【2022 J1 第28節】FC東京 vs 横浜F・マリノス
スタメン
FC東京
- 前節から2人の先発メンバーを変更
- 前節負傷交代したディエゴ オリヴェイラは先発出場
横浜F・マリノス
- 前節から1人の先発メンバーを変更
- 宮市が負傷離脱中
- 外国籍選手人数の関係でヤンがメンバー外
ボールを保持する高さの違い
リスクを冒したくない東京の守備
- ディエゴがアンカー番、ウイングが外切りの中誘導、中央で待ち構えるは3センター
- それに対してボランチ両名がディエゴの脇に下がることは、前回対戦と同じ構図
- 違ったのは中盤の3センターが中々前に出なかったこと
- 奪う位置は下がるが、抜かれるリスクを考慮して選択した守り方
中盤のフィルター維持を目的とした、ミドルブロックを形成する東京。ハイプレスを仕掛けてこなかったため、ミドルサードまでは比較的容易に前進できました。エドゥアルドに対して身体を開いたり、もう少し下がって組み立てを開始するようケヴィンが指示していたことも、組み立てが安定した一因だったでしょう。
東京の3センター前に出るマリノスの選手は、Wボランチとサイドバックの4人。右図では安部が喜田に強くついていった結果、永戸がフリーに。すかさずエドゥアルドが縦パスを刺し込みました。永戸に対して中盤の選手が対応できないので、最終ラインが晒されてしまうことに。このあと安部は、アルベル監督に呼ばれて立ち位置を注意されていました。このことからも、東京は中央を固めることでリスクを低減したかったことが伺えます。
中央が固められているなら、サイドに人をかければいいじゃない。そうした考えのもと、マリノスはサイドから攻勢を仕掛けます。特に目立ったのは、西村とジョエルがサイドに顔を出すこと。今までは均等に選手を配置する意識が高かったですが、この日は密集することも。その成果は、主に2点目に表れていたと思います。
プレスの勢いと、繋ぐための勇気
- スライドするスピードが速く、寄せの迫力があるマリノス
- 東京の選手は素早い判断と、狭いところでボールを扱うスキルが求められる
- 前進させるための勇気が中々持てず、後方へ下げてしまう場面も
- しかし相手がいなくなった所へ入り込み、かわして前進できることもあった
ここ最近ずっと書いているのですが、ハイプレスをいなされることが依然としてマリノスの課題の1つです。解決方の1つとしては、守備の方向付けが挙がるでしょう。この試合では、レオや西村に『サイドを限定する意思』を少し感じました。しかしこの側面は薄く、どちらかというと寄せと判断を速くする脳筋寄りな方向でアプローチ。ACL神戸戦も前に人をかけることで好転したので、強度を上げる方向性だったのでしょう。
Q、チームとしての課題はどう感じていますか。
A、前半は相手のプレッシャーに対して、前が見えていなかったかなと思います。みんな顔は出しているんですが、相手の圧に負けてバックパスが多くなって、マリノスもそれがスイッチになってプレスが速くなりました。それが前にいけなかった原因かなと思います。ただ、距離感が悪かったとは思っていません。センターバックとの距離が少し遠いところはありましたが、サイドバックに入ったところでうまくワンタッチであてて入っていけた場面があったので、そこは課題かなと思います。
Q、ポジティブに感じている部分を具体的に教えてもらえますか。
A、前半戦に日産スタジアムでの試合よりもボールをつないで前進するというところはできていると思うのでそこはポジティブにとらえています。これを続けていくところとこれを勝ちにつなげていくというところをチャレンジしていきたいです。
塚川や東のコメントより、勢いを持ったプレスが効果的だったことがわかります。積極的なプレスを行うことで、マリノスらしいアグレッシブさを取り戻せたように感じました。ただ後半はプレスが緩んだので、どうやって継続するかが課題でしょう。
しかし、東京は全く繋げなかったわけではありません。右図のように、空いた箇所に顔を出してマリノスのプレッシャーを回避することも。
