【2021 J1 第2節】横浜F・マリノス vs サンフレッチェ広島
スタメン
横浜F・マリノス
- マルコスが怪我から復帰後初先発
- 右サイドバックは松原が先発
- エウベルが負傷後初ベンチ入り
サンフレッチェ広島
- 基本的には開幕戦の先発メンバーを踏襲
- 両翼がエゼキエウと藤井に代わっている
相手守備陣の背後を突きたい両チーム
戦前におけるマリノスの狙い
広島は前節仙台戦において、上図のような攻撃方法を取っていました。これはシマオマテが退場する前から行っていたものです。サイドバック裏が空くことに目を引かれるでしょう。
当然マリノスもそこを狙いたくなります。そのために取った手法は、大然と仲川を両翼で起用することでした。今まで中央で起用されていた大然が、この試合ではウイングで先発。彼が今まで任されていた役割は、相手背後へのランニングが多くを占めていました。それはこの位置になっても変わらないはず。なので、ウイングとしての動きに期待したというよりは、中央でやっている仕事をサイドでもやってほしいということだったと思います。
また、岩田をボランチで起用したのはルヴァン杯で素晴らしいパフォーマンスを見せたことも大きな理由でしょう。しかしそれだけでなく、3-3-1-3派生を選手たちに意識させたい、という事情もあると思います。
足の速いセンターフォワードを両翼に置き、3-3-1-3の派生である布陣で臨んだこの試合。従来の4-2-1-3ではなく、新しいことに挑戦していると言えるはず。つまり、今までと同じことをしていればいいわけではないのです。これがこの試合におけるテーマの1つだったでしょう。
戦前における広島の狙い
(開幕戦からMFを2枚変更した狙いは?)横浜FMの攻撃に対して、どこにスペースがあるか、そこをどう使うかは意識した。もう一つは、序盤戦でピッチでやれている選手をどんどん使っていくことで成長させていって、今年の過密日程や5人交代を味方に付けないといけない。ここは彼らにチャンスを与えて結果を得る。チームの良いサイクルにしたいという思いで使った。
城福監督がコメントしていますが、ハイラインを敷くマリノスの背後を狙っていたようです。特にサイドバックの裏。これは常套手段ですよね。
浅野も十分にスピードがありますが、エゼキエウや藤井も引けを取っていません。主力選手と同じ役割を遂行できると考え、彼らにチャンスを与えたのでしょう。レギュラーを取ってやるという発奮材料もありますしね。
このように、両チームとも『相手サイドバックの背後をスピードのある選手で急襲する』という狙いが見える先発メンバーでした。
前半に見えた一筋の光
広島の攻撃と守備
- 攻撃はハイライン背後を狙うロングボールが主体
- ロングボールなのでサイドバックが高く上がることを抑制できる
- 守備は2トップが戻って中央封鎖を強く意識。外回しを強制する
- ディフェンスラインも高く保ち、全体的にコンパクトな布陣を作る
特に前半で悔やまれるのはあの1失点だが、相手にペナルティーエリアにほとんど入らせることなく良い守備ができたのでゴールを先行できた。もちろんPKが二つあったが、ゲームの運び方としては我々のプランにかなり近い状況で進められた。
城福監督がコメントしてる通り、戦前の狙いをほとんど遂行できたのは広島でした。
ロングボール主体の攻撃をすることもあり、自然とサイドバックが上がることを抑制。さらに、スピードのある選手たちを活かしてカウンターも狙える。多少前後に分断しても、後ろには4バック+Wボランチの6人がいるため、被カウンターもそこまで怖くない。
セットした守備も堅固でした。2トップが自陣まで戻り中央封鎖を強く意識。そこにボランチが加わることで、ボランチ経由でサイドを変えられないマリノス。さらに、ハイラインを敷いてることもあり、縦にコンパクトな広島。マリノスは外側から狭い隙間を縫う攻撃を強いられました。
固定観念に囚われる選手たち
足元でパスを出す選手と、スペースでボールをもらいたい選手で意識の差がある
戦前予定していたカウンターも、広島のサイドバックがあまり上がらないため狙いにくい状況。そして、今まで戦ってきた4-2-1-3という布陣もあってか、足元へのパスが多くなる選手たち。
近くの選手へ足元にパスを出す。これを繰り返したところで相手を大きく動かしにくいし、目線も変えづらいです。しかも、背後にボールがこないと思われると、相手はハイラインを取りやすくなるデメリットも。縦にスペースを作ることができないのです。
