hiro's football report

国内外、カテゴリー問わなずサッカーのマッチレポート風なものを掲載

【2021 J1 第17節】横浜F・マリノス vs 清水エスパルス

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スタメン

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横浜F・マリノス

  • 前節から2人先発を変更
  • 喜田と水沼がベンチ入り

清水エスパルス

  • 前節から1人を先発変更
  • 布陣も4バックから3バックに変更

ルヴァン杯を踏まえて

 今回の1戦を語る上で外せないのが、直前にあったルヴァン杯のグループリーグ戦。マリノスが5-1の大勝をおさめたことを頭に入れておくべきでしょう。うまくいったマリノスそのままそうでなかった清水はやり方を工夫してくる。こう考えるのが妥当ですよね。では、その振り返りも踏まえて見ていきましょう。

マリノス側からの視点

  • 両翼がMF寄りの選手たち
  • ボランチは守備力より広範囲を動き回れる選手を起用
  • サイドバックも決まった位置以外を多く取る選手が出場
  • 結果として流動的に敵陣内を動き回ることに
  • サイドで数的優位を得ることでゾーンディフェンスを破壊

 この試合は両翼に樺山と水沼、ボランチに天野と皓太、サイドバックに小池と和田という面々でした。どう考えてもこの人たちオリジナルポジション守りませんよね!?という印象を受けますが、実際その通りになりました。

 独力での突破というより、周りと連携して動き回りながらいい立ち位置を取る。こうすることで相手に的を絞らせない攻撃を展開します。また、サイドに人を多く割くことでマークを攪乱。動き回ること密集で、清水のゾーンディフェンスをこれでもかというほど破壊。大勝をおさめました。

  • 両翼がFW寄りの選手たち
  • ルヴァン杯でうまくいった流動的なポジショニングを得意としてる選手を起用
  • もちろん大分戦で好パフォーマンスを披露したことも込み
  • ルヴァン杯ほどの流動性はなく、個で解決することが多い

 ルヴァンとの違いは主に両翼にあったでしょう。フォワード色がより強くなるので、スピードを活かした独力での攻めが目立つようになります。先制点なんかまさにその典型でしたよね。

 また、ルヴァン杯での成功があったので、小池、皓太という流動的に動ける選手を起用。このあたりは大分戦でいいパフォーマンスを残したことも関係あるでしょう。

 しかし今季のマリノスリスクヘッジを考え、ポジションを変えて攻めることはあまりしません。(このあたりはFC東京戦のレビューと、ルヴァン杯清水戦のツイキャスでお話してますのでご参考に。)こういった背景があったことと、大分戦の疲労からか、相手の陣形をグチャグチャにするまでには至らず。背後へ抜け出す方が回数として多くなりました

 早い時間帯に先制点を奪ったこともチームが落ち着いた要因の1つだったでしょう。決して悪くはなかったのですが、圧倒したかと言われるとそこまでではない。といった試合展開でした。

清水側からの視点

  • ゾーンディフェンス基調の4-4-2で臨む
  • 流動的かつ人数をかけた相手にゾーンがズタズタ
  • 後方の手が足らず、プレスバックが多くなる
  • 全体として自陣に押し込められたので、反攻しづらい

 清水はいつも通りの形で臨みましたが、マリノス流動性とスピードに圧倒されてしまいます。動く相手を捕まえられず、人数もかけてくるのでゾーンでは対応しづらい状況に。後方の人手が足りなくなり、前線の選手がプレスバックすることも多かったです。

 後ろ向きな守備が増えた結果、自陣に押し込められる形に。こうなると攻守が入れ替わっても前に人がいないため、独力でなんとかしてもらいたいです。しかしディサロにそこまでの力はなく、槙人や岩田に屈することに。こういったこともあり、一方的にやられてしまいました。

  • 4バックではなく3バックでスタート
  • ウイングバックがウイングを捕まえることは明確
  • 他は前にいる人を捕まえる守備へ変更(ゾーン要素が薄まる)
  • プレスバックする頻度が激減し、前線に人が残ることに
  • 攻守が入れ替わった際、前進ルートの選択肢が増える