まだ我々は、しっかりと連動してボールとともに前進するところに課題を抱えています。当然シーズンスタートの数試合は、大きなリスクをおかしたくないがゆえに、適切な距離を保たずに長いボールをシンプルに入れて前進することを容認していましたが、今は良い距離感でボールとともにチーム全体が前進することを期待しています。前半はそれがなかなかできない展開でした。
マリノスのプレスに苦しむからといって、安易に長いボールを蹴るわけではない。今は繋ぐことを醸成するフェーズだということが、アルベル監督のコメントから伺えます。J1で屈指のプレス強度を誇るマリノスを相手に、ある程度繋ぐこともできた。これは選手たちの自信になるでしょう。
徐々にリスクを冒して成果を得る
- 前に出なかったディエゴが、高丘まで寄せてくるように
- それに連動し、中盤も前に出て相手を捕まえる
- 前半に比べ、リスクを冒して前に出てきた東京
- これにより、試合がオープン気味な展開になる
後半になると様相が一変。前に出てこなかった東京が、積極的なプレスを仕掛けるようになります。マリノスは面食らった形になり、セットプレーから失点。この方法で押し切れると確信した東京は、3枚替えを敢行。再びセットプレーから加点し、追いつくことに成功します。
前半リードしている状態で、相手がリスクを負って仕掛けてきた。相手の勢いを真正面から受け止め、追いつかれてしまった様は浦和戦を思い出します。そのときの違いは、後半頭から遮二無二攻めてきたわけじゃないこと。変えた方針が効果的かどうかをテストし、問題がないことを確認。その後に選手を替えて攻勢に出る。こういったフローを踏めたのは、2点差だったからでしょう。
段階を踏んだもう1つの理由は、選手交代が守備力の低下を招くから。ディエゴはコースを限定する守備が得意な選手。しかし交代したフェリッピやアダイウトンは守備が苦手。もし、選手交代した上でのハイプレスがハマらなかった場合、前半のようなミドルブロックに立ち返ることが難しくなります。背水の陣を敷くのではなく、石橋を叩いて渡るあたりにも、アルベル監督の慎重な性格が表れていると感じました。
東京の誤算は、塚川が足をつったことでしょう。可能なら攻勢を続けて勝ち越したかったけれど、中盤のキーマンを失うことに。選手たちの体力面も考慮した結果、受け身に回る時間が増えることを予見して木村を投入。3バックに変えたため後ろに重くなりますが、守備は安定することに。
Q、最後の15分ですが、塚川選手に代えて木村選手を投入しましたが、そこで3バックにしたように見えました。あそこから押し込まれたように見えましたが、どのように感じますか。
A、(前略)アウェイでの対戦を思い出してほしいと思います。同じようなメンバーで戦っても、なかなか良い形で対応はできていませんでした。試合終盤にマリノスのサイド攻撃に苦しむであろうことは十分に予想し、警戒していました。相手の武器であるクロスに対応するための修正でしたし、前線にアダイウトンとルイス(フェリッピ)を残すことによって、そこからのチャンスというのも狙っていました。実際に決定的なチャンスが生まれていました。常にボールを保持したいというのは理想的な形です。しかし、チームはまだそれができるまでに成長できているわけではありません。私は常にリアリスタ(現実主義者)であるべきだと思っています。現実を見なければいけません。
理想を追い求めたからといって、必ず勝点3を得られるわけではありません。チームが今できることをやり、その上で勝利という成功体験を積み上げることがスタイルの醸成を助ける、という考えなのでしょう。アンジェとは重きを置くポイントが違い、そこが面白いです。やはり考え方は十人十色なんだなと、改めて感じました。
スタッツ
sofascore
SPAIA
Football LAB
トラッキングデータ
所感
前を向いて"一緒に"駆け抜けていこう
この試合におけるトピックの1つとして、追いつかれたときの円陣が挙げられるでしょう。2点差を追いつかれたマリノス。選手たちは自信をなくしたり、巻き返そうとする焦りも出るはず。その結果、各々が向いている方向がバラバラになり、組織として戦えなくなることも。
言うまでもなく、サッカーはチームスポーツです。攻めるにしろ守るにしろ、同じ絵を描けている人数が多いと、効果的に物事を運びやすくなります。失点後に作った円陣は、全員で同じ方向を向いて一緒に勝利へ突き進む大きな助けになったでしょう。我らがキャプテンは、1つにまとまることの重要性を誰よりも理解しているのかもしれません。