図のシーンは、野上がマルコスに出て背後が空いた状態。しかし、大然の背後に浮き球を入れるのではなく、最も近いマルコスと足元でパス交換した扇原。このスカッドの狙いを考えると、色々思うところがある場面でした。
このような状況を一変させたのが、マリノスの1点目。岩田のロングボールに大然が抜け出したものです。割と普通のシーンに見えますが、このときまで相手守備陣の背後を狙った浮き球はほとんどなかったのです。それを実行した岩田の素晴らしいプレーでした。
ボールを持ったのが他の選手だった場合、近場にパスを出せないので下げていたかもしれません。岩田がこういう選択をできたのは、チームにいる歴がまだ浅いことも影響しているでしょう。後ろから繋ぐということは、ボス就任当初から口うるさく言われてきたことですからね。昔からいる選手ほど体に染みついていると思います。それを打ち破った岩田と大然。従来のマリノスに染まり切っていない彼らは、今後チームを引っ張るような存在になるかもしれません。
様変わりした後半の展開
後半になって変化した広島の守備
- 疲労からか、2トップの中央封鎖が緩くなる
- 裏抜けを警戒してか、ラインブレイクが早くなるディフェンスライン
- その結果、前半に比べて縦に間延びするようになる
前半に比べ、2トップの守備意識に変化が見られるようになりました。戻る速度が遅かったり、中央の制限が緩かったり。中盤との距離も開きがちでした。また、裏抜けを警戒してか、ラインブレイクタイミングが早くなる守備陣。これらにより、縦に間延びするようになります。
そのしわ寄せは中盤の選手たちへいくことに。上下動する距離が増えますからね。それも相まって、前半よりスペースを得られたマリノス。パス回しもスムーズになり、増々相手を押し込みます。
- 前半はディフェンスラインを経由してサイドを変えることが多かった
- 後半はアンカーである扇原を経由してサイドを変えることができるようになった
パスマップを見てもその差は明らかです。前半はボランチを経由してサイドを変えにくかったですが、後半はそれができるように。センターバック同士のパス交換が減ったことと、チアゴから松原へのパスが減ったこともそれを裏付けています。
前半から自分たちは支配していたし、後半は特に相手も後ろに下がっていたので、より支配できていた。
ボスもこういうコメントをしていますしね。では、なぜ相手は後ろに下がったのでしょうか。それは、1点目が布石になっているはず。岩田が背後に蹴ったことで、高いラインを保つ怖さが生まれます。しかもそれで失点してますからね。あの得点は1点以上の価値がありましたし、そういうボールを入れるチャレンジをしたことが素晴らしかったです。
渡辺皓太が躍動した理由
後半になって急遽出場した渡辺皓太。この日のヒーローは彼を挙げる人も多いのではないでしょうか。それだけ印象的な活躍を披露しましたよね。その背景には、彼が活躍できる土壌が整っていたように思います。
- 広島は間延びした布陣になっているため、各所にスペースができやすい状態
- マルコスに後ろでのさばき役を任せることができた
- 扇原に中盤の守備を任せることができた
まず、広島が間延びしていたので、各所にスペースができやすい状態だったことが挙げられるでしょう。相手ブロックの隙間は皓太の大好物。猫が袋にシャッと入るようにポジションを取ります。
マルコスが出場していたのも追い風になったでしょう。彼が下りて組み立て参加するので、自分が後ろに行く必要が薄くなる。あとこれは副産物的なものですが、マルコスが不調だったこともいい方向に働いたように思います。というのも、広範囲に動き回る彼と被らないように気を遣う必要がないからです。ルヴァン杯では周りの動きに帳尻を合わせる位置取りをしていましたが、この試合は遠慮なく自由に動くことができていました。
自由に動けたのは、後方の守備を扇原に任せられることもあったでしょう。アンカーになったことで、前半ほど前に上がらずバランスを取るように。こういった安心感も大事な要素ですよね。
以上より、自分の大好きなスペースが多くある中、誰にも何にも気兼ねすることなく動くことができる環境が整っていました。色々な偶然が重なった結果でもあるんですけどね。そしてそれに応えたあのパフォーマンス。非常に素晴らしかったです。
スタッツ
sofascore
SPAIA
Football LAB
