hiro's football report

国内外、カテゴリー問わなずサッカーのマッチレポート風なものを掲載

【2022 ACL GL5節】横浜F・マリノス vs HAGL

スタメン

横浜F・マリノス

  • 前節から先発メンバーを8人変更
  • A.ロペスとエドゥアルドが外国籍の関係でメンバー外

HAGL

  • 前節と同じ先発メンバー

勤続疲労 vs 環境への慣れ

 中央封鎖した守備から、カウンターで得点を狙うHAGL。ボールを繋ぎ、被とも素早く動いて支配したいマリノス。根幹にある狙いに加え、布陣も変わりませんでした。なので、およそ1戦目と似たような展開になります。試合構造などは、1戦目の記事をご参照ください。

hiro17.hatenablog.com

  • 試合ごとに1,2人程度しか先発を変えず、ほぼメンバーを固定し続けたHAGL
  • 勤続疲労があるので、精力を持ってサッカーできる時間が限られる
  • なので攻撃の施行回数を稼ぐのではなく、質を上げる方向へシフト
  • 毎試合7人以上先発を変更し、ローテーションしてきたマリノス
  • 気候やボール、ピッチ、ホテル暮らしなど、環境面に慣れが生まれる
  • 選手もボールも素早く動くようになる

 1戦目との差はこのあたりだった印象。疲労によって力を発揮しきれないHAGLと、環境への慣れで本来の姿を取り戻しつつあるマリノス。中2日という過密日程において、まるでホームアウェイで戦うような差が生まれたように感じました。

確実な方法で前進したいHAGL

  • リベロが1列上がり、組み立てに参加する
  • 後ろから上がるので、捕まえられにくい
  • 背後に抜けるのではなく、相手を背負ってボールをおさめるブランドー
  • 背後へ抜けるのは2列目の選手
  • いずれも短く低く繋ぐので、ロングボールのときより前進の確度が上がる
  • 段階を踏んで前進するので、コンパクトな陣形を保ちやすい

 後方からのロングボール一辺倒になると、ボールが行ったり来たりする展開になりやすいです。本来のHAGLはそういったサッカーを好むのですが、今はスタミナがない状態。陣形を間延びさせず、ある程度ペースを落とした攻撃をしたくなります。

 上図2つが主に見られた工夫です。キム ドンスの上がりは効果的でしたが、頻度が高くなかったことと、両脇のセンターバックの絞りが甘かったので、彼が独断で行ったように感じました。ブランドーは、本来相手の背後へ抜けることを得意とする選手。真逆のやり方になったのは、それだけ走ることがきつかったのでしょう。

 全北戦で書きましたが、1回の攻撃にかける手数を増やすと、施行回数が減って質が上がります。固定したメンバーで長い時間戦うため、HAGLの攻撃方法が変化していったのでしょう。しかしもう5戦目。54分までに3人交代したことからも、ひどく疲れていたことが伺えます。彼らが元気に攻められるのは前半の30分程度。そこまでに得点できなかったのは、HAGLにとって痛手だったと思います。

ボールも人も早く動くマリノス

  • 3トップが相手ディフェンスラインの背後を取る動きをする
  • 必要な位置に選手が素早く入るので、パスがスムーズに繋がる
  • 相手マーカーを振り切って、フリーでボールを持てる場面が増える

 環境面への適応により、国内にいる頃と遜色ないサッカーを見せたマリノス。本来行われるホームアウェイの形式ならば、ホームでこのような戦いを見せられたでしょう。その結果、地力の差が出たようにも感じました。

 交代選手も精力的に走り、チームに活力をもたらしました。選手層の差が如実に出た試合。リーグ戦でローテーションを行っていた成果を強く感じることができました。

スタッツ

sofascore

www.sofascore.com

AFC公式

www.the-afc.com

Jリーグ公式

www.jleague.jp

所感

ケヴィンの考える安全とは

 この日の選手交代は前線のメンバーから始まりました。4人の交代カードを切った時、3トップとトップ下が替わることに。後方を替えて安定した守備を敷くより、前から精力的に動くことで敵陣に居座ることが狙いだったように思います。

 自分たちのゴールから離れた位置にボールがあれば、失点する危険は少なくなる。今まで幾度も感じているケヴィンの哲学ですが、この試合でもその色が濃く出たのではないでしょうか。実際、交代で入った選手たちは攻守に渡って躍動。追加点を挙げられたのも、彼らが動き、声を出し、味方を鼓舞し続けたから。危ない場面も少なく、完勝と言える内容だったと思います。