 この試合は布陣変更が目につきました。4バックから3バックに変更。これはルヴァン杯を踏まえ、かつマリノスがリーグ戦でどのように選手起用をしているかを加味した結果だと思います。

 大然、エウベル、仲川はスピードを武器に背後へ抜け出すことが多い。そこにしっかり人を充てたいのでマンツーマン気味にする。そうなると中央3レーンを守る必要があるが、マリノス相手に4バックでは足りなかったので3枚あてがう。こういった理由から3バックだったのでしょう。

 そして布陣だけでなく、守り方も変えてきました。そちらを見てみましょう。

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  • 5-3-2でブロックを形成
  • ウイングバックは相手ウイングを捕まえる
  • それ以外の選手は前にいる選手へ出てアプローチする
  • フォワードのプレスバックは控え気味
  • なので攻守が切り替わったとき高い位置から攻撃ができる
  • 押し込まれ続ける状況を回避できる

 守備のテーマとしては前向き守備になります。自分の前にいる相手に出ていって捕まえる。これをほぼ全ポジションの選手が実行。下がる守備ではないので、押し込まれる頻度が減少。攻撃に切り替わったときも攻めやすくなります。

 前線のプレスバックが少ないことも特徴でした。特にカルリーニョスがボールをおさめて前進することが多かったですよね。それは下がりすぎない守備があったからだと思います。

 唯一プレスバックするのは中盤の選手たち。とりわけ両脇の選手たちは激しい上下動をしていました。前に出る守備陣と挟み込む意図もあったのでしょう。その代わり、ここは最も消耗が激しいポジションに。

 例えば、マルコスが下がって福森を引っ張る。入れ替わりで皓太が上がってスペースから抜け出してシュート。人につく守備なので、前向き守備を利用することもできたでしょう。ただ大分戦での疲労と、リスクヘッジをする今季リーグ戦の試合からか、ボランチの飛び出しは控えめでした。これも清水が強きに守備できた要因の1つだったでしょう。

スカッドの差が分けた勝敗

選手交代の影響を受けるチームは…

 試合が進み、互いの選手に疲労が見えるようになりました。両チームとも選手交代を行い、優位に試合を進めようとします。マリノスはレオ、仲川、天野を投入。対する清水は、消耗の激しかった中村に代えて河井、また2トップを中山と鈴木唯人にしました。双方とも前線の選手が変わることに

 当然、選手が変われば得意なことも変わります。それにも関わらず、マリノスの攻撃は大きな変化がありませんでした。ゴールへ迫る過程は変わりますが、崩すエリアや人が入る箇所は同じです。しかし、清水は変える必要に迫られることに…

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  • 鈴木唯人はトップ下のプレイヤー、中山はサイドアタッカー
  • 中山の得意なエリアはチアゴサンタナの得意な場所と違う
  • なので、攻める際のエリアが中央から外側に変わる

 交代したカルリーニョスやチアゴサンタナとはフィジカル的な強さが大きく異なるため、無理が効かなくなることは想像しやすいでしょう。それに加え、得意なエリアが変わるので攻める場所も変わります

 左図はうまく両者の特徴が活かせた飛び出しだと思います。しかし、右図はパスがズレてしまいました。このパスミス、中山が外側を要求、片山が中央に出した。というものならわかりやすいですよね。しかし実際は逆。片山としては「こちらがやりやすいだろう」という意図を持ったパス。しかし中山は「フォワードとして前線でボールを受けるべき」という意思があったのかもしれません。気遣いができすぎて裏目に出るという珍事でした。

交代させられない片山

 中盤の両脇は消耗が激しいと言いました。実際中村はすぐ交代しましたよね。しかし、逆サイドの片山は最後まで出場。これにはわかりやすい理由があったでしょう。

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 これが片山を右サイドで起用した主な理由でしょう。優位性を確立できていたので、清水最大の武器になっていました。2トップの交代によって雑におさめられなくなったからこそ、この前進方法は残さざるを得なかったはず。いわゆる替えの利かない選手ということに。クタクタなままでもフィールドにいてほしかったのでしょう。