トラッキングデータ
所感
理想と現実と
ボスの理想は3-3-1-3から相手のやり方に応じて柔軟に変化させることだと思います。しかし、それが予想以上に難しかったと川崎戦で痛感。じゃあ難度を下げるかということで、最初から変化後の布陣を充てるようになりました。もちろん、負けるわけにはいかないですからね。
たぶんこの試合もビハインドで折り返したため、ボスの直接的な指導があったのでしょう。だからこそキックオフ時にいきなりロングボールを蹴りましたし、扇原やティーラトンは背後を狙うボールが増えましたよね。
昨季までは複数試合で様子見をし、選手たちに考える時間を多く取っていました。しかし、今季は前後半で対応。例年に比べるとボスの動きはめちゃくちゃ早くなっています。降格があることも理由の1つでしょう。ちゃんとボスは現実を見てるんですねぇ。
ちょうどいい塩梅を目指して
先発メンバーの意味を考え、それに則したやり方で試合を進める。だからといって、この試合で裏抜けばかりを狙ってたら効果も薄れてしまいます。そうなると相手が背後を警戒するので、緩くなった前を使いたいところ。オナイウが下りて受けるスペースができる、と言えば具体的ですかね。そのときは足元につけるパスが効果的です。
要はどのような塩梅にするかということです。それが今回の試合では、足元への割合が極端に多かった。だからこそ違う手を差し込んだ岩田のように、違う目線が欲しかったです。『あの手この手で攻められるテクにションになろう!』という柔軟性は今後も重要になってくるでしょう。
【2021 J1 第1話】OJTは辛いよ…
早番メンバー
川崎フロンターレ
- 前回出社時と同じシフトで今回も臨む
- 大島さんと塚川さんは体調不良のためお休み
横浜F・マリノス
- 期待の新入社員である樺山が早速早番で出社
- 直前まで誰が出るかわからなかったが、今回はエロいと評判の和田さんが出社
- 激戦区だった最後尾の座はオビが射止める
今季から行う新規事業と事前研修
今季から新規事業を行うことにしたマリノス。新しいことをするので、まずは社員に理解してもらう必要があります。そこで、石垣島と宮崎にて事前研修を行いました。(べ…別に研修という名目で遊んでたわけじゃないんだからね!)
はい。ということで、うちは今季から新しいことを始めます。この研修でしっかりと基礎を学ぶように!
ふむふむ…そういうことか。それならこういうやり方もできるかな。
えぇ~!?これって額面通り受け取るものじゃないのか!?この発想はなかった…
基礎を教えただけで応用できそうな社員もいれば、常識にとらわれない発想に驚く社員も。研修開始当初は戸惑いも多く見られました。
しかし、ただ内容を教えるだけでなく、ロープレも行って理解の浸透を図るマリノス。これが功を奏し、研修が終わるころにはある程度理解が進んだようです。
えー、これにて研修は終了。基礎は教えたので、後は応用できるよう各々で理解を進めておくように!
はい!頑張ります!
社員自らが必死に考えた結果
社員たちの考えた営業方針
され、事前研修を終えたマリノス。いよいよ本番を迎えることになりました。最初は川崎フロンターレさんへの営業になります。そこで部長からこんな言葉が…
今回の新規事業はいきなり君たちに任せたいと思っているんだ。いわゆるOJTというやつだね。
い、いきなり自分たちでですか。4年目とはいえ、新規事業なので不安が少し…
なに、大丈夫だ。研修で君たちに基礎を全て叩き込んだ。それを相手に応じて使い分けるだけ。こういうのは実戦が大事だ。さあ!やってごらん。
どうやら部長は社員たちに自分で考えてもらいたい様子。新しいことなので不安はありますが、研修期間に学んだことを発揮するチャンスでもあります。早番の社員たちが相談して作戦を打ち立てました。
オブラートに包んだ会話をさせよう作戦
川崎さんに会話の主導権を握られると厄介だ。なので、俺が会話の核心を突かせないようシミッチさんを見張るよ。
そうなると最初に話してる俺が会話の方向性を決められるな。ある程度限定するから、次に応対がきそうなところは事前に準備を頼む。
了解!図にするとこんなイメージかな。
- 天野がシミッチを監視し、ストレートな物言いをさせないようにする
- 発言の後戻しができないよう、オナイウが外堀を埋めていく
- 誘導した会話応対の事前準備をすることでスムーズに進める
そうだね。これはきちんと会話を誘導できるかが重要だ。みんなよろしくな!
