hiro's football report

国内外、カテゴリー問わなずサッカーのマッチレポート風なものを掲載

【2022 J1 第8節】鹿島アントラーズ vs 横浜F・マリノス

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スタメン

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鹿島アントラーズ

横浜F・マリノス

  • 前節から8人の先発メンバーが変更
  • マルコスと海夏が負傷離脱中

手札の数に表れたチーム成熟度の違い

鹿島のやり方

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  • 最前線に2トップと両翼が位置取る
  • ボールサイド3.5レーン分くらいに寄る
  • 選手の配置は自由だが、動き方にやんわり約束事がある
  • 和泉は1列上がってトップ下化する
  • 中央の片方は背後へ抜け出す
  • もう片方は後ろへ下がる
  • 横か後ろのサポートに入る
  • (必要であれば)大外をサイドバックが駆け上がる

 縦に早い攻撃を志向する鹿島。ただ、無闇に放り込むわけではありません。上述した動きをするため、かなりな人数を前に送り込みます。

 主な理由は2つ。放り込んだこぼれ球を拾いやすくすることと、奪われても即時奪回を仕掛けられるからです。

 動き方のルールにより、ボールを入れる周辺へスペースを作ることが可能中央2人の前後移動で縦方向。両脇にいる選手で横方向に広げて局所的な空間を生み出します。ボールサイドによるのは、大外にサイドバックが上がるスペースを作りたいからでしょう。

 敵陣への侵入方法はこれが主な形。なるべく相手を押し込むべく考えられたものだと思います。マリノス相手にハイプレスを敢行できるので、相性としてもよいものだったでしょう。

ビルドアップに表れる、時間の作り方の違い

マリノスの組み立て
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  • 噛み合わせ上、浮いている西村に当ててレイオフしてもらうことが多かった
  • 鹿島は前に人数をかけているので、抜け出せばフィルターは樋口のみ
  • サイドバックが絡めば、すぐ最前線へつけることができた
  • 優位な状況で高い位置へボールを運べるので、攻撃に時間をかけられる

 ポイントはトップ下に入った西村。浮いた彼が落とし、前を向いた選手が前線へ正確なパスをつける。こういった形で、相手のプレスをいなすことができていました。

 マリノス陣内にボールがあるとき、鹿島はディフェンスラインまで寄せてきました。必ずしもかわせていたわけではありませんが、広島戦に比べればショートカウンターを受ける回数は減っていたと思います。根気よく繋ぐことを続け、鹿島をミドルブロック守備に変更させることができました。

マリノスもうまいんで、プレスがなかなかハマらなくてボランチ岩田(智輝)選手が浮く状況がどうしてもできていた。そこはちょっとキツいけど(上田)綺世を前に残して、俺が付こうかなと思っていた。そうした中で、やっぱあの時間帯で点を取れなかったことがチームとしては重く、後半の疲れにどっと出たかなと思います。

 鹿島の守備が後ろ寄りになった経緯は、鈴木優磨がコメントしていました。相手をかわし続けたことにより、守備の方法を変えさせた。それが鹿島のプレススイッチ役である鈴木優磨だったことが、殊更に効いていたでしょう。

メンタルのところで素晴らしい強さを選手は出してくれました。タイトなスケジュールのなか、アウェイの地でメンタルを強く保ち、自分達でボールを支配しようという気持ちでピッチに入りました。それが良い結果に繋がったので、今日はメンタルの強さが出た試合だと思います。

 この日に出た選手たちの組み立て能力が高かったこともありますが、ケヴィンはメンタルを強く保ったことで成功を掴めたと感じているようです。

 広島戦での完敗。主な理由は、繋ごうとしたことを逆手に取られたものでした。連敗を避けたいので、普通なら蹴とばす安定志向に走るでしょう。しかし、選手たちは恐れず繋ぐことを選びました。そしてそれを貫き通した結果、相手の守備を下げさせることに成功。この時点で1つの戦いに勝っていたのです。

Q. エウベル選手を後半に投入した狙いや、それによって出た成果について教えてください

前半の最後の方から自分達がようやくコントロールし始めたと感じます。相手にプレッシャーをかけようと話していたので、後半のスタートからエウベルを出場させました。角田選手と永戸選手の2人がエウベルとともに素晴らしいコンビネーションをやってくれたと思います。

