【19-20 ブンデスリーガ 第27節】ボルシアMG vs レバークーゼン
スタメンと攻守の狙い
ボルシアMG
- 4-5-1の布陣
- 可能なら縦に早く攻める。難しいなら後方で回して縦パスを伺う
- マンツーマンを基本として守る
レバークーゼン
- 3-4-3の布陣
- ボールを奪ってからカウンターが基本。難しいなら後方で回してボールを前進させる
- 前線からマークを決めて寄せる。前からが難しいなら5-4-1のブロックを自陣に形成
スタッツから見た前後半の比較
「レバークーゼンがボルシアMGを抑え込み、多くの時間優位に立って試合を進めていた」この試合を見た自分の印象です。
しかし、1試合通してのスタッツを見てみると意外と拮抗しているではありませんか。印象と事実にギャップがありますよね。ここでもう1つ思い出します。「前半はレバークーゼンが封じていたけど、後半はスタミナ切れからか、オープン気味だったな」
ということで、前後半に分けて両チームのスタッツを比較してみます。
前半に関して見ると、レバークーゼンが圧倒しています。ボール保持率が上回っており、シュートも倍近く。ボルシアMGのカウンターやビッグチャンスは0。圧倒的です。
しかし、後半はボルシアMGが盛り返します。シュートが倍近く、ビッグチャンスの数も多い。ボール保持率も五分まで回復しています。
以上より、試合を見た印象と重ね合わせると、前後半それぞれ以下のようになるでしょう。
互いのスタミナ切れからオープンな展開となりボルシアMGが盛り返した
縦に素早い攻めを得意とするボルシアMG。オープンな展開は彼らにとってうってつけ。後半に盛り返せた理由はそこにあるのでしょう。スピード勝負の殴り合い。後半はこのような展開でした。こちらはわかりやすいでしょう。
翻って、前半はレバークーゼンがボルシアMGに対して何か作戦を立てたように思えます。こちらに見どころが詰まっていると判断し、本稿では主に前半の事象に対して取り上げたいと思います。
レバークーゼンの守備
- センターバックにはシャドーがマンツーマン気味につく
- フォワードはボランチ間に立ち、ボールが出る方へ寄せていく
- 後方にいるボランチは空いた片方のボランチをマークするために前に出る
- 両サイドはウイングバックとセンターバックを前に出すことで対応
- 最終ラインを高くし、縦にコンパクトな陣形を作る
レバークーゼンは前から積極的にプレスをかけていきます。基本的には人に当てはめるマンツーマン対応でした。
シャドーは両センターバックを封じることが基本です。最初はサイドバックとの間に立って待ち構える。相手がセンターバックやキーパーにバックパスしたらスイッチオン。前に出て捕まえにいきます。
フォワードは相手ボランチの間で待ち受け、ボールが出そうな方をマーク。空いたもう片方は後ろから味方が前に出てつきます。また、サイドはウイングバックやセンターバックが前に出て捕まえる。
ピッタリ1対1になるようマークしますが、キーパーだけは無視。ゾマーが持ったとしても、レバークーゼンの選手たちが前に出ていくことはほとんどありませんでした。前からボールを奪うことではなく、相手の前進経路を消すことが目的だったのでしょう。最終ラインが高く、縦にコンパクトなこともあり、ボルシアMGはパスコースが中々見つからない。苦し紛れに大きく蹴り出すことが多かったです。
迷いが生まれるボルシアMGの守備
3バックへの対応方法
ボルシアMGとレバークーゼンの噛み合わせから、守り方に何通りかの方法が考えられます。ポイントはサイドハーフが誰を見るかでしょう。
前方が1対4の数的不利になり、高い位置で奪うことが難しくなる
前進を恐れてウイングバックを見る場合、前方では数的不利が生まれます。1トップに対して、相手は3バックとキーパーを合わせた4人。高い位置で奪うことが難しくなります。
では、前から奪おうとセンターバックまで出ていきます。すると、前は同数になり阻害することができますが、後方が不利に。サイドバックが空いてウイングバックとシャドーの二択を突き付けられてしまいます。