弊社に呼んで御社を空にしよう作戦
こちらがプレゼンするときのことも考えておこうか。
そうだな。じゃあわざとこっちに招待して、手薄になった相手会社を畳みかけるなんてどうだ?
かなり攻撃的というか、リスクもあるやり方だね。それってこんな感じになるのかな?
- 魅力的な話題を自社で行い、多くの取引相手を招待する
- 手薄になった取引先に人数をかけて一気に商談をまとめあげる
それいいっスね!一気に状況がひっくり返るのがたまらないっス!!
よし!じゃあこの2本立てでいくか。今季初仕事だ、やってやろうぜ!!
どうやら作戦はまとまったようですね。彼らなりに考えて臨む今季初仕事。はてさて、どうなることやら…
打ち砕かれたプランとバラバラなチーム
選手たちは事前に予定してた作戦を決行。川崎さんは「うんうん」と相槌を打ちながら話を聞いていましたが、しばらくすると様子が変わってきました。こちらの提案に鋭い返しをバシバシ言ってくるではないですか。これにはマリノスの社員たちもたじたじ。
おい!こんなに鋭いツッコミくると思ってなかったぞ!
話術のうまさ、切り返しの速度。こちらに考えさせる暇を与えないほどとは…
ちょっと後ろ人手不足かも。たくさん自社に招待しすぎちゃったかな…
中々会話もいい方向に持っていけない。核心が突けないことを逆に利用されてる気がする…
どうやら自社はてんてこ舞いな様子。取引先の会話もうまくいってない模様。「もう最初に考えた作戦めちゃくちゃだよ!とにかくこの状況をなんとかしなきゃ…」各々がそう考えた結果…
社員それぞれが勝手に考えるので、チームとしてバラバラになってしまった
なにっ!?自社の人数が足りないだと!?それなら俺がヘルプに行こう。みんな、待ってろよ!
いやいやいや、それだと取引先の担当人数が足りなくなるだろ。純戻ってこーい!じゅーん!!
北の国へ旅立った純。残された和田さん。足りなくなる取引先の社員数。過剰になる自社の社員たち。もうね、各々が勝手に判断してバラッバラなわけですよ。めちゃくちゃになった状態で川崎さんにご満足いただくこともできず…OJTは散々な結果に終わり帰社。結果をポステコ部長に報告します。
大激怒の部長がくれたOJTのフィードバック
報告を受けた部長の怒り
なんだその仕事っぷりは!!ちゃんと研修で教えたよね!?それを応用すれば問題なくできる相手じゃないか!
たしかに研修のときに基礎は教えてくれたけど…それ以降、具体的にどうやるかまでは教えてもらってないような…
大体な、川崎さん相手に受けに回ったり誘導したりしても効果薄いことわかるでしょ!先方に考える時間与えちゃダメだって。アタックし続けるのみ!!
いや…川崎さん相手のマニュアルとか特にもらってなかったし…なんならOJTやるっていきなり言われたのも…
ちょっと散々な出来だったから、今回は私自らやり方を教える。次からはこうやるように!
はい!!
あと、すごいスピードで会話の切り返しができる大然と、ベテランの宏太を遅番で入れるから。彼らの助けも借りるように。
よろしくな!次は俺のスピードで相手に息つく暇も与えないぜ!
ポステコ部長が授けた策
怒りが有頂天に達したポステコ部長。ちょっと理不尽だけど、社員たちは大声で説教されるハメに…しかし、川崎さんとの商談はなんとしてもまとめあげたいもの。ポステコ部長自ら作戦を授けてくれました。例年こんなに早く部長からフィードバックがもらえることはありませんが、今回は特別だったようですね。
さて、部長が伝授した策とはどういうものだったのでしょうか。内容を見てみましょう。
- 自社担当と、取引先担当を明確に分ける
- 川崎さんが提案しそうになったらすぐに応対する(会話のペースを高速化)
- 自社に人を呼んだ際、手薄になった取引先付近にすぐさま連絡を入れる
あ、俺はハッキリと自社担当なのか。もっとそっち側に寄ってよかったんだな。
代わって入った俺は当然取引先だ。先鋒は任せな!
あ…大然入っても俺は取引先のままなのか。純みたいに自社ヘルプしなくてもいいのね。
これなら頭が整理されてやりやすい。>みんなの意識が揃うはず。次こそやってやろうぜ!