試合内容についても、ポジティブな面が多く見られました。攻守において果敢なプレーが目立つのは、かつての勢いを彷彿させます。やっていること自体は今までやってきたことですが、それを相手に応じて柔軟に切れることを目指しているのだと思います。後半になってやり方を変えた相手に対応できれば満点でしたが、さすがに一発で回答できるほどJ1は甘くありませんでした。それでも悲観することはありません。優勝がなくなったわけではないですからね。前向きな姿勢が十分見れました。これからに大きく期待しましょう。
【2022 J1 第24節】川崎フロンターレ vs 横浜F・マリノス
スタメン
川崎フロンターレ
- 前節から2人の先発メンバーを変更
- 山根視来、小林悠、佐々木旭が復帰
- 多くの選手が負傷などにより離脱中
横浜F・マリノス
- 前節から2人の先発メンバーを変更
- 宮市が負傷離脱中
最小限の労力とリスクで、最大限のリターンを
マリノスの守備でハイスピードな試合にはならず
- マリノスの守備は中間ポジションから捕まえるという手順を踏む
- 相手を掴むまでにある程度の時間がかかる
- この試合ではトップ下がシミッチ番をしていたので、前線のプレス人数が減る
- 後方から人を割く必要があるので、スライドにかかる時間が多くなることに
- シミッチは捕まってることを利用して、スペースを作ることも
- 川崎としては、シミッチが塞がれることは想定内のことだった
ゴールキーパーまで下げることだったり、相手サイドバックへのスライドに時間がかかることは、広島戦と鳥栖戦で書いているので省略します。
この試合のポイントは、トップ下がシミッチ番をしていたこと。相手のアンカーを捕まえるということは、前に寄せる人数が1人減ることに。相手最終ラインにはキーパーとセンターバックの3人がいるので、アンロペ1人では手が回りません。その分を補うのはウイングの選手になります。さらに彼らの後方をカバーするのはサイドバックやボランチ。といった具合に、後方から前にスライドして補う形。
ボールに近い前線を削って後方からプレスにいくので、相手に寄せるまで距離がある状態です。つまり、プレッシャーをかけるのにいつもより時間がかかります。ボールの扱いに長けた川崎にとって、相手をかわすのに十分な時間と空間があったでしょう。結果として、今まで以上にプレスをいなさることに。この試合も、守備によって試合のペースを大きく早めることはできませんでした。
トップ下を前に出して人数を増やし、遮二無二プレスをすることで早いプレーを強いることはできたかもしれません。しかしそれをやらなかったのは、鳥栖戦の失点があったからでしょう。リスクを負って試合のペースを引き上げることはせず、後方が崩れないことを優先。この守備のやり方はルヴァン杯の広島戦でも実践してましたので、強く意識しているのだと思います。
緊急事態下にある川崎は、なるべく試合の強度を上げたくない。マリノスとしても、後方が崩れるリスクは避けたい。双方の思惑を重ね合わせた結果、試合スピードが劇的に上がることは少なかったです。つまり、マリノスの守備によって試合スピードが上がらなかったのは、必ずしも悪いことだったわけではないのでしょう。
原点回帰なのかもしれない
- 4-1-4-1のミドルブロックで、広く守る川崎
- サイドにボールが入ったとき、素早く圧縮して囲い込む形
- 横幅広く守るので、サイドを変えられても素早く対応できる
- 広く守る相手に対する解決策の1つが、手薄な箇所に密集して人数をかけること
- 西村より行動範囲が広いという、マルコスの特徴が活かされることに
川崎がミドルブロックを組んだのは、コンディション面が主な理由でしょう。しかし中盤で5レーンを埋められた相手に、マリノスは攻めあぐねてしまいます。出てこないし動かないので、どうしても攻撃のスピードが上がりません。低めの4-1-4-1ブロックに手こずる様は、19-20プレミアリーグのワトフォードvsリバプールを想起させました。気になる人は以下を読んでみてください。