この試合では、テュラムは相手センターバックに寄せることが多く、ホフマンは下がり目でウイングバックを気にする位置にいました。ある程度のリスクを冒しても前から奪いたかったのでしょう。
カバーによるマークずれの連鎖
- テュラムがタプソバに出ていく
- ヴァイザーが空くので、アランギスを経由してパスを送る
- カバーのためベンゼバイニがヴァイザーに出ていく
- ベンゼバイニの背後が空くので、ベララビが下がって受ける
- カバーのためエルヴェディが前に出ていく
- エルヴェディの背後が空くので、ハヴェルツが裏に抜け出す
前に出ていったテュラム。これをかわされたため、カバーの連鎖が起きる。すると芋づる式にスペースも生まれていきます。このズレを利用したレバークーゼンのパス回し。同じようにボールを進めることは何度か見ることができました。カウンターのみでなく、きちんと繋ぐこともできるチームだということがわかります。
3列目の背後を取るハヴェルツ
ボルシアMGは攻撃時にサイドバックが、守備時にはボランチが高い位置を取ることが多いチームです。ハヴェルツは攻撃時、彼らの背後に顔を出すことが多かった印象です。
カウンター時にはサイドバックの背後を突く。相手ボランチが前に出たらスッと下がり縦パスを引き出す。彼が偽9番のように見えたのは、相手ディフェンスライン背後に抜け出すのではなく、最終ラインの隙間に顔を出すことが多かったからでしょう。
平均ポジションとヒートマップを見ても、低めの位置になっていることがわかります。彼が下がって中継点となり、スピードのある両シャドーが背後に抜け出していたことが伺えるでしょう。
パスマップから見るビルドアップ
ボルシアMG
- 左サイドでのパスが多い
- ギンターから縦パスがほとんど出ていない
- 前線への共有はベンゼバイニからテュラムがほとんど
エルヴェディ、ギンター、ベンゼバイニ、ノイハウスの4人で頻繁にパス交換していることがわかります。左サイドが中心だったようですね。
しかし、縦パスはベンゼバイニからテュラムのものがほとんどで、他に展開できていないことがわかります。攻めあぐねている様子が表れていますね。
また、前節のパスマップと比較すると、ギンターの縦パスがほとんどないことがわかります。後方からくさびのパスを入れるのは彼の仕事。ここを塞がれると途端ビルドアップに困るボルシアMGですが、見事に対応されたようですね。
レバークーゼン
センターバックからの縦パスが少なく、両ウイングバックから多いことから、彼らが入口となって前線へ展開していることがわかります。繋げ先はボランチやシャドーが多い。
また、右サイドはアランギス、ハヴェルツ、ベララビ、ヴァイザーの4人で多く回しています。ここでパス交換し、崩していたことが伺えます。ハヴェルツが絡んでいることから、彼が下がり目で中継地点になっていたこともわかりますね。
後方で相手を伺うルートは主に2つ。『タプソバ⇒フラデツキー⇒ドラゴヴィッチ』と『ドラゴヴィッチ⇒ベンダー⇒タプソバ』です。これがそれぞれ左右へ展開する道順だったようですね。
スタッツ
whoscored
sofascore
understats
所感
ボルシアMGをうまく抑え込んだレバークーゼンでしたが、決して全て前からハメきれたわけではありませんでした。マークをズラされ、前進されることがちらほらと。しかし、はじき返すことには成功していたように思います。
撤退時に5-4-1の守備を実施。ゾーン寄りにシフトして中央を塞ぐ。中盤の脇を通されても後方に控える5バックで対応しきれていたように見えました。
また、ボルシアMGはビルドアップに詰まると、前線の選手たちが後方へ下がることが多いです。縦パスを受けようと味方を助ける意識なのでしょう。これによって最初のラインは突破できますが、そこから先は5バックを相手にしてプレアとテュラムの2人。という構図が多かったように思います。ギンターを塞ぐのはビルドアップを停滞させるだけでなく、前線の選手を押し下げる効果もあるようですね。
しかし、後半のオープン展開はさすが。スペースができると多くの選手たちが躍動していました。ボルシアMGの強さは縦への早さなんだなと再認識。消耗の激しいサッカーですが、次節どうなるかを楽しみにしたいと思います。