おう!!!
どうやらまとまることができたようですね。これで前みたいにバラバラになることもないはず。そう、>商談をまとめるにはチームワークが大事なのです。
授けられた策を実行して
はい、そこはこうでして。はい、もちろんそこはそうなります。けどこういうものもございまして。
相手に考えさせる時間を与えないほどのマシンガントークっぷり。さすが大然だ…
先鋒がこう言ってきたのなら、こうすればいいと思うよ。あー、待った!それはこうしないとみんなのやってることとズレちゃうから気を付けて。
水沼先輩って必ず後輩に声かけてくれるよなぁ。よく周り見てるし、内容もわかりやすい。うん、やっぱ頼りになる!
遅番で入った大然や水沼が早速活躍してるようですね。役割が明確化され、チームも一枚岩になれている状態。散々だった前回と比べて、見違えるように成果が出始めました。ただ、最終的に商談がまとまるところまでいけず。前回の失敗があまりにも痛かった…
うーん…結果、まとまらずか…
残念だけど、今回はここまでのようだね…前回の失敗が響いたか…
まぁ、ぶっつけ本番みたいなところあったし。次はうまくやろうよ!
そうだね。いつまで凹んでても仕方ない。次がんばろう!
初の実戦はほろ苦い形に終わってしまいました。しかし、長い今季はまだ始まったばかり。新しいことがいいきなり成功するほど、この世界は甘くないですし。これを糧に次へ繋げましょう!次回に乞うご期待。
【2021 J1 第1節】川崎フロンターレ vs 横浜F・マリノス
スタメン
川崎フロンターレ
- 4-1-2-3の布陣
- ゼロックスと同じスタメン
- 大島は怪我のため、塚川は脳震盪のため大事を取ってメンバー外
横浜F・マリノス
- 3-3-1-3のシステム
- 右WBには和田、左WGには高卒ルーキーの樺山が先発
- エウベルと喜田が負傷離脱。マルコスも大事を取ってメンバー外
試合のポイント動画
【2021 J1 第1節】川崎フロンターレ vs 横浜F・マリノス🎥
— ヒロ@hiro17 (@hiro121720_yfm) 2021年2月27日
✅川崎の追い込み漁
✅マリノスの守備
✅マリノスの攻撃 pic.twitter.com/wlh80QDQYr
自信をなくしたチームが取った行動
選手たちが考えて狙ったこと
前半に関しては、選手たちが自分たちで『川崎フロンターレ対策』を考えて実行したものだと思いました。その理由は後述します。ではまず、天野の試合後コメントを見てみましょう。
「相手が前からプレッシャーにくると分かっていましたし、その分自分たちは前に3人味方がいて、1対1をつくりやすいという想定のもと、キック力のあるオビ選手から一発で裏返して1対1にできるという狙いで準備をしてきました。良い部分も出せましたが、少し慌てて蹴ってしまいすぐに相手のボールになってしまうことも多かったので、修正が必要ですし、もっと自分たちからボールを呼び込んで、自分たちらしいサッカーが前半からできたらよかったと思います。」
攻撃における狙いを語っていました。それがうまくいかなかったようですが、全くできなかったのではなく、何回か成功していたこともありました。
前からくる相手を自陣に誘引して前後分断を誘う。前線で優位な状態が作れたら長いボールを入れてひっくり返す。
昨年にBunさんの書いたプレビューに記載されていますが、川崎フロンターレは相手を押し込むことで強みを発揮するチームです。前に人数をかけた攻撃を行い、攻守が入れ替わった時もそれを活かしてハイプレスを敢行。常に敵陣でプレーすることにより、全体の走行距離を抑えています。
ゼロックスの試合を見ても、この姿勢は今季も継続されていました。3トップと両IHが前に出て中央を固める。外にボールが出たらサイドバックも出てきて封殺(詳しくは動画を参照してください)。
前掛かりなプレスのデメリットは、前後分断しやすいことです。つまり、ハイプレスをかわされると、ディフェンスラインの前に広がるスペースが晒されてしまう。マリノスとしてはどうやってこの形を作るか考えた結果、コメントのようなやり方になったのだと思います。
前からくる相手を縦に伸ばすため、自陣側へ誘引。その状態で前にポカーンと蹴れば、盤面をひっくり返せます。しかし、ただ蹴るだけでは相手に勝ちにくいですよね。そこで、なるべく最前線に人を置くようにしてみました。同数の状況を作れば、スピードのあるマリノスが優位に立てることもはず。そしてこの狙いがあったからこそ、後ろでビルドアップが詰まっても中々人が下りてこなかったのだと思います。