スカッドの差が運んだ決勝点

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  • 鈴木唯人がプレスバックしたので、前に出ざるを得なかった宮本
  • その隙間に天野が入ったので、鈴木義宣が前に出る
  • 抜かれたあとの片山の戻りが遅い
  • 鈴木義宣が前に出たので、後方は絞って4バック幅
  • 外側で空間を得た水沼が精度抜群のクロスを上げる

 交代した選手は全力で何度も走らなければいけない。戻って守備することも必要。まじめな日本人はこう考えがちですよね。2トップが外国籍から自国籍に変わったので、前線の意識が大きく変わります。簡単に言うと、ルヴァン杯のときのような状態に。選手交代によって、清水は押し込まれることになりました。

 また前向き守備のルールがあったので、鈴木義宣が出たことも決勝点に影響したでしょう。仲川が抜けたとき、本来なら片山が全力で戻って守備陣と挟めたはず。しかし疲労からか、このときの戻りは緩め。これは前述した通り、彼が替えの利かない選手だから。交代しないデメリットが出たことになります。

 鈴木義宣が前に出た分、後方は中央を締めます。これは4バックの状態。4枚で対応できなかったから5枚にしたのに、それを崩された形になります。外側に開いた水沼にこれだけ空間を与えれば、精度の高いクロスが上がりますよね。それを押し込んだのはレオ。奇しくもマリノスは交代選手が成果を挙げる形に。清水とのスカッド差が如実に表れた決勝点だったと思います。

スタッツ

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所感

引いた相手からでも点が取れる

 前回の大分戦に続き、この試合も似たような形で決勝点を挙げました。引いた相手を崩すことはまだできないかもしれません。けれど、引いた相手でも点を取る方法はもう持っていると思います。引っ込んだ相手に点が取れないと嘆く必要はないかと思います。今後も天野や水沼に期待ですね。

【2021 J1 第16節】大分トリニータ vs 横浜F・マリノス

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スタメン

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大分トリニータ

  • 前節から2人の先発メンバーを変更
  • 松本怜がメンバーから外れる

横浜F・マリノス

  • 前節から5人の先発メンバーを変更
  • 喜田、扇原、松原がメンバーから外れる

押し込まれる大分

前から行きたいけれど…

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  • ハイプレスに出るも、ボランチの片方が上がらないので空く箇所が出る
  • 空いたところからマリノスに前進されてしまう
  • ハイプレスを諦めてある程度後ろでブロックを組むことに
  • 高畑が積極的に前へ出て町田を押し上げる
  • そうなると外にいるエウベルへ出るのは小出
  • 坂と小出の間から皓太に顔を出されて大きなピンチに
  • これ以降、高畑が前にでる頻度が減少

 試合開始からハイプレスを敢行する大分。前に出たい姿勢が伺えます。しかし、後ろの選手たちが全員続いているかというと、必ずしもそうではありません。特にボランチの片方が空くことが多く、マリノスはそこから前進を図ることに。勇気を持って後ろが連動しきれていない大分もですが、こういう小さい隙をしっかり突けるマリノスもさすがだと思います。

 また、自陣での守備は両ワイドに差が見受けられました。香川は後ろに残って後方の安全を担保。それとは逆に、高畑は前に出て積極的なボール奪取を狙います。本来香川は長い距離を素早く上下動できるだけの体力と走力を持った選手です。そんな彼を前に出さず、高畑にその役割をさせていました。これはマリノスの攻撃力を警戒したことと、高畑の方が攻撃性能に優れていると考えたからでしょう。あとは選手の志向ですかね。このあたりが絡んでこういう結果になったのでしょう。

 さて、高い位置に出た高畑ですが、上図の通り致命的なピンチを早い時間帯に迎えてしまいました。「俺が後ろに残っていればあんなに間は開かなかったはず」高畑がこう考えるきっかけとしては十分だと思います。これを機に前へ出る頻度が減少。後ろに5枚並ぶ時間が増えました。

  1. ハイプレスがハマらず下がった位置にブロックを形成
  2. そのブロック守備もかわされ、より失点リスクを下げる方向へ
  3. 後ろに重いブロックで守備を行う時間が増える

