【19-20 EL GL グループJ 第6節】ボルシアMG vs イスタンブールBBSK
スタメン
ボルシアMG
- 4-2-3-1の布陣
- 攻守共にベースは4-2-3-1の布陣で行う
- 守備はマンツーマンが基本
イスタンブールBBSK
- 4-1-4-1の布陣
- 攻守共にベースは4-1-4-1の布陣で行う
- 守備は自陣にブロックを形成してからのマンツーマンが基本
激しい立ち上がりと展開が落ち着くまで
立ち上がりの狙い
ボルシアMG
- 攻撃は縦に早く行う
- 守備は縦横圧縮した4-5-1で対応
イスタンブールBBSK
- 攻撃は幅を使ってサイドから行う
- 守備は前線からハイプレスを行い、積極的にボールを奪いにいく
試合開始直後、ボルシアMGは縦に早い攻撃と縦横圧縮した守備を仕掛ける。対するイスタンブールBBSKは幅を使った攻撃とハイプレスで対抗。試合展開が目まぐるしく変わる激しい立ち上がりになりました。
試合展開が変わった3つのきっかけ
しかし前半10分ほどから、イスタンブールBBSKの守備対応が変わりました。ハイプレスを止め、自陣に撤退して4-1-4-1のブロックを形成。相手を待ち構えるようになります。なぜそのようになったのでしょうか。きっかけは後述する3つの出来事だったように思います。
- サイドチェンジによってハイプレスを無効化される
- キーパー経由でかわされ、センターバックにドリブルで持ち運ばれる
- 前に出たあと生じたライン間のスペースを利用される
いずれも積極的に前へ出たことが裏目に出ています。ボルシアMGの選手たちは『ハイプレスをいなす手段と技術を持ったチーム』ということですね。
落ち着いた展開
ボルシアMG
- 攻撃は縦に早く行う
- 守備はマンツーマン基調で行う
イスタンブールBBSK
- 攻撃は最前線へロングボールを入れて、時間を作るところから開始
- 守備は自陣に4-1-4-1のブロックを敷いて、相手を待ち構える
ボルシアMGは縦横圧縮をやめ、フォーメーションの噛み合わせの良さを活かしたマンツーマン対応になりました。個での優位性を感じたのか、それとも幅を取る相手に対応しようとしたのか、どちらかはわからないですが…
イスタンブールBBSKは前述した通り、自陣にブロックを形成して待ち構える守備に変更。これによって全体的に押し込まれるため、攻撃は最前線の選手にロングボールを入れることでしか開始できないことが多くなりました。
前半10分ごろからこの展開に落ち着き、これが後半70分ごろまで続くことになります。
イスタンブールBBSKの守備
主な守備方法
イスタンブールは各セクションごとに守備の色が出ています。まず、4バックはペナルティエリア幅をキープし、中央を固めます。クロスを上げられる分には構わないが、中央ではじき返してやる。といったスタイルですね。ボルシアMGの前線が下がっていっても深追いはしません。最後方はきちんと固めます。
中盤は噛み合わせの良さもあり、マンツーマン意識が高い。相手が引いても前に出ていきます。ディフェンスラインの前が空いてもあまり気にしない様子。
最前線は相手センターバック間ではなく、ボランチ間のパスコースを塞ぎます。後ろで回される分には構わないですが、1つ高い位置でサイドを変えられたくないようです。
中央にある堅固な砦
中央に構える4バック。これが固いの何のって…ボルシアMGは合計19本のシュートを浴びせますが、枠外やブロックされてしまうことに。この試合では1点しか決めることができませんでした。
クリア位置を見てもエリア内のものが多いことがわかります。クロスを上げさせてもいいが、中央で跳ね返すということが実行できていた証でしょう。
また、クリアした選手を見てみると、約70%弱が4バック。ディフェンス陣が引っ張り出されず、的確にクリアできていたことも伺えます。
押し込まれる両翼
両翼のヒートマップを見てみると、自陣深い位置も色濃くなっていました。攻撃の核となるサイドも押し込まれていることがわかります。攻撃時はここから上がらないといけないため、最前線のフォワードが頑張って時間を作らなければいけなかったことにも頷けますよね。
ボルシアMGの攻撃
主な前進方法
- ギンターの持ち上がりでカフヴェジを引っ張る
- エリアは外にいるライナーに意識が向く
- クリシーはヘアマンをマーク
- 広がった隙間にエンボロが下りてボールを受ける
