所感
ボルシアMGに関しては、事前に見ていたELの試合と同じ印象を受けました。縦に早いサッカーを志向。エンボロ、テュラム、プレアの3人はパワー、スピード共に強力。序盤に2得点挙げられたことでより強調されましたね。
ただ、消耗の激しいサッカーを高いテンションで実施していたため、エンジンが切れるのも早かったですね。試合終盤はフランクフルトに押し込まれる展開が目立ちました。
フランクフルトは自分たちの土俵でゆっくりと試合を進められなかったことが辛かったでしょう。互いにコンディションが整いきっていない状態だったため、前半の失点さえなければ彼らが有利に立ち回れたかもしれません。
このような難しい状況での再会。ルールもいつもと違う中、選手や監督はストレスを抱えたまま試合に臨んでいたでしょう。この試合に関わった皆さまに最大限の敬意を。そして、サッカーを見るという悦びを与えてくれたことに多大な感謝をしたいと思います。本当にありがとうございました。
【19-20 EL GL グループJ 第6節】ボルシアMG vs イスタンブールBBSK
スタメン
ボルシアMG
- 4-2-3-1の布陣
- 攻守共にベースは4-2-3-1の布陣で行う
- 守備はマンツーマンが基本
イスタンブールBBSK
- 4-1-4-1の布陣
- 攻守共にベースは4-1-4-1の布陣で行う
- 守備は自陣にブロックを形成してからのマンツーマンが基本
激しい立ち上がりと展開が落ち着くまで
立ち上がりの狙い
ボルシアMG
- 攻撃は縦に早く行う
- 守備は縦横圧縮した4-5-1で対応
イスタンブールBBSK
- 攻撃は幅を使ってサイドから行う
- 守備は前線からハイプレスを行い、積極的にボールを奪いにいく
試合開始直後、ボルシアMGは縦に早い攻撃と縦横圧縮した守備を仕掛ける。対するイスタンブールBBSKは幅を使った攻撃とハイプレスで対抗。試合展開が目まぐるしく変わる激しい立ち上がりになりました。
試合展開が変わった3つのきっかけ
しかし前半10分ほどから、イスタンブールBBSKの守備対応が変わりました。ハイプレスを止め、自陣に撤退して4-1-4-1のブロックを形成。相手を待ち構えるようになります。なぜそのようになったのでしょうか。きっかけは後述する3つの出来事だったように思います。
- サイドチェンジによってハイプレスを無効化される
- キーパー経由でかわされ、センターバックにドリブルで持ち運ばれる
- 前に出たあと生じたライン間のスペースを利用される
いずれも積極的に前へ出たことが裏目に出ています。ボルシアMGの選手たちは『ハイプレスをいなす手段と技術を持ったチーム』ということですね。
落ち着いた展開
ボルシアMG
- 攻撃は縦に早く行う
- 守備はマンツーマン基調で行う
イスタンブールBBSK
- 攻撃は最前線へロングボールを入れて、時間を作るところから開始
- 守備は自陣に4-1-4-1のブロックを敷いて、相手を待ち構える
ボルシアMGは縦横圧縮をやめ、フォーメーションの噛み合わせの良さを活かしたマンツーマン対応になりました。個での優位性を感じたのか、それとも幅を取る相手に対応しようとしたのか、どちらかはわからないですが…
イスタンブールBBSKは前述した通り、自陣にブロックを形成して待ち構える守備に変更。これによって全体的に押し込まれるため、攻撃は最前線の選手にロングボールを入れることでしか開始できないことが多くなりました。
前半10分ごろからこの展開に落ち着き、これが後半70分ごろまで続くことになります。
イスタンブールBBSKの守備
主な守備方法
イスタンブールは各セクションごとに守備の色が出ています。まず、4バックはペナルティエリア幅をキープし、中央を固めます。クロスを上げられる分には構わないが、中央ではじき返してやる。といったスタイルですね。ボルシアMGの前線が下がっていっても深追いはしません。最後方はきちんと固めます。
中盤は噛み合わせの良さもあり、マンツーマン意識が高い。相手が引いても前に出ていきます。ディフェンスラインの前が空いてもあまり気にしない様子。
最前線は相手センターバック間ではなく、ボランチ間のパスコースを塞ぎます。後ろで回される分には構わないですが、1つ高い位置でサイドを変えられたくないようです。
中央にある堅固な砦
中央に構える4バック。これが固いの何のって…ボルシアMGは合計19本のシュートを浴びせますが、枠外やブロックされてしまうことに。この試合では1点しか決めることができませんでした。
クリア位置を見てもエリア内のものが多いことがわかります。クロスを上げさせてもいいが、中央で跳ね返すということが実行できていた証でしょう。
また、クリアした選手を見てみると、約70%弱が4バック。ディフェンス陣が引っ張り出されず、的確にクリアできていたことも伺えます。
押し込まれる両翼