しかし、相手のプレッシャーが予想以上にきつかったのか。または、ロングボールの精度が足りなかったからか。この試みがうまくいくことは、あまりありませんでした。
天野がシミッチをマーク。最前線で自由なオナイウが方向付けして退路を遮断。サイドで囲ってボールを奪う。
守備に関しては、天野がシミッチを監視することで、川崎に外回しを強制。最前線にいるオナイウが自由なこともあり、誘導先の方向付けや、退路の遮断をしやすい状態でした。
これはそれなりにうまくいくこともありましたが、かわされることも多かったです。その理由は、プレススピードが遅かったことでしょう。人がくるまで時間があるので、川崎の選手たちは出し先を考えたり、安定してボールをおさめることができる。また、IHや家長が下りて人数をかける時間もできます。結局、川崎の引き出しにあるやり方で対応されてしまいました。
失敗が続いたときに取った行動
最初の10分間は川崎が様子見していたこともあって、うまくいくことが多かったです。しかし、それ以降は狙い通りいかないマリノス。こういう状況で選手たちの頭によぎったのは、『ボールを保持して自分たちのサッカーをやろう』ということだったのではないでしょうか。最初は相手を誘引させるための保持でしたが、それが徐々にボールを失わないための保持に変わってきます。
- 天野が下がっているので、川崎は前に人をかけやすくなる
- 代わりに和田が上がるが、守備で歪みが生まれる
後ろで詰まるので、天野が下りるようになりました。しかし、本来狙いたいのは最前線での数的同数。トップ下の選手が下りるのは、相手に屈したと言えるでしょう。後顧の憂いがなくなった川崎は、前への圧力をかけやすくなります。自分たち本位に試合を進めているので、精神的な余裕も生まれるでしょう。
今までボールを保持することを強く叩き込まれてきたからこそ、この行動を取ったのでしょう。しかし、川崎がやりたい『前向き守備』を助長してしまう形になり、自分たちの首を絞める結果になってしまいました。
また、この場面では下りた天野の代わりに和田が上がっていました。しかし、彼は守備時ボランチに入り、天野が前に出るルール。攻守が入れ替わった際に動く距離が増え、守備が安定しづらくなります。
このように、うまくいかなったときに選手の取った行動がバラバラだったことが目立っていました。うまくいかないときにチームの方向性を決められる選手の不在を痛感。ピッチ上のキャプテンの存在はこういうときに響くんだなと思いました。
ボスが直接指示した後半
前半とは打って変わり、積極的になったマリノス。後半はやり方がブレることなく、最後まで完遂しきりました。前半は選手たちによって狙う方向がバラバラでしたが、後半はそれがなかった。このことから、前半は選手たちだけで考えたやり方。後半はボスが直接指示したやり方だったのだと思っています。
4-2-4に代えた理由
4-2-4は3-3-1-3から可変できる。
後半から4-2-4の形に変えましたが、実は3-3-1-3から可変することができるんですよ。選手の特徴を考えると、ボランチになれる和田を右WBで起用したことにも納得がいきますよね。
また、キャンプではリベロに畠中が入ることが多かったですが、この試合ではチアゴが起用されることに。これは川崎の特徴を考えた上での判断でしょう。三笘のカバーのため、中央に足の速い選手を置きたい。家長はスピードに特別な強みがある選手でないため、畠中でも追いつくことができる(その後に抜かれないかはまた別のお話)。こう考えることができますよね。
前と後ろに人がいる形なので、相手を前後分断しやすくなります。相手が前掛かりになるほど、こちらは裏返しやすくなることに。後半56分にオビが、61分にチアゴがロングボールを前線に蹴っていたのはそれを狙ってでしょう。
また、大然を最前線に入れたことにより、プレスの迫力が増加。意思統一できていたこともあり、全員の寄せるスピードが上がりました。これで余裕がなくなった川崎が選択したのは、それでも繋ごうとすること。三笘と家長は足元にボールをおさめることで強みを発揮しますし、ダミアンはスピードに秀でていません。ポカーンと背後に蹴っても効果は薄いので、その選択にも納得がいきます。実際カウンターの脅威になったのは、ほとんど三笘のドリブルからでしたしね。なので相手が苦し紛れに蹴ってくれるのなら、それはそれで嬉しかったりします。
全体的なプレースピードを上げ、両陣営深くに何度もボールが行き交う形は、マリノスが望んでいるもの。シャトルラン対決なら負けません!