【2022 ACL GL4節】横浜F・マリノス vs シドニーFC

スタメン

横浜F・マリノス

  • 前節から10人の先発メンバーを変更
  • レオとエドゥアルドが外国籍の関係でメンバー外

シドニーFC

  • 前節から8人の先発メンバーを変更
  • 負傷したオトゥールはメンバー外

正面から相手の狙いを打ち砕くマリノス

効果的な攻撃から逆算した守備方法

  • 前線の4人はフォワードの選手
  • ウッド以外は足が速いので、高い位置でボールを奪って素早く攻めたい
  • 攻撃から逆算して、ミドルブロックを形成
  • コンパクトにするためディフェンスラインを高く設定
  • しかしファーストラインを抜かれるとすぐ撤退する
  • 間を埋めるため、ボランチの2人は激しく上下動することに

 この日のシドニーは、前線の4人にフォワードを起用してきました。ターンオーバーの影響も多分にあると思いますが、マリノスのはスピードのあるカウンターが効果的だと考えたのでしょう。

 彼らの攻撃性能を活かすためには、高い位置でボールを奪って強襲したい。前向きのベクトルが強い選手たちなので、4人の守備ラインが高くなります。それに合わせてディフェンスラインを高く設定。攻撃から逆算した結果、前節よりも高いミドルブロックを形成してきました。

 しかし調子を上げつつあるマリノスに、プレスがハマることは少なかったです。難なくファーストラインを突破され、すぐ撤退することに。敵陣にボールがあればミドルブロックを形成。それを突破されて撤退守備に移行。これを繰り返すことになり、シドニーの選手たちは何度も上下動することに。結果的に、スタミナを削りやすい守り方になってしまいました。

自分たちらしさを取り戻す走り

攻撃面での走り
  • 相手サイドハーフの守備位置が高いので、背後を取りやすい
  • 相手のラインが高いので、裏抜けで大きなチャンスになる
  • 複数選手が連動して動いたり、素早い動き出しの意識が相手守備と噛み合う

 複数の選手が連動して素早く動く。マリノスらしさが見える動きを、選手全員が意識していたように思います。

 外側にエウベルが下り、角田が内側を上がる。いずれも高い位置にいる、相手サイドハーフの背後を取る動きです。喜田や山根が中の選手を留めていることもあり、エウベルか角田にパスを届けられることが多かったです。左サイドからの組み立てが多かったのは、この2人の動きがよかったからでしょう。

 相手のラインが高いので、背後へ抜け出す意識も高かったです。2点目に繋がるスローインを得たきっかけは、水沼の抜け出しによるものでした。これ以外にも、アンロペやエウベルが抜け出すこともありました。

 高い位置で守るシドニーと、広い範囲を素早く動こうとしたマリノス。両者の思惑が噛み合った結果、マリノスが優位に試合を進められていました。相手の狙いを真正面から打ち砕いたと言ってもよいでしょう

守備面での走り
  • 相手の前線4人は高い位置に張りがち
  • その状態でマリノスの素早いプレスを受ける
  • 前との距離が空くので、下から繋ぐことがしづらくなる
  • プレスをいなすことはできるが、前進はあまりできない
  • 独力で前進できると効果的なカウンターが打てる
  • 推進力のあるアミニがいないので、カウンターが不発に終わることが増える

 前線の4人は、攻撃でも高い位置を取りがちでした。前線との距離がある状態でマリノスのプレスを受けるので、いなすことはできても最前線までは展開しづらいことに。

 こういったとき、独力で前進できる選手がいると前まで届けやすくなります。前節その働きをしていたのはアミニでしたが、今節は彼が不在。前を後ろを繋ぐ推進力ある選手がいないので、効果的なカウンターをあまり打てませんでした。

 いなすことで精一杯だったのは、マリノスの激しいプレスがあったからこそ。自分たちらしく走ろうとする意識は、守備面でも効果覿面でした。

 前述した守備方法もあり、試合時間の経過と共にシドニーは縦へ間延びするようになります。マリノスとしては前線までの展開は楽になりますが、その後かわすべき相手は多くいる状態に。スタミナがなくなるとこの傾向は顕著になりやすいので、時間が経つに連れて攻めづらくなります開始早々のチャンスを仕留められたのは大きかったでしょう。