広く守る相手への解決策として、密集することが挙げられます。こちらも合わせて広がるとマークを掴まれやすいですが、人数を増やすことで相手を攪乱することが可能に。サイドに流れて数的優位を作るのはマルコスの十八番。上図のようにボールを受けることで、局所的に有利な状態を作ることができました。これは既に自分たちが持ってる崩しの形ですよね。しかし、この試合は別の方法も模索しているように見えました。
- 素早い動き出しで、一瞬相手のマークを外す
- 周囲の選手が適度な距離を寄せ、パスコースを創出する
- ボールが出たら、また周囲の選手が適度な距離を寄せてパスコースを作る
- 長い距離を走り続けるのではなく、各選手が瞬間的に素早く動くことを繰り返す
- 味方との繋がりを素早く、連続して持ち続けることで突破を図る
- ただし相手に狩り所と設定されている場所では、瞬間的な動きによる優位性を取りにくい
ポイントは、各選手が長い距離を走り続けるのではなく、短い距離を瞬間的に駆けるということ。こうすることで、ピッタリとマークしている相手を一瞬出し抜けます。そのわずかな時間と空間があるうちに、周りの選手も瞬間的に動いてパスコースを創出。これを繰り返すことで、大きく動くことなくボールを運ぶことにチャレンジしているのだと思います。
5:50 のように龍太が大きく動いた場合、ボールを持つ仲川に関われる選手は彼のみです。万が一仲川のパスが引っかかった場合、広大なスペースを相手に渡すことに。一気に局面を進められるのはメリットですが、使うスタミナが多いことと、ロスト時に味方が少ないことがデメリットです。
その反面、瞬間的な動きのみでかわした場合は全力疾走する時間が抑えられます。(しかし連続して動くので、スタミナ消耗は長い距離走り続けるよりはマシ、といった程度でしょうが…)またボールホルダーの周囲に味方が多いので、ロスト時に相手を囲い込む守備がやりやすくなることに。守備時は極端に速く動かなかったマリノスですが、ネガトラ時はものすごい速度で相手に寄せていました。これも狙いの1つだったのでしょう。
つまり、大きく早い展開から細かく素早い展開に切り替えようとしているように感じました。これは去年後半にあったセレッソ戦や、浦和戦に通ずるものがあるでしょう。ある意味、ケヴィンの原点回帰なのかもしれません。
大きく早い展開だとボール保持者にスペースを与えられますが、それが活きるのは独力で突破できる場合。前回の所感にも書きましたが、ルヴァン杯で起用された水沼と海夏はそういうタイプではありません。周囲のフォローが必要なので、鹿島戦で書いたように、段階を踏んで前進する必要があります。なので起用された中盤やディフェンスの選手たちは、機動力に優れた選手が多かったのだと思います。実際攻撃がうまくいったのは、選手たちの距離が遠すぎないときでした。
もちろん、そこに固執するわけではありません。相手が早い展開を望むのなら、それに乗っかりましょう。前節の鹿島戦はそういった形でした。この試合は、素早い展開の方がやりやすいという例外でした。
攻め方を変えようと思った理由は、いくつかあるのでしょう。宮市&仲川のセット投入ができなくなったこと。真夏の試合で長く強く走り続けられないこと。動きすぎて危険なスペースを作りたくないこと。相手に対策されているので、アップデートが必要なことなど…とにかく、次のステップに向かうための変化が要求されてるのです。
しかし、瞬間的に力を使うことにまだ慣れていません。『素早く動くこと = 縦に早いこと』というのが未だにこびりついている状態。今までの概念や慣習を打ち砕かなければいけないのは、昨季後半にあった浦和戦と同じ。最後に笑っているため、シーズン中に越えなければいけない壁に差し掛かっているのだと思います。
スタッツ
sofascore
SPAIA
Football LAB
トラッキングデータ
所感
サッカーって楽しい
最近、サッカーを見て楽しいと思うことが減っていました。互いの思惑がフィールドに表現され、それがぶつかりあった結果が合理的になる。試合のレベルが上がるほど、どういう状況が見えやすくなるし、予測を裏切らない。「あー、そうなるよね…」という感想しか出ず、エキサイトすることがほとんどありませんでした。理詰めで動く様は、チェスや将棋を見ている感覚にかなり近かったです。しかし直近の2試合はすごく楽しかった!