 大体このような流れでズルズル下がることになったと思います。結果として大分は押し込まれる展開に。

相手が流動的なポジションを取る中で、最初は前から行こうとしていたのだがうまくハマらず、ズルズル押し込まれていた。狙いを合わせて全員が連動していないと、ボールも奪えないし押し込まれる状態が続いてしまう。コミュニケーションをとって全員で意思統一することが大事だと思う。

 このあたり、高畑が上記のようにコメントしていました。連動しきれない大分と、相手を見事にいなすマリノス。こういった互いの様相が、一方的に押し込まれるという展開を生んだのでしょう。

正解が分かれば苦労しないが、自分たちが今まで積み上げてきたものを疑うことなくブレずにやり切るしかない。相手をリスペクトし過ぎている部分もあると思う。自分たちのサッカーに自信を持って体現し、こちらが主導権を握って相手に合わせさせるようにしていかなくてはならない。

 また、三竿が上記のようにもコメントしていました。相手をリスペクトするというのは、相手との実力差を認めた上で現実的な対応を取ること。リスペクトし過ぎているというのは、相手との実力差に恐れを抱き、消極的な対応を取ること。今回の場合、マリノス相手に積極的に入ったが、思ったよりかわされることと、大きなピンチを迎えたことで恐れおののいた形だと思います。これを考えると、精神的にもマリノスが優位な状況だったでしょう。

押し込まれることによる影響

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 押し込まれている状態の大分は、シャドーが中盤の外側を守備することになります。そうなると、中央にいる長沢からの距離が遠くなりますよね。なので、攻守が入れ替わったとき、すぐに長沢へボールを入れると周囲に人がいないことに。

 それを避けたい大分は上がるまでの時間を作りたいですが、マリノスの素早いプレスがそれを許さない。結局整える前に蹴り出してしまいます。こうなると、長沢が競り合いで勝ち、かつキープして時間を作ることが求められます。しかし、そうできたのは試合を通じて1,2回程度。畠中やチアゴの牙城は中々崩せませんでした。

  1. 前に上がる時間を作りたい
  2. マリノスのハイプレスが時間を削る
  3. 前へ蹴らなければいけない
  4. 長沢が孤立して相手にボールが渡る
  5. 押し込まれるのでシャドーが外側低い位置に
  6. 最初に戻る

 こんな感じのループに陥ってた前半の大分。中々前へ出るきかっけを掴めなかったので、ほとんどが守備する時間だったでしょう。

攻勢に出たことによる代償

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  • ボランチが両方前へ出てハイプレスをかけるようになる
  • 攻撃時にウイングバックが高い位置に出て幅を取る
  • それによりシャドーが内側に入れて長沢が孤立しにくくなる

 後半になってから再び前へ出るようになった大分。今度は全選手が勇気を持ってプレーしたので、押し込まれ続ける時間が減少します。相手を恐れることなく立ち向かう姿勢を感じることができました。

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  • ボランチや両ウイングバックが出る分、後ろが手薄になる
  • 攻守に渡って上下動する距離が増えたので、互いにスタミナ消耗が激しくなる

 前に出るということは、その分後ろが空くことにもなります。攻守がひっくり返ったとき、守備する人数が少ない状態で対応を強いられることに。上図のように、マリノスがカウンターをして3バックとほぼ同数だった。なんてことが何度かありました。

 また攻撃で前へ上がる分、守備で後ろに下がる距離が増えます。当たり前ですが、押し込まれているときより走行距離やスプリント回数が伸びることに。オープン気味な展開になるので、マリノス側も上下動の頻度が増えます。

 これらのことにより、攻守の切り替えと走力の勝負へ試合の様相が変化しました。そしてそういうサッカーはマリノスの方が得意としているもの。やはりこれでも優位に戦えたと思います。

押し込んだ相手への対応

押し込んだ相手を崩すことに求められること

 この試合、大分を押し込む時間帯が多かったマリノス。そこで求められるのは、ゴール前に人数を割いた相手をどう崩すかです。そういう状況だと、スペースが狭くなりますよね。狭いところでプレーするには、以下のことが問われるでしょう。