 以降の展開は、縦に間延びした相手をかわし続けるものでした。シドニーが攻勢に出れたのは後半55分ごろから。マリノスの選手たちに疲労がたまり、選手間の距離が開いたことでパスのテンポが落ちる。自分たちの網にかけられる速度まで落ちたことが、シドニーが反撃できた主な要因でしょう。

 その後退場してからは、2020年のアウェイ川崎戦や、2021年のアウェイ柏戦と同じだったので省略します。

スタッツ

sofascore

www.sofascore.com

AFC公式

www.the-afc.com

Jリーグ公式

www.jleague.jp

所感

移ろいゆく時の中で変わらないもの

 10人になってからのサッカーですが、2シーズン前の記事を引き合いに出し、「同じです」の一言で片づけました。これだけで済むことに、個人的には感慨深いものがありますこの2年で、選手どころか監督まで変わっています。人が変わっても同じサッカーをしているマリノスチームの哲学がしっかり形作られている証左でしょう。

前半の早い段階で2点を入れても守ることなく攻め続ける、自分たちのやるべきことをしっかり表現してくれました。自分たちで支配して戦えましたし、特に10人になってからも完全に引いて守ることなく、攻めの姿勢を忘れず、しっかり点が取れたことは大きいです。選手たち全員が強さを見せてくれました。

 ケヴィンのコメント通り、確固たる意志を貫く強さを目の当たりにできた試合だったと思います。

「1人少ない状況でしたけど、それを感じさせずに1人ひとりがもう1人分走れた結果が今日の試合の結果につながったかなと思います。あと2試合、2つとも勝って日本に帰りたいと思います」

 海夏のコメントからも、走力に関する自信が伺えます。試合を重ねるごとにマリノスらしさを取り戻しているマリノス。この勢いのまま、残り2戦も駆け抜けましょう。

【2022 ACL GL3節】シドニーFC vs 横浜F・マリノス

スタメン

シドニーFC

  • 前節から4人の先発メンバーを変更
  • グラントが何かしらの理由で離脱中

横浜F・マリノス

  • 前節から9人の先発メンバーを変更
  • A.ロペスとエウベルが外国籍の関係でメンバー外

自分たちのサッカーを表現するための立ち位置

  • パスを円滑に回すため、各々高い位置や外側の位置を取る
  • 密集から相手を崩せることも
  • 代償として、即時奪回できなければ背後のスペースを使われてしまう
  • このやり取りが頻繁にあったので、互いに縦へ間延びする状態が多くなる

 マリノスのサッカーは、自分たちが動いて相手を動かすもの。パスコースの選択肢を増やすため、サイドバックボランチの動く意識が高かったように感じました。特に高い位置へのランニングが目立った印象です。

 しかしネガトラ時の切り替えが遅く、即時奪回の成功率が低くなりがちでした。そうなると晒されるのは背後のスペースです。いなくなったサイドバックの背後を入口に、シドニーは幾度となくカウンターを仕掛けてきました。マリノス左サイドが多かったのは、ブハイアーが右斜めに流れることと、相手右サイドに推進力があってパス精度の高いアミニがいた関係だと思います。(決して永戸が特別悪かったわけではないです)

 シドニーのカウンターは2トップと両翼が主な攻撃者。ボランチや4バックは1つタイミングが遅れて上がることになります。そのため、マリノスがカウンターを防いで盤面をひっくり返しても、相手は既に構えている状態。効果的なカウンターが打ちづらくなります。互いに縦に間延びしているのに、マリノスだけゴールに近づけなかったのはこれが理由でしょう。基本的にこの構図が1試合続くことになります。

背中で語る男と、触発される途中出場者たち

いつも通り走るマルコス

  • フリックやワンツーなど、1タッチでのプレーを強く意識
  • 縦に早くて長いボールを出すことも
  • 左右へ頻繁に動き回り、ボールを引き出そうとする
  • プレス時に2度追いは当たり前と言わんばかりに走り回る
  • この気候やピッチの中、いつも通りのプレーを60分まで続ける

 気温と湿度が高い環境、凸凹なピッチ状態。そんな中、ほとんどの選手がいつも通り走ることができませんでした。しかしこの日先発したマルコスは、国内にいたときと同じようにプレーしていました

www.footballchannel.jp

 ここまで2試合連続途中出場のマルコスは「次の試合はぜひとも、個人的にはできればスタメンで出たいという思いがある」と先発起用を訴える。22日のシドニーFC戦でこの願いが届くだろうか。もっと時間が欲しい、もっとプレーしたい、何としても勝利に貢献したいという彼の飢えにも似た強い意欲は十分に伝わってきた。グループステージ突破に向けて絶対に落とせない一戦で、背番号10のチームを勝利に導く活躍に期待したい。