予測した展開を上回る事象。それが起きた要因は、互いの勝ちたいという気持ち。さらに、スーパープレーから生まれる素晴らしいゴールの数々。理屈じゃなく、人の気持ちで結果が決まった試合だと感じました。
恐らく、自分が見る目が冷めていたのだと思います。福岡戦の敗戦がきっかけでしょうね…けれど、また熱い心をいくばくか取り戻したと思います。それが負け試合というのはどうかと思わなくもないですが、そんなものなのでしょう。またサッカーを目一杯楽しんでいきます!
【2022 J1 第23節】横浜F・マリノス vs 鹿島アントラーズ
スタメン
横浜F・マリノス
- 前節から6人の先発メンバーを変更
- 喜田が負傷から復帰して先発入り
- 宮市が負傷離脱中
鹿島アントラーズ
- 前節から5人の先発メンバーを変更
- 仲間が負傷離脱中
前回対戦と似たような光景
マリノスのプレスをいなせない鹿島
- 鹿島は組み立て時に下げることがほとんどない
- そもそもサイドバックやセンターバックが後ろで受ける立ち位置を取らない
- なので前にパスを出すリミットは、相手選手が寄せてくるまで
- 短い時間と狭い空間で味方に正確なパスを出すため、プレーの難度が上がる
- マリノスとしたらプレスをいなされないので、自分たちのペースで守備が行える
前節まではバックパスを織り交ぜられ、広い方へ展開することでマリノスのプレスがいなされていました。しかし鹿島は後ろで繋ぐことが少なく、マリノスのプレスを真正面から受ける形になりました。これにより、マリノスは自分たちの速度で守備が行えるようになります。
あまり繋がない決断をした契機として、3:25に三竿から安西へのパスが通らなかったことが挙げられると思います。ピッチコンディションが悪い中でのパスは、途中で大きく跳ね上がりました。その結果、安西がトラップの目測を誤ってスローインに。今日は繋ぐことが難しいという印象を鹿島に与えたかもしれません。
いずれにせよ、下げるという選択肢がほぼない状態。なので、前線にパスを出さなければいけない時間的なリミットは、相手選手が寄せてくるまでになります。そしてマリノスの寄せるスピードはリーグ随一。狭い空間と短い時間の中でのプレーを、鹿島の選手たちは強いられることに。つまり、自分たちが攻め始めるタイミングを任意に作り出せないことになります。このあたりは前半戦と似ている点でした。
鹿島の攻撃はこれだけ手数をかけます。しかし真正面からマリノスのプレスを受けているので、寄せられるまでに上記の準備しなければなりません。当然難しくなりますよね。前に集まる人数は少ないし、入るボールも質が低くなる。こぼれ球を拾う選手もあまりいない。エヴェラウドやピトゥカを入れても劇的に変わらなかったのは、そもそも自分たちが攻撃の形を作る前に攻めさせられたことが大きな要因だと思います。
空中戦に強いエドゥアルドを起用した、ケヴィンの狙いもハマりました。sofascoreによると、空中戦のデュエルは5/6で勝利。相方の實藤も4/6で勝利していましたので、センターバックコンビがふんわりした浮き球のパスで負けなかったことも、相手の攻めを封殺できた要因でしょう。
鹿島としては自陣深くからの攻撃がうまくいかないことに。点を取るためには、ハイプレスからのショートカウンターにすべてが懸かることになりました。
いなされるプレスと、個の力で押し込まれる
- ボランチを縦関係にしてハイプレスをかける(前節の鳥栖が最初していた守備と同じ)
- ボールが出てからの後出しなので、マリノスのWボランチを起点にされやすい
- また、この試合のマリノスは前線が個でゴールまで迫ることができた
- 1対1でも後手を踏んだので、押し込まれる時間が多くなる鹿島
今までは右ウイングに水沼を起用していましたが、この試合は仲川に。最前線はレオからアンロペになりました。後ろとの連携によって輝く選手から、個で解決できる選手に変わります。これにより大きく変化したのは、攻撃の手数が少なくなることでしょう。