 ケヴィンがどこを指しているかはわかりませんが、自分は鹿島がミドルブロックに変えた前半30分ごろが分水嶺の1つだと思います。

 押し込んだ相手の攻略は、エウベル交代によるキャラ変。ここは前節の広島戦で書いたので、省略します。

鹿島の組み立て
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  • 自陣から繋いで前進することがほとんどないので、後方で時間を作れない
  • すぐ蹴るしかないため、前に蹴ったフォワードしか競れない
  • 鹿島が時間を得られるかは、フォワードが競り勝つかどうかに左右される

 マリノスのプレッシャーが速いこともあってか、鹿島はボールのリリースが早かった印象です。さらに押し込まれているので、前線の選手も守備に戻ることに。本来は敵陣に多くの味方を送り込みたいので、この状況は本懐ではなかったでしょう。

 寡兵な状況で浮き球を蹴る。鹿島の選手が上がる時間を作れるかは、空中戦に委ねられます。sofascoreによると、上田綺世が3/8勝、鈴木優磨が1/8勝でした。翻って、畠中が7/8勝、角田が6/8勝でした。勝敗は歴然。ミドルブロックへの変更に加え、空中戦に勝てなかったことも押し込まれた要因だったでしょう。

 競り合いに勝てなければ地上戦を仕掛ければよい。その発想を具現化したものが右図になります。しかし、このように自陣から繋いだ回数は少なかったです。

 狭い空間でも強いパスを送れ、ドリブルによる前進も兼備しているピトゥカの不在が響くことに。(やることが多いのもありますが)樋口や和泉が同じようなプレーをするには、それなりな余裕が必要になります。個人のプレス耐性が問われるほど、プレー強度の高かった試合でした。

持ちうる手段の個数差

 この試合はチーム成熟度の差が表れたと感じました。マリノスは長いこと同じベースでプレーしています。繋ぐことはもちろん、縦に早い攻撃だってできます。その上で相手を押し込んだり、左右に回して様子を伺うことも。翻って、鹿島は縦へ早い攻撃がほとんどになります。後方からの繋ぎはまだ未整備。つまり、両チームの攻め方に種類差がつくことに。これは対応力に直結します

 今季から新しいスタイルになった鹿島。まずは目指すべきベースの構築が優先されます。手段が1つだと、問題にぶつかったとき手詰まりになります。しかし唯一の方法を確立しなければ、そもそも勝つことができないでしょう。まだ他のやり方を覚える段階ではないということです。

 今回差がついたのは、任意の場所で時間を作れるかどうかだと思います。縦に素早く仕掛け、スピードで相手を攻守に渡って圧倒する。この方法が刺さらなかった場合、繋ぐことも必要になる。だからこそ、ザーゴ元監督はビルドアップに注力した時期があったのでしょう。(なぜ最初に取り組んだかは、書くと長くなるので割愛)

後半もチャンスはありましたし、1本でも相手に入っていれば、逆に相手はもっと出てきてくれた。そうしたらもっと裏のスペースを使えたかなと思います。けど、もうちょっとチームとして裏を狙うタイミングと、回すタイミングは取り組まないといけないな、とみんなも感じていると思う。そこに向き合っていければ、相手としても、いま裏を狙ってくるのかそれとも足元なのかという怖さが出てくると思う。点差で言うほど俺は悲観してないです。

 引き出しの数は鈴木優磨も気にしていたようです。試合をしている選手たちが感じているので、鹿島はこれからの取り組みもスムーズに進むと思います。

スタッツ

sofascore

www.sofascore.com

SPAIA

spaia.jp

Football LAB

www.football-lab.jp

ラッキングデータ

www.jleague.jp

所感

運に恵まれ、神に助けられた

 カイキのヘディングがバーに当たったこと。ミンテのシュートが枠外になったこと。これらの運に加え、高丘という神が何本も決定機を防いだことが勝因だったと思います。

 0でしのげたからこそ鹿島は最後まで出てきてくれました。先に失点した場合、前向きのベクトルが減少して辛かったかもしれません。そうでなければ、後半勝負なんて言ってられなくなりますからね。スタミナ差を押し付けられたのは、無失点だからこそ守備から勝利を得た試合だったと思います。

 暑い中での試合もできたし、鬼門で勝てたし、連敗も防げた。非常にいい状態でACLに臨めるでしょう。2020年の借りを返しに、ベトナムへ向かう選手たちに幸多からんことを。