 忌憚のない要求に少し驚きましたが、誰よりもチームに貢献したい思いがあったのでしょう。いつも通りのペースで走り回る姿を見て、「これは前半30分くらいでガクッと運動量が落ちるのでは…」と筆者は思っていました。しかし60分の交代まで、動きやプレーの質を落とすことなく走り切りました。まさに言葉通りの活躍を示したのです。

 こういった動きを続けたのが彼一人だけだったので、良くも悪くも目立ってしまいました。味方とパスのタイミングが合わない。他の人が連動しないので、プレスが空転するなど、悪い面に働くことも。なぜここに走ってないのか。なぜプレスをかけないのか。味方に要求するようなアクションも見られましたが、それ以上に自身のプレーで姿勢を示していたように思いますマリノスでプレーするというのは、こういうことなのかもしれません。

力と勇気を与えた途中出場選手たち

  • 途中出場した選手たちが多く走ることで、攻守両面が活性化
  • 疲労が見える相手を置き去りにしてチャンスを作る
  • 瞬発的な走りも見せ、マリノスらしいローリングを見せることも

--きっ抗していた展開で途中出場した中、ケヴィン マスカット監督からの指示を教えてください。

流れを変えるのと、みんなにパワーを与えるプレーをしてくれ」とは言っていました。いつもそうですけど、やっぱり(途中から)出た選手たちがどれだけ中の選手たちの気持ちの部分も変えられるかがすごく大事になってきます。そういう意味では、僕たちは(同タイミングで)2人入りましたけど、そこでちょっと雰囲気を変えることができたので良かったかなと感じています。

 水沼がこのようにコメントしていました。先に交代していた角田、西村。そして後に交代した水沼と岩田。いずれの選手も精力的に走っていることが印象的でした。闇雲に動くのではなく、きちんと相手を動かすマリノスらしさも忘れていません。

 シドニーはアクシデントで両サイドバックを替えましたが、ここの差が出たように思います。攻撃により圧力をかけられたのがマリノスだったので、以後チャンスを生み続けられました。彼らがここまで走れたのも、マルコスのプレーを見ていたからかもしれません。

--選手交代でギアが上がりました。評価をお願いします。

日頃から選手たちには「誰が出てもいい状態にしよう」と伝えています。そして、交代で入った選手がどれだけチームのコンディションを上げられるかが重要です。いわゆる底上げです。その意味で一人ひとりがアグレッシブにプレーしてくれて、良い影響をチームに与えてくれました

 ケヴィンのコメントからも、交代選手たちが強いエネルギーをチームにもたらしたと感じているようです。他の選手たちに引きずられていいプレーができる状態を、選手交代によって作り上げること。過酷な状況で行われる短期決戦では重要なことだと思います。

スタッツ

sofascore

www.sofascore.com

AFC公式

www.the-afc.com

Jリーグ公式

www.jleague.jp

所感

気候に慣れてきたかもしれない

--短期間のスケジュールが大変だと思います。

正直、オプションを見つけるのが大変でした。自分たちのサッカーをやるのは簡単ではありません。試合間隔が短い中、ローテーションをして、フレッシュな選手を準備してきました。自分たちだけでなく、相手を含めて簡単には事が進みませんが、自分たちは試合を重ねるごとにコンディションは上がっていると感じています。内容も断然上がり、良いパフォーマンスができました。

 実際、初戦では足をつっていたエドゥアルドやレオが最後までプレーできました。ケヴィンのコメントはその通りだと思います。

--今大会初先発でした。意識したことやトライしようと考えていたことはありますか?

まずは前のほうでボールに関わりたかったのですが、コンディション面も含めてもう少し上げないといけません。最後のところに関わる回数が少なく、もう少し攻撃で違いを出していかなければと感じました。

 ただ、皓太はまだコンディションを上げていかないと辛いと感じているようです。ある程度自分たちのサッカーが表現できるようになったけど、思い描いた戦いができるまでもう少しかかるのでしょう。

 マルコスのように走れる選手も出てきました。グループリーグも折り返しに差し掛かったので、ここからもっとスピードを上げたプレーに期待がかかります。凸凹なピッチと、軽いボールにそろそろ慣れてほしいと思いつつ、この日程だとリカバリーしかできないしなぁ…というのがもどかしいですね。