ゼロックスのときと比べると、走行距離は約7km、スプリント回数は41回増加。特に中盤選手のスプリント増加が目立ちます。これは、前に人をかけて抜かれたとき、後ろを埋めるため必死に戻るからです。盤面をひっくり返すことにより、シャトルランを強いていたのはこのポジションの選手たちでした。前からいきたいけどオープンな展開にしたくない。そのやり方は、彼らの走りによって支えられていたということでしょう。
実はふんだんに盛り込まれていた川崎対策
- 猛スピードのプレスを行い、相手に考える時間を与えない
- 最前線に人を多く配置し、ロングボールで一気にひっくり返す(背走させたい)
- リベロにチアゴを起用したのは、三笘をカバーするため
- 和田を起用したのは、4-2-4の形にして最前線に人をかけたかったから
後半のやり方をまとめると、このようになります(攻守におけるやり方は動画を参考にしてください)。実は川崎対策がふんだんに盛り込まれていたんですよね。いずれも川崎があまり経験したことのないやり方でした。しかもこれはボス主導で行われているという驚きも。
後半になってフォーメーションを変えました。その理由は、以下のような可能性があると思います。
- 3-3-1-3における、川崎への対応策をボス自らが提示した(答え合わせ)
- 前半うまくいかなかったので、自信を回復させるために昨季のやり方に戻した
真相はどちらなのか、それはもう少し継続して見ないとわかりません。まだ1試合行っただけですしね。次の試合は、事前に広島の試合を見て臨みたいと思います。
スタッツ
sofascore
SPAIA
Football LAB
トラッキングデータ
所感
選手たちに考えさせる姿勢は継続
前半は選手たちに考えさせ、後半は自らが指示しました。ボスは日ごろから、やろうとしてることは実戦でしか身に付かないと言っています。キャンプが研修期間。リーグ戦前半がOJT。リーグ戦後半がOJTのフィードバック。こう考えると会社員のようで面白いですよね(笑)
今回はたまたま前後半で変わりましたが、次もそうなるとは限りません。なんとなくですが、余程酷い内容か大きなビハインドでない限り、ボスは選手たちにやらせるのではないかと思います。
いずれにせよ、『相手を見て柔軟に対応する姿勢』は今季のテーマになりそうです。そのための新システム導入なのかなと。道のりは長いですが、今度を楽しみにしたいと思います。
戸惑う選手とサポーター
「対戦相手は関係ない」、「ボールを捨てずに繋ぐんだ」、「自分たちのサッカーをする」こんなことを口癖のようにボスは言っていましたよね。それが今季になり、「相手ごとにバッチリ対策をするんだ」、「効果的なら最前線に蹴ってもいい」と言うようになりました。キャラ変がすぎますよね(笑)「言ってること真逆じゃないですか!」なんて思ったりもします。
このギャップに苦しむのは、古くからチームにいる選手たちでしょう。彼らはボスの哲学が染みついてますからね。反対に、新加入選手たちは適応しやすいかもしれません。実際、岩田は前半でもロングボールを狙い続けていました。今までの固定観念に囚われない柔軟な考えが、選手たちに求められるでしょう。
マルコスの不在と天野を残した理由
後半から大然を入れてうまくいったように、この試合のトップ下は最前線で立ち回れる選手が適切だったでしょう。しかし、それに合致するマルコスはコンディションの問題でメンバー外。代わりに起用されたのは天野でした。前でのプレーが期待されましたが、下がることが多くなってしまう結果に。これはボスの期待を大きく裏切ったことでしょう。
そんな彼を後半に残したのは、「君が前半プレーしてた内容はボランチの役割だよ」ということと、「本来やってほしかったのはオナイウや大然のようなプレーなので、それを見て学ぶように」ということだったと妄想しています。だって扇原代える理由があまりないですもん…
相手によって対策をするので、これからも「この選手がいれば…」と思うことはあると思います。そういったとき、代わりに出た選手がいかに期待に応えるかは、今季大事な要素の1つになるでしょう。