ボルシアMGの主な前進方法はこのような形でした。相手の中盤はマンツーマンの意識が高い。ディフェンス陣は前にあまり出てこない。これらを利用し、相手ブロックを押し広げ、隙間に選手が入る。後方からフリーな選手目がけて縦パスを一閃。ボールを受けた選手はレイオフして背後へ抜け出す。このような光景が試合中何度も見られました。
パスマップと主な攻撃サイド
パス数が多かったのは両センターバックとボランチ。この4人が後ろで機を伺いつつ、ボールを回していたことがわかります。
しかし、ボランチ間のパスが少ないことから、この4人がボックスで回していたわけではなかったようです。これは相手フォワードの牽制が効いていましたね。
太い線を辿っていくと、『エルヴェディ ⇒ ギンター ⇒ ライナー(クラマー) ⇒ ヘアマン』のルートができあがります。後方から縦パスを入れていたのは主にギンター。攻撃は右サイドから行われることが多かったようです。
クロスを上げた位置を見ると右サイドが多い。選手割合を見ても、右サイドの2人だけで約75%強。右サイドで作り、そこから仕留める形が多かったことが伺えます。
縦横無尽に動くボランチ
ボルシアMGの縦に早い攻撃を牽引していたのはボランチでした。ボールを奪うと前線へ駆け出し、パスを要求する。遅攻時もトップ下のノイハウスと連動し、上下動から相手ブロックを揺さぶる。
ヒートマップを見ると顕著でした。ボランチにも関わらず、一番色濃いのが敵陣の真っただ中。両選手とも広範囲に動いていることがわかります。攻守に渡って核だったのは彼らだったでしょう。しかし、これだけの運動量が試合終了までもつはずもなく…
変化が訪れた後半70分以降
ボルシアMGのスタミナ切れ
前述した通り、ボランチが1試合もつはずもなく、徐々に運動量が減っていきます。
両選手のタッチ数を時間遷移で表したものがこちら。70分ごろから減少していることがわかります。このあたりがスタミナの限界だったのでしょう。
決勝点のきっかけとなったフリーキック。このファウルを見てみると、無理に足を出す必要はなかったように思います。そういった判断が行えず、足を出すことしかできなかった。この事実こそ、体力が切れていたことを表しているでしょう。
これによって、息を吹き返したのはトパルです。アンカーである彼への圧力が下がったことで、ボールをさばけるように。後方で落ち着いた時間を作り出します。
その恩恵を最も受けたのはクリシーだったでしょう。彼のタッチ数も伸びていました。惜しいクロスを何本か上げているシーン、ありましたよね。
フォーメーションの変更
もう1つの変化として、後半68分ごろにバを投入。布陣を4-4-2にしました。これによって、クリヴェリとの間を繋ぐことができるようになりました。
このシーンは象徴的だったと思います。サイドで受けたクリシー。その瞬間に相手ライン間に入るバ。ボランチの運動量低下もあり、うまく背後を取ることができました。
また、彼は身長もあり、ロングボールを競り合わせるにはもってこいです。味方のクリアを競ってマイボールにすることも何度かできていました。
スタッツから見てみる
スタッツから見てみても、70分以降は攻撃に関するものがほぼ互角でした。ずっと押し込まれていた状態から盛り返した、と言えるでしょう。
所感
ボルシアMGについて
切り替えの早さ、縦に早い攻撃、詰まったときの遅攻。チーム完成度の高さを強く感じました。テンポの早いサッカーはどこかの選手が割を食いますが、ボルシアMGの場合はボランチだったようですね。彼らがいるからこそ成り立っているのだと思います。
また、相手の隙間を見つけること、そこに入るタイミング、レイオフ、これらがどの選手もうまかったことに驚きました。特にテュラムは抜群でしたね。彼ならフィルミーノみたいな役割もこなせるんじゃないでしょうか。
チャンスを多く作りましたが、決められなかったことが辛い1戦に。19本のシュート。xGも3.0を超える。なのに1点は寂しいですよね。その代償を最後に払ってしまったのかな。という印象でした。
イスタンブールBBSKについて
相手に押し込まれながらも、よく耐えたと思います。中央に固まる4バックは堅牢。この試合で勝利をおさめられたのは、彼らの働きによるところが大きいでしょう。
クリシーが質の高いクロスを上げたように、人数をかけて押し込めば、ある程度のクオリティを攻撃で発揮できるようです。ノックアウトステージでも快進撃を見せており、実力のあるチームだということも頷けました。