【19-20 ブンデスリーガ 第26節】フランクフルト vs ボルシアMG
スタメンと攻守の狙い
フランクフルト
- 4-1-4-1の布陣
- ボールを保持して遅攻で相手を崩す攻め
- ミドルサードにブロックを構えての横圧縮守備
ボルシアMG
- 4-2-3-1の布陣
- 可能なら縦に早く攻める。難しいなら後方で回して縦パスを伺う
- マンツーマンを基本として横圧縮守備
ボルシアMGの攻撃と相手の守備
ビルドアップの形
サイドバックを高く上げ、サイドハーフが内側に絞る。ビルドアップ開始時はキーパーも前に出て参加。開いたセンターバックと共に後方から前線を伺います。
ボランチとトップ下は互いに上下入れ代わる自由な位置取りをします。時にはビルドアップを助け、時には縦パスを引き出す。最前線とのリンクが彼らの役目。
フォワードは縦パスを引き出すため、相手の間に入ることが多いです。特に守備陣と中盤の間。嫌なところに顔を出してボール前進を図ります。
相手の守備対応
ミドルサードに4-1-4-1のブロックを形成して待ち受ける。全体的にボールサイドへスライドし、横にコンパクトな陣形を維持します。逆サイドの選手は捨てる形ですね。
また、サイドバックは相手サイドハーフに対してマンツーマンの意識が高いことも特徴です。
空いてしまう逆サイド
横へ圧縮している分、逆サイドは捨てているので空いている
横に圧縮しているデメリットとして、逆サイドが空いてしまうことがあります。ボルシアMGの2点目はそこを使われたことがきっかけでした。
ドスト1人に対し、3人でパス交換することでギンターに余裕を作ります。顔を上げて逆サイドを確認する時間と、正確なパスを送れるほどのスペースを与える。華麗なサイドチェンジが決まった場面でした。
何度もサイドバックを使われたことからか、フランクフルトはそこへの守備を強化。サイドバックを前に出すことによって対応します。しかし、そうすると今度は背後が空くことに。そこを活用したのはプレア。サイドの裏を狙うことがありました。
フランクフルトの攻撃と相手の守備
ビルドアップの形
アンカーが下りて3バック化するところからスタート。サイドバックが高く上がり、サイドハーフは内側へ絞ってシャドー化。全体として3-4-3のような形に。これを整えてからビルドアップを行い、相手を崩していく遅攻でゴールを目指します。
前半途中からコスティッチは外に開くように。鎌田は常にトップ下の位置にいた印象。サイドによって異なる位置を取っていました。
相手の守備対応
前線はマンツーマン対応。テュラムがアブラハム、エンボロがイルザンカー、プレアがヒンテレッガーを見ます。そのため、変則的な4-3-3のような形に見えることも。
彼ら以外はボールサイドへスライドして横に圧縮。こちらも逆サイドは捨てるような守備をします。
空くサイドバック
中盤が前に出たり、スライドが間に合わなければサイドバックが空く
テュラムが前に出てる分、中盤が少し手薄になります。スライドが間に合わなかったり、前から奪おうとして前進すると、相手のサイドバックが空くことに。そこをカバーするも、芋づる式に引き出された場面です。
このような手法でギンターが外に引っ張られ、空いたハーフスペースにインサイドハーフが駆け上がる。このようなことが何度かありました。
マンツーマンに迷いを生む
マンツーマンを防ぐためか、インサイドハーフが下りてくることがありました。こうすると下りた選手が気になり、二択を迫られることになります。この場合は、テュラムがソウを気にしたため、アブラハムが余裕を持ってボールを持てました。
そのままフリーなトゥーレへボールを渡しますが、ベンゼバイニが猛ダッシュで迫る。というのも、鎌田が中央にいるため、そこは味方に任せられるからです。
鎌田がもう少し外側にいれば、二択を迫れたかもしれません。この位置取りが予定通りだったのか、それとも選手個人の判断なのかが気になります。
フランクフルトの布陣変更
布陣変更の狙い
後半になり、フランクフルトは攻撃時は3-5-2、守備時は左右非対称の4-4-2のような布陣に変更しました。
- 2トップにして前線の孤立を防ぎつつ、ロングボールの勝率を上げる
- ダブルボランチにすることによって、マンツーマンで塞がれていた中央を攻略
狙いとしては、孤立してたドストの救援と、後方で苦しんでいたビルドアップの改善にあると思います。
シルバを入れることによって、前線へのハブ役を増やす。また、アバウトにドストへボールを入れたとき、周りにいる人が増えたので回収率も上がります。
ボランチを増やすことは、マンツーマンに対して二択を迫るため。前述した通り、相手に迷いを与えます。
ダブルボランチにした効果
- マンツーマン対応していたエンボロへ二択を迫るようになる
- 相手ボランチを自陣方向へ引っ張ることができる
ダブルボランチにした効果は上図のように表れました。エンボロへ二択を迫ったり、相手ボランチを自陣に引っ張ったりと効果覿面。相手を動かすこともできているので、前半に比べてボールを前進できることも多くなりました。
パスマップからビルドアップを見てみる
ボルシアMG
- ギンターのパス数が多い
- 『ストロブル(エルヴェディ)⇒ ギンター ⇒ ゾマー』のルートが多い
- ノイハウスやホフマンが最前線とのリンク役になっている
パス回しの中心にいたのはギンター。彼のパス数がずば抜けて多かったです。前線への縦パスが多いこともわかります。攻撃の起点はここからだったようですね。
