【19-20 ラリーガ 第28節】マジョルカ vs バルセロナ
- スタメンと攻守の狙い
- 中央を封鎖するマジョルカ
- サイドへの圧力を強めるバルセロナ
- 多彩なバルセロナのビルドアップ
- パスマップから見るバルセロナのビルドアップ
- 両チームのシュートについて
- スタッツ
- 所感
スタメンと攻守の狙い
マジョルカ
バルセロナ
- 4-3-3の布陣
- ボールを保持して相手を動かしながらパスコースを探る
- 守備時は即時奪回を目指しつつ、取れなければ4-4-2のブロックを形成
中央を封鎖するマジョルカ
- 2トップの片方は必ずブスケツをマークする
- もう片方のフォワードはボールを保持しているセンターバックへ寄せる
- ボランチは相手インサイドハーフを捕まえる
- 全体的にボール方向へスライド。縦横にコンパクトな布陣を維持する
最大の特徴は2トップの片方が必ずブスケツをマークすることでしょう。センターバックがボールを持ったら片方が寄せ、相方はブスケツをマーク。逆のセンターバックが持つようになったら、ブスケツのマークを入れ替え、役割が反転する。
2トップのスライドが間に合わない場合はボランチが前に出てブスケツをマークする。後方に構える選手たちもボールサイドにスライド。これらのことより、中央を使われたくない意思が強く伝わってきました。
ボランチは別の役割も担っています。それは相手インサイドハーフ封じ。フレンキーとビダルをマークし、なるべく外側でボールを回させようとします。
アンカーを消し、逆サイドを捨てるほど横圧縮することで中央を封鎖する
うまく狙いがはまるとこんな具合にバックパスを強いることができていました。
逆サイドを捨てるほど空けていますが、そこは相手が後ろに戻す時間でスライドします。開始早々に失点してしまいましたが、前半14~36分まではバルセロナのシュートを0に抑えるなど、一定の効果がありました。
サイドへの圧力を強めるバルセロナ
この中央封鎖に対して、サイドで優位性を確保しようとするバルセロナ。様々な工夫が見られました。いくつか見ていきましょう。
センターバックの持ち上がり
センターバックの持ち上がりにより中央封鎖を意識させてサイドを空ける
センターバックが持ち上がることにより、相手に中央を意識させます。このときフレンキーがハーフレーンにいることがポイントです。ここを経由されるのはマジョルカからしたらご法度。中央への意識がより強まります。これで大外にいるアルバへのパスコースが空くことに。サイドに起点を作ります。
相手サイドハーフを留めるインサイドハーフ
- フレンキーがロドリゲスを留める
- メッシがフリーで下りてくる
- メッシにボールが入ったとき、相手の注意がそこへ向く
- 視線が外れたフレンキーが背後を取る
- サイドバックがカバーに入る
- 外にいるセルジ・ロベルトがフリーになるのでそこへパス
インサイドハーフが相手サイドハーフの近くに立ち、相手を留めるシーンもいくつか見れました。こうなると外にいるサイドバックより、内側にいるインサイドハーフの方がマーク優先度が高くなります。泣く泣く外側を空けるも、そこへパスを出されると後手に回ることに。セルジ・ロベルトやアルバからのクロスは多く見られましたよね。
多彩なバルセロナのビルドアップ
相手の対応を把握した前半14分ごろから、バルセロナの中盤が動きます。
インサイドハーフのレイオフ
2トップ脇にインサイドハーフが下りて縦パスを引き出す
この動きは前半14分ごろから見られるようになりました。
自分にマークがつくことがわかったブスケツは安易に下がることしません。あえて中央付近にいることで後方にスペースを作っていました。主に空くのは2トップの脇。そこにインサイドハーフが瞬間的に下りることで、縦パスの受け口になります。余裕があればターン。難しいならバックパスすることにより角度をずらします。
この動きをフレンキー、ビダルの両選手が行っていたことから、インテリジェンスの高さが伺えました。
アンカーが下りて3バック化
前半24分ごろになると、今度はブスケツが下りてくるようになりました。センターバックを開かせて間に落ちる。いわゆるサリーダ・ラボルピアーナというやつです。こうすると何が嬉しいか。それはサイドバックを高い位置に押し上げられることです。
例えば、前半35分ごろは、セルジ・ロベルトが高い位置を取っています。そのため、ウイングは中央に絞れることに。メッシを中央に移すことで、司令塔としての役割を期待できます。これが布石となり、メッシがアルバにパスを出せたからこそ、追加点が生まれたのだと感じました。
パスマップから見るバルセロナのビルドアップ