両翼のヒートマップを見てみると、自陣深い位置も色濃くなっていました。攻撃の核となるサイドも押し込まれていることがわかります。攻撃時はここから上がらないといけないため、最前線のフォワードが頑張って時間を作らなければいけなかったことにも頷けますよね。
ボルシアMGの攻撃
主な前進方法
- ギンターの持ち上がりでカフヴェジを引っ張る
- エリアは外にいるライナーに意識が向く
- クリシーはヘアマンをマーク
- 広がった隙間にエンボロが下りてボールを受ける
ボルシアMGの主な前進方法はこのような形でした。相手の中盤はマンツーマンの意識が高い。ディフェンス陣は前にあまり出てこない。これらを利用し、相手ブロックを押し広げ、隙間に選手が入る。後方からフリーな選手目がけて縦パスを一閃。ボールを受けた選手はレイオフして背後へ抜け出す。このような光景が試合中何度も見られました。
パスマップと主な攻撃サイド
パス数が多かったのは両センターバックとボランチ。この4人が後ろで機を伺いつつ、ボールを回していたことがわかります。
しかし、ボランチ間のパスが少ないことから、この4人がボックスで回していたわけではなかったようです。これは相手フォワードの牽制が効いていましたね。
太い線を辿っていくと、『エルヴェディ ⇒ ギンター ⇒ ライナー(クラマー) ⇒ ヘアマン』のルートができあがります。後方から縦パスを入れていたのは主にギンター。攻撃は右サイドから行われることが多かったようです。
クロスを上げた位置を見ると右サイドが多い。選手割合を見ても、右サイドの2人だけで約75%強。右サイドで作り、そこから仕留める形が多かったことが伺えます。
縦横無尽に動くボランチ
ボルシアMGの縦に早い攻撃を牽引していたのはボランチでした。ボールを奪うと前線へ駆け出し、パスを要求する。遅攻時もトップ下のノイハウスと連動し、上下動から相手ブロックを揺さぶる。
ヒートマップを見ると顕著でした。ボランチにも関わらず、一番色濃いのが敵陣の真っただ中。両選手とも広範囲に動いていることがわかります。攻守に渡って核だったのは彼らだったでしょう。しかし、これだけの運動量が試合終了までもつはずもなく…
変化が訪れた後半70分以降
ボルシアMGのスタミナ切れ
前述した通り、ボランチが1試合もつはずもなく、徐々に運動量が減っていきます。
両選手のタッチ数を時間遷移で表したものがこちら。70分ごろから減少していることがわかります。このあたりがスタミナの限界だったのでしょう。
決勝点のきっかけとなったフリーキック。このファウルを見てみると、無理に足を出す必要はなかったように思います。そういった判断が行えず、足を出すことしかできなかった。この事実こそ、体力が切れていたことを表しているでしょう。
これによって、息を吹き返したのはトパルです。アンカーである彼への圧力が下がったことで、ボールをさばけるように。後方で落ち着いた時間を作り出します。
その恩恵を最も受けたのはクリシーだったでしょう。彼のタッチ数も伸びていました。惜しいクロスを何本か上げているシーン、ありましたよね。
フォーメーションの変更
もう1つの変化として、後半68分ごろにバを投入。布陣を4-4-2にしました。これによって、クリヴェリとの間を繋ぐことができるようになりました。
このシーンは象徴的だったと思います。サイドで受けたクリシー。その瞬間に相手ライン間に入るバ。ボランチの運動量低下もあり、うまく背後を取ることができました。
また、彼は身長もあり、ロングボールを競り合わせるにはもってこいです。味方のクリアを競ってマイボールにすることも何度かできていました。
スタッツから見てみる
スタッツから見てみても、70分以降は攻撃に関するものがほぼ互角でした。ずっと押し込まれていた状態から盛り返した、と言えるでしょう。
所感
ボルシアMGについて
切り替えの早さ、縦に早い攻撃、詰まったときの遅攻。チーム完成度の高さを強く感じました。テンポの早いサッカーはどこかの選手が割を食いますが、ボルシアMGの場合はボランチだったようですね。彼らがいるからこそ成り立っているのだと思います。
また、相手の隙間を見つけること、そこに入るタイミング、レイオフ、これらがどの選手もうまかったことに驚きました。特にテュラムは抜群でしたね。彼ならフィルミーノみたいな役割もこなせるんじゃないでしょうか。
チャンスを多く作りましたが、決められなかったことが辛い1戦に。19本のシュート。xGも3.0を超える。なのに1点は寂しいですよね。その代償を最後に払ってしまったのかな。という印象でした。
イスタンブールBBSKについて
相手に押し込まれながらも、よく耐えたと思います。中央に固まる4バックは堅牢。この試合で勝利をおさめられたのは、彼らの働きによるところが大きいでしょう。
クリシーが質の高いクロスを上げたように、人数をかけて押し込めば、ある程度のクオリティを攻撃で発揮できるようです。ノックアウトステージでも快進撃を見せており、実力のあるチームだということも頷けました。