  • 短い時間で判断する力
  • 全員が同じ方向を向いている意思統一ができているか
  • 狭いところでボールをコントロールする足元の技術

 狭いということは、相手との距離が短いということです。そうなると、ボールを奪いにいくまで短い時間で済みますよね。なので、それまでに次のプレーを決める必要があります。

 判断する時間を節約するため、周りの選手たちが同じ絵を描けているといいですよね。次にどこへ動き、どこへパスするか。このあたりの意思疎通ができていると、スムーズに攻撃することができます。

 また、狭いところでボールをコントロールする技術も求められるでしょう。狭い隙間を縫うようなパス。足元に吸い付くようなトラップ。これらがないと、相手にボールを奪われてしまいます。

この試合におけるチームの状況

 では、この試合のマリノスはどうだったでしょうか。下図を見てみましょう。

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 この試合に出場してる選手の状況を、よく表していると感じました。一見するとただのパスミスですが、なぜこうなったのかを考えてみましょう。

  • いつもの仲川なら抜け出すと思った岩田
  • まだコンディションが整っていない仲川
  • 度重なる怪我でイップス気味の仲川
  • 双方ともレギュラーを奪取する立場にある
  • この2人が実戦で一緒に出場した時間はそんなに長くない

 いつもの調子の仲川なら、背後へものすごいスピードで抜け出しそうですよね。これはサポーターもそう考える人が多いはず。岩田も同じように考えてパスを出しましたが、仲川は足元で欲しかったようです。

 ここで彼の状況を考えてみましょうか。最近怪我から復帰してまだコンディションが整っていない状態。また、昨季負傷が多かったことを反省し、怪我しないことを目標とした今季。それでも怪我をしてしまったので、「全力を出すとまた怪我するのでは?」という思いは強くなるでしょう。こういう恐怖はプレーを委縮させてしまいます。イップスと呼ばれることが多いですかね。このような背景があったからこそ、足元へ要求したのかもしれません。

 チームでの立ち位置もありますよね。好調なチームにおいて、彼らはレギュラーを奪取する側にいます。当然いいプレーをしてアピールしたいですよね。得点に直結するパスも、ミスしないように確実性を求めることもよくわかります。このあたりがズレるのは、互いに実戦でプレーした時間が長くないことも影響していると思います。スムーズにいかないのはある意味で当然でしょう。

 チームでの立ち位置や、互いのプレー時間をチーム全体から見てみましょうか。この試合に先発した、レオ、仲川、岩田、皓太、小池の5人はレギュラーを奪取する側になります。それでも岩田はチームプレーに傾倒しますが、レオは違いますよね。ルヴァンのとき得点を取るためにボールを要求して動きまくっていたのは印象的でした。このあたり外国人のハングリー精神を感じます。選手それぞれの性格も出たのでしょう。

 また、半数がいつも一緒にプレーしているわけではないことになります。どうしてもレギュラー組だけのときに比べて、展開するサッカーの速度や正確性は落ちてしまいます

僕は(岩田)智輝や(渡辺)皓太と練習でプレーすることが多いので、違和感はなかったのが正直なところ。リーグ戦のスタメンで出続けている選手とやる中で、バランスが崩れている部分もあった。“やりたいこと”と“やれること”の差が気になっていたので、3人で試合前に「チューニングできればいい」と話し合っていた。そこが相手を押し込む要因になったし、オーガナイズして90分戦えた要因だと思う。

 それに対するアプローチを小池は語っていました。文字通り、3人はチームを繋ぐ役割を果たしていたように思います。攻撃においてパスの中継点になることはもちろん、守備でも危険なスペースを消していました。自分が成果を残したいのに、他の誰かが上がったらそこを埋める動きをする他己的なプレー。まさにチームを考えてのことだと思います。

 ターンオーバーにより、このような状況にある中、チームが大きく崩れずに相手を押し込めたのは彼らの尽力があったからでしょう。あと一歩のところで得点が入りそうなレベルまでもっていけたことに感動しました。