キーパーを含めたディフェンスラインでのパス回しが多く、U字型になっていることがわかります。このことから、マジョルカの中央封鎖守備はある程度成功したと言えるでしょう。
では、U字の出口はどこになっていたのか。それはセルジ・ロベルトだったようです。彼からメッシやビダルに多くのパスが出ていることがわかります。ここをきっかけに攻撃をしていたみたいですね。
なぜ前半14分で区切ったかというと、ちょうどこの時間からクチョ・エルナンデスとダニ・ロドリゲスがポジションを入れ替えたから。
入れ替え後、セルジ・ロベルトへのパスは減っていますが、代わりにフレンキーやブスケツへのパスが増えています。このことから、メッシのいるサイドを封じたい意図があったように思います。代わりに中央を使われるようになったので、これをどう評するかは意見が分かれそうですね…
また、ブライスワイトとグリーズマンのパス本数を見ても面白いです。前者は数が少なく、主にフィニッシャーとしての役割に傾倒していたことがわかります。後者は数が多く、繋ぎ役になっていたことが伺えます。それぞれキャラクターが違うようですね。
両チームのシュートについて
この試合、両チームのシュート数のみを見るとほぼ互角の本数でした。しかし結果は0-4。xGも大差がつきました。そこで、両チームのシュートについて少し掘り下げたいと思います。
シュートを撃った位置について
マジョルカ
- 約半数がエリア外のシュート
- 枠内シュートはエリア外からの3本のみ
マジョルカのシュートは約半数がエリア外。枠内シュートもそこから3本を記録。敵陣深くまで侵入することができなかったようです。
サイドから突破してもクロスを相手に跳ね返される。カットインしてもシュートをブロックされる。バルセロナの中央を意識した守りに苦戦していましたね。
バルセロナ
- 全てのシュートがエリア内から
- 撃った位置もほぼゴールエリア幅内になっている
何と全てのシュートがエリア内からでした。横もほぼゴールエリア幅。ゴール正面から多くのシュートを浴びせていたことがわかります。
こちらは敵陣深くへ侵入でき、決定的な位置でシュートを撃てていたようです。それが得点やxGに表れたのでしょう。
シュートを撃った選手について
マジョルカ
- 最多は久保の4本
- ブディミルが2本と、フォワードが放ったシュートが少ない
最多本数は久保が記録。彼はチャンスメイクだけでなく、フィニッシュにも多く関わっていたことが伺えますね。
ブディミルとポゾがこれに続きます。シュートを2本以上撃ったフォワードはブディミルのみでした。フォワードが放ったシュートが少なく、フィニッシュに絡めていないことがわかります。彼らへどうボールを渡すか。そのデザインがあまり見れませんでした。
バルセロナ
対するバルセロナはメッシ、ブライスワイト、スアレスと、多くのフォワード陣が上位に顔を出していました。こちらはフィニッシャーが役割を果たせていたと言えるでしょう。ゴールまできちんとデザインされていたことが伺えます。
スタッツ
whoscored
https://www.whoscored.com/Matches/1394359/Live/Spain-LaLiga-2019-2020-Mallorca-Barcelona
sofascore
understats
所感
バルセロナの多彩な攻め方に圧倒される試合でした。あの手この手を使い、相手に慣れを与えさせない。ここにえげつなさを感じました。特に相手のプランを読み取ってからの動きは秀逸。強制的に次のプランへ移させるほどの頭の良さが、チーム全体に浸透しているようですね。
1つ気になるのは、グリーズマンとブライスワイトの役割。前述した通り、グリーズマンはチャンスメイカーになっています。これは監督として想定内なのか、それとも違うのか。選手起用法などをこれから数試合見ていきたいなと思いました。
マジョルカはサイドハーフに大きな負荷がかかるサッカーをしているなという印象でした。攻撃においてはドリブルやパスなどでチャンスを創出。守備では2トップがカバーしきれないエリアを見るなど、役割が多いように思います。中央から崩すプランが見られなかったことから、攻撃の成否は彼らの出来に左右されるでしょう。
チャンスメイクということに久保は応えていましたが、守備でやられてる姿が目立ちました。あれだけ攻撃を任せるのなら、もう少し守備負担を軽減できる仕組みを作ってあげたいものです。が、この過密日程でそんなことできないので、どう付き合っていくかでしょうね。
さて、リーガも戻ってきました。次の週末にはプレミアも再開される予定です。徐々に欧州サッカーが戻ってきている喜びを噛みしめつつ、今後も多くの試合を楽しみにしたいと思います。