例えば水沼にパスが渡ったとき、サイドバックやボランチは彼の近くに寄る必要があります。そのためには、後ろからじわじわ押し上げる必要があるので、自陣にいる時間が長くなることに。しかし仲川だと、背後に長いボールを出してヨーイドンで解決することが可能。攻撃にかける手数が減るので、自陣にいる時間も短くなります。
自陣にいる時間が短くなるということは、鹿島のハイプレスを受ける時間が短くなることに繋がります。鹿島からすると、唯一得点の機会を作れるショートカウンターの施行回数が削られることに。
また、最終ラインが1対1であまり勝てなかったことも辛かったです。相手フォワードからボールを奪えないので、自陣深くに押し込まれることに。押し込まれるということは、ボールを奪ってからの攻撃位置が低くなります。そして、後方からの攻撃がいまいちだったのは先程言及した通り。
押し込まれたときのブロック守備は粘り強く、水際でゴールを防いだことからも、一定の強度を保ったと言えるでしょう。実際点が入ったのも、カウンターとセットプレーでした。しかし攻撃は後方からの繋ぎはうまくいかず、頼みのショートカウンターも機会が削られることに。サッカーは点を取らないと勝てません。鹿島としては、勝利が遠のいた試合だったと言えるでしょう。
スタッツ
sofascore
SPAIA
Football LAB
トラッキングデータ
所感
真正面から受けた鹿島と、ひたすらいなした広島
この試合は、鹿島が真正面からプレスを受けてくれました。それに加えて前線が個で解決できたので、敵陣で過ごす時間が長くなることに。終始マリノス本意の試合ができたと言えるでしょう。
反面、ルヴァン杯の広島戦は厳しかったです。前線の準備が整わないうちにアンロペやマルコスがプレスを開始するので、前回対戦以上に広島にいなされてしまいました。プレスは寄せるスピードが命です。そしてスライドするマリノスにとって、方向付けがもっとも重要になるでしょう。後ろの準備が整い、かつ予測しやすいプレスをかけることが肝要です。それができなかったので、余計に走る状況が生まれていました。
また、攻撃にも苦労することに。この日の前線は海夏、水沼、レオです。独力で何とかするタイプではなく、味方との関わりによって力を発揮します。なので、鹿島戦以上に段階を踏んでボールを前進させなければいけません。結果として、自陣で過ごす時間が長くなります。それだけ広島のハイプレスを受ける回数も多くなることに。それをどうかわすか。テーマとしては『味方との繋がりを素早く、連続して持ち続けること』だったでしょう。
ボールが入った味方の近くに寄り、複数のパスコースを提供。別の選手に出たらまた同じことを繰り返す。鹿島戦に比べ、機動力とスペース感知能力の高い選手たちが出場していました。一瞬の動き出しで相手のマンツーマンを出し抜けるので、そういった動きの繰り返しで相手ゴールまで迫りたかったはず。前半30分以降や、後半頭は距離感近く、テンポよくパスを回せていました。しかしうまくいかなかったときは、選手間の距離が遠かったり、動き出しのタイミングがバラバラでした。
前半はハードワークをしていましたが、一人ひとりがバラついたプレーになってしまって、一歩遅れて自分達が余計に走らなくてはいけない状況というのがありました。
ケヴィンがこのようにコメントしたのは、攻守に渡って一生懸命走っているが、それが組織的になっていなかったからでしょう。この日先発したメンバーは、久しぶりの試合だった選手もいます。素早く組織的に動くためには、相互理解が必要です。そういった時間をあまり取れなかったので、情状酌量の余地があったと思います。ケヴィンは常にアップデートするための要求をしているので、それに応えきれなかった形でした。その借りを返すのは次戦というチャンスがあるので、そのときにどういった変化があるかを楽しみにしています。