押し込んだ相手に対する1つの答え

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  • 崩したのはゴール前ではなくサイド
  • 十分なスペースを確保し、精度の高いキックができる環境を整える
  • ゴール前に相手が多くいても精度の高いキックなら関係ない

 得点シーンについて振り返ってみましょう。樺山が中に入ることで下田を内側に引っ張ってきました。それと入れ代わるように天野が外へ。これによりサイドに空間が出来上がります。そこでたっぷり時間を使える中、天野はクロスを上げられることに。これフリーキックと遜色ない状況です。狭い隙間にドンピシャなボールを入れることは、彼の実力を考えれば当然ですよね。

 これだけ精度の高いボールを入れられれば、相手が何人ゴール前にいようと関係ありません。ゴール前を崩さずとも、得点を奪うことができます。これってルヴァン杯ホーム仙台戦の得点に似ているんですよね。天野や水沼といった優秀なキッカーがいるので、サイドを崩して時間と空間を得ることも、引いた相手への対抗手段だということを示したと思います。

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所感

複雑な状況での勝利

 前述しましたが、この試合のチームは個々人によって様々な立場がありました。サッカーだけでなく、チームってそういうものですよね。そういうバラバラな立場の人間が集まって勝利を求める。そのためにはいかに同じ目標を見れるか。粉骨砕身した選手たちがいたことを忘れてはならない試合だったと思います。

 選手を替えた理由の大半がターンオーバーだったでしょう。可能な限り同じメンバーでリーグ戦を戦いたいですが、そう言ってられない日程ですからね。なので、レギュラー組以外にも多くのチャンスがある状況だと言えるはず。「レギュラーを取るぞ!」といった心意気やプレーをボスも期待しているはず。競争のないチームは伸びしろがないですからね。それを考えてもいい試合だったと思います。シーズン終盤は開幕時より多くの選手が変わっているようなチームになれば、優勝も狙えるはず。期待してます。

【2021 J1 第7話】あなたの攻撃に狙い撃ち

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相手の攻撃方法を限定させるネル爺の策

 マリノス戦に臨む柏の選手たち。試合前に監督から今日の狙いを聞きます。

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ネルシーニョ

最近失点が多いので、今日はしっかり守備から入ろうと思う。絶対に早い時間に失点しないように!

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選手一同

はい!!

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ネルシーニョ

まずどこから守備を開始するかだが、大体真ん中くらいまで下がってからだ。ある程度相手を自分たちの方に引き込んでいいぞ。

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大南

そうなると、ゴール目に集まってドン引きする感じですか?

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ネルシーニョ

いや、そんなことをしたらサンドバック状態になってしまう。我々がMに目覚めてしまうじゃないか!そうならないためにも、後ろは高い位置に上げるんだ。

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上島

それだと後ろ取られませんか?前田とか光速ですよ?俺らじゃ追いつけないこともあると思います。

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ネルシーニョ

そうだな。けど、誰しもがそう思うことにポイントがある。彼らは間違いなくそれを狙ってくるだろう。我らが中央付近まで下がることで、パスの出し手も上がれるしな。ほとんどの場合一発で背後を狙ってくるはずだ。

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川口

それだと不利になるんじゃ…

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ネルシーニョ

いや、相手がそれしかしてこないとこちらにはわかっている状態だ。それならば対応も容易いだろう?

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古賀

そうか!相手が蹴りそうになったとき、すぐに下がっちゃえばいいのか。

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ネルシーニョ

そういうことだ。我らの守備で相手の攻撃方法を決めてやろうじゃないか。名付けて、あなたの攻撃に狙い撃ち作戦だ!

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神谷

え?今広瀬すずのモノマネしながら言わなかったか?

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江坂

しーっ!最近連敗してチームが暗いから、ネル爺が明るくしようとしたんだよ。渾身のモノマネだって!

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神谷

お、おう…とにかくツッコむのは野暮ってもんだな。黙っておくよ。

 何やら最後にスベった感がありますが、見なかったことに…マリノスの特性を逆手に取ったこの作戦。果たしてどこまで通用するのでしょうか。

見事にハマるネル爺の策

 さて、試合が始まりました。展開されているサッカーは、両陣営からどう見えているのでしょうか。

柏から見た場合

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仲間

よし、言われた通り中央まで下がったぞ!