パスルートとしては、『ストロブル(エルヴェディ)⇒ ギンター ⇒ ゾマー』が目立ちます。前方へのパス出しが厳しく、後ろで揺さぶることが多かったようです。フランクフルトの守備に苦しんだことが伺えます。
それでも前線を見ると、ノイハウスやホフマンが前の3人へボールを供給していることがわかります。彼らがハブ役だったようですね。
フランクフルト
- ヒンテレッガーのパス数が多い
- 前半は左サイドに偏っており、バックパスも多い
- 後半は『ヒンテレッガー ⇒ ヌディカ ⇒ コスティッチ』のルートが多い
- 途中投入のシルバから鎌田へのパスが多い
ヒンテレッガーのパス数が最多。彼からヌディカへパスを送り、そこからローデやコスティッチに繋いでいたことがわかります。攻撃は左サイドに寄っていたようですね。
前半はトラップへのバックパスが多く、ボルシアMGの守備に苦しんでいたことがわかります。しかし後半はそのパスが減り、改善されたことが伺えます。
後半から投入したシルバから、鎌田へのパスが多いことも読み取れます。彼が前線とを繋ぐハブ役として機能していたこともわかりますね。
チャンスの『質』について
この試合、撃ったシュート数に大きな差はありませんでした。しかしスコアは1-3、xGは0.90-2.79と大きく差が開きました。このことから、互いのチャンスに『質の差』があったことが伺えます。それを見ていきましょう。
スタッツから見てみる
同じくらいエリア内でシュートを放っているにも関わらず、枠内は倍の差。精度と言えばそれまでですが、シュート時のシチュエーションが厳しかったという可能性もあります。
そのヒントとして、ボルシアMGはブロックされたシュートがないこと。フランクフルトはセットプレーからのシュートが多いこと。また、コーナーキックやクロスが多いことが挙げられます。
ブロックされたシュートがないということは、シュートを撃つとき、前方に相手ディフェンダーが少なかったことが予想されます。これはコーナーキックの数にも言えます。相手に当たってラインを割らないとコーナーキックになりません。これが多いということは、ブロックされていることとほぼ同義でしょう。
このことより、フランクフルトはシュートを撃つとき、相手ディフェンダーが多い状況だった。ということが考えられます。
また、クロスが多いこともチャンスの質に影響するでしょう。サイドから上がってくるボールより、中央付近でのショートパスやドリブルからの方が決めやすいです。ここも差として挙げられるでしょう。
クロスを比較すると、ボルシアMGはエリア内からのものが多く、フランクフルトはエリア外からのものが多いことがわかります。これは敵陣深くへ攻められなかったことを表してるでしょう。
クロスを上げた選手を見てみると、約半分が右サイドの選手でした。攻める時間は左サイドからの方が多かったのですが、クロスは右からのものが多かったようですね。
シュートは互いにエリア内のものが多い結果に。なんならフランクフルトの方が近い位置から撃ってる割合が多いです。
差が出ているのはシュートを撃ったサイド。ボルシアMGは両サイド均等と、偏っていないことがわかります。対するフランクフルトは右からのシュート割合が多い結果に。
先ほど右からのクロスが多いと言いました。普通なら左サイドからのシュートが多くなるはずです。これが少ないということは、『中央へのボールが多かった』か、『左サイドまで届かずクリアやブロックされた』かのどちらかです。ドストという明確なターゲットがいるので、恐らく前者だと思いますが、もしかすると、右サイドからのクロスはあまり質が高いものでなかったかもしれないですね。
なぜ質の差が生まれたのか
ここまでのことを勘案すると、質の差は攻撃速度の差によって生まれたのだと思います。相手守備陣が整う前に急襲を仕掛けたボルシアMG。相手ゴール付近まで迫るも敵が多く、攻略に苦しむフランクフルト。このような構図だったと思います。
元々のプレースタイルの差もありますが、前半の得点が大きな影響を及ぼしたかもしれません。前半7分までに立て続けて失点。いきなり2点を追いかける展開になったフランクフルト。時間が経つにつれて攻撃に意識が傾き、カウンターを受ける頻度が増加。ボルシアMGの望むテンポの早い展開に持ち込まれたことが、スコアに表れたように感じます。
スタッツ
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sofascore
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所感
ボルシアMGに関しては、事前に見ていたELの試合と同じ印象を受けました。縦に早いサッカーを志向。エンボロ、テュラム、プレアの3人はパワー、スピード共に強力。序盤に2得点挙げられたことでより強調されましたね。
ただ、消耗の激しいサッカーを高いテンションで実施していたため、エンジンが切れるのも早かったですね。試合終盤はフランクフルトに押し込まれる展開が目立ちました。
フランクフルトは自分たちの土俵でゆっくりと試合を進められなかったことが辛かったでしょう。互いにコンディションが整いきっていない状態だったため、前半の失点さえなければ彼らが有利に立ち回れたかもしれません。
このような難しい状況での再会。ルールもいつもと違う中、選手や監督はストレスを抱えたまま試合に臨んでいたでしょう。この試合に関わった皆さまに最大限の敬意を。そして、サッカーを見るという悦びを与えてくれたことに多大な感謝をしたいと思います。本当にありがとうございました。