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神谷

なら突っ込みますか。うおおぉぉぉおお!!

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細谷

俺たちは中央を塞ぐのが役割だね。

 事前の打ち合わせ通り、前の4人は一旦引いてからマリノス選手たちへ襲い掛かります。

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上島

さて、俺たちもライン高くしてっと…

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大南

あ!ティーラトン裏に蹴ってきそうだぞ。

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川口

それと同時に前田も前に出てきたな。マジでネル爺の言った通りになってるよ…

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大南

よーし、一斉に下げるぞー!絶対背後を取られるなよー!

 後ろの選手たちも言いつけを守るように行動。すると、試合前にネルシーニョ監督が言った通りの展開に。「待ってました!」と言わんばかりに下がって対応。相手のやり方がわかっていたので、落ち着いて行動できます。

マリノスから見た場合

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畠中

今日の相手はガンガン来るわけじゃないんだな。真ん中くらいまでなら持たせてくれるな。

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ティーラトン

おっと!?ここからは激しく寄せてくるのね。ちょっとビックリしたよ。

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ティーラトン

あ、でも相手めっちゃ後ろ空いてるじゃん。あんなの大然ならピューっていけるよね。後ろ残ってた方が安全だし、一気にいっちゃいますか!

 今季は安全第一なマリノス。後ろの選手が持ち場を離れないなら、それにこしたことはありません。しかも、前には美味しそうな空間が広がっているではありませんか。大然やエウベルなら相手をぶっちぎれるスピードがあります。自分たちはリスクを冒さず、一気に相手ゴールまで迫れる。こんな美味しい状況を使わない手はありません。

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大然

ブンちゃん!俺の走りに合わせてだしちゃって!

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ティーラトン

了解!一気にいっくよー!

 ティーラトンのパス精度と大然のスピードが織り成すハーモニー。美しく弧を描くパスは、相手背後目がけてボールが進みます。それが相手の罠だとも知らずに…

思うツボだったマリノス

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ティーラトンの

あれ?一気にゴールまでいけそうだから楽だと思ったのに…全部相手に取られるなぁ。

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松原

あ、ブンちゃんもそうなの?俺もなんだよ。ブスっと一刺しで仕留められると思ったら防がれるんだよね。どうも先に動かれてる感じがする

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上島

ほんとこればっか狙ってくるな。パターン読める上に、慣れてきちゃったよ。

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大南

そうだね。これなら失点する気がしないわ。カウンターで仕留めたいところ。

 柏の術中にハマるマリノス。効果的な攻撃ができず、得点の香りがしません。相手からしたら何をされるかわかってる上、何度も同じことをされたので慣れている状態。これ以上ないほどやりやすかったでしょう。前半は柏ペースで試合が進みました。

やられっぱなしじゃないマリノス

 しかし、相手のやり方にいつまでもハマってるマリノスではありません。後半に反撃の狼煙を上げます。

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ティーラトン

後半は一気にいくなんて楽なことせず、段階的に前へ進むようにしよう。

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オナイウ

ブンちゃん!下りた俺を中継地点にするんだ!

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天野

そのあとは俺もいるからお忘れなくー♪

 短いパスでテンポよく進むマリノス。一気に攻めようとしてもうまくいかなかったので、段階的な攻撃へと切り替えました

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大然

おお、今度は一人じゃない!みんなで一緒に攻めよう!!

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川口

くっ…こいつら攻め方を変えてきやがった!

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大南

うーん…こちらは相手の動きに合わせて下げちゃうからなぁ。違うやり方になると前に大きな空間ができちゃうよ。

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古賀

ちょっと押し込まれるけど仕方ない。頑張って耐えきろう!

 マリノスがやり方を変えたことで、前半より押し込まれる柏。しかし、そこは人海戦術で何とか耐えようとします。

 引いた柏を攻め立てるマリノス。カウンターで一刺しを狙う柏。互いにチャンスの生まれた試合は、1-1の引き分けで決着しました。